1998年8月の映画

ハッピィブルー

米 1996年 99分
監督 マット・リーブス
出演 グウィネス・パルトロウ(「セブン」「大いなる遺産」)/デビッド・シュウィマー/バーバラ・ハーシー/マイケル・ラパポート/トニ・コレット
メモ 1998.8.30(日曜)ビデオ
あらすじ
大学を卒業して一年、建築家をめざし就職活動中のトム・トンプソンの元に突如、ルース・アバナシーと名乗る女性から電話がかかってくる。「死んだ息子ビル・アバナシーの棺をかついで欲しい。」と。 ハイスクールの同級生で遺書の中に車を残すとかいてあるらしいが、さっぱりビル・アバナシーを思い出せない。
感想
「そろそろ年貢の納め時、身をかためましょか」ってな友達もチラホラあらわれてくる25才。あれです、「人生の節目」ってヤツ。「ダイナー」や「フォーウェディング」と少し似てるかな。ユーモアまじりで作られています。最後まで正体のぼやけているビル・アバナシーの断ち切った人生に対し、これから「人生の節目節目」をどうクリアしていくか−結婚式の挨拶みたい−。何をそこで得るのか。そして何を失うのか。よおく目を開けてみるのじゃと言っているような気がする。

強烈な印象のママ・ルース・アバナシー。ルース役がバーバラ・ハーシーなんです。「フォーエバー・フレンズ」のバーバラ・ハーシー、好演というかなんというか。驚きました。「90年代の”卒業”」・・ねぇ。

主人公のトム・トンプソンはお人好しで優柔不断のママっ子で(ユダヤのママ)ダサくて、そしてとても優しい。一歩一歩ゆっくり人生を歩んで面白みのある大きなおじさんになって欲しい。−あの弔辞を読む所はなかなかの名(迷)場面。厳粛な中での滑稽さはアン・タイラー著「ブリージングレッスン」みたい。「ブリージングレッスン」(ピューリッツァー賞)では友達の葬式で、未亡人から「故人の思い出に私達二人の結婚式でお祝いに歌ってくれた(20年以上前)歌をまた歌って欲しい」と強要されるのだ。必死で歌詞を思い出す参列者達。おかしくて哀しい。
おすすめ度:★★★
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人生への回帰

仏 1949年 120分
メモ 1998.8.30(日曜)ビデオ
あらすじ
第二次世界大戦後、ドイツ軍の捕虜収容所から帰還した人々を描く4人の監督によるオムニバス映画
<第1話 エマの場合>監督:アンドレ・カイヤット 
<第2話 アンワーヌの場合>監督:ジョルジュ・ランパン
<第3話 ジャンの場合>監督:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
<第4話 ルネの場合>監督:ジャン・トレビル
<第5話 ルイの場合>監督:ジャン・トレビル
感想
アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督(「恐怖の報酬」) ルイ・ジューヴェ(井上雅彦著「竹馬男の犯罪」に書かれていたフランス映画・役者専門の養老院の話「旅路の果て」出演。「犯罪河岸」を見たいゾ)主演の第三話「ジャンの場合」がミステリの名手らしい緊迫感あるストーリーでした。

<詳しくストーリー書いています>
捕虜収容所から脱走したジャンは、足を負傷し痛みで苦しむ毎日だった。痛むのは足だけではなく、生きる気力もわいてこない。インテリだったジャンは戦争で人間不信におちいっていると思う。
ドイツ軍が撤退した後のパリの下宿屋のジャンの部屋に、脱走した独の兵隊が逃げ込む。警官に追われ瀕死の重傷を追っているドイツの兵隊を、同じ脱走兵のジャンは警察に引き渡す事ができない。医者に頼み込み治療をうけさせようとするが、医者は「ゲシュタポの手先でフランス人を拷問にかけた戦犯の死刑囚だ。」と警察から聞き込んでくる。
ジャンは「何故人が人を痛めつけ拷問し、殺してしまう事ができるのか?」を知りたいと(私も知りたい)瀕死のドイツ兵にモルヒネを打ち、問いつめる。「お前は特別な人間なのだ。戦争によりその性癖が表にあらわれたのだ。」というジャンに対し、ジャンと同じく元言語学の教師だったというドイツ兵は「サドではない。普通の人間だ。」と答える。ジャン自身、自分のしている事はこのドイツ兵がした拷問と同じではないかということに気づく。
ドイツ兵の言葉「青春時代は孤独だった。」から「両大戦間」のドイツ混乱とドイツの普通の人々の不幸、そしてナチスの台頭が浮かび上がってきます。

