2000年11月の映画


ミート・ザ・フィーブル/怒りのヒポポタマス Meet The Feebles
<プリマドンナのハイジ>
ニュージーランド  1989年 95分
監督 ピーター・ジャクソン(「乙女の祈り」)
メモ 2000.11.29 CS
あらすじ
劇団フィーブルのプリマドンナ・ハイジ。人気は絶大だが、盛りを過ぎ衰えは隠しようもない。何しろケーキの食べ過ぎでデブなのだ。元々カバ(ヒポポタマス)なんだからしかたないけど。昔はもうちょいほっそりしていたはず。愛人で劇場主のブレッチ(セイウチ)は、若い新しい愛人(猫)をプリマの座につかそうとハイジを叩き出す。ハイジは世をはかなんで自殺をはかるが、ことごとく失敗。泥棒猫にバカにされとうとうキレタ!
感想
東京国際ファンタスティック映画祭(1990)で熱狂的に受け入れられた映画とかいうだけの事は、ある。
目が釘付け・・・。
さすが「ブレインデッド('92)」のピーター・ジャクソン監督。かわいくて、切なくて、お下劣で、ピンクのカバのプリマドンナがぶちかますマシンガンで血しぶきがばあああああっと飛び散り頭が内蔵が炸裂するスプラッターの実にゲテモノカルトな映画だった。
「怒りのヒポポタマス」という副題を付けた人はえらぃ! 「狂ったカバ」「殺戮のプリマドンナ」よりも数倍そそられる(笑)。
おすすめ度★★★★1/2(好きか嫌いか別にして一見の価値大。ジャンルはミュージカルです(嘘です))
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パレットナイフの殺人
日本・大映 1946年 71分
監督 久松静児
原作 江戸川乱歩
脚本 高岩肇
撮影 高橋通夫
出演 宇佐見淳/植村謙二郎
メモ 2000.11.29 CS
あらすじ
太平洋戦争最中、実業家の年の離れた妻・ゆきこは若い画家・松村に自分の肖像画を描かせていた。金で若い妻を買った夫は満州に渡り金儲けに余念がない(登場せず)。夫と同郷で何かと世話になっている特高の岩崎は恩人の家に出入りしている画家が気に入らず、左翼の疑いアリと投獄し責める。そして、「留守中奥様を守るのは私の役目です。奥様もいつまでもあんな男に関わっていれば、同罪ですぞ」と恩人の妻を脅す。
一転、戦後となり大金持ちは満州で亡くなり、画家は解放され、特高の岩崎は職を追われる。実は岩崎はゆきこに横恋慕していたのだ。そしてその財産に。しかし、画家松村にゆきこを奪われんとした時、欲と色に狂った男はなんと松村を殺さず、ゆきこを殺す。つまりはかわいさ余って憎さ百倍の女を殺し、その罪を画家・松村に着せようとしたわけ。
感想
えっと、あらすじ読まれてもわからないと思いますが、この作品は江戸川乱歩氏の「心理試験」の映画化です。江戸川乱歩氏は
「死の十字路」の次にこの作品を気に入られてたそうです。というのを聞いたら、もう他のは見なくていいかなって思ったりして(笑)。まあ、「蜘蛛男」ぐらいは見ようかな。有名だし。
古さを感じさせるセリフを別にすれば映像はなかなか面白いと思います。
おすすめ度
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カオス

監督 中田秀夫(「女優霊」「リング」「リング2」「ガラスの脳」)
脚本 斎藤久志
撮影 喜久村徳章(「CURE」)
音楽 川井憲次
原作 歌野晶午
出演 萩原聖人(便利屋・黒田五郎)/中谷美紀/光石研(小宮山隆幸)/ 國村隼(浜口警部)
あらすじ
「さらわれたい女」
感想
ほおぉと思ったところが3箇所あり映画を見た後に小説を読んだ所、ひとつは原作通りだったんですけれど後の2つは映画のオリジナルでした。演出だけでなく脚本もよくできていると思う。映画と小説は別物とはいえ後半は全然違う話になっている。まあ、派手になっているというか。これは嬉しい驚き。原作を越えたね(笑)。リアリティを出すための狂言誘拐の演出がだんだん本物になっていくシーンはゾクッとする。”小宮山佐緒里”のわけのわからん行動からカオス(混沌)という題名なのかと思っていたのですけれど、「カオス」というのは便利屋黒田が案外切れ者だったという”計算違い”から計画がどんどん狂っていくって所も現しているんですね。

