2000年6月の映画


グラディエーター −剣闘士− GLADIATOR

2000年 アメリカ 155分
監督 リドリー・スコット
脚本 デビッド・フランゾーニ/ジョン・ローガン/ウィリアム・ニコルソン
撮影 ジョン・マシソン
音楽 ハンス・ジマー/リサ・ジェラード
出演 ラッセル・クロウ(マキシマス)/ホアキン・フェニックス(コモドゥス)/コニー・ニールセン(ルッシラ 
「ミッション・トゥ・マーズ」)/オリバー・リード(プロキシモ)/リチャード・ハリス(マルクス・アウレリアス)/デレク・ジャコビ(グラックス)/ジャイモン・ハンスゥ(ジュバ)
メモ 2000.6.26 ビデオ
あらすじ

時は西暦180年、大ローマ帝国五賢帝最後のマルクス・アウレリアス帝も老いた。北方ではゲルマン人が侵入を繰り返し将軍マキシマスの力でなんとかくい止める事ができている。帝のただひとりの嫡子コモドゥスは帝自身できそこないの息子だとわかっていた。アウレリアス帝はシーザー(皇帝)の地位をマキシマスに譲ろうとするが、自分は軍人で政治家ではないとマキシマスが呻吟している内にコモドゥスが動く。
感想
死生観っていうのかな、よくわからないながらもキリスト教以前の死生観が映像に深みと広がりを与えていた。当然の事ながら1800年前のローマ時代の善悪とか価値観は現代とはだいぶ違う。「人間同士の殺し合い」「猛獣と人間の闘い」を見せ物にして大いに楽しむという感覚は頭でわかっていても受け入れにくい。が、そこん所に家族愛という共感できる感情を持ってくる事で拒否感なく映画に入っていける。しかししかしなのだ。大スペクタクル映画で壮大ではあるのですが暗い。哀しさが底に漂っている。
大地を愛し家族を愛し仲間を愛する優しさを感じさせしかも野性味のある武人マキシマス(ラッセル・クロウ)はもちろんながら、悪役2人がいい。「とうちゃんが悪い〜」と歪んでいて最後まで卑怯者であってくれたコモドゥス(ホアキン・フェニックス)。いいとこなしなんですけれどこれがもう一歩で卑しくなりそで踏みとどまっている美形なんです。顔ももちろんの事ながらしぐさに品があり麗しい。もうひとりの悪役はコモドゥスの姉ルッシラ(コニー・ニールセン)。弱虫の弟はかわいい。が、大人になってマキシマスに恋もしたし息子も持った。今は弟より幼い息子がかわいい。それが弟には気にいらないって所が現代でも珍しくない光景のように思える。

登場人物の内面の事ばかり書いてますが、映像もカタパルトで火の玉を放てきしヒュンヒュンと矢が飛び刀を振りかざして森の敵ゲルマンを殲滅するシーン、死を恐れずに向かっていくしか活路はないっコロシアムの闘いのシーンは大画面で見る価値大。私、雄叫びをあげる「ブレイブハート」を「男が雄だった頃の話」と思ったんですけれど、この映画も野蛮さが美しく撮られていて感動した。敵を突き刺しぶったぎる強い男の力、根元的な暴力をかっこよく気持ちよく感じる部分がある。「インサイダー」は知力と気力で闘ってはりましたが、本当のところ首になったワイガンドは社長を一発殴ってやりたかったのではなかろか。

斜にかまえた元老院のグラックスが「掟−ブレイキング・ザ・コード」で爪をかんでばかりいたテューリング役デレク・ジャコビ、奇遇でした(笑)。
おすすめ度★★★★
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キリング・オブ・サイレンス−沈黙の殺意− LIGHTHOUSE

1999年 英国 95分
監督・脚本 サイモン・ハンター
出演 ジェームズ・ビュアフォイ/レイチェル・シェリー/クリス・アダムソン
メモ 2000.6.26 ビデオ
あらすじ

