語順から見た目本語と
シンハラ語の対照 宮岸哲也 |
『世界の言語と日本語』(角田大作1991/くろしお出版)が示した19項目の語順をシンハラ語について調べ、日本語の語順との共通点を探った論文。興味深い指摘がいくつかある。以下は,各表題の論旨要約。 |
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1.他動詞文の語順 |
日本語もシンハラ語も「主語-目的語-動詞SOV」の順である。語順を変えても意味は変わらない。 |
2.名詞と側置詞の語順 |
日本語もシンハラ語も後置詞を持つタイプである。格の語形変化は語末の変化や側置詞(接尾辞)を加えることによって示される。→詳細と解説 |
3.所有格と名詞の語順 |
所有格と名詞の語順は日本語と同じである。所有格は属格接尾辞geeによって表される。→詳細と解説 |
4.指示詞と名詞の語順 |
日本語もシンハラ語も、指示詞は名詞の前に来る。シンハラ語の指示詞はmee/oya/ara/eeの4体系で、araが〔話し手・聞さ手双方から離れた物〕を指し示すのは、日本語における指示詞の現場指示の規則と同じ。 |
5.数詞と名詞の語順 |
日本語では①数詞先行型、②名詞先行型の二つがあるがシンハラ語では、②名詞先行型が一般的。 |
6、形容詞と名詞 |
日本語もシンハラ語も名詞を修飾する形容詞は、名詞の前に来る。 |
7.関係節と名詞 |
日本語もシンハラ語も関係節は名詞の前に来る。日本語動詞では、いわゆる常体(plain form)が関係節の述語を担う。シンハラ語動詞では時制によって関係節の動詞語尾が変化する。→詳細と解説 |
8.固有名詞と普通名詞 |
日本語、シンハラ語ともに固有名詞が普通名詞の前に来る。 |
9.比較の表現 |
日本語とシンハラ語の比較表現は、同様の語順を取る。→詳細と解説 |
10.本動詞と助動詞 |
日本語もシンハラ語も本動詞が助動詞に先行する。 |
11.副詞と動詞 |
日本語もシンハラ語も、副詞は動詞の前に来る。 |
12.副詞と形容詞 |
日本語もシンハラ語も副詞は、形容詞の前に来る。但し、動詞の場合と同様、waeDi(十分に)とmadi(不足の)は、形容詞の後に来る。 |
13.一般疑問文 |
一般疑問文(英語におけるyes/no疑問文)での「か」疑問詞、da疑問詞は、日本語もシンハラ語も文末につけられる。 |
14 一般疑問文での
主語と動詞の倒置 |
日本語もシンハラ語も一般疑問文を作るときに主語と動詞の倒置は起こらない。 |
15.特殊疑問文(wh疑問文) |
シンハラ語のwh疑問文は、動詞が強調形に変わり、da疑問詞が必ずwh疑問詞の後につくことにその特色を見ることができる。→詳細と解説 |
16.特殊疑問文での
主語と動詞の倒置 |
日本語もシンハラ語も特殊疑問文での主語と動詞の倒置は起こらない。
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17.否定文 |
シンハラ語の否定文は、日本語同様文末に否定の印をつける方法と、動詞の前に否定の接頭辞noをつける方法がある。 |
18.条件節と主節 |
日本語もシンハラ語も従属節が主節の前に来る。よって、従属節である条件節も、主節の前に来る。 |
19.目的節と主節 |
日本語もシンハラ語も、目的節は主節に先行する。
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