2000年9月の映画


五条霊戦記 GOJOE

日本 2000年 137分
プロデューサー 仙頭武則
監督 石井聰亙
脚本 中島吾郎/石井聰亙
撮影監督 渡部眞
美術監督 磯見俊裕
音楽 小野川浩幸
出演 浅野忠信/永瀬正敏/隆大介/岸辺一徳/國村隼/栗田麗
メモ 2000.9.29 朝日生命ホール
あらすじ
雪の降る中、源義朝の愛妾だった常盤御前は末の息子を抱きふたりの幼い息子の手を引いて逃げていた。しかし、追っ手に捕らえてしまった常盤御前は3人の息子の命乞いのために平清盛に身をなげだす。末の息子は鞍馬の寺にあずけられ牛若丸となずけられ、夜な夜な源氏再興のためカラス天狗と鞍馬の山で修行に励む。牛若丸が元服をする頃、京の五条の大橋で武蔵坊弁慶という比叡山から破門された破戒僧が千本の刀を集めると豪語して、薙刀(なぎなた)を手に橋を通るものから刀を奪っていた。ある夜笛を吹きながらひとりの少年がやってくる。刀を置いていけというが涼しい顔をしている。頭にきた弁慶はこわっぱに薙刀をふるうが、橋の欄干の上で刀をひらりひらりとかわされ、反対に持っていた横笛でやられてしまった。「まいりましたでございます。」と弁慶はいたみいり、「ぜひあなたさまの家来にしてくだされ」と頼む。その牛若丸は長じて九郎判官義経となり一の谷、屋島の戦い、壇ノ浦の決戦と、敵の平家を滅ぼす立役者となる。
という小学校の頃読んだお話とはかけはなれたストーリーでした。
感想
ハリウッドシステムを採用し、浅野忠信扮する遮那王(しゃなおう・後の源義経)は京劇の動きの立ち回りを行い、音楽がこれまた斬新という”旧来の時代劇”を超えた作品だそうです。アクション映画で「なぜ日本はハリウッド大作のような映画を作れないのか?」という声をよく聞きますが、別にハリウッドを越えなくてもいいんじゃなかろか。世界はアメリカだけじゃあるまいし。独自路線を行ってもいいと思う一方、こういう作品があっても楽しいかな。活劇の見所は前中後の3箇所。が、一番初めの五条の大橋での平家精鋭隊との戦いがイマイチ。殺戮がわかりにくく、はっきりいって物の怪が怖くない。やたら強いばっかりであきてくる。前のおふたりの男性は仕事の疲れからかこのシーンは爆睡されていました。弁慶がイメージと違うし、浅野忠信が元服(16才)の年頃の役ねぇぇ。國村隼さんの護摩をたく坊主が一番よかった。

「京の五条の橋の上♪〜」って五条大橋で殺生していたのは弁慶ちゃうん? とか思って見始めたのですが、映画全体がんばっているのにもかかわらずもうひとつおもしろくない。怖くない平家の哀愁が感じられない。とか感じてなぜなんだろうと考えていたのですが、まあやはりストーリーについていけないということなんでしょう。納得できない。最後のふたりの鬼の決戦では「このふたりをどう主従関係に持っていくんだろう。」と興味をつないで見ていたのですが、そうなのか。なるほどね。何がいいたいねん!何がしたいねん!とか思いながら、まあ映像に酔う映画でしょう。天地は全宇宙はふたりの戦いに注目しているみたいなご大層スペクタルな最後の決戦はなかなかのもの。

この間朝日新聞に確か桂九雀が「古典落語を斬新にアレンジ」するのは「”青菜”を演じても”牛若丸”を知らない人が多い世代ですから」と言っていたことから、おそらくさぼてんが違和感を感じるのは旧世代なんですね。しかしあれだけの映像なら平家滅亡の映画にした方が興味持てるし感情移入もできた。怖くもはらはらもしない活劇。

*落語の「青菜」
植木屋が仕事先の旦那の家で一杯振舞われる。その際、旦那が酒のあてに「奥、青菜は?」と問うたのに対し、奥さんは「鞍馬よりいでし牛若丸、名は九郎判官(なっぱはくろうてしまいました)」と答える。それに旦那が「義経、義経(よし、よし)」と謎かけで答えたのにいたく感銘した植木屋は長屋の我が家でもやってみたくなる。
長屋の四畳半で風呂に誘いにきた隣に住む幼馴染に「これ、植木屋さん」とよびかけ大家の旦那の真似事をするが、幼馴染には「植木屋はお前やないか。俺は大工や。」と言われながらも最後までなんとかやってくる。ところが最後のオチでおカミさんが「鞍馬よりいでし牛若丸、名は九郎判官義経・・・・」 と言ってしまった事から困った植木屋は苦し紛れに「・・・弁慶」と立ち往生するというストーリー。ひさしぶりに枝雀師匠のテープを聞いて爆笑しながらもしんみりしてしまいました。
おすすめ度★★★
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スペース カウボーイ SPACE COWBOYS

