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英環境食糧地域省 2006年9月22日
英・工業的ナノスケール物質の
自主的報告計画


情報源:
DEFRA, September 2006
UK Voluntary Reporting Scheme for engineered nanoscale materials
http://www.DEFRA.gov.uk/environment/nanotech/policy/pdf/vrs-nanoscale.pdf
参照:
DEFRA NEWS RELEASE Date: 22 September 2006
Defra launches scheme to address nanotechnology uncertanties
http://www.defra.gov.uk/news/2006/060922a.htm

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年9月24日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/uk/defra_nano_voluntary_reporting_scheme.html

内容
   第1章 紹介と概要
   第2章 計画の管理
   第3章 コミュニケーションと見直し
   付属A データ報告様式 (原文)
   付属B 用語

第1章 紹介と概要
1 英国政府は、自由・工業的ナノスケール物質(free engineered nanoscale materials)による環境と人の健康に対するリスクに関し適切な管理を開発することを目指している。適切な管理の方向に進むために、潜在的なリスクに関する証拠を築く必要がある。自主的報告計画(訳注:以下、本計画)はこの証拠を収集するための政府の取組のひとつの要素である。[1]

2 本計画は2006年9月から2008年9月まで運用するこが意図されている。

3 我々は、工業的ナノスケール物質の製造、使用、輸入、研究、又は廃棄物処理を行うどのような会社又は組織からのデータも受け入れたい。データのタイプは第2章に規定されている。

4 本計画は自主的なものであり既存の法律を置き換えるものではない。

5 本計画の目的は政府の科学的研究プログラムとともに、異なる工業的ナノスケール物質の性質と特性のよりよい理解を進めることであり、従って潜在的なハザード、暴露、及びリスクの検討が可能となるようにすることである。このように証拠の基礎を築くことは適切な管理のあり方についてもっと詳細な議論を可能にするであろう。

6 また、それは全ての人々に予測可能な環境規制を示しつつ最も短い期間で適切な管理をもたらすであろう。さらに、それは英国政府が世界の共同体の中に同じ土俵を作り出す方向に寄与できるようにするであろう。

7 本計画は、他の省庁、スコットランド自治政府、ウェールズ議会、及び北アイルランド政権と協力して、環境食糧地域省によって管理される。

1.1 本計画へのデータ供給の方法

8 付属Aはデータ報告様式である。この様式はデータの INDICATIV セットを含み、どのようなデータ・フィールドも完全に埋めることが歓迎されるされるが、データ・フィールドの全てが埋められることは期待されていない。用語と頭字語は付属Bに示されている。

9 適切に記入した様式は下記に送付いただきたい。
Mr David Lovell Department for Environment, Food and Rural Affairs Chemicals and Nanotechnologies Division Zone 4/F3 Ashdown House 123 Victoria Street London SW1E 6DE Tel: 020 7082 8104 Fax: 020 7082 8086 E-mail: david.lovell@DEFRA.gsi.gov.uk

10 提出は電子ファイルが望ましいが、郵送でもよい。

11 この文書は環境食糧地域省のウェブサイトにある。
http://www.DEFRA.gov.uk/environment/nanotech/policy/index.htm

1.2 計画担当者

12 本計画について質問等あれば下記に問い合わせいただきたい。
Elizabeth Surkovic 020 7082 8108 John Garrod 020 7082 8107 4


脚注1:政府の取組に関する更なる情報は DEFRA のナノ技術ウェブページで見ることができる。
http://www.DEFRA.gov.uk/environment/nanotech/index.htm


第2章 計画の管理

13 本計画は全く自主的なものである。本計画から得られるデータは定期的にレビューされる。我々は、本計画がうまく機能するかどうか及び最も価値あるデータについての我々の理解を深めながら、本計画を更新する。本計画は2年間運用される。この期間が終了したら、政府の潜在的危険に関する研究プログラムで得た知見と合わせて十分に評価され、環境食糧地域省の国務大臣はその後の方針を決定する。

2.1 自主的報告計画の焦点

14 本計画の目的のために、我々は製品のライフサイクルのどのような段階においても”自由(free)” なナノスケール物質に焦点を当てる。ナノスケール物質は、2次元又は3次元が200ナノメートル以下であるようなサイズのものとして定義される。この定義、及び本計画の焦点は、現在作業中の英国基準局(BSI)、欧州基準委員会(CEN)、及び国際標準化機構(ISO)に対応しつつ、本計画の実施期間を通じてレビューされる。
 しかし、現時点において我々は、このサイズの制限に外れるものであっても、もしそれが潜在的なリスクに関する価値ある情報を提供することに適切であるとみなされるなら、そのようなナノスケール物質のデータを受け取ることに関心がある。