マーシャルシー監獄島に向かう囚人護送船ハイペリオンから、無差別殺人鬼ロークが監視員を皆殺しにしてボートで逃げる。灯台のある小島についた鬼は、灯台守達をまたもや皆殺しにし、灯台の明かりを無意味に壊す。なんでも壊す。でもって、レーザーが故障し濃霧に迷っていたハイペリオン号は座礁し海の藻屑と消える。命からがら逃げ出した囚人スペイダー、ウィーヴィル、スプーンズと船長、囚人の監視員キャンベル、マクラウド、ゴズレッドの7名は島にたどり着くが、ひとりまたひとりと鬼のコレクションに加えられていくのであった。
感想
エイリアン物。殺人鬼がそれほど強そうに思えないながらも、”恐怖心”が人間を追いつめ金縛り状態に陥れるというスリラーの古典を継承したなかなかの映画だった。ストップモーション、ストロボを多用し、上から下から斜めから、近づいて引いて引いて遠景からそして鏡に映した映像もちょっと付け加えたりなんかしてめまぐるしく変化をもたせるサービス満点のカメラとライティングがすぐれもの。小道具の使い方もいい。とどきそうでとどかないシーンが多発、トイレのシーンのタオルの使い方なんぞ特筆すべきイデア(笑)もあり。ラストのたたみかける活劇と絶体絶命連続ピンチの後の真っ赤な夜明けに感動するよ(しないしない)。あまりお金をかけないでも、細かい工夫でねっとりした映像がとれるというお手本になる映画(笑)。 
おすすめ度★★★★
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MONDAY ベルリン国際映画祭 国際批評家連盟賞

1999年 日本 100分
監督・脚本 SABU
撮影 佐藤和人
美術 丸尾知行
音楽 渋谷慶一郎
出演 堤真一(高木光一)/大杉漣(村井良夫)/西田尚美(町田由紀)/松雪泰子(霧島優子)/大河内奈々子(近藤理恵)/安藤政信(近藤光男)/麿赤兒/山本亨 田口トモロヲ/小島聖/寺島進/野田秀樹
メモ 2000.6.18 扇町ミュージアムスクエア
あらすじ

目覚めると、ダークスーツ姿で見なれぬ部屋のベッドに横たわっていた。どうもホテルの一室のようだ。何故ここに? 昨夜の記憶がない。ひとまず煙草を吸おうとポケットをさぐると小袋が落ちる。黒字で「清めの塩」と書かれている。そうか、通夜にいったんだっけ。徐々に甦ってくるのは悪夢のような現実だった。ほんとに夢じゃないのか??。夢だったりして。
感想
面白い。
胸に埋め込まれたペースメーカーの”仲良く並んでいる2本のコード”を握りバサミでパチッと切るシーンなんぞブラック過ぎて鳥肌物(うそ)。疾走感は少なくじわじわした展開で、酔うと人間が変わり酩酊状態でえへらえへら笑ったり怒ったりの堤真一に足下おぼつかなくひっぱられ、映画があっちへ寄ったりこっちへ寄ったり酔っぱらっていた。普段おとなしい人のタガがはずれたらいかに恐ろしいかというのがよくわかる(笑)。
今回よくわかったんですけれど、この監督さんも女優さんの使い方がヘタ。操り人形のよう。十二分に魅力を引き出す塚本晋也監督とは対照的。しかしながら、その監督の不器用さ荒削りさと、緻密な脚本や繊細そうな堤真一のキャラとのアンバランスがいいと私は思う。
おすすめ度★★★★
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海を見る Regarde la mer

1997年 仏 77分
監督・脚本 フランソワ・オゾン 
「ホームドラマ」
撮影 ヨリック・ルソー
音楽 エリック・ヌブー
出演 サーシャ・ヘイルズ/マリナ・ド・バン/ポール・ラウー
メモ 2000.6.18 WOWOW録画
あらすじ

