2007年2月の映画  戻る


バブルへGO!! タイムマシンはドラム式
2006年 116分 東宝
監督 馬場康夫
脚本 君塚良一
音楽 本間裕輔
出演 阿部寛(下川路)/広末涼子(田中真弓)/薬師丸ひろ子(田中真理子)/吹石一恵(リポーター)/伊藤裕子(秘書)/劇団ひとり(借金取り)/小木茂光(財務省の小役人)/伊武雅刀(芹沢)/森口博子(玉枝)
メモ 2007.2.24(土)晴れ ナビオTOHOプレックス
あらすじ
2007年の日本国。国民に危機感はないが借金まみれの国となっていた。その額800兆円。しかも金利で日々900億円ずつ膨らんでいる。その上少子化で人口は減り始めているというダブルパンチ。今は景気は回復しているかに見えているが国の破綻は目前に迫っている。それもあれも急激なバブル崩壊が原因だ! と財務省大臣官房経済政策課の下川路(しもかわじ)はある秘密の計画を進めていた。そのとんでも計画とは、バブルの時代にタイムスリップして「バブル崩壊」を止める事。1990年3月に大蔵省から発表された「不動産融資の総量規制の通達(土地や建物に融資するのを制限する)」からバブルははじけたのだ(そうだ)。 過去に送り込まれたのは女だった。色々ためしても小柄な女性しか行けないらしい。最終兵器のタイムマシンはドラム式の洗濯機。タイムマシンは洗濯機の改良中に偶然生まれた副産物であった。
感想
元々タイムスリップ物は好みやねんけど、この映画結構面白かったなあ。日立と協賛でタイムマシンがドラム式の洗濯機なんやって。一応洗剤まで必要なんやって。だもんでヒロスエは泡だらけ(”バブル”とかけてあるわけ)。
飽食のバブル時代に遊びほーけられへんかったもので(何しろ娘が2歳やったからねー)地味ーな生活は今と変わらん。流行に疎いのも一緒。ボーナスが軽く今の2倍あったとこが違うかな。
 
劇中にも出てきたけど、この映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(1985)とどことなく似てるねん。なにしろどちらの映画も今そこにある物と形態が同じなタイムマシンが斬新でしょ。男が作ったら車で女が作ったら洗濯機。でも映画館の若いカップル達は新鮮に楽しんでいる空気で・・・・そこでなんとなく感じられた疑惑! 彼ら彼女らは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を見てない!か、もしかしたら知らない! のでは無いかと思われる(嗚呼)。めまいがしてきた。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を見てガハガハ笑っていたのが昨日の事のように思えるさぼてんは、暗い映画館の中で20年後の未来にタイムスリップしてしまったような錯覚に陥ってたのよ。。。。。
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それでもボクはやってない
2006年 143分 東宝
監督・脚本 周防正行
撮影 栢野直樹
音楽 周防義和
出演 加瀬亮(金子徹平)/山本耕史(徹平の友達・タツオ)/もたいまさこ(徹平の母)/瀬戸朝香(弁護士)/役所広司(弁護士)//小日向文世(裁判官)/正名撲蔵(裁判官)/田中哲司(弁護士)/光石研(痴漢冤罪事件の被告・佐田)/清水美砂(佐田の妻)/尾美としのり(検事)/田口浩正(同じ車両に乗っていた男)/竹中直人(管理人)/大森南朋(刑事)
メモ 2007.2.17(土)雨 ナビオTOHOプレックス
あらすじ
フリーターを脱出するため金子徹平は満員電車に乗っていた。今日は先輩に紹介された会社の面接に向かう大事な日だ。ところが降りた駅で女子高生に手を掴まれ「痴漢をしたでしょ」と駅事務室に連れて行かれ、警察に引き渡されてしまう。毎日毎日痴漢のサラリーマンと付き合っている刑事の取調べは頭ごなしだった。無罪を主張しても馬耳東風。留置場に拘留されてしまう。当番弁護士と接見した徹平は「刑事事件で起訴された」場合の、有罪率は99.9%という驚くべき事実を聞かされる。否認した場合は拘留も長引くと。担当した弁護の最長は5ヶ月だったそうな。
罪を認めた場合は当日の昼には開放されるのだった。そんなバカな事が・・・・まかりとおっているなんて・・・。
感想
「東京原発」に勝るとも劣らないおそろしい現実
法治国家の日本国では、刑事事件で起訴された場合無罪となるのはコンマ以下の率しかないって。そんな(**)。。。。
刑事さんが”ちゃんと”調べ、検事さんが”ちゃんと”調べた事件で起訴されたにもかかわらず「無罪を主張する」のは「国家権力にはむかうヤカラ」になる訳なん。
プライバシーゼロの留置場生活。そして長引く裁判。お金もかかる。 無罪を勝ち取るために頑張れる精神力のある人はどのくらいいるんだろうと思うと背筋が寒くなる。
裁判官は嘘つきに騙されまいと、裁判で理詰めで問う。たいがいは無意識で行動している事を問い詰められ、その行動にいちいち意味を持たされるのだ。「何故その車両に乗ったのですか」 「女性がいるとわからなかったのですか」 「何故前向きに乗ったのですか?」 ・・・・たまらんな。
イチ国家公務員であり200も300も案件をかかえオーバーワークで、しかも組織の中で減点評価され続けている裁判官に権力がありすぎるんだろうな。陪審員制度が導入されていい方に変わればいいんだけど。
お薦め度★★★★戻る

