米EPA 2009年1月
ナノスケール物質スチュアードシップ・プログラム
暫定報告

概要と結論の紹介

情報源:U.S. Environmental Protection Agency Office of Pollution Prevention and Toxics
Nanoscale Materials Stewardship Program Interim Report January 2009
http://www.epa.gov/oppt/nano/nmsp-interim-report-final.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年1月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/epa/epa_090112_Interm_NMSP_Report.html

概 要

 ナノスケール物質スチュアードシップ・プログラム(NMSP)はナノスケール物質の情報の提出と開発を勧奨することにより、規制判断のより堅固な科学的基盤の提供に役立つよう開発された。NMSPは二つのサブプログラムからなる。基本プログラムと詳細プログラムである。NMSPが立ち上げられた時、EPAはこの暫定報告を1年後に発表するとを約束した。EPAはこの暫定報告書に関するコメントを歓迎する。EPAは2010年の初頭にNMSPの結論として、もっと詳細な最終報告とプログラム評価を発表するであろう。

 基本プログラムの下に、EPAは製造、輸入、加工、又は使用している工業的ナノスケール物質に関し、2008年7月29日までに入手可能な情報を自主的に報告する参加者を募集した。期限までにEPAは91の異なるナノスケール物質をカバーする16の会社と業界団体からの提出を受けた。2008年12月8日現在、123種のナノスケール物質をカバーする29の会社又は団体がEPAに情報を提出し、さらに7社が基本プログラムに対する約束をした。EPAはまた、すでに報告されているナノスケール物質のために利用可能になった新たなデータを提出し、又は基本プログラムの下で報告すべき追加的なナノスケール物質を特定するための参加者を募集した。EPAは、新規化学物質のレビューと同様なプロセスで基本プログラムの下に提出された情報を評価している。

 詳細プログラムの下に、より長い時間の枠組みで代表的なナノスケール物質に関するデータを開発するための計画に関し、EPA及び他の機関とともに作業する参加者を募集した。6ヶ月後までに1社が詳細プログラムに参加することに同意した。2008年12月8日までに4社が参加することに同意した。

 現在の暫定的結果に基づけば、NMSPは成功したと考えることができる。しかし、EPAがNMSPを通じて埋めたいと希望する多くの環境健康安全に関するデータにギャップがまだ存在する。EPAは、これらのギャップに対応するのに役立たせるために有害物質規制法におけるテスト実施と情報収集権限をいかにすれば最もよく活用することができるかを検討中である。

 EPAは、有害物質規制法第5条(a)及び第5条(h)(4)の下に提出された新規化学物質のナノスケール物質をレビューし、適切なら、第5条(e)及び第5条(a)(2)における重要新規利用規則(SNURs)によるテスト要求と暴露管理を続けるであろう。

 EPAは、NMSPへの新たな参加者と情報提出を歓迎し、2010年1月まで継続する。EPAはまた、ナノスケール物質に関する規制判断のより堅固な科学的基盤を提供するために必要な情報収集のための最良の方法を探し続けるであろう。


4. 基本プログラムで受領したデータの概要
訳注:報告書中のいくつかのグラフを紹介





5. 商業用ナノスケール物質に関する情報が入手可能な
基本プログラムで受領したデータの比較

訳注:報告書中のいくつかのグラフを紹介




結 論

 EPAはNMSP提出を通じてかなりの量のデータを受領しており、NMSPはアメリカにおけるナノスケール物質の論点と商業的状況のより強力でより良い理解に貢献したと信じている。EPAはまだこれらのデータを分析中であり、また参加を約束した会社から追加的な提出を受けることを期待している。プログラムの実施中であるがEPAは多くの理由によりNMSPは成功であったと考えている。

  • 参加する会社及び団体はMNSP基本プログラムへの確固とした約束を示し、EPAに相当な量の貴重なデータ(例えば、物質の特性、用途など)をEPAに提供したが、それがなければEPAは1年以内にそれらを入手することはできなかった。それらはEPAの理解を強化する下記を含む。
    • 現在、会社により採用されているナノ物質のためのリスク管理方法
    • 研究開発に用いられているナノ物質。それらはEPAのナノ物質研究戦略に貢献した。
  • NMSPの開発と実施により、下記を含むナノスケール物質のEPAの規制理解を伝えた。
    • 将来のナノ物質規に関する規制又は追加的な自主的取組に使用することができる政策指針の開発と詳細検討を含んで、ナノスケール物質に関する情報をどのように構築し、効果的に報告するか。
    • カーボンナノチューブ及びフラーレンについてTSCAに基づく善意の意図(bona fide intent)の問い合わせ又は製造前届出の提出を必要としているいくつかの会社をEPAが特定し、フォローするのに役に立っているTSCA新規化学物質プログラムの下でのレビューに関連する情報
    • 必要とされる規制要求を効果的に構築するために可能なアプローチと戦略に関連する政策の論点
  • NMSPは米政府のOECDのWPMN(訳注1)への参加をよりよく伝えた。
    • NMSPで得た経験、提出の数と多様性はWPMNの審議に貴重な情報として伝えられた。
    • OECD WPMNのスポンサーシップ・プログラム中の14の主要なナノスケール物質のうち12がNMSPの下に報告されたという事実が、必要とされるテスト・データの共同開発を迅速化するための手段としてOECDのスポンサーシップ・プログラムのと関連性を実証し、NMSP基本プログラムが世界の重要事項であるナノスケール物質を捉えたことを確認するのに役立った。
  • 4社が、カーボンナノチューブとカーボンナノ粒子のために必要とされる理解の開発を加速するために役立つべきNMSP詳細プログラムでナノスケール物質のさらなるテスト実施を支援することを約束した。
  • 全体としてNMSPは、EPAが評価し、適切な場合には、健康と環境へのリスクを低減する方向に向けてさらなる措置をとることを可能とするために十分にEPAの知識と理解を前進させた。
MNSPの下でなされた進展は多くの考慮すべき点を解決すべきである。

  • 商業的に入手可能なナノスケール物質が基づく化学物質のほとんど3分の2が基本プログラムの下で報告されなかったように見える。
  • 商業的に入手可能らしい異なるナノスケール物質の約90%が基本プログラムの下に報告されなかったように見える。
  • それぞれのNMSP参加者が製造しているナノスケール物質の全てを報告したのかどうか幾分の不確実性があり、また各参加者によって報告されたデータの中にギャップがあるかもしれない。NSPM提出データのレビューにより、ナノスケール物質の製造、加工、用途の詳細が報告されていない多くの例が明らかにされた。
  • 多くのNSPM提出データは暴露又はハザード関連データを含んでいなかった。暴露とハザードデータは、NMSPの概念文書(concept paper)中でナノスケール物質のリスク評価とリスク管理のために必要であるとしてEPAが特定した二つの主要な情報である。
  • 詳細プログラムへの参加が少ないことは、ほとんどの会社が彼らのナノスケール物質を自主的にテストするつもりがないことを示唆している。
  • 本報告書の第3.1節で議論された NPPTACの考慮に対応する追加的前進の必要性。例えば:
    • 参加者のもっと高い割合
    • 可能ならプログラム参加者からのもっと多くの情報量
    • 既存のリスク管理手法の適切性と潜在的効果の理解
    • このプログラムの経験からの追加的教訓と結論の展開。下記を含む:
      • リスク評価とリスク管理で考慮されるべきナノスケール物質の特性は何か?
      • ナノスケール物質に対応するために、もしれば、どの規制変更が必要か?
      • さらにどのようなリスク評価手法がナノスケール物質のために適切か?

訳注1:WPMN
訳注:関連情報


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