夫はパリでビジネスに飛び回り、妻は小さな島で10ヶ月の娘シラフと暮らしている。娘とふたりっきりで海水浴、日光浴の毎日だ。白い屋根、青い扉、白い壁の美しい家に、バックパッカーの若い女が2、3日庭でテントを張らして欲しいとやってくる。人間との会話に飢えていた妻は見知らぬ女を入れてしまう。緑の庭真っ赤なテントを張り始める女。妻は知らなかったが、女は崖の上から海岸で日光浴をしているふたりをじっと見ていたのだ。
感想
「あの女は、だんなの浮気相手なんだ。偶然を装って家に入り込んできたんだな。」というアタシの予想は、、、予想は、、、忘れてください(笑)。
どこといって目新しくないストーリーとも思うのですが、映像と流れる空気がスタイリッシュ。サスペンスファン一見の価値大。

「サマードレス」1997年 仏 短編
これはなかなか気持ちのいい映画だった。
海岸にバカンスにきた若い男ふたり。時々愛し合ったりもする。海へひとりで泳ぎにきた片割れがすっぱだかで日光浴をしていた所に若い女が通りかかる。「おいしそうなお尻」とばかり、若い女は男を林に誘う。十二分に楽しんだふたりが海岸に戻ると男の荷物が盗まれていた。海水着で帰る女は男に自分のサマードレスを貸す。水色真っ赤な花が咲いたサマードレスを来て自転車に乗って帰る男。家に帰ってきた男を見てもう一方の片割れは、そのサマードレス姿にムラムラ・・きた。というあっけらかんとした明るい笑顔が印象的な映画を見ていて「人生を楽しむすべを持った人達」なのだろうか? 「流れている血が違う」のであろうか? 何百年も儒教の教えを守ってきた人種にはこういう生き方は無理なのであろうか? とか色々考え考えしていたのですが、「楽しかった。気持ちよかったわ。」とばかりにほほえみ、電話番号を教えあう訳でもまた会う事を約束する訳でもなく後に引く物は何もなく別れていく男と女、、、、     ああうらやましい。

おすすめ度★★★★
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掟−ブレイキング・ザ・コード BREAKING THE CODE

1996年 英国
出演 デレク・ジャコビ
メモ 2000.6.18 ビデオ
感想
何故BBC製作のこのTV映画を見ることになったかと言うと、
「砂漠の鬼将軍」でヒットラーが「新兵器V2ロケットで英国をやっつける」とか喚き起死回生を狙い興奮しているシーンを見て(あわれなんだよ)、「そういや昔々V2ロケットの映画だかドラマだか見ましたな。」と思い出したから。その映画で覚えているのは煙草ケースみたいなのがV2ロケットの誘導装置っていうの?目標になっていて、ドイツのスパイが車に乗って逃げている所にV2ロケットが突っ込んでくるといったラストシーン。子供心に「ドイツってすごい科学力あったんだ。」と感心いたしました。それで水曜日レディース・ディにビデオ屋さんの棚を漫然と見ていたら、このビデオに目がいったんです。「Vロケットの暗号を解いた男」のような内容で借りてきたのですが・・・。

えーっと、戦争映画ではありません。人間ドラマでした。「コンピュータを発明した男」ってフォン・ノイマンちゃうの?って思ったんですけれど、理論面でも様々な数学者の知恵の元に作られていったようです。このドラマは、そのひとり英国の天才数学者アラン・テューリングの内面に迫ります。戦争中ドイツの暗号「エニグマ」の解読に成功、勲章を授与されたテューリングは、戦後ゲイである事から告発されスパイ容疑までかけられ”冷戦時代”に追いつめられ1954年失意の内に亡くなります。この国の宝を凡人どもがよってたかって潰してしまったのですが、その後名誉は回復されたという懺悔の映画で主演のデレク・ジャコビという俳優さんの名演技にただただうなりました。天才である事の幸福(普通の人には見えない物が頭の中で見える)と不幸(理解されない孤独)が伝わってきます。一見タイプライターのような暗号機も面白いよ。
Webで検索して知ったのですが、元々は戯曲で劇団四季でも上演された事があるようです。
おすすめ度★★★1/2
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男と女の詩 La bonne annee

