2000年10月の映画


ジェラシー BAD TIMING

アメリカ 1979年 95分
監督 ニコラス・ローグ(「地球に落ちてきた男」)
出演 テレサ・ラッセル/アート・ガーファンクル/ハーベイ・カイテル
メモ 2000.10.28 ビデオ
あらすじ
救急車で女が病院に運び込まれる。多量のアルコールと睡眠薬を飲んで意識不明状態。救急車に付き添ってきた男は女の友人だという。
感想
現在と過去と想像と妄想の世界が同じ場面で絶えず入れ変わり、そこにクリムトやシーレの絵を挟み込み、”かわいくて、そして憎くい”という複雑で単純な人間心理がめまぐるしく交差するというモザイクの様なめくるめく映像作品。芸術品のおもむきさえあるような気がする。

性的にも感情的にも強く惹かれながらも、男の方は神経質な精神科医、女の方はお金に困らないボヘミアンな有閑マダムという相性の悪いふたり。会えば争い、会わないと思いがつのるというどうしようもない関係。煮え詰まったふたり。そこで勝負にでた女の衝動は? それを受けた男の衝動は? どろどろした話を斬新に映像化してありました。

精神科医のアレックスに「サイモンとガーファンクル」のアート・ガーファンクル。退廃的な女にテレサ・ラッセル。さぼてんはこの方の映画あまり見ていないんですけれど割と好きです。ちょっとシモーヌ・シニョレに似ているかな。最近では、 
「ワイルドシングス」で、熟れに熟れた肢体を披露されていました。自殺か他殺か事故かの謎を究明しようとする犬の様に臭いを追い続ける自己中の根っからの刑事にハーベイ・カイテル。
おすすめ度★★★
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セリ・ノワール serie noire
仏 1979年 111分
監督 アラン・コルノー
出演 パトリック・ド・ヴェール/マリー・トランティニャン
メモ 2000.10.22 ビデオ
あらすじ
すぐに破けるようなスーツといった半分インチキ商品を売っているセールスマンのフランク・プパールは、ローンの取り立てもしている。あるさびれた屋敷に店子のローンの取り立てに訪れた時、老婆からコートの代金に姪のモナを差し出される。少女はいつもこんな事をさせられているようだ。
感想
レンタルビデオ屋さんのリュック・ベッソン・セレクションの棚の前でこの作品を手に取る。「これ、見逃したんよなあ」 「どうしようかなあ」 「当たり( 
「チャオ・パンタイ」 「サンタクロースはゲス野郎」)、はずれ(「溝の中の月」 「人生は長く静かな河」)、どっちとも言えない(「料理は冷たくして」)あるしなあ。」と悩みながら、パッケージの内容紹介を読んでいると原作が 「ポップ1280」のジム・トンプソンと書いてある。原作は「HELL WOMAN(地獄の女)」・・・・そう、アタシに見ろって事なのね・・・と借りました。

見てどうだったかと言うと、、、、よかったです。
「ポップ1280」を読んでいなかったら「パラノイア男」とか、「分裂症ぎみ」とか「複雑なのか単純なのか?」「わけわからへん。理解不能」としか思わなかっただろう主人公フランクの優しく冷酷な心情と行動が理解できるような気がする。
映画ばっかり見ているだけではあかんね。本を読むというのも大事ね(たとえミステリだけだとしても)。相乗効果があると思う。

