2008年2月の映画  戻る


ジャンパー
2008年 米国 88分
監督 ダグ・リーマン(「スウィンガーズ」 「go」 「ボーン・アイデンティティー」 「Mr.&Mrs. スミス」)
原作 スティーヴン・グールド「ジャンパー 跳ぶ少年」
脚本 デヴィッド・S・ゴイヤー/サイモン・キンバーグ/ジム・ウールス
撮影 バリー・ピーターソン
音楽 ジョン・パウエル
出演 ヘイデン・クリステンセン(デヴィッド・ライス「スター・ウォーズ」)/ジェイミー・ベル(グリフィン・オコナー「「リトル・ダンサー」「デス・フロント」「「父親達の星条旗」)/レイチェル・ビルソン (ミリー)/サミュエル・L・ジャクソン(ローランド)/ダイアン・レイン(デヴィッドの母メアリー)/マイケル・ルーカー(デヴィッドの父)/トム・ハルス(「アマデウス」)/クリステン・スチュワート/マックス・シリオット(少年のデヴィット)/アナソフィア・ロブ(少女のミリー)
メモ 2008.2.27(木)晴れ 肥後橋リサイタルホール・試写会
あらすじ
デヴィッドは、いじめっ子のせいで冬の川に落ちた!。溺れる寸前、飛び出したのは図書館だった。
テレポート能力に目覚めたデヴィッドは、飲んだくれの父を捨て家を出た。
感想
めくるめくスピードの軽い映画。見所は、ロンドンのビッグ・べンに立つデヴィッド役のヘイデン・クリステンセン(「スター・ウォーズのアナキン・スカイウォーカー)。長身を生かし、美しい風景に負けていない。なんて、かっこいいんだ。  そやねんけど、うぶなデヴィッドを色々助けたった同士のグリフィンが、デヴィッドのフェロモンのためにあんな姿になってさぁ。人の恋路をじゃまするヤツは、馬に蹴られて死んでまえってか? グリフィン、可哀想過ぎ。デヴィッドの恩知らずー。
母親の謎、同じジャンパー・グリフィン(ジェイミー・ベル)の復讐が残っているもんで、次回作が期待される(つうか、話が緒戦というおもむきであった)。
 
CMでは、パリにジャンプ、中国にジャンプで「日本は、ないん?」と思っていたさぼてんには、びみょうに嬉しい内容であった。
お薦め度★★★1/2戻る

人のセックスを笑うな
2007年 米国 157分
監督・脚本 井口奈己(「犬猫」)
原作 山崎ナオコーラ「人のセックスを笑うな」
脚本 本調有香
出演 永作博美(ユリ)/松山ケンイチ(みるめ)/蒼井優(えんちゃん)/忍成修吾(堂本)/あがた森魚(ユリの夫・猪熊さん)/温水洋一(山田先生)/桂春團治(みるめの祖父)/市川実和子(学生)
メモ 2008.2.16(土)晴れ  敷島シネポップ1・2・3
あらすじ
美術学校の同級生のみるめ(松山ケンイチ)、えんちゃん(蒼井優)、堂本(忍成修吾)の3人は軽トラックで走っていた夜明けのトンネルで、女をみかける。 でたか?!と思った3人。しかしそれは生身の女で、終電を逃して歩いていたという。女を荷台に乗せて運び、田んぼのまんなかでバイバイする。
その後、美術学校の構内で、煙草の火を借りたみるめは、その女がトンネルの幽霊もどきだったと知る。彼女(永作博美)は、リトグラフの非常勤講師だった。
感想
よくわからない、とらえどころのない、ふわふわした映画。
真っ直ぐな廊下、横に長い土手、真っ直ぐだったり、ふたつに別れていたり、ぐるぐるしている道と、監督が撮りたかった絵が満載。なんとなく若い人たちのこれからの人生を示しているように思える。何があろうと恐れずに前へ進め。ゆっくりでも、ぐるぐる回っても前に進めと言っているのかな。。。
 
おいしそうなので、年上のファム・ファタールに食べられちゃった男の子と、←その子を思う女の子、←女の子を思う男の子のせつないLOVEストーリー。食べられちゃった男の子は、この甘くそして悲しい経験にも関わらず「会えなければ終わるなんて、そんなもんじゃないだろう」となり、「早く結婚して、早く子供を作って、一戸建てを買って、家族仲良く暮らす」という人生の選択をやめる(知らずに)。 ユリ(永作博美)は「えんちゃんがみるめが好きなのを知っていて、くっちゃう」いけない女なのに、「オーイエース」と懐の広さを感じさせるのがすごい。すべてを黙ってみていた堂本(忍成修吾)がラストに、えんちゃん(蒼井優)からキスを奪うシーンよかったな。お前〜ポーカーフェイスなのに、そんな事ばっかり頭ぐるぐるさせて、チャンスをうかがってたのかよ〜。
お薦め度★★★★戻る