アメリカ 2000年 130分
製作・監督 クリント・イーストウッド
出演 クリント・イーストウッド(フランク)/トミー・リー・ジョーンズ(ホーク)/ドナルド・サザーランド(ジュリー)/ジェームズ・ガーナー(タンク)/ジェームズ・クロムウェル(ボブ・ガーソン)/マルシア・ゲイ・ハーデン(サラ)/ローレン・ディーン(イーサン
「ガタカ」「エネミー・オブ・アメリカ」
メモ 2000.9.27 ABCホール試写会
あらすじ
1958年アメリカ空軍の4人組”チーム・ダイダロス”は日々宇宙を目指し訓練を重ねていた。ところが、初宇宙飛行の栄誉はメアリー・アン嬢にさらわれてしまう・・・。ガーン。
それから40年後の現在、4人組はパブティスト派の牧師、ジェットコースターの設計者、曲乗り飛行のパイロットetcとそれぞれの道を歩んでいた。そんなある日メンバーのリーダー役だったフランクの元にNASAの技術者がたずねてくる。ロシアの通信衛星”アイコン”が後5週間で地球に落下してくる。誘導装置がいかれて地球から操作することができない。貧乏なロシアには他に通信衛星がなくそれを元の静止軌道に戻したいというのだ。なぜかその通信衛星はフランクが設計し”スカイラブ”に搭載したのと同じ誘導装置を積んでいるらしい。
「設計した自分が手作業で直さない限り無理だ。”チーム・ダイダロス”を宇宙に飛ばすのが条件だ。」とフランクは言う。「見果てぬ夢よ、もう一度」なのだ。宇宙へ飛びたいのだ。男のロマンなのだ!。俺達はやるぞ、やるぞ。 目は老眼で腰は痛いけれど・・・。
感想
オールドファンには嬉しい 実にロマンティックな映画だった。宇宙の神秘なんてかけらもない即物さ。さぼてんがもっとも嬉しかったのは「あんた、そこでなんの役にたってんの?」のとぼけたジェームズ・ガーナー。いてるだけで、それだけでええんよなあ(笑)。
そとみはおやじ、中身は少年の4人組をそれぞれが余裕たっぷりに演じていました。アメリカの生きた文化遺産よね。”年くっても変なやつー”のドナルド・サザーランドがさぼてんはいっちゃん好み。トミー・リー・ジョーンズをいつまでも”やんちゃ”のよい役に持っていって自分は脇にしているように見えて、それでも最後はかっこよく決めるクリンスト・イーストウッドって女にはだらしないかもしれないけれどかしこい人よね(笑)。若手もマルシア・ゲイ・ハーデンやらローレン・ディーンやらとりそろえていいよ。SFXもロシアの通信衛星が「ガシャ、ガシャ」と不気味に正体出してくるとこなんかとっても好き。
満足度★★★★
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イギリスから来た男 THE LIMEY

アメリカ 1999年 89分
監督 スティーブン・ソダーバーグ(「セックスと嘘とビデオテープ」 
「蒼い記憶」
撮影 エド・ラックマン
出演 テレンス・スタンプ(ウィルソン)/ピーター・フォンダ
メモ 2000.9.23 ガーデンシネマ
あらすじ
イギリスの刑務所で9年間服役していたウィルソンが出所して手にしたのは、ひとり娘の事故死を伝える手紙だった。ウィルソンは娘の死に納得できず単身アメリカ・ロサンゼルスに乗り込む。
感想
ひねりのないストーリーなんですけれど、フラッシュバックやらスローモションやらを多用した手練手管の映像と凝った音楽、そして”テレンス・スタンプさまのダンディなお姿”で見せてくれるのよね、これが。まぎれもなくテレンス・スタンプさまのための映画(断言)。観客の裏の裏の裏をかいたというような事はみじんもないストーリーがかえってシンプルで映像のじゃまにならなくてよかったじゃん、と思えてくるから不思議。
テレンス・スタンプ様は”静かなる男”で”存在感”があり男だったらこんな風に年取りたいと思うかっこよさなの(あたしは♀ですけど)。テレンス・スタンプは昔も今もナルシーだあと感じる。でも、これがカリスマというものだと思う。。。。きっと。監督さんに惚れられて役者冥利につきるんじゃなかろか。監督さんの趣味オンリーで撮った映画だな、きっと。
相手役が昔、時代の風雲児で年くってもお育ちのよさがにじみでておっとりしていてとても演技とは思えずおそらく地のままでしょう。の、ピーター・フォンダでした。