世界最速のインディアン THE WORLD'S FASTEST Indian
2005年 ニュージーランド・アメリカ 127分
監督・脚本・製作 ロジャー・ドナルドソン(「追いつめられて」「キャデラック・マン」「スピーシーズ 種の起源」)
キャスト アンソニー・ホプキンス(バート・マンロー)/アーロン・マーフィ(隣の家の少年トム)/クリス・ウィリアムズ(モーテルの夜間フロント係ティナ)/アニー・ホイットル(ガールフレンド・フラン)/ポール・ロドリゲス(中古車販売店の店主フェルナンド)/ダイアン・ラッド(未亡人エイダ:ローラ・ダーンの母)/パトリック・フリューガー(ベトナムの休暇兵ラスティ)/クリス・ローフォード(ジム:ケネディ大統領の甥だそうです)
メモ 2007.2.10(土)晴れ テアトル梅田
あらすじ
ニュージーランドの小さな町の住宅街で、早朝響き渡る爆音。変わり者のバートがまたしても朝からバイクの調整をしているのだ。仕事をリタイアしてからは、日がな一日バイクの改良をしている。愛車は1920年型インディアン・スカウト。40年も手作りの部品で改良に改良を重ね、当初80キロだった時速は200キロを超えるまでになっていた。バートの夢はアメリカのユタとネバダの境目にあるボンヌヴィル塩平原(ソルトフラッツ)で世界記録に挑戦する事だ。ボンヌヴィルはライダーの聖地だ。しかしニュージーランドからは地球の反対側。年金を貯めた金とクラブのカンパを加えてもまだ渡航費に足らない。ガールフレンドのアドバイスで家を抵当に入れやっとこさ出かける事にした。貨物船ではコックをしロスに上陸。まだまだ目的地までは遠い。そこから艱難辛苦の旅が始まる。しかし良きサマリア人たちに助けられるのよ −実話の映画化
感想
スピード狂のやんちゃなじっちゃんが、人懐っこい笑みをにこにこ浮かべ難局を切り開いて行く物語。 メカに強いし溶接も出来るしカッコいいんだ。エンジンの事を知り尽くしている。
 
バートはスピートに魅せられ「こういうマシンでスピードに挑む時は5分が一生に勝る。一生よりも充実した5分間だ」と走りで死んだら本望の心意気だ。しかし部品はドアのちょうつがいを利用したり、ブレーキもなく落下傘もついていない骨董品のマシンで走ろうとするオジイに「いや、事があったら大変なんやから。後始末は俺達なんやから」と周りは引き気味。しかしヤンキーは結局チャレンジャーが大好きなのだった。
女装のゲイ・ティナ(モーテルのフロント係)にお嬢さんと呼びかけ、ティナが男だと告白しても「それでも君はスウィートハートだ」という「大きな男の人やねんな」と感じさせるシーンがいいな。
お薦め度★★★★戻る