血の巡りの悪そうな大男のティキデス役の役者さんはどこかでみたよなあ、と思っていたのですがハリソン・フォードの「逃亡者」の”片腕の男”でした。
マリー・トランティニャン、17才の時の作品です。リュック・ベッソン監督が「天才」と言い切った主人公フランク・プパール役のパトリック・ド・ヴェールという役者さんはこの作品の3年後自殺されたそうです。
おすすめ度★★★★
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悪女の構図 BURIED ALIVE
アメリカ 1990年 93分
監督 フランク・ダラホント
原作 デビッド・A・デービス
製作 ニッキ・マービン
脚色 マーク・パトリック・カルトウッチ
出演 ティム・マシソン(クリント)/ジェニファー・ジェイソン・リー(ジョアンナ)/ウィリアム・アザートン(コートランド)
メモ 2000.10.21 ビデオ(TVムービー)
あらすじ
建築家のクリントは故郷の田舎で美しいブロンドの妻とふたり暮らし。建設業は成功し後は子供がいれば大満足だ。しかし妻のジョアンナは都会人で田舎暮らしが性に合わない。子供も欲しくない。ニューヨークにもどりたいジョアンナは愛人で医者のコートランドと結託し夫に心臓麻痺に見える薬を飲ます。しかし、死んだはずのクリントは墓の中で仮死状態から甦る。
感想
「溶接用のマスク」をかぶり復讐鬼と化した主人公が、安もんのロボコップみたいで「ブッ」と笑ってしまったのですが、なかなか面白かった。主人公が大工だというのが生きている(笑)。一晩で家を迷路化する所がユニークでした。原作も読んでみたい。
ウィリアム・アザートンがあいかわらず賢くてまぬけな役を好演。いいよね、この役者さん。「ダイハード」で悪しきマスコミを代表していた人です。「ダイハード2」では知る権利を行使して空港をパニックに陥れた人でした。
おすすめ度★★★
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ハネムーン・キラーズ THE HONEYMOON KILLERS
 RAY AND MARTHA ARE LOVE.TEHY'RE ON A HONEYMOON.
アメリカ 1970年 105分 モノクロ
監督・脚本 レナート・カッスル
製作 ウォーレン・スタイベル
撮影 オリヴァー・ウッド(「2days」「フェイス/オフ」)
編集 スタンリー・バァーノウ/リチャード・プロフィ
音楽 グスタフ・マーラー(「交響曲第六番 第一楽章」)
出演 シャーリー・ストーラー(マーサ「セブン・ビューティーズ」「ディア・ハンター」)/トニー・ロー・ビアンコ(レイモンド・フェルナンデス)/ドーサ・ダックワース(マーサのママ)/ドリス・ロバーツ(バニー)/マートル・ヤング(マリリン・クリス)/ジャネット・フェイ(メアリー・ジェイン・ヒグビー)
メモ 2000.10.14 扇町ミュージアムスクエア
あらすじ
文通クラブで知り合ったマーサとレイ。実はレイは結婚詐欺師だった。婚期を逸しママとふたり暮らし。欲求不満で食べ続け200ポンドの体重になった看護婦のマーサは不実な美男子のレイ惚れこみ、ふたりは時には姉と弟、時には兄と妹と偽って文通でしりあった中年女性達をカモにする異色カップルになりはてる。
1940年代「ロンリー・ハーツ・キラー」として全米を震撼させた二人組の実話を映画化。
感想
怖い。恐ろしい。ストーリーも映像も。帰り道夜の暗い町を自転車で走りながら”愛の不毛”を感じ寒気と震えが走る。主人公達にはまったく同情できないながらも悲しいのだ
よく知っていると思っていた人でさえ心とか感情の動きというのは私には理解不能だと最近思う。ひとりにぎりの人以外、多くの人は孤独なのだ。いくら好きでもその気持ちが相手に届くかどうかも、届いてそれでどうなるのか?も不明。という訳で(なにがそういう訳かわかりませんが)哀しい映画だった。

公開当時も今もあまり一般受けしないながらも根強い人気のあるカルト映画だそうです。この巨漢のぶすっとした主役の女の人見たことあるなあと思っていたら、「セブン・ビューティーズ」でナチの収容所の女所長をしていた人みたい。収容所の囚人の主人公に毎夜お勤めをさせるという一度みたらそのすごみが忘れられない異端の役。1999年2月に心不全で亡くなられたそうです。監督・脚本のレナード・カッスルという方は元々オペラ作曲家で友人のプロデューサー・ウォーレン・スタイベルからの依頼で作った初監督作品かつ唯一の作品。スタイベルがその前に一週間でクビにした監督が無名時代のマーティン・スコセッシ。フランソワ・トリュフォーが「もっとも好きなアメリカ映画」とあげているそうです。
おすすめ度★★★★★
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ナッティプロフェッサー2−クランプ家の面々− NUTTY PROFESSOR U:THE KULUMPS

アメリカ 2000年 104分
製作 ブライアン・グレイザー
監督 ピーター・シーガル
出演 エディ・マーフィ(Dr.クランプ他8役)/ジャネット・ジャクソン(デニーズ)/ラリー・ミラー/ジョン・エイルズ
メモ 2000.10.12 ABCホール試写会
あらすじ
エディ・マーフィが完全復帰した
「ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合」の続編。前回もてないバカにされる孤独だあれだこれだはすべて身長180センチ体重180キロのデブのせいで、もうイヤダと痩せ薬を発明した天才化学者クランプ教授。「人は見かけではない」という夢物語どおりものすごい美人の彼女も出来てメデタシメデタシで前回は終わりました。ところが痩せたかっこいいもうひとつの人格バディ・ラブはしっかとクランプ教授の遺伝子におじゃま虫で居座り続け、いらん時に自己主張を始める。つまりDr.クランプは多重人格になってしまったわけ。
感想
「たたなくなってもアルツハイマーになっても僕を見捨てないでくれる?」というどこか情けないような可愛らしいような男の深層心理の映画化という気もせんではありませんがなかなか面白かった。イジイジしている男性軍に対し元気いっぱいの女性軍をエディ・マーフィは楽しんで演じていましたね。別の性になるというのは楽しいのかも(笑)。
「あたしにしかできない職業」のメイザおばあちゃんに匹敵するぶっとんだばっちゃん”グランマ・クランプ”がいいです。パパ・クランプのボーリングの9番ピン(イジワルでなかなか倒れない)マザー・インロー(義理の母)なのかな。アタシもサバサバとしたあんなバッチャンになる(笑)。
エディ・マーフィは主役というよりでずっぱりのひとり9役をこなし、後は恋人デニーズ、教授の助手、学部長ラリー・ミラーの3人ぽっきりというワンマン映画。ひとり何役もこなす合成で難しいのは目線を会わす事だそうです。テニスボールを使って会わせたという説明でした。エディ・マーフィはどの役でどんな演技をしていたかを完璧に覚えられる天才的な記憶力を発揮した映画とか。ふとっちょで人のいいクランプ教授のエディ・マーフィはかわいい(笑)。犬の遺伝子を持ちどうしてもその習性から抜けられないラブ・バディとか、ハムスターのホモダチになってしまいそれが全米に放映された学部長ラリー・ミラーもかあいそうでおかしいの。