<骨董屋のフランソワーズとルイ16世時代の机を見る”大金持ちのじっちゃんに化けたリノ・バンチュラ”>
1973年 仏 111分
監督・脚本・撮影 クロード・ルルーシュ(「男と女」)
脚本 ピエール・ユテローバン
音楽 フランシス・レイ
撮影 ジャン・コロン
出演 リノ・バンチュラ/フランソワーズ・フェビアン/シャルル・ジェラール
メモ 2000.6.17 WOWOW録画
あらすじ

パリからカンヌにやってきたシモンとシャルロ。狙いは角の宝石店だ。カールトンホテルの部屋から、店の前に停めたバンから宝石店を毎日観察するふたり。と、双眼鏡が左にずれる。隣の骨董屋の黒髪美人に眼が釘付けになるシモン。
感想
男をだます、女をだます、商売人をだます、観客をだますというなかなかに洒落た映画だった。血が違うんかなあ。この男と女の駆け引きのスマートさは日本映画でおいそれと真似できないように思う。アパートに残っている他の男の痕跡をゼロにする女のみごとさと、それを受け入れ知っていても口にださない男がいい。「あなたにとって女とは?」とフランソワーズに問われてシモン(バンチュラ)が言う「時々泣く」。「男とは?」「とことんやる」って真面目なお顔で言うんです、いかついリノ・バンチュラが。 さぼてんの顔が思わずニンマリしてしまう。

今回WOWOWで放映されるまで見たことも聞いた事もなかった映画(汗)。いまさらですが、今月来月WOWOWではルルーシュ監督の特集をしているようです。さぼてんのように何も知らないで見るのがオススメ。映画の知識が乏しくって良かった(笑)。大仕事の前というのに行きがかりの駄賃とばかり「列車の隣の客の財布をすった」相棒にリノ・バンチュラが言うセリフ「俺もヤキがまわった。 うすらバカの能なし野郎を相棒にするとは。」でコロっと騙されました。たいした事ではないんですけれど、そうだったのかと最後にびっくり(**)。 会話も面白いんだよ、クスクスしっぱなし。 「あの店はムリだ。(警備が厳重すぎて)あの店はムリだ。」と言い続ける相棒に「狙いは宝石だ。店じゃない。」(笑)。
面白かったこの映画の唯一の欠点は邦題。コンゲームとしてもよくできているのに。
おすすめ度★★★★
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インサイダー THE INSIDER 内部告発者

1999年 アメリカ 158分
監督・脚本 マイケル・マン(「ラスト・オブ・モヒカン」「ヒート」)
脚本 エリック・ロス

撮影 ダンテ・スピノッティ
音楽 リサ・ジェラード&ピーター・バーグ
出演 アル・パチーノ(バーグマン)/ラッセル・クロウ(ワイガンド)/クリストファー・プラマー(マイク・ウォーレス)
メモ 2000.6.17 南街会館
あらすじ

CBSの人気番組”60ミニッツ”のプロデュサー・バーグマンはネタを捜して東奔西走の毎日。看板ジャーナリスト・ウォーレスの黒子に徹している。ある日、バーグマンの元に匿名で分厚い資料が送られてくる。化学分析の資料のようで素人が読んでもちんぷんかんぷんだが、バーグマンの嗅覚を鋭く刺激する。これには何か大変な事が隠されているぞ。
感想
生活のすべてを破壊しようとする巨大企業の脅しにも屈せず、信念を貫く男達の物語。本当にこんな人達がいるのだろうか? 実話の映画化であるがゆえに、その苦しみと強さはずしりと重い。今まで権力に刃向かい矢折れ力つきた人々の屍累々の上での希有な勝利だとしても、こういう人々がいるというアメリカの底力を羨ましく思う。この映画が作られる良識にも拍手。国を自分たちの手で作り上げていくという思いが、日本とは違うのかとも思う。日本は「国の進むべき方向を決めそれを押し進めるのは、適当に誰かがやってくれる。」という甘えが庶民のどこかにあるのではないかと思ってしまう、選挙の投票率の低さからも。私も人の事はいえない。、