原題のLIMEYというのは、「アメリカ人からみたイギリス人の蔑称。昔イギリス人が船上で病気(壊血病)予防のためにライムジュースを飲んでいたことからイギリス人水兵をさすスラング」だそうです。頑固一徹、信念を持ったイギリス人を指しているのかな。久々にこの邦題はヒットと思う。
おすすめ度★★★
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陽気な幽霊 BLITHE SPRIT

英国 1945年 96分
監督 デビッド・リーン(「逢い引き」「アラビアのロレンス」「大いなる遺産」「旅情」「ライアンの娘」)
脚本 アンソニー・バブロック・アラン
脚本・撮影 ロナルド・ニーム
音楽 リチャード・アディンセル
出演 レックス・ハリソン(チャールズ)/コンスタンス・カミングス(ルース)/ケイ・ハモンド(エルビラ)/ジョイス・ケーリー(マーグレット)
メモ 2000.9.18 ビデオ
あらすじ
作家のチャールズは小説の題材にしようと興味本位で降霊会を開く。メンツはチャールズと二度目の妻ルース、かかりつけの医者夫婦、そして風変わりな霊媒マダム・アーカティだった。あわてもので風変わりなマダム・アーカティは落ち着きなくバタバタと降霊会をはじめる。みんなは半信半疑というより信じていない。ちょっとした余興のつもりなのだ。ところがところがみごといマダム・アーカティは成功し、幽霊が現れる。しかしそれはチャールズの先妻エルビラだった。誰も呼んでいないはずなのに。エルビラは5年前に肺炎にかかり直りかけた所である出来事(忘れた)に笑い転げ息を詰まらて亡くなった。
そのエルビラはチャールズにしか見えず、派手好きで人生を自分を楽しませるものとしか考えていないエルビラは数々のいたずらをはじめ、ルースにやきもちを焼くわで手がつけられない。困り果てたチャールズとルースは霊媒のマダム・アーカティに元の世界に戻して欲しいと頼むが偶然の産物で私の手には負えないと断られてしまう。その頃エルビラはチャールズの車に仕掛けをして事故を起こし自分の世界に引き入れようと図るが、その車に乗ったのはルースでルースは川に落ち幽霊となってしまう。この幽霊はエルビラにしか見えずエルビラを追い掛け回す。マダム・アーカティがあの世にエルビラの霊を戻そうと”いもり”なんか使って儀式をはじめるとエルビラはもどらずあろうことかルースがチャールズの元にきてしまう。
困り果てるチャールズ。美女二人といっても相手は幽霊なのだ。ハッスルしてマダム・アーカティは何度も霊を戻す儀式を行うが効果なし。そこで気づくマダム・アーカティ。この家にもうひとり霊感の強い人間がいるのよ。それは、おどおどしたメイドのエリスだった。メイドの力を借りてふたりを霊界に戻すことに成功したかに見えたが・・・。
感想
異色降霊会もののコメディ。ふたりの妻に囲まれた両手の花がちっとも嬉しくなく(なんせ幽霊なもんで、できないでしょ)、それでも英国らしく皮肉に紳士然としているレックス・ハリソンがおかしい。
おすすめ度★★★1/2
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フルスタリョフ、車を!

フランス/ロシア 1998年 142分 モノクロ
監督 アレクセイ・ゲルマン
脚本 スヴェトラーナ・カルマリータ/アレクセイ・ゲルマン
撮影 ウラジーミル・イリネ
音楽 アンドレイ・ベトロフ
出演 ユーリー・アレクセーヴィッチ・ツリロ(将軍)/N・ルスラノヴァ(将軍の妻)/M・デメンティエフ(将軍の息子)/Y・ヤルヴェット(スウェーデン人の記者)
メモ 2000.9.16 シネ・ヌーヴォ
あらすじ
1953年スターリン時代末期、モスクワの病院の脳外科医で院長のユーリー・クレンスキーは突如当局につかまる。
感想
覚悟して見に行ったのですが・・わかりにくい。アメリカといい中国といい大国というのは「こういう国だ」と一言ではいいあらわせないと思いますが、特にさぼてんにとってロシアというのは理解しがたい国であり、ロシア国民自身「ロシアは特別な国やねん。理解されたくない。理解されるはずもない、私らかてわけわからへんねんから。と言っているような映画だった。わからないながらも妙に魅力的な映画なんだな、これが。