マリー・アントワネット
2005年 アメリカ 123分
監督・脚本 ソフィア・コッポラ
撮影 ランス・アコード
衣装デザイン ミレーナ・カノネロ
音楽 ブライアン・レイツェル
キャスト キルステン・ダンスト(マリー・アントワネット)/ジェイソン・シュワルツマン(ルイ16世)/リップ・トーン(ルイ15世)/アーシア・アルジェント(デュ・バリー夫人)/ジュディ・デイヴィス(ノアイユ伯爵夫人)/マリアンヌ・フェイスフル(マリア・テレジア女帝「あの胸にもういちど」(1968)「豚が飛ぶとき」(1993))
メモ 2007.2.8(木)晴れ 東宝シネマズなんば
あらすじ
”子を産む機械”としてオーストリアからフランスに嫁いだマリー・アントワネットは、「オクテのルイ16世」のせいで使命を果たす事ができない。その結果ふたりの”夫婦生活”がヨーロッパ中にささやき声と密書で飛び交る事となる。プライバシーゼロの生活。たったひとり異国から嫁いだ孤独な日々のため、傾いていた国が沈没するほど贅沢に溺れお菓子とおしゃれの毎日であった。(といっても、きれいな子には贅沢が似合う)
感想
この評判かんばしくない映画を何故見に行くことになったかと言うと、マリー・アントワネットの母、オーストリアの国母マリア・テレジア役のマリアンヌ・フェイスフルを見るため(写真右は若かりし頃のマリアンヌ・フェイスフル)。 映画冒頭現れたマリア・テレジアに・・・・・・絶句(**)。 貫禄・・・・時というのは恐ろしい。
マリアンヌ・フェイスフルはローリング・ストーンズのミック・ジャガーの元カノ。貴族のお嬢さまというふれこみで17歳の時にミックとキースに曲を作ってもらって大ヒット! 当時アイドルだったそうだ(昨年のローリング・ストーンズ来日の時は、会社を休んでナゴヤドームまで駆けていったミックふぁん談)。酒とドラッグで声をつぶし”はかない人生”のはずが、しぶとく生き抜かれたのよ!
 
映画自体は退屈であるが、それなりに収穫はあった(ただでは起きない)。ルイ16世役のジェイソン・シュワルツマンって方が「ロッキー」のエイドリアン役タリア・シャイアの息子さんだとわかったこと。つまりソフィア・コッポラ監督のいとこね。この間「奥様は魔女」でもお見かけしたよ。もうひとつはルイ15世の愛人デュ・バリー夫人役のアーシア・アルジェント。ダリオ・アルジェントのお嬢ね。アクが強くてよかったな。「スタンダール・シンドローム」(1996)みたい。
お薦め度★★戻る

紙屋悦子の青春
2006 日本 パル企画 113分
監督・脚本 黒木和雄(「スリ」
原作 松田正隆
脚本 山田英樹
撮影 川上皓市
美術 木村威夫
音楽 松村禎三
出演 原田知世(悦子)/永瀬正敏(永与少尉・ながよ)/松岡俊介(明石少尉)/本上まなみ(幼馴染の兄嫁・ふさ)/小林薫(悦子の兄・安忠)
メモ 2007.2.7(水)晴れ 肥後橋リサイタルホール
あらすじ
秋が終わり冬が来る頃、初老の夫婦が屋上のベンチに座っている。「寒かとでしょ、毛布ば持ってきましょ」 「よか、寒うなか」 と長年寄り添い信頼しあった夫婦の会話。その建物はどうやら病院らしい。入院している夫長政は命がつきかかっている事を予感している様子。自分の名前の一文字をとった息子「まさし」もりっぱな大人になった。 遠くの桜の木を見ながら遠い昔を思い出すふたり。それは昭和二十年の桜の季節の事だった。
 
紙屋家では兄と兄嫁が駅で働いている悦子の帰りを待っていた。悦子の両親はたまたま上京していたために3月の帝都大空襲に巻き込まれ亡くなっていた。今は3人暮らし。兄嫁ふさは悦子の幼馴染で仲がいい。今日兄は妹に縁談話を持って帰って来ていた。家に何度も遊びに来た事のある明石少尉の紹介で永与(ながよ)という士官だという。明石少尉は兄・安忠の五校の後輩だ。兄嫁のふさは「明石さんではなかとですか」と聞く。にぶい兄とは違い、悦子が明石の事を密かに慕っているのを察しているのだ。
感想
静かでせつない話だったな。美しくもある。
明石は第五高等学校から京都帝大に進み昭和十八年海軍航空隊に入隊した士官。飛行機乗りだ。沖縄もとられ特攻で飛び立つことは必須。たとえ惹かれるおなごがいても、自分を押さえ「にっぽんだんじ」として祖国のため大君のため殉じなければならない運命だ。それしかない。気がかりなのは悦子の事。後を託せるのは親友の永与しかいない。永与は一度あっただけの悦子にひとめぼれしている。工業高校から入隊した整備士官であり生き残る確率も高い。オクテの永与のしりをたたき背中を押す明石。
そんな明石の思いを知った悦子は、自分もするべき事をしなければと永与に「ずっと待っちょいますから。日本がどげんな事になっても」とあっけないほど告げる。
永与も「あいつの分も、私はあなたの事ば大事にせんばいかんとです」と精一杯こくる (永与は男の中の男なんだよ)。
 
