PAN-Europe 2014年6月18日 プレスリリース
内分泌かく乱基準 更新:
どこにもたどり着かないロードマップ


情報源:PAN-Europe Press Release 18th June 2014 Brussels
Endocrine Disruption Criteria Update: A roadmap to nowhere
http://www.pan-europe.info/News/PR/140618.html

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2014年6月22日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/edc/EU/140618_PAN-Europe_EDC_a_roadmap_to_nowhere.html

 【ブリュッセル 2014年6月18日】 内分泌かく乱化学物質の基準に関し欧州委員会により昨日発表されたロードマップは、人の健康と環境を保護するための農薬規則と殺生物剤規則の効果を相殺する恐れの全てを取り入れている。

 内分泌かく乱化学物質(EDCs)を特定するための基準を発表すべき期限を 6 カ月も過ぎて、欧州委員会は昨日の午後ようやく、植物防疫製品規則(EC 1107/2009)及び殺生物性製品規則(EU 528/2012) 内で基準の定義に関するロードマップを発表した[原注1](訳注1)。このロードマップは、PAN-Europe が予測していた通り、3 つのオプションのうち 2 つが、EDCs を規制するための意思決定にリスク評価と社会経済的要素を加えることを考慮し、人の健康と環境を保護するためのこれらの規則の効果を弱めている。

 農薬規則と殺生物剤規則によれば、内分泌かく乱(ED)特性を持つ物質は承認されるべきではない。欧州理事会と議会は実際、農薬の承認は”ハザード・アプローチ”としても知られる具体的な”カットオフ”基準に基づくべきである、すなわち、どのような種類の ED 特性を持つ化学物質も、その製造と使用は許可されないであろうということに合意している。数年後には、EDCs を定義する基準に関して総意を得るのではなくて、初めにあったハザード・ベースのアプローチがどの様に完全に修正されるかを記述するロードマップを受け取ることになる。

 意思決定の遅れの主な理由は、EDCの基準が産業界により、彼らのビジネスに対する大きな脅威となるとみなされているからである。産業界は”リスク評価アプローチ”を採用しており、そこでは低用量での物質への暴露は”リスクが低く”、したがって”害がない”と仮定している。これは EDCs には当てはまらず、特に胎芽や新生児のような発達中の感受性の高い期間には低用量の方が影響が大きいことさえあり、従ってEDCs の特定のためには”ハザード・アプローチ”が決定的である。内分泌かく乱性 の”低用量影響”は仮説ではなく、科学的文献中で広く記述されている[原注2](訳注2)。最近、PAN-Europe は、欧州委員会の健康部門 DG SANCO (健康消費者保護総局)が EFSA (欧州食品安全機関)の産業界との仲良しアプローチの援護の下に、農薬の禁止という場合には、”無視できる暴露”として、積極的に法の抜け道を利用することを期待していると報告した[原注3](訳注3)。実際に、このロードマップは、意思決定が無視できるリスク、”リスク評価”要素に基づくかもしれず、さらには有害な EDCs を市場に出すことの評価に社会経済的分析を含めることを検討していることを示唆している。

 PAN-Europe の EDC 専門家、アンジェリキ・リシマチョウは、”経済は人の健康を保護するように構築されておらず、微小な暴露でも生命における悪いタイミングなら、生殖器発達異常、認識障害、がん、糖尿病、肥満等の劇的な結果をもたらかも知れないので、これらの化合物の人の健康と環境への有害影響は経済という観点から評価されるべきではなく、我々は、EDCsの評価にリスク評価と社会経済的要素を追加する可能性を非常に懸念している”と述べた。

原注:
原注1. EC Roadmap Defining criteria for identifying Endocrine Disruptors in the context of the implementation of the Plant Protection Product Regulation and Biocidal Products Regulation

原注2. Vanderberg et al., 2012. Hormones and endocrine-disrupting chemicals: low-dose effects and nonmonotonic dose responses. Edocr. Rev. 33: 378-455

原注3. PAN-Europe Press Release 20/05/2014: "New attack on EU policy regarding endocrine disruption: Health DG SANCO prepares an escape route for pesticides"

For further information please contact:
Angeliki Lysimachou, +32 (0)496392930, angeliki@pan-europe.info


訳注1:参考記事
  • Chemical Watch 2014年6月18日 欧州委員会 内分泌かく乱物質のロードマップを発表 政策オプションは、より色濃くリスク評価及び社会経済評価を含む

  • EurActiv 2014年6月11日 フランスが内分泌かく乱物質への迅速な行動を主張する

  • Independent Science News 2014年5月26日 EU 安全機関は産業界のために迫りくる農薬禁止の逃げ道を企んでいることを見つかる

  • 環境健康ニュース(EHN) 2014年4月21日 意見:内分泌かく乱物質にもっと多くの光を、もっと冷静に

  • 米通商代表部 2014年 技術的貿易障壁に関する報告書からの抜粋  欧州委員会の内分泌かく乱物質の分類提案

  • EurActiv 2014年3月3日 内分泌かく乱物質に関する基準を発表するよう欧州委員会への圧力が高まる

  • HEAL 2013年11月13日 プレスリリース 内分泌かく乱物質の規制の遅れは慢性疾患の防止と医療のための機会を無駄にする
  • 2013年10月24日 欧州委員会 内分泌かく乱物質に関する専門家会議 議事録

  • 2013年10月7日 スウェーデン及びデンマークの環境大臣から欧州委員会環境委員及び産業委員への内分泌かく乱化学物質に関する書簡

  • EHN 2013年10月10日  産業界とのつながりが深い科学者がEUの諮問委員会を辞任

  • EHN 2013年9月23日 特別報告:EUの化学物質政策を批判する科学者らは産業界とつながりがある

  • Environmental Health 2013年8月27日 論評 内分泌かく乱物質に関して科学と政治を混ぜ合せてはならない: 毒性学誌編集者らによる”常識的介入”への回答

    訳注2:参考記事
    Nature News 2012年10月24日 毒性学:用量反応曲線

    訳注3:参考記事
    Independent Science News 2014年5月26日 EU 安全機関は産業界のために迫りくる農薬禁止の逃げ道を企んでいることを見つかる



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