この映画の萩原聖人は肩の力が抜けていて「CURE」よりいいと思う。中谷美紀は「ケイゾク」の柴田純なんですねぇぇ。全然違う。さぼてんはお顔がイマイチ覚えられません。年のせいでしょうか? この個性的ではないというかカメレオン俳優に見える(少なくともさぼてんには)所がこの俳優さんの強みだと思う。

もうひとつおまけ。不動産屋のおやじが「通貨と金髪」の大学教授役の諏方太朗って方でね、「この間見た見た」って嬉しかったです(笑)。
おすすめ度★★★★
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いぬ −LE DULOS デュロス(サツの犬)−
フランス 1963年 109分
監督 ジャン・ピエール・メルビル(
マンハッタンの二人の男
原作 ピエール・ルズー
撮影 ニコラ・エイエ
音楽 ポール・ミスラキ
出演 ジャン・ポール・ベルモント(シリアン)/セルジェ・レジアニ(モーリス・フォーゼル)/ジャン・ドサイ/ミシェル・ピコリ/フェビアンヌ・ダリ
メモ 2000.11.23 ビデオ
あらすじ
デュロスとは”密告者”の事。表の世界の規範からはずれた掟無用のならず者の集まりでありながらも、ギャング世界では”いぬ”は死で制裁される。
6年服役後出所したモーリスは仲間のレニと仕事を計画する。金庫破りの仕事の最中、表を見張っていたモーリスは警察がやってくるのにきづく。誰かがチクったのだ。”いぬ”は誰なんだ。
感想
「メルビルの最高傑作!」との誘い文句に惹かれる。見る・・・・。わかりにくい。何故あの男は殺されるのか?、何故あの女はひどい目にあうのか?、シリアンの行動はなんなんだ?と疑問だらけ。 もう一度、メモを取りながら見る。そして、もう一度見る。
やっと全体像が掴めた。ダンディズム溢れる。フィルム・ノワールファン必見作品。暗黒街の映画というだけではなく騙しのテクニックがうまい。見る者読む者を騙すのは本格推理小説だけではない、というのがわかる映画。
おすすめ度★★★1/2
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カル −刃物−
韓国 1999年 118分
監督 チャン・ユニョン(
「接続/ザ・コンタクト」
出演 ハン・ソッキュ(チョ・ミンソク刑事)/シム・ウナ(チェ・スヨン)/ヨム・ジョンア(オ・スンミン)/チャン・ハンソン(オ刑事)/ユ・ジュンサン(キム・ギヨン)/アン・ソクァン(検死官ク博士)
メモ 2000.11.17 梅田OS劇場
あらすじ
首都ソウルの橋の下に停められた車の中で、黒いビニール袋に入れられたバラバラ死体が見つかる。腕がない。身元をわからないようにするためか?と思われたが、検死の結果、足は別の人間の物であることが判明。どういう事なんだ? 少なくとももうひとり被害者がいるらしい。悪夢のような連続殺人なのか?
感想
見終わった後はありがちな犯人となるのですが、なにしろそれまでの持っていき方がうまく、騙される。特に豆ばっか食ってるおやじ、オ刑事が娘に電話しているシーンにしょっぱなから惑わされたさぼてんは、その脚本のうまさにホトホト感心しました。
ポラロイド写真を見て「何故刑事達が驚いたのか?」という謎は、「お互いに接点がないと思われていた被害者達が実は知り合いだった事。それもごく最近まで(髪型が変わっていない)。それなら、もうひとり写真に写っていない被害者(スヨンの父)もこの写真に写っているのではないか?」と思ったのではないかというのがさぼてんの推理です。