戯曲の映画化。原作者の松田正隆って方の両親の話をベースにしているとか。言葉にはならない明石の気持ちを悦子と永与はしっかりくみとるのだ。戦後60年きな臭い昨今、黒木監督が映画にこめた気持ち「戦争はなんとしても避けなければならない」を今、くみとらないとあかんな。と思う。
 
「TOMORROW/明日」 「美しい夏キリシマ」 「父と暮らせば」の戦争三部作の後に撮った黒木監督の遺作だそうです。哀しいけどくすくす笑える映画でもあるねん。観て欲しい。
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007 カジノ・ロワイヤル CASINO ROYALE
2006年 アメリカ 140分
監督 マーチン・キャンベル
原作 イアン・フレミング
キャスト ダニエル・クレイグ(007)/エヴァ・グリーン(ヴェスパー「ルパン「「キングダム・オブ・ヘブン」)/マッツ・ミケルセン(悪役ル・シッフル)/ジュディ・デンチ(M)/ジャンカルロ・ジャンニーニ(マティス「セブン・ビューティーズ」「ハンニバル」)
メモ 2007.2.4(日)晴れ 千日前・敷島シネポップ
あらすじ
ふたり殺ってジェームズ・ボンドは晴れて”殺しのライセンス”00(ダブルオー)となる。”00(ダブルオー)”となれば自分の判断で人も殺せるのだ。「冷戦時代が懐かしいワ」とつぶやく百戦錬磨のM(ジュディ・デンチ)から見れば、まだまだあぶなっかしい甘ちゃんのボウヤではあったが。
”007”の初任務は「テロリストの資金を増やす男」を突き止めること。マダガスカルで爆弾男(モロカ)を追う007は大使館という人様の領土で爆弾男を撃ち殺してしまう。新聞ネタになって窮地に陥るMI6。そんな事は事務方がなんとかしろと現場で働く007は爆弾男のケータイに入っていたメールの送り手”エルプシス”を追ってバハマへ飛ぶ。メールの発信源は武器商人のディミトリオスだった。後くされのない人妻好きのボンドは仕事を兼ねてディミトリオスの妻をユーワクする。人妻からディミトリオスがマイアミに発った事を知った007はディミトリオスを追う。そしてディミトリオスから金を受け取った男(カルロス)を空港まで追跡。本部からの情報で狙いは最新の航空機(スカイフリートS500)と知る。爆破して株価をさげようという魂胆だ。
ボンドのお働きで株相場で大金をすった「資金を増やすはず」の闇の男ル・シッフルはモンテネグロのカジノロワイヤルで起死回生を図る。カレは天才的に数学能力が高い。一方ボンドはMI6きっての”人の心を読む男”だ。結局ポーカーは心理戦なのだとボンドは思っている。そんなボンドのお目付け役は財務省のお堅い美女・ヴェスパー。取り付く島がなく無駄に美人ってやつだ。MI6のプランはル・シッフルを破産させてテロリストの情報を白状させる。ボンドはル・シッフルに勝てるのか? そんな勝負の最中、ガードが固くクールなボンドは恋に落ちる。いわゆるフォーリンラブ。不意打ち。彼女はあまりに可憐で美しい。ボーイミーツガール、俺のために生まれてきた女だ(と思った)。
感想
金髪碧眼のボンド誕生。身体能力を使ったアクションあり、LOVEあり、車を使ったアクションあり、心理戦あり、ゴーモンまでついているという盛りだくさんな内容。タイトルデザインはけれんみたっぷり。
つかみの走りでは追われる方のモロカが「あなたジャッキー・チェンですか」って動きでびっくり。
 
ダニエル・クレイグ、カッコイイ。ジュディ・デンチのMもさすが。やり手さがびんびん。
そして財務省のお役人エバ・グリーン。チャールズ・ブロンソンの「雨の訪問者」の人妻役マルレーヌ・ジョベールの娘さんらしい。マルレーヌ・ジョベールはそばかすいっぱいでキュートなフランス人ぽっかったけど、似てはれへんなぁ。エバ・グリーンはしっとりしていてたおやかで日本人好みかも。
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