<戦争からの帰還で思い出した話−うちにもいた帰還者−>
私の父は太平洋戦争さなかまだ少年だったのですが、なにしろ空を飛びたかった。「ヒコーキ乗り」になりたかった。というわけで、海軍の試験を受けたらしい。が本人いわく「目が悪くて落ちた」とか。広島の呉まで学校の試験をさぼって受けに行った結果、教頭から進級させないと説教をうけ「ふーんだ」という事で学校をやめ、通信の学校に行き、即席の軍属の通信士(兵隊ではない)となり終戦の昭和20年5月に朝鮮の釜山にわたったらしい。16才の時。
母は大阪の八尾(やお)にいたので激しい空襲を受けている最中(八尾には昔から飛行場があったためかなり爆撃された)、敗戦まぎわで何もすることがなく、朝鮮で桃やアイスキャンデーの食べ過ぎでお腹こわしたとか何故かノー天気な毎日を過ごし、8月22日の夜ポンポン船で魚雷のいっぱい浮いている中、下関に帰ってきたとか。このあたり兄貴と同じでいやな事はまったく覚えていないのかも。
大阪の住吉(すみよし)に家があったんやけど「空襲で焼けてたらとか、おじいちゃんやおばちゃん(父の姉)が死んでたらとか心配せーへんかった?」と聞くと「ぜんぜん」との答え。さすがに横町まで帰ってきたときは、空襲で焼けていた家があったのであせったらしいですが、帰ってきた父をみた祖父も伯母も「あー帰ってきたんか。」と2、3日旅行に行っていたみたいな迎え方だったそうだ。
おすすめ度:★★★1/2
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レインメーカー THE RAINMAKER

米 1997年 135分
監督・脚本 フランシス・フォード・コッポラ
原作 ジョン・グリシャム(「原告側弁護人」)
撮影 ジョン・トール
メモ 1998.8.29(土曜)天六ホクテンザ1 5割以上の入り
出演 マット・デイモン(ルーディ・ベイラー)/ケリー・ライカー(クレア・デーンズ)/ジョン・ボイド(レオ・F・ドラモンド)/ダニー・グローバー(タイロン判事)/ダニー・デビート(デック)/マリー・ケイ・プレイス/ミッキー・ローク(ブルーザー・ストーン)/ロイ・シャイダー/バージニア・マドセン/テレサ・ライト/ジョニー・ウィットワース
メモ 1998.8.26(水曜)ビデオ
あらすじ
ロースクールの3年生ルーディ・ベイラーは、コネも金もなく大手の法律事務所に縁もなく、”シャーク(鮫)”とあだなされるブルーザー・ストーン(ミッキー・ローク)の事務所に雇われる。「1000ドル稼げ。三分の一はお前の取り分だ。もし1000ドルに足りない場合は、俺への借金になる」という”公平な条件”だった。病院での事故患者の追っかけ仕事を、ベテラン調査員のデック(ダニー・デビート)から仕込まれる。
感想
ちょっと寝不足気味の上、法廷物だし、2時間以上と長いし「途中で眠くなったらどうしょ」と思っていたのですが、まったくそんな事はありませんでした。
一場面一場面が気持ちいいくらい短めに編集されていて飽きさせない上、一本筋が通って話の展開が実にわかりやすく作られています。着地も決まっていました。「し切り直し」ができる社会が羨ましい気もする。

