3 所有格と名詞
「シンハラ語の所有格は(略)属格接尾辞geeによって表される。そして、この後に、所有される物を表す名詞が来る。所有格と名詞の語順は日本語と同じである」と宮岸論文は言います。これは所有を表す接尾辞(ニパータ)の音が「ゲー
gee 」であり、その点を除けば日本語の”属格接尾辞”、つまり所有を表す助詞「の」と同じだという事です。その例として、
magee Pota m@g~ @p`w
私の 本
が、挙げられています。この gee @g~ が,日本語古語の所有を表す格助詞「が ga 」と対応関係にあることはすぐにお分かりでしょう。
この”magee ― 私の”に関して,次の解釈が可能です。
”私の”には文語として”我が”という表現があります。また,古語としては”麻呂が”と言います。この”麻呂が”を例にしてシンハラ語と対照させると次のようになります。
まろ / が / ちち | maro ga chichi | 麻呂が父 |
マ / ゲー / ターッタ | ma gee thaatha | m@g~ w`w~w |
この例文ではシンハラ語と日本語の対応関係が顕著に現れています。
*シンハラ語では所属・属性を表す場合,gee ではなく ee を用います。例えば,
gahee aththak g@h~ a#w~wk~
木の 枝
日本語では「木が枝」などとは言いませんから、この使いわけはありません。また、「なでしこが花」のように同格を表す「が」の表現がありますが、シンハラ語では「サクラー・マル(桜-花)」のように言いますから、助詞(ニパータ) gee @h~ を使う事はありません。
参考 シンハラ語と日本語では、人称代名詞、ニパータと助詞、親族の呼称などに対応が見られます。詳しくは「シンハラ語の話し方・増補改訂」を参照してください。