7人のたばこ産業の最高責任者が「ニコチンに習慣性はない」と宣誓した内容をどれだけの人が信じたのだろうか? それが事実であればと願った人達が哀しい。そうだったらどれほどよかったかと思わずにはいられない。人間は信じたい事を信じるものなんだ。しかし最高責任者達が嘘をついた以上に恐ろしいのは、低タール煙草の件だ。世の中の仕組みの裏側を見た思いがする。恐いよ。

「なるほどなあ」とうなずく事が多い内容なのですが、中でも深く心に留めようと思った所をひとつ。内部告発者となるワイガンドは、何度か「引き返す事のできる地点」を示される。しかし、さぼてんが思うにバーグマン(アル・パチーノ)のFAXに応えた時点でもはや引き返す事はできなくなっていたのだな。どんな勧誘でも「お話聞くだけなら」なんて譲歩する事はもう相手の手の内に落ちた事になるのね。

この映画のアル・パチーノはアル・パチーノ以外の何者でもなく考えればひとりいいかっこをしていましたが、許してしまう。ほんとにかっこいいんだ、これが。ラッセル・クロウは「あなたである必要があるの?」と思うほど化けていました。パチーノ対し一歩も引かない。
今回パンフを読んで深く納得した事は、デビ・メイザーやジーナ・ガーションの役が「なんだかなあ」と思っていたのですが、原田眞人監督が断じていました。マイケル・マン監督は男を描く監督で女の使い方がヘタ(笑)。

全然関係ない話なんですけれど、この間NHKで「その時歴史は動いた」というのを見ていて、策略という事についてひとつ書きたい(笑)。大化の改新がテーマで中臣鎌足と中大兄皇子は蘇我入鹿の剣を道化師に冗談を言わせながらまんまと取り上げ、丸腰の蘇我入鹿に刀を振りかざして4人で襲いかかったという、現代の感覚ではいささか卑怯ともおもえる作戦にでたのですが、武力は現代ではもってのほかでとても極端な例ではありますが、これを卑怯と思うようでは何かを成し遂げる事はできないのではないかと思ったりもしました。特に国際社会では。(真珠湾奇襲を擁護しているという訳ではありません)。この映画とどういう関係があるのかと思われるでしょうが、パチーノも正攻法だけではなく、色々なネットワークを使って捨て身で戦うのを見てそう感じたんです。ただそれだけ(笑)。
おすすめ度★★★1/2
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砂漠の鬼将軍 THE DESERT FOX

1951年 アメリカ 87分
監督 ヘンリー・ハサウェイ
撮影 ノーバート・ブロダイン
音楽 ダニエル・アムフィサートロフ
出演 ジェームズ・メイソン(
「第七のヴェール」 「5本の指」)/セドリック・ハードウィック/ジェシカ・タンディ(「鳥」「ドライビング・ミス・デイジー」「フライド・グリーン・トマト」)
メモ 2000.6.11 CSスターチャンネル
あらすじ

ドイツ第三帝国の職業軍人、「砂漠の狐」と呼ばれ連合国からも畏敬の念をもたれた不世出の名将ロンメルの北アフリカ戦線離脱から、強制された自殺までをドキュメンタリータッチで描く。
感想
今までロンメル将軍は、エリート階級出身者だと漠然と思っていたのですがたたき上げ軍人のようです。この映画は国の英雄でありながらヒットラー暗殺計画に荷担したと毒を渡され自殺を強要されるロンメル将軍の悲劇の物語です。軍人にしてはジェームズ・メイソンは声が甘い。心情も甘い。妻との関係も甘い。ように思うのですが反面、部下を思いやる心家族を守ろうとする心情が浮き上がってきてしんみりしました。まさしく孤高の騎士です。ドイツ軍とナチスを混同しがちですが、敗戦を予想し国体を維持しようと祖国を思い苦悩するドイツ軍人の姿が同じ敗戦国の身にはこたえます。ヒギンズの「鷲は舞い降りた」でも同じでした。米国は建国以来こんな気持ち(国がなくなる)を実感した事はないんではなかろかとちょっとひがむ。
所々当時の戦況を伝えるニュース・フィルムが映画に差し込まれているのですが、それを見ているとノルマンディー上陸作戦などまるでハイキングの様。 「プライベート・ライアン」のオマハビーチの激戦など想像もできません。こういう映像を見ていると「物量で敵を圧倒している戦闘なら、楽しいんじゃなかろか。」と不謹慎な事を考えてしまう。
おすすめ度★★★1/2
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呪いの血 The Strange Love of Martha Ivers