今回の試写会はコムロ美容外科という所の提供でした。その美容外科の2000年のキャッチフレーズは「くたばれ!今までの私」だそうです。私、劣等感を持ち続けるより整形でもなんでもして前向きに元気に生きている人の方が好きなんですけれど、この映画の中で「人は見かけじゃないのよ。ありのままの自分を愛してくれる?」みたいなセリフがあってそのギャップさにいささか笑ってしまいました。映画の内容を見て提供してるんやろか? 不思議だ。
おすすめ度★★★1/2
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X−MEN

アメリカ 2000年 104分
監督 ブライアン・シンガー
ストーリー トム・デサント/ブライアン・シンガー
脚本 デイビッド・ハイター
撮影 ニュートン・トーマス・シーゲル
出演 ヒュー・ジャックマン(ローガン/ウルヴァリン)/ファムケ・ヤンセン(ジーン・グレイ)/ジェームズ・マーズデン(サイクロップス)/ハル・ベリー(ストーム)/アンナ・パキン(ローグ)/タイラー・メイン(セイバートゥース)/レイ・パーク(トード)/レベッカ・ローマン=ステイモス(ミスティーク)/パトリック・スチュアート(エグゼビア)/イアン・マッケラン(マグニートー)/パトリック・スチュワート(エグゼビア)
メモ 2000.10.8 なんば南街会館
感想
この映画好きだ。
「マトリックス」と比べられていましたがあんな派手な”けれん”はありません。どちらかというと「バットマン」の方に似ているけれどあんなにおふざけでもありません。とても真面目なんです。「ユージュアル・サスペクツ」のブライアン・シンガー監督らしく”夜の闇”がきれいだ。
「ディック・トレイシー」を始めとしてアメコミの映画化はイマイチ好きになれないんですけれど、この映画はイチオシ。おじちゃんふたり(イアン・マッケランVSパトリック・スチュワート)の争いもいいんだけれど、若手の戦いが好きだ。(ただし、悪役のセイバートゥースはいまいち。単なるアホにしかみえん。)
なんたって 
「スターウォーズ エピソード1−ファントム・メナス−」のダース・モール、「スリーピー・ホロウ」の首無し騎士役のレイ・パーク扮するトード(ひきがえる)がいい。舌がしゅるしゅる伸びたり、壁をへらへらへらと登る所なんぞとてもかっこいいんだもん(笑)。
おすすめ度★★★★
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サウスパーク SOUTH PARK BIGGER,LONGER & UNCUT

アメリカ 1999年 81分
トレイ・パーカー 監督/製作/原案/脚本/作詞・作曲/声
マット・ストーン 製作/原案/脚本/声
マーク・シェイマン 作曲
メアリー・ゲイ・バーグマン 女性キャラ・声
アイザック・へイズ シェフ役・声
出演 スタン・マーシュ/カイル・ブロフロフスキー(ユダヤ人)/エリック・カートマン(自己中デブ)/ケニー・マコーミック(貧乏白人)/グレゴリー/ウェンディ/ギャリソン先生&ハット君/テレンス&フィリップス(カナダ人コメディアンT&P)/フセイン/アイク(カイルの弟)/サタン/シェフ
メモ 2000.10.7 テアトル梅田
あらすじ
ロッキー山脈に囲まれた小さな町サウスパーク。そこですくすく育った子供たちは「T&P」のギャグが大好き。カナダのコメディアンT&Pの映画「燃えよコウモン」が町の映画館で上映されると知り、4人組スタン、カール、エリック、ケニーは映画館に乗り込むが親と同伴でないとXと入館拒否される。それではと、浮浪者を金で釣って保護者にしたて映画館に入り込んだ。映画を十二分に堪能した4人組は下品な言葉をたんまり仕入れ、友達に自慢しまくる。とその言葉に目くじらたてる先生とPTAがいた!
感想
過激というか、かわいくてキツイ毒にあたってくらくらする。
ミュージカル仕立てだったというのが意表を突いていた。驚き! 見ているこっちは、楽しいやらおかしいやら哀しいやら怖いやらムカツクやらでとってもいそがしい(笑)。
「フルスタリョフ、車を!」をロシア映画とするなら、この映画はまさしくアメリカ映画。「正義は右にあり」となったら右にダアーと走り、左となれば左へダアーとなだれこみ、それでも根底は自由のために闘うという「アメリカは良くも悪くもこういう国でんねん。」というある種開き直りともとれるストーリー作りだと思う。たいしたもんだと思う。何もかもおちょくり皮肉に満ち満ちているけれど、それでも明るく前向きなのが・・・・・アメリカなのね。全世界の悪いことはすべて「フセインのせいだっ!」っというのが笑えた。
おすすめ度★★★★1/2
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