アメリカン・ギャングスター AMERICAN GANGSTER アメリカのやくざ
2007年 米国 157分
監督 リドリー・スコット(「エイリアン」「ブレードランナー」「テルマ&ルイーズ」「グラディエーター」「マッチスティック・メン」
脚本 スティーヴン・ザイリアン(「コードネームはファルコン」 「ミッション:インポッシブル」)
撮影 ハリス・サヴィデス
音楽 マルク・ストライテンフェルト
キャスト デンゼル・ワシントン(ギャング・フランク・ルーカス)/ラッセル・クロウ(麻薬捜査官・リッチー・ロバーツ)/ジョシュ・ブローリン(トルーポ刑事)/キウェテル・イジョフォー(フランクの弟ヒューイ・ルーカス)/キューバ・グッディング・Jr(ギャングのニッキー)/テッド・レヴィン(ルー・トバック地方検事「名探偵モンク」のストットルマイヤー警部。「羊達の沈黙」のバッファロー・ビル)/アーマンド・アサンテ(イタリア系マフィア・カッターノ)/ジョン・オーティス(リッチーの最初の相棒ジェイ・リヴェラ)/ジョン・ホークス(麻薬捜査官・リッチーの右腕スピアマン「“アイデンティティー”」)/RZA(麻薬捜査官・潜入捜査のジョーンズ)/ルビー・ディー(ルーカスのママ)/コモン(フランクの弟)/ライマリ・ナダル(フランクの妻・エヴァ)
メモ 2008.2.10(日)晴れ TOHOシネマズ梅田
あらすじ
実話を元に映画化。
1968年、ベトナム戦争末期のアメリカニューヨーク。「ハーレムのロビンフッド」として慕われていたボス・バンピーが62才で心臓発作で急死。古い時代の終焉だった。バンピーの運転手を18年務めたフランク(デンゼル・ワシントン)は、これからは自分の組織を持ちひとり立ちする事を決意する。タイの生産者から直接購入の道を開いたフランクは、故郷のノースカロライナから5人の弟達を呼び寄せる。
一方、ニュージャージー州のニューアークの刑事リッチー(ラッセル・クロウ)は、下半身がだらしなく結婚の誓いを守れず、妻にあいそをつかされたが、仕事に対する情熱と正義感は特異だった。収賄が常習化している警察署では異端児、クレイジー。そこを地方検事(テッド・レヴィン)に見込まれ、新たに組織された麻薬捜査班のリーダになる。アメリカは、ベトナムで戦う兵隊も国内も麻薬が蔓延していた。
感想
わめきあいとか、机をひっくりかえすとかの「感情の爆発」は、ほとんどなく、淡々と、それなのにドラマティックな物語が続く。危惧していた157分が長く感じない。人をどろどろに溶かし悲惨な末路が待ち受ける「麻薬」を供給し(フランクにとって、溺れるのは自業自得なんだな)、莫大な富を築く麻薬王も、清廉な刑事も粛々と一途に自分の仕事をこなしている(様に見える)。反面、ハイエナのような悪徳警官がもっとも悪者。ジョシュ・ブローリンが、にくにくしい役を好演してた。「プラネット・テラーinグラインドハウス」と共に怪演だ。
ルーカス(デンゼル・ワシントン)のママが「警官を殺しちゃいけない」といさめた結果、ルーカスは救われる。いかに悪い警官であろうとも「警官殺し」なら、あの展開はなかったろうから。
お薦め度★★★★戻る