15 我々は、工業的ナノスケール物質の製造、使用、輸入、研究、又は廃棄物処理を行うどのような会社又は組織からのデータも受け入れたい。

16 要約すると、本計画の焦点は次のような物質である。
  • 意図的に製造される(すなわち天然のものではなく、又は他のプロセスの非意図的副産物でもない)物質
  • 2次元又は3次元で大まかにナノスケールである物質
  • 製品のライフサイクルのどのような段階においてもどのような環境中の媒体においても”自由”である物質
2.2 データの提出

17 提案されている報告様式は付属Aに提示されている。添付されている報告様式は我々の推奨であり、データはどのような様式でも受け付けられるということに留意すべきである。

18 情報は可能な限り電子的に報告することが望まれる。

19 情報はもし望むなら産業協会のような第3者組織を通じて間接的に提出してもよい。

20 提供されるデータの企業秘密に関して、我々は下記に同意する。
  1. 我々に提供されたどのような情報もデータの所有者による明示的な許可がない限り秘密扱いとする。
  2. もしその情報が”情報自由法(Freedom of Information Act)”又は”環境情報規制(Environmental Information Regulations)”条項の要求対象なら、情報提供者に相談する。DEFRA は、そのような要求があれば第三者組織に情報を提供する義務があるかもしれない。
2.3 データのタイプ

21 当該データのタイプは下記に詳細が述べられており、物質の特性、ハザード、用途と潜在的暴露、リスク管理の方法、及び使用される技術に関する情報を含む。既存のデータの提出を推奨している意図が強調されるべきである。会社や組織は追加的データを生成することは要求されておらず、動物テストが求められるようなどのような追加データも推奨されない。多くの会社は下記に示される情報の全てを保有していないかもしれない。どのようなデータも役に立つので、入手可能な情報の提出は推奨される。完全なデータ・パッケージではないことをもって、会社は本計画の下で報告することに躊躇する必要はない。

22 工業的ナノスケール物質のハザード、暴露、及びリスクを決定するために望ましいとみなされるデータは、我々が何が適切かを理解するにつれて、変化しそうである。ここに概要が示されるデータは出発点である。特に、バルク化学物質のための標準テストのあるものはナノスケール物質には当てはまらないかもしれない。しかし、確固とした代替がない場合には、既存のテストが適切な出発点として提案される。これらの問題は現在、国際的に及びイギリスで専門家により討議されている。

23 本計画で求められているデータのタイプは下記の通りである。
  • 報告者の名前と住所(例えば、会社名又は産業組織)
  • ナノスケール物質の同定
    • ナノ物質中に含まれる化学物質の CAS No.
    • 物質名(化学的及び一般名)
    • 物質の成分
  • ナノスケール物質に関する情報
    • 物質の生成源(その物質が申告者によって製造されない場合には、そのナノスケール物質がどのように入手されたのかについての情報が歓迎される)
    • 製造プロセス
    • ナノスケール物質の意図される用途
      • 会社内での用途パターン、意図される川下用途とユーザー
      • 潜在的な暴露経路とこれらの経路を通じての暴露の可能性についての情報
      • 適用の便益についての記述
    • 凝集又は集成及び非凝集又は非集成の特性についての情報
    • 寸法と形状
    • 寸法範囲
    • 表面積の予測(概略質量当たり)
    • 予測製造量
  • ナノスケール物質の検出に用いられる測定技術(例えば廃棄物中において)、又は製品の一貫性と品質を確保するためにナノスケール物質の特性を決定するための測定技術(例えば数量、サイズ範囲等)
  • ナノスケール物質の物理化学的性質
    • 水溶性及び水中での安定性
    • 可燃性、点火及び爆発能力
    • 分配係数(n−オクタノール/水)
  • ナノスケール物質の毒物学的情報
    • 例えば、吸入毒性データ、皮膚毒性データ
    • 非動物テスト法から得られる毒性、例えば試験管テストおよび 定量的構造活性相関((Q)SARs)
  • ナノスケール物質の生態毒性情報
    • 有機体への影響
    • 分解性/生体内耐久性
    • 生体蓄積性
  • ナノスケール物質の環境的運命、挙動、及び相互作用(例えば、他の物質との)についての入手可能な情報。ナノスケール物質が環境中に入り込んだ時に起きる変化に関するどのような入手可能な情報にも関心がある。例えば、もしナノスケール物質が非常に反応性が高い(例えば、酸化又は還元)ことが知られていればその情報、そしてもし特定の環境に放出されると反応して他の物質を形成することを示すならその情報。
  • ナノスケール物質を環境中又は廃棄物中に排出することを低減する又は排除するために現在採用されている管理手法についての情報
24 データ報告様式は付属Aにある。

