チャタム・ハウス(王立国際問題研究所) 2009年9月10日
ナノテクノロジー規制−新たな報告書
環境・健康・安全のリスク管理には
ナノ物質の世界的な義務的登録が重要


情報源: Chatham House, 10 September 2009
Nanotechnology Regulation - New Report
Global mandatory register for nanomaterials essential
if environmental, health and safety risks are to be managed
http://www.chathamhouse.org.uk/news/view/-/id/727/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年9月16日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/europe/090910_Chatham_House_global_mandatory_register.html


 ナノ物質規制の米国−EU共同作業を求める報告書によれば、規制当局がナノ物質のリスクを効果的に管理するためには、商業用途のナノ応用製品のための米国とEUをまたがる義務的な報告システムが重要である。

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)、環境法研究所(ELI・米国)、チャタム・ハウス(王立国際問題研究所)、及びウッドロー・ウィルソン国際学術センター/新興ナノテクノロジーに関するプロジェクト(WWICS/PEN・米国)による報告書 『ナノテクノロジーの約束を確実にすること:大西洋をまたがる規制の共同作業に向けて (Securing the Promise of Nanotechnologies: Towards Transatlantic Regulatory Cooperation)』 は、ナノ物質の環境・健康・安全リスクの監視に対する米国とEUのアプローチの体系的な比較を初めて行った。

 同報告書は米国及びEU政府に次のことを求めている。

  • ナノテクノロジーの潜在的なリスク評価のための科学的基礎を構築するための国際的な取り組みを強化すること
  • 環境・健康・安全リスクの調査への資金を格段に増やすこと及び研究戦略の国際的な協力を推進すること
  • 規制当局がナノ物質の商業的利用についての包括的な情報を得るため新たな義務的な報告要求システムを構築すること
 ナノテクノロジーは、コンピュータから薬品、食品、化粧品、及びエネルギー貯蔵にいたるまで広範な適用分野があり、ラックス・リサーチ(Lux Research)によれば、ナノテクノロジーからの世界の歳入は、2015年までに2兆5,000億ドル(約230兆円)に達する。製造業及び材料分野の全製品の4%がナノテクノロジーを導入し、健康及び生命科学分野の製品の16%、電子機器及び情報技術分野の50%がその時までにナノ対応化されているかもしれない。
 現在、24カ国からの1000以上のナノ応用製品をすでに消費者は入手可能である(訳注1)。しかしナノ物質が環境と人の健康にどのように影響を及ぼすかということに関し、まだ科学的な不確実性があり、産業と規制当局は、どのような種類のナノ物質が利用されているのか、どのような製品にそれらが含まれているのかについて、包括的な情報を持っていないことを認めている。

 新興ナノテクノロジーに関するプロジェクト(PEN)のディレクター、デービッド・リジェスキーは次のように述べた。”もしナノテクノロジーの商業的約束が実現されるべきとするなら、米国とEUは国際的な規制協力を強化する必要がある”。

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の国際問題の上席講師でありこのプロジェクトの調整者であるロバート・フォルクナーは、”英国と米国の自主的情報収集の取り組みは、ナノ物質の商業的利用に関する既存の知識のギャップを埋めるのに失敗した(訳注2)。したがって、今は、消費者製品中のナノ物質の使用について市場の透明性を作り出すために義務的な登録制度を導入すべき時である”。

 同報告書は、ますますナノ物質が世界的なサプライチェーンに入り込んでいるので、リスク管理に関する大西洋をまたぐ協力を求めている。米国とEUの管理のアプローチが異なれば国境を越える商品の自由な流れを複雑にする。またナノ物質の異なる消費者製品ラベル表示要求の影響をよく調べる必要がある。

国際法研究所の上席弁護士でありこの報告書の共著者でるリンダ・ブレギンは、””米国とEUの規制制度の間に著しい相違があるけれども、我々が勧告するステップを取ることはナノ物質の潜在的なリスクに対応するするのよ容易にするだけでなく、米国とEUが最終的には同じようなリスク管理アプローチを実施する可能性を高めであろうと述べた。  更なる情報についてはこのプロジェクトに関するロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)のウェブサイトを参照のこと。LSE's website on this project


訳注:関連情報 訳注1
PEN ナノ製品目録 2009年8月25日 目録中の製品に関する事実と分析

訳注2:各国の報告制度及びその検討


化学物質問題市民研究会
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