9.比較の表現
日本語とシンハラ語の比較表現は、同様の語順を取る。シンハラ語の比較表現における日本語の「〜より」に相当する部分は、与格名詞+waDaaで表されるが、これを日本語に直訳すると「〜にまさって〜」となる。
(6)mee wara heemantaya wena awuruduwalaTa waDaa siitalayi.(mw.95)
今回の 冬は 他の 年々に まさって 大層寒い。
(7)aeae maTa waDaa ssiigra lesa Tayip gasayi.(mw.67)
彼女は 私に まさって 早くquick タイプを 打つ。
チャールス・カーターは「ワダーは more の意味で、この前に与格が先立つ」としています。
シンハラ語の与格名詞は「名詞+Ta t」で表されますから、「〜より」と訳すよりは宮岸論文のように「〜に まさって」とするほうが正確です。
●関連
「英語で学ぶシンハラ語」には程度を表す表現の「イター」が次のように紹介されています。
原級. | 比較級 | 最上級 | |
nrk | iw` nrk | iw`mw~ nrk | |
naraka ナラカ |
ithaa naraka イター ナラカ |
ithaamath naraka イターマト ナラカ |
|
悪い | より 悪い | もっとも 悪い |
ここでは日本語古語の「いと」「いとど」が「イター」「イターマト」に対応します。「ナラカ」は「奈落」のことで、「ナラカ・ギンナ」と言えば「奈落の火」。上の例は口語では「ナラカイ」「イター・ナラカイ」「イターマト・ナラカイ」のように「ナラカ」(この場合、形容詞)の語尾に「イ yi 」を沿えて使います。