「仮面の男」と同じく脇の固めがすばらしい。悪役のジョン・ボイドやロイ・シャイダーの余裕のある演技。そこはかとなくユーモアさえ含んでいる。ミッキー・ロークの危険な香りがただよってくる怪演。ダニー・デビートってどの映画も同じ様な役なのに引き込まれるのは何故?下品さと知的さが同居しているから? 
印象的だったのはロバート・デ・ニーロ似の白血病の息子を持つパパ。「クロッシング・ガード」の娘の墓参りにいけないジャック・ニコルソンと同様、死に瀕している息子を直視できない。その悲しみと無力感が伝わってくる。

「ストリート・キッズ」に続いて「仏陀の鏡への道」を読んでいるんやけど、したたかでありながらナイーブで一途な若者、主人公のニールはさぼてんの頭の中では細めのマット・デイモン。

ルーディの大家さんミス・バーディ役のテレサ・ライトには驚きました。ヒッチコック監督作品「疑惑の影」の主人公。クレア・デーンズもバージニア・マドセンも白血病のジョニー・ウィットワースもママ役のマリー・ケイ・プレイスもダニー・グローバーもみーんな◎。
おすすめ度:★★★★
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ナッティ・プロフェッサー クランプ教授の場合 THE NUTTY PROFESSOR

米 1996年 96分
監督 トム・シャドヤック
出演 エディ・マーフィ/ジェイダ・ピンケット/ジェーイムズ・コバーン
メモ 1998.8.26(水曜)ビデオ
あらすじ
クランプ教授は、DNA組み替えによるやせ薬の研究中。なっがい間自分のアレにもお目にかかっていない巨漢。ミス・パーティの心をつかむため、自らやせ薬を飲み120キロ一気に痩せる。
感想
面白かった。一人7役とは! エディ・マーフィすごい。 クランプ教授はぼってりしていて、動作がチャメ。かわいい。エディ・マーフィこれからはこれでいったら? どう?
一つの体に二つの人格がせめぎ合うという所が、「ジキル博士とハイド氏」や「オール・オブ・ミー」に似ている。(スティーブ・マーティン、リリー・トムリン)
美人のミス・パーティ(ジェイダ・ピンケット)、見たことあるなあと思っていたら↓の「スクリーム2」の最初に出演。美しくてハイセンスな人。
おすすめ度:★★★1/2
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スクリーム2 SCREAM2

米 1997年 122分
監督 ウェス・クレイブン
脚本 ケヴィン・ウィリアムソン
撮影 ピーター・デミング
音楽 マルコ・ペルトラミ
出演 ディヴィット・アークウェット(デューイ)/ネーヴ・キャンベル(シドニー)/コートニー・コックス(ゲイル)/ジェイミー・ケネディ(ランディ)/ジェリー・オコネル(デレク)
メモ 1998.8.23(日曜)梅田ピカデリ
あらすじ
↑のパンフのデザインいいでしょ。夜行塗料つきで暗闇で光るの。いいでしょってちっとも羨ましくない?
スクリームの続編
感想
誰も彼もみ〜んな怪しい。
またしても殺人鬼の 「お前の好きなホラーは?」 の問いかけの答えが「ショーガール」には笑った。
続編の映画談義もおもしろい。曰く「殺しを増やす」(^^)
「グリシーヌ病院の惨劇」が「本格物」を逆手にとってパロッているのと同じく、「続編」というのを逆手にとって武器にしてすれっからしのホラーファンをおちょくってました。大学の女子クラブの二人の動きも双子のよう。おもしろいような、気色悪いような。ランディから続編映画についてレクチャーされているデューイの一生懸命考えているお顔。さぼてんも人の話を聞いて理解しようと努力してる時、あんな顔をしてるのかもと思うと実に恐い。

4分の1あたりました。って事は騙されたって事。ハハハ。第1作の冒頭の「電話クイズ」がこうつながるわけか。

ただ、飛び道具よりも「ナイフをふりかざしてシュパシュパと空を切る」スタイルは続けて欲しかったな。そこんとこマイナス1/2。
おすすめ度:★★★1/2
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タンゴ TANGO