1946年 アメリカ 116分
監督 ルイス・マイルストン(「西部戦線異状なし」「雨」)
原案 ジャック・パトリック
脚本 ロバート・ロッセン
撮影 ヴィクター・ミルナー
出演 バーバラ・スタンウィック(マーサ 
「深夜の告白」「教授と美女」)/カーク・ダグラス(ウォルター)/ヴァン・ヘフリン(サム)
メモ 2000.6.9 ビデオ
あらすじ

1928年アイバースタウン、町一番の名家・アイバース家の当主から逃れようと家出を繰り返している姪のマーサは、今日も貨車に隠れていた所を警察に見つかってしまう。一緒に逃げようとしていた貧しい幼なじみのサムは雨の中に消える。勉強の出来る息子のハーバード大への学資をアイバース家にねだろうとご機嫌伺いする父に言われて息子のウォルターがふたりの隠れ家を密告したのだ。屋敷に連れ戻されたマーサはアイバース家の当主・厳格な伯母に反撥し、さよならを告げに戻って来たサムと逃げようとするが、突然雷雨のため停電し屋敷は暗闇となる。その暗闇の中猫嫌いの伯母がマーサが連れ帰った捨て猫を杖で殺そうとし、怒ったマーサは杖を取り上げ伯母を打ちのめす。と、伯母は階段から転がり落ち息絶えてしまった。事実を知っているのはウォルターとマーサのふたりだけ。ウォルターの父は真実に気づいているが、マーサが「男が出ていった」という話を信じるふりをし後見人として屋敷に入り込む。
それから18年後、サーカスの貨車に乗り込み町を脱出したサムが大人の男になり軍曹として戦争も体験し、旅の途中故郷にたちよる。車の事故で足止めされたが長いをするつもりはなかった。しかし、検事再選選挙真っ直中のポスターからウォルターが検事で次期知事候補だという事、ウォルターとマーサが結婚をした事を知る。マーサとウォルターは突然現れたサムが18年前の出来事を種に恐喝にきたのだと思いこむ。過去の封印が解き放たれはじめる。この三人はどうなる? サムが現れなければ悲劇は起こらなかったのか?
感想
邦題から吸血鬼の映画って当然思うよね。これがサスペンス物でありながらメロドラマでもあるのです。サムが町で知り合ったトニーを巻き込み四角関係になるのかな。18年前の出来事がすごくミステリ的。ミステリ映画定番の”階段”がでてくる(笑)。今回初めてバーバラ・スタンウィックが美人というのを実感できました。クール・ビューティです。サム役のヴァン・ヘフリンという方は映画「シェーン」のスターレット家のパパ役の方のようです。そしてカーク・ダグラス映画初出演作。マーサを昔から愛している、がマーサの心はサムの物、マーサと結婚できたのは父が無言の脅しをかけたから、そしてマーサの伯母殺しで裁判にかけられた無実の男に検事として死刑を求刑し男は処刑されてしまった、そんな過去にさいなまれ今はアルコールを手放せないという屈折したウォルター役をしょっぱなからこなした方なんですね。
おすすめ度★★★1/2
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未知空間の恐怖 光る眼 WILLAGE OF DAMNED

