内分泌学会ニュースリリース 2012年4月5日
米食品医薬品局の
ビスフェノールAへの取り組みに失望


情報源:Endocrine Society News Releases April 5, 2012
Endocrine Experts Disappointed in FDA’s Approach to BPA
http://www.endo-society.org/media/press/2012/
Endocrine-Experts-Disappointed-in-FDAs-Approach-to-BPA.cfm


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年5月1日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/USA/120405_Endocrine_Society_News_Releases.html


【チェビー チェイス(Chevy Chase) メリーランド州】 ホルモンに関する研究と内分泌学の臨床診療を専門とする世界で最古、最大であり最も活動的な組織である内分泌学会(The Endocrine Society)は、米国食品医薬品局(FDA)が食品容器中のビスフェノールA(BPA)を禁止しないという決定で、重要な研究と内分泌原則を無視したことに失望したとする表明を本日行なった。

 BPAは、内分泌かく乱化学物質(EDC)として知られている。EDCsは、ホルモンの活動を阻害し、人間及び野生生物の両方に、発達系、生殖系、神経系、及び免疫系に有害な影響を及ぼす環境中の物質である。これらの化学物質の多くは主として特定の産業用目的のために設計され、製造され、市場に出されるが、それらはまた、いくつかの自然の食品中にも見出され、食品が加工されるときに、さらに濃縮されるかも知れない。

 ”内分泌学会は、BPAの安全性を評価するためのFDAのたゆまぬ努力を支持するものであるが、BPA及び他の内分泌かく乱化学物質に関する政策が利用可能な科学的データの全体を無視していることに懸念を持っている”と、内分泌学会長ジャネット E. ホール博士は述べた。

 2008年に提出された市民請願に対するFDAの2012年3月30日の回答(訳注1)で、FDAは、FDAが禁止することを納得するに足る十分なデータを提供していないと述べて、食品及び食品容器でのBPA禁止を求める請願者らの要求を拒否した。その回答の中で、FDA自身の諮問委員会がBPAの評価においてそのような研究を含めるよう2008年11月に助言(訳注2)したにもかかわらず、FDAは再びEDCsの影響に関する小さな学問的研究の妥当性に異議を唱えた。

 規制プロセスにおける研究を軽くみるFDAのアプローチは、データの徹底的な検証を不可能とし、FDAがEDCsの適切な規制を確実にする能力を妨げるものである。最近の『Endocrine Reviews (内分泌レビュー)』の記事は、FDAによって用いられてきたものとは異なる基準に焦点を当てつつ、内分泌に対する考え方に基づき低用量研究の評価に対する証拠の重みアプローチの概要を述べている。

 ”我々は、FDAがBPA又は他の内分泌かく乱物質に関する政策を策定するときに重要な内分泌学的評価項目を検証している低用量研究を考慮するよう強く促す”と、ホールは述べた。多くの無視された低用量影響の研究はよく設計されており、十分にレビューされた国立健康研究所(NIH)の資金提供を受けた研究である。この研究の結果は、FDAによって安全であるとみなされていたものよりかなり低い用量での曝露で著しい健康影響を示している。

 内分泌学者らは、EDCsの影響に対する貴重で独自の識見を持っており、現代の内分泌学は過去10年間にこの分野で科学的知識の獲得に大いに前進した。内分泌学会は2009年に、内分泌かく乱化学物質に関する科学的声明を発表した。http://www.endo-society.org/journals/scientificstatements/で入手可能なこの科学的声明は、内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する証拠が十分にあると述べ(訳注3)、これらの影響の理解を深め、意識を高めるよう勧告を示している。


1916年設以来、内分泌学会(The Endocrine Society)は、ホルモンに関する研究と内分泌学の臨床診療を専門とする世界で最古、最大の最も活動的な組織である。今日、米国内分泌学会の会員は、80か国以上における15,000人以上の科学者、医師、教育者、看護士、及び学生からなる。これらの会員全ては、内分泌学における基礎的、応用的、及び臨床的な関心を表明している。内分泌学会は、ベリーランド州チェビー チェイス(Chevy Chase)に本部がある。同会について、及び内分泌学の分野についてもっと知るためには、我々のウェブサイト www.endo-society.org をご覧いただきたい。


訳注1
訳注2
訳注3:Endocrine Reviews 2009年6月号 内分泌かく乱化学物質に関する内分泌学会の科学的声明 キーポイント
 同声明は、7つのキーポイントを提起しているが、そのうちの二つは次のような点である。
  • EDCs曝露による有害な生殖影響(不妊、がん、奇形)の証拠は十分あり、甲状腺、神経内分泌、肥満、代謝、インスリン及びグルコースを含む他の内分泌系への影響の証拠も増大している。
  • 予防原則が内分泌及び生殖の健康にとって重要であり、潜在的な内分泌かく乱物質への曝露及びそれからのリスクについて決定を下すときに使用されるべきである。
訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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