仏 1992年 88分
監督・脚本 パトリス・ルコント(「仕立屋の恋」)
撮影 エドゥアルド・セラ
出演 フィリップ・ノワレ/リシャール・ボーランジェ/ティエリー・レルミット/ミュウ・ミュウ
メモ 1998.8.20(木曜)CS
あらすじ
いかれたパイロットのバンサンが複葉機で大空を飛んでいる間、妻は何をしているかというと「ウワキ」だった。
感想
「女は好き、好きやねんけど嫌い」という複雑な男3人が「よその女にちょっかい出しすぎて、妻に愛想をつかされ捨てられる(あんたが悪い)。しかし忘れられない。忘れるためにはいっそ妻に死んでもらう(どこをどう押したらこういう論理になる?)」と決心した男の思いをとげるため、家出した妻をフラフラと捜すロードムービー。

はじめの「いかれ男リシャール・ボーランジェの確信犯的犯行」恐いというか、おもろいというか。好きやねんなあ、このノリ。このおじちゃんのドスのきいた声と迫力あるお顔。
おすすめ度:90分くらいの映画ってイイ★★★★
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オーソン・ウェルズのフェイク 

仏=西独=イラン 1975年 89分
監督・脚本 オーソン・ウェルズ
出演 オーソン・ウェルズ/オヤ・ゴダール/ジョゼフ・コットン/ローレンス・ハーヴェイ
メモ 1998.8.15(土曜)ビデオ
感想
 
「この間」ブーたれていましたが、すぐに見ることができました(^^)。だれに感謝していいのかわかりませんが、ありがとう。これからも古いミステリ映画をどんどんビデオ化してくださいませ。

ドキュメンタリー・タッチの虚実ないまぜにした、ラジオ・ドラマ「宇宙戦争」で名をなしたオーソン・ウェルズが「いたずらっぽく笑っている」映画。映像というのは、いかに真実と銘打っても「虚構の世界」なんだと言っている難解かつお遊びの映画。

オーソン・ウェルズの奇術が見れる。やっぱ魔法使いなんだ。そして贋作画家ホーリーがピカソ、モジリィアニ、マティスのタッチで描くシーン、圧倒される。
おすすめ度:★★★1/2
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アンラッキー・モンキー UNLUCKY MONKEY

日本 1997年 86分
原案・脚本・監督 サブ
撮影 栗山修司
出演 堤真一(山崎)/清水宏(釜田)/鈴木一功(金田)/山本亨(松田)/吉野公佳/田口トモロヲ
メモ 1998.8.15(土曜)扇町ミュージアムスクエア
あらすじ
銀行強盗を今まさにやらんとした2人組が、すでにやりとげ逃げる途中の別の銀行強盗と出くわす。
感想
いやーすごかった。恐い。 
「リング」 「CURE」より恐い。恐いんやけどじつに滑稽
導入部で観客を引き込む。2つのストーリーが交差したり離れたり巧妙かつスピーディーに組み立てられていました。

この監督さんの作品ははじめてなんやけど、大友克洋の短編劇画に少し似ている。短編集「SOS大東京探検隊」に収録されている「訪問者」のようなテイストもあり。一晩の悪夢のような不条理劇ということで、 「アフター・アワーズ」にも似たトコあり。
おすすめ度:初日一回目立ち見あり、8割若い女性★★★★1/2
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ノックは無用 DON'T BOTHER TO KNOCK

米国 1952年 77分
監督 ロイ・ウォード・ベイカー
原作 シャーロット・アームストロング
撮影 ルシアン・バラード
音楽 ライオネル・ニューマン
出演 マリリン・モンロー(ネル)/リチャード・ウィドマーク(ジェイド)/アン・バンクロフト(リン)
メモ 1998.8.14(金曜)BS録画
あらすじ
現大阪府知事の長寿番組・・・ではなく(言うとおもた?)マリリン・モンロー「ナイアガラ」の前年の作品。戦争でパイロットの恋人をハワイ沖で撃墜されたネルは、精神に変調をきたした。治癒しホテルのエレベータ係をしている叔父をたよってニューヨークにでてきたネルは、臨時のベビーシッターを一晩勤める。
感想
「ナイヤガラ」の助演から有名になったと思っていたマリリン・モンローですが、こういう作品があったのですね。もろいガラスのような心が「恋人との中をじゃまする物」に出会ったときの狂気。厳格な両親、封建的な田舎で恋人との想いを十分とげられないまま、相手が戦死してしまうという不完全燃焼の思い、深い喪失感、悲しみが伝わってくる映画です。