1960年 米国 78分
監督・脚本 ウルフ・リラ
原作 ジョン・ウィンダム(呪われた村)
脚本 スターリング・シリファント/ジョージ・バークリー
撮影 ジョージ・フェイスフル
音楽 ロン・グッドマン
出演 ジョージ・サンダース(
「幽霊と未亡人」 「誘拐魔」 「謎の下宿人」−「レンガの壁、レンガの壁・・・」)/バーバラ・シェリー/マーティン・スティーブンス
メモ 2000.6.6 ビデオ
あらすじ
イギリスの牧歌的な田舎の村ミッドウィッチで、お昼前に突然人々が眠りにつく。アイロン掛けもそのまま、水道の水も出しっぱなし、電話も通話中のまま村人はこんこんと眠り続ける。3時のおやつの時間に村人は自然に目覚める。それから2ヶ月後、村ではピクルスが異常に売れ初め、村中の妊娠可能な年齢の女性達は全て妊娠している事がわかる。身に覚えのない17才の少女や、夫が1年旅に出ていた奥方まで。そして生まれたのは、異様に発育の早い金髪の子供達だった。
感想
クラシックSFの佳作。今回初めて知ったのですが原作は「かっこう」という題だそうです。1995年にリメイクされたジョン・カーペンター監督、クリストファー・リーブ主演の「光る眼」とほぼ同じ展開です。が、大きく違う所もある。見比べて見ると面白いと思う。すべての子供たちが「同じ思考と行動をする」というのは、原作が書かれた(1958年)当時の共産主義への恐怖が如実に表れていたんですね。昔読んだ「5次元世界への冒険」とかいう少年少女小説(夏休みの作文の課題図書)も5次元の世界では子供達の遊びまで全て同じ、しかも時間まで決まっているというストーリーだったな(レットパージの頃小学生だったという訳ではありません。念のため) 世の父親が現実に「本当に自分の子供なのか?」といくらか危惧する所もなきにしもあらずという心情もこの映画から感じられるような気がする(テキトーな事書いています)。キーンという張りつめた音とともに、子供達が「光る眼」で一斉に鞄を見るシーンはSF映画史上に残る(少なくとも私の記憶には残った)。機会があればぜひ見てください。
おすすめ度★★★1/2
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どら平太

2000年 日本映画 111分
監督 市川 崑
脚本 黒澤 明/木下惠介/市川 崑/小林正樹
原作 山本周五郎「町奉行日記」
出演 役所広司 (どら平太こと望月小平太)/片岡鶴太郎(安川半蔵)/浅野ゆう子(こせい)/宇崎竜童(仙波義十郎)/大滝秀治/神山 繁/加藤 武/江戸家猫八 石倉三郎(巴の太十)/石橋蓮司(継町の才兵衛)/菅原文太(大河岸の灘八)/尾藤イサオ/うじきつよし/岸田今日子/伊佐山ひろ子
メモ 2000.6.4 南街劇場
あらすじ
ある小藩の町奉行職を任ぜられた望月小平太は、江戸を発ったにもかかわらず期日を過ぎても国元へ着任しない。遊び人のうつけ者だという噂が領内でささやかれていた。藩には「壕外(ほりそと)」と呼ばれる無法地帯があり3人の親分集が密貿易・博打・売春を牛耳り、あろうことか国元の重鎮連は鼻薬をたっぷり嗅がされている有様。江戸おもての若い殿が町奉行を幾人も送り込むがつぶされるばかり。望月小平太の任命は切り札か秘密兵器かはたまた殿のご乱心の果てなのか。
感想
まず題名の「どら平太」がよろしいです。幼少の頃米国のTVアニメ「どら猫ギャング」が好きだった私にはとても親しみが湧きます(笑)。
放蕩者の次男坊・小平太、恐いモノなしの小平太が唯一頭が上がらない芸者のこせい(浅野ゆう子)、幼なじみで頭の切れる仙波(宇崎竜童)、忠義一筋はがねのようにまっすぐなあくまでまっすぐな安川(片岡鶴太郎)、3人の黒い親分衆、3人のくせ者家老連というもう聞いただけでも定番過ぎて逆に今時新鮮な気がするわくわくモノの娯楽時代劇です。これぞ日本のエンターティメント。面白いです(^^)v。楽しいです。

