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7.関係節と名詞

 日本語もシンハラ語も関係節は名詞の前に来る。関係節の作り方は、両言語とも英語のような関係代名詞を用いるのではなく、例えば、関係節の中の述語が動詞であれば、その動詞を何らかの形に変えるだけでよい。日本語動詞では、いわゆる常体(plain form)が関係節の述語を担う。シンハラ語動詞では、関係節の述語が現在・未来の場合は、非過去動詞の語幹にnaをつけたもの(3)、過去の場合は、過去動詞形の語末 aa を a にかえたもの(4)、完了の場合は、動詞完了形の語末 laa を pu や wwa に置さ換えた変えたもの(5)が、関係節の述語を担う。 
(3)〔Lamayaa kiyawana〕pota hondayi.(an.97)
 〔子供が 読む〕 本は 良い。
(4)〔Lamayaa baeluva〕mal lassanayi.
 〔子供が 見た〕 花は 美しい。
(5)〔Lamayaa karapu〕 waDa hondayi.(an.178′)
 〔子供が し終えた〕仕事は よい。
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 以上が宮岸論文での関係節の動詞の変化に関する記述です。
 シンハラ語の動詞に”語幹”という用語を意識的に使った例はこの論文が初めてでしょう。動詞の仕組みを「語幹+活用語尾」と分ける日本語文法の方法は問題の多い、言い替えれば例外が多くて理論としては不整合な面を持つ理解の方法ですが、この「語幹+活用語尾」という動詞の分析方法はシンハラ動詞にも適用できます。「語幹+na 」を日本語動詞の四段活用のように語幹末尾一音節の揺れと解釈するとシンハラ動詞の変化が理解しやすくなります。
 この論文は文型形態から日本語とシンハラ語を比較検討するもので個々の品詞には深く言及していないのですが、「シンハラ動詞は活用する」ということを既に意識されているのでしょう。
 連用,連体,などといった動詞変化の理解は日本語ばかりではなく朝鮮語にも可能ですが、それは、このシンハラ語にも当てはまるのです。

参考→『シンハラ語の話し方』の中の「シンハラ語の動詞活用」。2004年1月から『かしゃぐら通信』に掲載。