「夜、しのつく雨、犯罪現場、そしてサイコ物」ってところから「『セブン』に似てるなあ」と感じている自分に気づく。いけない、これはいけない。「近未来SF、夜、しのつく雨、雑多な街」の映画をみれば「ブレードランナー」を思いだすし。これは刷り込まれてイマジネーションが貧困になっているのではなかろか。こんな頭や目で映画を見ていてはもったいない。反省。
おすすめ度★★★★1/2
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マスカラ MASCARA
オランダ 1987年 98分
監督 パトリック・コンラッド
出演 シャーロット・ランプリング/マイケル・サラザン
メモ 2000.11.12 ビデオ
あらすじ
海辺の小さな街に住む姉と弟。姉ギャビーは夫を亡くし小さな娘と海を望む砂丘のお屋敷に住んでいる。弟バートは街の警察署長。独身の弟はある夜オペラ座に姉をエスコートするが、その舞台はオペラ狂のバートを魅了する。オペラよりもその赤くポッと光るハートのついた衣装に取り憑かれたのだ。
弟バートは姉を幼い頃から慕っていた。いや、恋をしていたのだ。その秘められたかなわぬ恋心はバートを蝕んでいた。他の女と関係を持つことができず、密かに妖しいゲイのアンダーな世界に身を置いていた。海岸の秘密クラブは夜な夜な街のお偉いどころが通い”おかまショー”が上演されている美しい虚構の場所。
ところが、弟の気持ちを何も知らない知りたくない姉ビャビーはオペラ座の衣装係クリスと恋に落ちる。嫉妬に狂い始める弟バート。
感想
ラスト、ギャビーがクリスに「愛してくれてありがとう」と告げるシーンでは、「ちゃうやろ、ちゃうやろ。『ごめんね、ぼーっとした私のせいでこんな事になってしもて。』やろ」と美しいシャーロット・ランプリングにさぼてんが文句をたれると言う、見ている最中は色々不満の多い映画だったんですけれど、今あらすじを書いていると弟バート役マイケル・サラザンがせつなくなってくる映画だった。 フランス映画とはまたひと味違ったヨーロッパ映画だと思う。退廃的。
おすすめ度★★★
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インビジブル Hollow Man−空洞の男−
米国 2000年 112分
監督 ポール・バーホーヴェン
脚本 アンドリュー・W・マーロウ
ストーリー ゲーリー・スコット・トンプソン/アンドリュー・W・マーロウ
撮影 ジョスト・バカーノA.S.C
音楽 ジュリー・ゴールドスミス
出演 ケビン・ベーコン(セバスチャン・ケイン)/エリザベス・シュー(リンダ・マッケイ)/ジョシュ・ブローリン(マシュ・ケンジントン)/キム・ディケンズ(サラ)/グレッグ・グランバーグ(カーター)/ジョーイ・スロトニック(フランク)/メアリー・ランドル(ジャニス・ウォルト)/ウィリアム・ディベイン(クレイマー博士)/ロナ・ミトラ(向かいの窓の女)
メモ 2000.11.10 ナビオ・シネ
感想
「トータル・リコール」
「スターシップ・トゥルーパーズ」のバーホーヴェン監督作品!と東宝系一番館で上映されていたにもかかわらず、あまり評判を聞かない・・・・、失敗作かも。でも最近SF映画が一番頭が凝らないし頭使わないしハートも痛まないしぃ楽しめるしぃという訳で期待度1/3で見に行く。ところが、なかなか面白かったんです。

「神をも恐れぬ科学者の所業が哀れな末路をむかえる」という定番のお話ながら、後半は「エイリアン」か「プレデター」かという展開で、今までの「透明人間」や「ハエ男」「ドクター・モローの島」等の悲哀さをみじんも感じさせずこちとらを疲れさせる事もなく、終わりました。この辺りの思い切っりのよさがバーホーヴェン監督らしい。姿が見えないという匿名性のいかがわしさがよく伝わってくる。 凡人7人と天才ひとりではどちらが残った方が世のためだったんでしょうか? ペンタゴンはどちらをとったのか? だいたいなんのための実験だったのか? という所から映画全体を見て「善」が勝ったと単純にいえないのがよく出来ている。

エグイ描写と透明人間の視線で動くハンディカメラの映像にいささか酔ったちびさぼ。ポップコーンなんか油っこいモノも食べてたしぃ。結局感想は「気持ち悪い映画」でした(笑)。何故あの天才科学者セバスチャンの精神のタガがはずれたのか?という話になって、やっぱスナックばかりの食べ物のせいではないかというオチになったわけ。「連合赤軍がリンチ事件を起こしたのは、インスタントラーメンやら缶詰ばかり食べていたからって説もあるねんよ。」というと、「前に子供らが孤島に流されて、2つに別れてひとつのグループは木の実を食べてたけど、もう片方のグループは獣の肉ばかり食べてたら凶暴になっていくって映画あったやん。」 「それは『蠅の王』っていう映画。人間は野菜を食べなあかんねん。野菜を。」という結論に(笑)。

壊れていくという点では、「ワイルドシングス」といい、この映画といいフル○ンになりたがっているようなケビン・ベーコンもいささか心配なんですケド(笑)。好きなもんで。