原作はシャーロット・アームストロング。「始まりはギフトショップ」がイマイチだったのですが、「魔女の館」「ノックは無用」も読んでみよう。

ラストはまあ、この時代の映画なのかなあ。
おすすめ度:★★★1/2
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暗黒街の弾痕 YOU ONLY LIVE ONCE

米国 1937年 86分
監督 フリッツ・ラング
撮影 レオン・シャムロイ
出演 ヘンリー・フォンダ(エディ)/シルビア・シドニー(ジョー)/ウォー・ボンド/ジーン・ディクソン
メモ 1998.8.13(木曜)ビデオ
あらすじ
銀行強盗の罪で服役していたエディは、出所後待っていてくれた恋人のジョーと結婚する。しかし世間の目は冷たく、風当たりは強かった。
感想
ボニーとクライドをモデルにした最初の映画との事。後半の若い男女の逃避行、モノクロ映画ならではの闇、影、光、そして霧が使われています。この霧が幻想的な雰囲気をだしているあたりや、新婚旅行先のホテルの庭でのしっとりした情感、ヨーロッパのそれもドイツ出身の監督ならではのように感じます。

今ヨーロッパや香港の監督のハリウッド進出がいわれますが、昔から戦禍を逃れてアメリカへやってきたヨーロッパ出身の監督から影響を受けて発展してきたんですね。外部のパワーを取り込んでいくその力が移民の国の強みなのでしょうか。・・・とまた知ったような事を書く(^^)。
おすすめ度:★★★1/2
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L.A.コンフィデンシャル L.A.confidential
 1997年度アカデミー最優秀脚本賞、最優秀助演女優賞

米国 1997年 138分
監督 カーティス・ハンソン(「ゆりかごを揺らす手」「激流」)
脚本 ブライアン・ヘルゲランド/カーティス・ハンソン
原作 ジェームズ・エルロイ
撮影 ダンテ・スピノッティ(「ラスト・オブ・モヒカン」)
音楽 ジェリー・ゴールドスミス
出演 ラッセル・クロウ(バド・ホワイト)/ケビン・スペイシー(ジャック・ビンセンズ)/ガイ・ピアース(エド・エクスリー)/ジェイムズ・クロムウェル(ダドリー・スミス)/デビッド・ストラターン(ピアス・パチェット)/キム・ベイシンガー(リン・ブラッケン)/ダニー・デビート(シド・ハジェンズ)
メモ 1998.8.12(水曜)OS劇場
あらすじ
「LAコンフィデンシャル」
感想
あの錯綜したストーリーがコンパクトにまとめられ、わかりやすい。アカデミー最優秀脚本賞はうなづける。その分3人の警官が引きずっている過去とかドロドロした水面下が描かれずに、いくぶんあっさりとした話になっていました。

一番描きたかっただろう1950年代のロサンジェルス(天使の街)が持つ”表と裏の二つの顔”は、映画館に観に行ってよかった。

売春組織の元締めのピアス・パチェット役のデビッド・ストラターン(「激流」のパパ、「エイトメンアウト」のピッチャー役の人)、いかがわしいタブロイド誌の記者シド・ハジェンズ役のダニー・デビートはイメージどおり。
ダドリー・スミス警部が「ベイブ」の農場主、「ファースト・コンタクト」の天才博士とは、驚き!。地方検事のロウは思っていたより毒気が少なかったです。
おすすめ度:★★★★
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恐怖省 MINISTRY OF FEAR