25 我々は特定のデータを収集するためにどのような測定技術が用いられたのか知ることに特に関心がある。データは報告期間中に様々な方法で収集されるであろう。さらに、工業的ナノスケール物質のための合意されたテスト方法はなく、ある会社及び又は組織は彼ら自身の手法を考案しているかもしれない。データが適切に比較されることを確実にするために、どのようにして特定のデータに到達したのかを我々が知ることは重要である。

2.4 本計画と既存の法律との関係

26 本計画で提供される情報は既存のどのような法律の下に提出されるべき情報の要求をも置き換えることはないということは明確である。本計画への参加は、リスク管理の実施又はデータの適切性に関し政府による信任又は是認のどのような形をも意味するものではない。

27 もし工業的ナノ粒子が新規物質であるとみなされ、会社が”新規物質届出((NONS)規制”により当局に情報を提出することが求められるなら、その情報は同時に本計画に提出されることができるであろう。NONS のために提出されるデータは政府内部で本計画に転送されることはない。

2.5 計画の管理

28 DEFRA は本計画を管理し、本計画の一部として提出されたデータを保持する。 2.6 本計画により収集されたデータの使用

29 データは DEFRA によって保持される。それは、ナノ技術研究コーディネーション・グループのタスクフォース・グループの政府科学者、専門家ら、及び機密保持合意に基づく政府専門家委員会の委員らによって分析される。もしこの専門的知識が十分ではないと考えられるなら、政府はピアレビューのための追加的専門家を募集することの必要性を検討する。

30 特にデータは下記のために使用される。
  • 米EPAの STAR[2]プログラムのような関連する国際的研究プログラムとともに、工業的ナノスケール物質により及ぼされる潜在的なリスクに対する政府の研究プログラムの発見と比較するため
  • データのベース・セット適切性を見直しするため
  • 工業的ナノスケール物質の適切な管理のあり方の検討に資するため

脚注2:Science To Achieve Results - http://es.epa.gov/ncer/grants/


第3章 コミュニケーションと見直し
3.1 本計画の参加者とのコミュニケーション

31 本計画の参加者とのコミュニケーションは継続される。特に、本計画の管理の詳細に対する変更が生じた場合には、参加者は時宜を得た方法で知らされる。将来参加者によって収集された更なるデータの報告が推奨される。

3.2 本計画の見直し

32 本計画のある要素は、適切に発展できるよう継続的に見直しが行われる。目を向けるべき科学的論点は以下を含む。
  1. 本計画の稼動状況。本計画に報告している会社の数は監視され四半期ごとに更新が発表される。
  2. 本計画の管理的要素。報告様式の一貫性、データ保持の方法、及びデータ量は継続的に見直しが行われる。必要があれば、管理的手法に変更が加えられる。
  3. 提案されたデータ・セットの適切性。これは危険物質に関する諮問委員会(ACHS)のような政府の科学者や専門家による見直しがあるかもしれない。国際的なフォーラムの展開を含んで、多くの要素がそのような見直しを促進するかもしれない。例えば、もしナノ技術に関する ISO 技術委員会や製造されるナノ物質に関する OECD のワーキング・グループにおける議論がナノスケール物質の適切な測定又はテスト手法を特定したなら、本計画はそれを反映するかもしれない。
  4. 欧州連合内又は国際的な立法展開の影響。もし本計画の実施期間中に EU 又は国際的なナノ技術の規制の枠組みが実施される方向への顕著な展開があれば、本計画はそれらの展開に照らして見直されるであろう。
33 上述のように、本計画の見直しのある要素は継続的に、又は国際的レベルでの展開に対応して実施される。我々は四半期ごとに一般的で帰属することのない(non-attributable)方法でなされた更新、受け取った情報、及び本計画でなされた進捗を発表する。これ加えて、本計画の当初の2年の期間の終わりになされる最終見直しと評価とともに6ヶ月毎のもっと正式な見直しがある。

34 6ヶ月毎の見直しは DEFRA によって実施され、政府内部で横断的に議論される。上記でハイライトされた要素のより公式な見直しに加えて、管理コストを含む本計画のコストと便益もまたこの段階で見直される。

35 本計画の終了時における最終評価は本計画の目的に対する見直しを含むことが意図されている。この見直しは広範な利害関係者らに本計画がその目的を達成したかどうか、及び本計画に関連して他の追加的な便益又はコストが生じたかどうかを訊ねることを含むことが提案される。これらの利害関係者は本計画の参加者、政府省庁、専門家委員会、産業協会、学界、および民間の社会団体を含むがそれに限らない。


付属A データ報告様式
オリジナル:
ANNEX A Department for Environment, Food and Rural Affairs Voluntary Reporting Scheme for engineered nanoscale materials Data Reporting Form を参照ください。
http://www.defra.gov.uk/environment/nanotech/policy/pdf/data-form.pdf


付属B 用語


化学物質問題市民研究会
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