が、キレとテンポがよければもっと爆笑だったのではという場面がアチコチありいささか不満。市川昆監督ってやはり映像美の監督さんで、動きのある映像は苦手なのかなあ、それとも山本周五郎の小説ってあんな感じのゆったりした展開なんかなあと母に話すと「そうなんちゃう」という速攻の軽いお答え(考えてないな)。  「片岡鶴太郎がよかったねー」というのはふたりの共通した感想でした。演技がうまいとは思わないけれど、どっかかわいいの(笑)。大滝秀治、神山繁、加藤武といった悪と癒着した重役連もよく、この方達は日本映画界の宝よね(笑)。「近頃体の調子が・・・」と切り出す城代家老・大滝秀治さんに爆笑。

母とEVに乗っていると「どら平太」の前売り券を握って3階で降りようとした女の人がいたので「どら平太、6階と違いますか?」と声をかけたら「映画はほんと久しぶりなんですけれど、これは見たいなと思って杖をついて来たんですの。」と言われてました。なんだか嬉しい話ですよね。もっと年輩の人が足を運ぶようなすっとする娯楽時代劇を作って欲しい。さぼてんの老後のためにも。とはいえいつまでもいつまでもぶっ飛んだ青春映画も見るつもり(笑)。
おすすめ度★★★1/2
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クロスファイア cross fire

2000年 日本 111分
監督 金子修平
原作 宮部みゆき(「鳩笛草」「クロスファイア」)
脚本 山田耕大/横谷昌宏/金子修平
撮影 高間賢治
視覚効果 緒川利弘
美術 三池敏夫
録音 宮内一男
音楽 大谷幸
出演 矢田亜希子(青木淳子)/桃井かおり(石津ちか子)/伊藤英明(多田一樹)/原田龍二(牧原康明)/長澤まさみ(倉田かおり)/吉沢悠(木戸浩一)/徳山秀典(木暮昌樹)/永島敏行(長谷川芳裕)
メモ 2000.6.2 肥後橋リサイタルホール 試写会
あらすじ
体中あざだらけの女子高生の死体がゴミのように捨てられていた。3人目だ。どこかの人非人連が女の子をいたぶって殺しまわっている。
感想
映画を見る前
H子 「オカルトって聞いたんですけれど。恐いらしいんです。私苦手なんです、恐いの。『スクリーム』のシリーズも見ていないんです。『セブン』も。」
「『スクリーム』は1、2、3と見たけれど、1は恐いぞぅぅぅ〜。シュパッシュパッってナイフが空をきるぅぅぅ」と脅すさぼてん。
H子 「ああ、だめです。全然だめです。恐いのだめなんですう。今日の映画も途中で帰るかもしれません。」
映画を見た後
H子 「(しみじみ)いい映画でしたねぇ」 ・・・・・・お前、「恐いぃぃ」て言うてたんとちゃうんかい。551があったんかい(笑)。

さすが「ガメラ」の金子監督。炎の黄金色が美しい。悪を焼き尽くし浄化する様が美しい。ここんところ最大の見所。

つっこみドコロも満載の映画で笑える。笑ってしまう。妹を殺された多田(伊藤英明)が「何故なんだ」と言うセリフを聞いて「何故(こんなに演技がヘタ)なんだ。」と頭の中で置き換えてしまう。ヒールで走る淳子を多田が見失うシーン「おまけに、走るのまで遅い・・・」(笑)
後半呼び出されて遊園地に勝負服で出向く淳子のヘアスタイルを見て「いつセットしたん? エスパー魔美ちゃんみたい・・・」
主演の矢田亜希子はなかなか健闘していました。が、ハタチそこそこのOLには見えん。20代後半の古参OLに見える。東宝シンデレラの倉田かおりちゃんは、ポスト広末涼子のよう。セリフもほとんどなく演技もなく色が白くとてもかわいかった事をご報告いたします。ふらふらしたおぼつかない演技者群を樹木希林風味の桃井かおりがガンっと下支えしておりました。
中身については、いまいちつかみきれない。原作を読まなくてワ。
おすすめ度★★★
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