米国 1944年 84分
監督 フリッツ・ラング
脚本 シートン・I・ミラー
原作 グレアム・グリーン
音楽 ビクター・ヤング
出演 レイ・ミランド(ニール)/マージョリー・レイノルズ/カール・エスモンド
メモ 1998.8.9(日曜)BS録画
あらすじ
精神病院から退院したニールはロンドンへ行くため駅に向かう。駅前でバザーが開かれており、人恋しくフラフラと人混みに引き寄せられる。ケーキの重さ当てクイズに当たったニールは、車中賞品のケーキを盗まれる。
感想
巻き込まれ型サスペンス。主役がレイ・ミランドなので(ヒッチコック監督作品「ダイヤルMを廻せ」のグレース・ケリーの旦那)この人もなんだか怪しく見える。

見所は、 
「雨の午後の降霊術」にも書かれていた戦前英国ではやったという降霊術のシーン。
・・・暗闇の中で白い顔だけが浮かぶ。・・・ ギャー〜〜

「M」「メトロポリス」など異能の人と呼ばれるフリッツ・ラング監督作品。美術学校に通ったというせいか、構図が決まっていると思う。見ている作品は少ないですが、好きな監督です。
ヒッチコック監督の巻き込まれ型作品で見ているのは「三十九夜」「逃走迷路」「暗殺者の家」「北北西に進路を取れ」かな。ヒッチコック監督作品にはスピード感があり、比べるとじんわりしています。
おすすめ度:贔屓めに★★★1/2
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ハードジャッカー

米国 1994年
監督 マイケル・マゾー
出演 トーマス・イアン・グリフィス(ジャック)/ナスターシャ・キンスキー/クリストファー・プラマー
メモ 1998.8.4(火曜)TV
あらすじ
シカゴの刑事ジャックは、一年前にマフィアに妻子を殺されてから死に急いでいるような仕事ぶりだった。ジャックを心配した兄夫婦は山の上のホテルで静養しようとジャックを連れていく。しかし、ホテルに逗留しているマフィアの大物のダイヤをねらい、元東ドイツ秘密警察のゲッツはホテルを占領する。
感想
笑いました。映画に・・ではなくて、解説に。

はじまる前の山城新伍解説は、「クリストファー・プラマーは最近悪役が多いですが、作品をちょっとは選ばない・・・のかな」とか、「プラマーの悪役はいかにも類型的・・です。」 「アクション・・しか見る所はない・・か」とか 「B級映画をお楽しみ・・ください。」とかぼそぼそ歯切れの悪い言葉を並べてはりました。それ聞いてみんのやめよかなっておもったんやけど・・・

主役のトーマス・イアン・グリフィスって誰だんねん。という感じで見始めたのですが、しなやかな長身、あま〜いマスクで素敵な男優さんでした。
しかし、標高一万フィートのサスペンスとかいうから、「クリフハンガー」みたいな話かいなと思っていたら、「ぬるま湯につかったダイハード」でした。軽機関銃をもちながら、素手で殴り合いしたりナイフを使ったり、変なの。洞窟がでてくるんやけど、みるからに張りぼて。雪崩は1994年作品とは思えない特撮。心臓病で死にかけのマフィアは、「いままでの罪をくいあらため」るため「ローマ教皇に懺悔」をして「財産を寄付する。」って金に物いわせて、お前ぜんぜん悔い改めてへんやんか。洞窟に逃げて助かったホテルの客たちを、「私が別の出口まで案内します。」と引き連れていったはずのナスターシャ・キンスキーは、すぐに戻ってきて主人公とラブシーン。ホテルのお客さんは洞窟の中で迷子になってんで。目を見張るくらい「信じらんない!」ご都合主義の展開で「B級というより、C級か」とか思いながらもいっぱいチャチャいれできて結構面白かった。

が、見終わった後の山城解説、開口一番「くだらない。」・・・「脚本が悪い。演出が悪い。悪役がさっさと殺せばいいのに、大見得きってテンポがずれてる。作り方によっては面白い作品になったのに・・解説はじめて18年になるけどこんな作品は・・」ボロボロ。
「みなさん、見てもらってすいません。次週からはいい作品を」って言葉ではじまった次週の映画の予告は、「チンピラが喧嘩相手の鼻をかみちぎっている」というシーンでした(笑)。

映画に出てきた博士は、「張り込み」で友達の敵を討つホームレスに似ていたなあ。
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