エンバイロンメンタル・ディフェンス
リチャード・デニソン 2009年1月12日
ナノの告白:
EPAは義務的な報告とテストの必要性を認識している


情報源:Environmental Defense, January 12, 2009
Nano Confessions: EPA all but concedes mandatory reporting and testing are needed
by Richard Denison
リチャード・デニソン(上席科学者)
http://blogs.edf.org/nanotechnology/2009/01/12/62/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年1月17日
このページへのリク:


 EPAが自主的なナノスケール物質スチュアードシップ・プログラム(NMSP)を立ち上げてから一年近くになり、そして、EPAが、義務的な報告ルールに関連して、バックストップとしてそのようなプログラムを立ち上げ、プログラムの基本的な部分の提出期間は最大6ヶ月に限定するよう多様な利害関係者のグループによって促されて以来、3年以上経過している。

 EPAはその忠告を無視し、制約のない自主的プログラムをバックストップのルールを開発せずに開始した。そして今、EPAは NMSP の最初の評価を発表した。EPAは何を見つけたか?

 EPAは会社に署名するよう無理強いしたにもかかわらず、わずか29社だけが基本プログラムの下での提出を行い、わずか4社だけが詳細プログラムの下でテストを実施する可能性について討議する意志があると伝えた。

 多分驚くべきことではないが、健康と環境に関するどのようなデータも提出したところはほとんどなかったが、このことは、彼らのナノ物質の商品化は迅速であったが、健康と環境に関してはほとんど研究していないことを確認するものであった。同じく、”驚くべきことではない”範疇に入るが、会社は可能な限り多くの情報を開示するようEPAから要請があったにもかかわらず、会社は提出データの多くが企業秘密情報であると主張した。

 もっと驚くべき、しかし歓迎されるべきことは、提出されたものは次の二点のうちの、ほんのわずかな部分だけしか含んでいないことをEPAが正直に認めたことである。
   a) すでに市場で入手可能であるはずのナノ物質
   b) それらの物質が基づく化学的構造

 EPA報告は次のことを明らかにする広い範囲のものである。

  • EPAがすでに商業的に入手可能であると見積もっているユニークなナノ物質1,800種以上のうち123種−10%以下−が基本プログラムで提出された。
  • 提出されたものは、ナノ物質の利用又は開発時に基づいたユニークな化学的構造のうちわずか7分の1(238種中34種)しか含んでいない。
 EPAはまた、参加者が提出した情報は彼らが製造するナノ物質の全部に関するものなのか一部分に関するものなのか、また、提出されたそれぞれのナノ物質の情報は全てのなのか選択的な一部分なのかを判断することができないということを認めている。

 エンバイロンメンタル・ディフェンス・ファンド(EDF)はこの問題を正確に予測していたが、それはEPAがナノスケール物質スチュアードシップ・プログラム(NMSP)の設計時にこれらの規定を含めなかったからである。

 わずか4社しか詳細プログラムにおけるテスト実施の検討に同意しないのだから、”ほとんどの会社は彼らのナノスケール物質を自主的にテストする気はない”と結論付けた。

 良いニュースは、 NMSPが不十分であることを示したのなら、情報のギャップに対応するために、EPAはついに”有害物質規制法の下でテストと情報収集の権限を最もよく利用するにはどうすればよいかを検討している”と、EPAが今、述べていることである。

 この行間を少し読むと、これは、ナノ物質への規制的アプローチを手作りするためにEPAが必要とする情報をEPAに供給するために、義務的な報告とテストのルールが必要であるということを自ら進んで公的に表明しており、これは初めてのことである。

 EPAがこれらの重要な課題にエネルギーを注ぐことに真剣になることを期待する。

訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る