『かしゃぐら通信』Top index


2.名詞と側置詞

 宮岸論文では、「側置詞には、前置詞と後置詞があり、日本語もシンハラ語も後置詞を持つタイプである。シンハラ語は主格、対格、与格、属格、奪格、呼格が名詞の基本的な語形変化としてあり、それらは語末の変化や接尾

文字化けしている部分はシンハラ文字です。シンハラ・フォントでお読みください。

辞を加えることによって示される」とあります。
 ここで言われる「後置詞」「語末の変化」「接尾辞」はシンハラ語の品詞分類では「ニパータ nQp`w」と呼ばれる単語で,それ自体としては独立して用いられる事はないが,文の意味を決定する上で大切な役割を果たす品詞です。それは丁度、日本語の「助詞」と同じ役割を果たすと考えて誤りはありません。

 宮岸論文では、ayiyaa(兄)を例にとって、次のように説明しています。

主格 対格 与格 属格 奪格 呼格
ayiyaa ayiyaawa ayiyaaTa ayiyaage ayiyaagen ayie
兄が 兄を 兄に 兄の 兄から 兄よ

 「兄」の変化をこのように並べると「格変化」として捉えることが出来ます。しかしこれを膠着語という視点から捉えれば,「名詞+ニパータ」という関係が次のように浮き出てきます。

主格 対格 与格 属格 奪格 呼格
ayiyaa ayiyaa+wa ayiyaa+Ta ayiaa+gee ayiyaa+gen ayi+ye
ayQy` ayQy`v ayQy`t ayQy`@g~ ayQy`@gn~ ayQ@y~
兄+ 兄+ 兄+ 兄+から 兄+

 この「名詞+ニパータ」は完全に規則的で例外はありません。特に対格,与格,属格、呼格のニパータとそれに対照する日本語の助詞 --- wa→をwo Ta→に(古代東国方言さsa) gee→の(古語がga) ye→よyo --- には音韻の対応関係が見られます。

 シンハラ語のニパータは日本語の助詞にほぼ対応しますが、宮岸論文にあるように「issaraha/〜の前に」、「 wisjn /〜によって」などもニパータに含まれます。→参考/日本語=シンハラ語単語対応表・ニパータ