パンズ・ラビリンス
2007年 メキシコ/スペイン/アメリカ 119分
監督・脚本 ギレルモ・デル・トロ(「ミミック」「ヘルボーイ」
撮影 ギレルモ・ナヴァロ
音楽 ハビエル・ナバレテ
キャスト イバナ・バケロ(オフェリア)/セルジ・ロペス(ビダル)/マリベル・ベルドゥ(メルセデス)/ダグ・ジョーンズ(パン)/アリアドナ・ヒル(オフェリアの母カルメン)/アレックス・アングロ(フェレイロ医師)/ロジェール・カサマジョール(ペドロ)
メモ 2008.2.5(火)晴れ 朝日ベストテン映画祭 肥後橋リサイタルホール
あらすじ
第二次大戦の前哨戦とも言われるスペインの内乱(1936年−1939年)後の残党狩りが舞台。スペイン内戦は、フランコ将軍率いる右派の反乱軍と左派の人民戦線政府の争い。フランコ将軍には伊太利亜と独逸、人民戦線にはソ連とメキシコがついた。映画ではヘミングウェイの「誰が為に鐘は鳴る」が有名。
1944年、フランコ政権の圧政に反旗を揚げた人々が、ゲリラとなって山間部に立てこもっていた。そのゲリラ退治をしているのは、ビダル将軍。そのビダル将軍の子供を身ごもった母カルメンとともにオフェリアは、山に連れてこられた。オフェリアの父は仕立て屋だったが戦争で亡くなった(ビダルが殺害したのか?)。都会育ちのオフェリアは、山が寂しい。同じ年頃の子供もいない。母は具合が悪い。義父は恐い人だ。実はオフェリアは、好奇心にかられ地底国から地上に出てきた姫君で、地底に帰るためにはパンが出す数々の困難を乗り越えなければならないのだった。
感想
70年前の出来事であり、世界の人々は忘れ去っていて、日本国の子供達は学ぶ事もないスペインの内乱。女子供を巻き込み国を二分して戦う内乱の悲劇を、後世に語り継ぎやすくするため、見やすい様にファンタジーと融合させている。ゴツゴツした戦争物だけではなくなっていて美しい。でも哀しい作品だ。 「クローゼット・ランド」とダークなファンタジーがちょっと似てるな。
 
母カルメンは子供を育て生きていくためには、身を犠牲にせざるを得ない。オフェリアは、恐れている義父の子でも弟を救おうとする。使用人のメルセデスは、「名前も教えない」と言いはなち、あかんぼを育てるつもりだ。戦う男達とはまた違い、女達も国を支えている。その女たちの母性愛が、監督のファンタジーであろうともこの映画の希望となっている。
 
フランコ将軍の政権と言えば、大学の教授が、スペインに研修に行きはった話をされた時に、「美しい都市が作られていました。フランコの様な政権でないとああいう都市計画は出来ないのでしょう」とため息とともに言われていた。ちょっと「第三の男」のハリー・ライムの「鳩時計」の話のみたい話で、記憶に残っている。
お薦め度★★★★1/2戻る

やわらかい手 Irina Palm(イリーナ・パーム)
2007年 ベルギー/ルクセンブルグ/イギリス/ドイツ/フランス 103分
監督 サム・ガルバルスキ
脚本 フィリップ・ブラスバン/マーティン・ヘロン
撮影 クリストフ・ボーカルヌ
キャスト  マリアンヌ・フェイスフル(マギー「マリー・アントワネット」)/ミキ・マノイロヴィッチ(ミキ「アンダーグラウンド」「パパは出張中」)/ケヴィン・ビショップ(マギーの息子トム)/シヴォーン・ヒューレット(トムの嫁・サラ)
メモ 2008.2.2(土)曇り 梅田ガーデンシネマ
あらすじ
7年前に夫に先立たれたマギーは、ロンドン近郊の村に住んでいる。孫のオリーは難病にかかり、最後の頼みの綱はオーストラリアで治療を受けること。治療費は無料だが、渡航費、宿泊費は自前だ。孫のために家まで売っていて、息子夫婦もマギーにもお金がない。思い余ったマギーは、ロンドンのうさんくさい通りで「接客係募集、高給」の張り紙を見つけ、店のオーナーに面会する。オーナーが言うには「接客係」というのは「売春婦」の「婉曲表現」であり、あんたにはどんな「技」がある?と聞くのだった。マギーに対し、奇妙な生き物を見ているようだったオーナーは、マギーの手をとった時「やわらかい手だ」と言った。
感想
17才で駆け落ちして結婚したマギーには、職に就く技術がない。世間知らずで、ブリッジと噂好きな村の小さな世界しかなかった。その「主婦マギー」が、ミキのようなアンダーな男と知り合い、絶妙なタッチで、「ゴッドハンド」 「イカせる未亡人」となっていくさまが、「キワモノ」になる所をミキとマギーの魅力で踏みとどまり、「男のさが」とともに時にはチャーミングに、コミカルに描かれている。一方、息子夫婦や孫とのかかわりはシリアスだ。
不覚にも美しくもセクシーでもない「としまの素人女に惹かれてゆく」自分にとまどうミキが、かわいかった。ラストシーンが純だ。
 
夫亡き後、「もうひと花咲かせる」というのは、ジーナ・ローランズの「ミルドレッド」と似ている。が、厳しく何もかも捨てて行くミルドレッドに対し、マギーは暖かく包み込む
お薦め度★★★★1/2戻る