−おまけ−ケビン・ベーコンがかますジョークのご紹介(うろ覚えでスミマセン)
スーパーマンが女を捜して空を飛んでいると、ワンダー・ウーマンが屋根の上で大股広げて寝ている。おいしそう。ちゃかちゃかっとすますか。俺は何しろ素早いし(マッハなんとかの男)。スパーマンがさっと降りてさっと上がると、ワンダー・ウーマンがびっくりして「今のなんだったの!」とわめく・・・・と、
上にのっていた透明人間が「さあ? でもなんだかお尻がイタイ」
おすすめ度★★★★
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クローゼット・ランド CLOSET LAND
米国 1991年 93分
監督・脚本 ラダ・バラドワジ
撮影 ビル・ポープ
美術 石岡瑛子
音楽 フィリップ・グラス
出演 マデリーン・ストウ/アラン・リックマン
メモ 2000.11.4 ビデオ
感想
某国のお話。絵本作家が真夜中寝ている所を秘密警察に拉致される。わけわからない内に脅したりすかしたり拷問したりの尋問が延々続くという不条理物。身に覚えがまったくない絵本作家は、「お仕置きでクローゼットに閉じこめられた女の子が、暗闇の恐さを忘れるために毛皮を動物に見立てみんなと楽しく過ごすという空想にふける」という子供向けの絵本を「政治を批判している」と言われとまどう。容疑を認めて自白書にサインしろとせまられるのだ。

という映画を見ている最中ずーっと「そうか、この映画は、見え見えの子供の頃の精神的外傷(トラウマ)治療の荒療治を精神科医がしているんだな。どんでん返し物なのだ。」とよんでました。

・・・全然違うかったんですけどね(^^;)。

舞台劇みたい。登場人物がふたりだけの心理合戦というサスペンスながらも「人間の尊厳」をテーマにした社会派映画でした。ビデオ屋さんでは「ミステリ・サスペンス」のジャンルに置いてあったんですけれど。ポランスキー監督の「死と乙女」もどちらにジャンルわけすればよいかわからない映画ですけれど、あの映画よりずっと主張したい事が前面にでていた。さすが、ポランスキー監督。巧み。特に最後は「アムネスティ」やら「マハトマ・ガンジーの言葉」やら出てきて「わかった。わかったから、みなまで言わんで、ええねん」と思いましたね。あのラストは蛇足だと思う。 旬のマデリーン・ストウは美しいです。
おすすめ度★★★
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WEBMASTER −ウェブマスター
 ブリュッセル国際ファンタジー映画祭特別賞
   (「スタートレック」「ダークシティ」「カラー・オブ・ハート」「ラグッツ」に勝って栄えある受賞)
デンマーク 1999年 102分
監督/脚本 トーマス・ボ−シュ・ニールセン
撮影 ラース・ベイヤー
CG カーステン・スキット
音楽 アルニ・シュルツ
出演 ラース・ボム(JB)/ブック・シャボウ(ミア)/カリン・ローベック(バービー)/ヨルゲン・キール(ストイス)/マーズ・パルズム(ダット)/ドルス・ウェス・レアマン(ダーリン)
メモ 2000.11.3 心斎橋ビックステップ パラダイスシネマ レイトショー
あらすじ
いかれポンチばかりが出てきて、おてんとう様の下でまっとうに働いている人が皆無(単なる比喩です)でいったいどういう経済の仕組みでなりたっている社会なんだろうと疑問に思う近未来。コンピューターのハッカーだったJBは半年かけて難攻不落と言われたネットワークへの侵入に成功するが、どこか抜けていてすぐさま捕らえられ、そのネットワークの主(あるじ)ストイスに殺されるかと思いきや、腕を買われそのネットの管理者(ウェブマスター)の職を与えられる。つまりは、サイバー世界の用心棒って訳。しかし、トップ4人しかはいる事ができない<レベル1>に侵入者が現れる。しかもボス(ストイス)の口座から金が流出しているという。裏切り者ではと疑われたJBは、スレイスから時限爆弾を体に仕掛けられ、36時間以内に犯人を捕らえないとお前のハートを止めると言い渡された。
感想
「ブレードランナー」を彷彿する導入部から「重くて地味でレトロなSFやなあ」と思っていたらサイコパスの話になってきてフムフムと思っていたんですけれど、見終わってしみじみ思う。これは正調ハードボイルドのお話なんだと。特に、話がなかなか進まない所が(笑)。主人公があまり強くない所が。しょっちゅうやられている所が(笑)。悪女がでてくる所が。「チャイナタウン」と同じく子供の頃からのトラウマが騒動の元の所が。

この作品がデビュー作の監督さんは、「ブレードランナー」('82 リドリー・スコット監督)、「未来世紀ブラジル」('85 テリー・ギリアム監督) 「デリカテッセン」('91 ジャン・ピエール・ジュネ/マルク・キャロ監督)に影響を受けた。撮影監督は「セブン」('95 デビッド・フィンチャー監督)に影響を受けている。と語られていました。見る人によって色々でしょうが、自分でも意外な事に何故だかわからないながら「セブン」の影響が強いと感じる。ロマンティックなんだな。
おすすめ度★★★1/2(上の4作品が好きな人は見てみましょう)
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