さぼてんが幼少の頃は「鉄のカーテン」が降ろされた秘密主義の国であり、日本でも豪雪地帯の人が言う「雪国の事は雪国の人間にしかわかんねぇ。」という言葉どおり自然条件が厳しいが故の被害妄想が大きい国かなって思う反面、美しいバレエがありオリンピックでは金を大量にかっさらう国でしょ。科学技術が発達していて優秀な人も多いのに、日本海を核廃棄物のごみ箱にするという節操のなさ。ヨーロッパから見ればアジアであり、アジアから見ればヨーロッパというコウモリのような国で、この態度をはっきりさせない所がロシアらしい(笑)。大学時代にバイトしていた会社に第二次世界大戦後シベリアに抑留されていたというおじさんがいて、色々話を聞かせてもらったんですけれど「寒い中外に並ばされ点呼に時間がかかり、捕虜がバタバタ倒れた」という理由は「捕虜を迫害しようとしたのではなく、数が数えられなかったロシア人が多く単に時間がかかったから。」と言う話には驚きました。壁塗りの作業でも、昨日塗った所も含めて「今日はここまで作業した。」とごまかしたら「そうか、そうか」というような人達だったそうです。知り合いのお母さんが戦前満州で生活していた頃、道端で生ねぎを食らいながらウォッカを浴びるように飲んでいたロシア人を見て子供心に「なんて貧しいんだろう。」と思ったとか。大学時代に受講した「社会思想史」はロシア近代史だったんですけれど、その中で唯一覚えていることは「近代ロシアのツアーで自然死を遂げた人は少ない」ということ。爆弾なげつけられたりして暗殺された皇帝が多く混乱しまくっていたようです。その時にレーニンの年の離れた兄も帝国転覆計画に荷担したと処刑されていたという事を知りました。こういう断片的なちっぽけな知識ばかりでは理解しようもありませんが、「わけわからへん」という印象はそうはずれたものでもなかったんだという事をこの映画で再認識いたしました(笑)。

尚、「フルスタリョフ、車を!」というのはスターリンいまわの際の言葉といわれているそうです。どうしてもさぼてんは、「フルシチョフ、車を!」と言ってしまう(笑)。
おすすめ度★★★★
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オフィスキラー OFFICE KILLER

アメリカ 1997年 84分
監督 シンディ・シャーマン
脚本 トム・ケイリン(「アンディ・ウォーホールを撃った女」)
撮影 ラッセル・ファイン
音楽 エバン・ルーリー
出演 キャロル・ケイン(「夕暮れにベルが鳴る」)/モリー・リングウォルド(「ブレックファスト・クラブ」)/ジーン・トリプルホーン(「氷の微笑」
「スライディング・ドア」)
メモ 2000.9.14 ビデオ
あらすじ
出版社に永年勤めるドリーンは、天眼鏡みたいなメガネをかけオシャレとは無縁、無口、たまにしゃべっても何を言っているのかよくわからない、じとっと人を見る、変わっているというわけで友達って呼べる人はひとりもいない。だけど校正の仕事の才能はありそれなりの日々をオフィスの片隅で過ごしていた。ところがやり手の社長がリストラを始めドリーンは自宅で仕事をする組にされてしまう。自宅には老母が二階におりオフィスだけが憩いの場所だったのに・・・。いわゆるSOHOで近頃の流行なんやけど、寂しいドリーンは自宅を徐々ににぎやかなオフィスに変えていく。オフィスから自宅に人を運んでいるのだ。
感想
昨年の夏あのモリー・リングウォルドがでてる〜とうとうこんな映画に出るようになったのか・・・というので結構評判になったホラー映画。見てみればジーン・トリプルホーンまででてはるやんかあ。梅田ガーデンシネマで21時15分からのレイトショーというのに足がすくんだんやけど、見に行ったらよかったとちょっとばか後悔しました(笑)。これ割といいよ。ファニー・ホラーという新しいカテゴリの映画らしいです。アーティストの監督らしくこまごました小物が凝ってる映画だと思う。オフィスの様子とかファッションがホラーながらかわいいねん。主人公のドリーンを見ている内に「役者って商売、面白いんやろなあ。あたしもこんな役を演じたら楽しいやろな。」と感じる。
お薦めなんですけれど、ひとつだけ受け入れにくい所があったので減点1/2。
おすすめ度★★★1/2
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ウォッチャー  Somebody has to shoot the picture

アメリカ 1990年 130分
出演 ロイ・シャィダー/ボニー・ベデリア/アーリス・ハワード(
「レッサー・エヴィル」「フルメタル・ジャケット」)
メモ 2000.9.10 ビデオ TV映画
あらすじ
ポール・マリッシュ(ロイ・シィダー)はピューリッツア賞を取ったほどの写真家だが、その後の5年間は投げやりな仕事しかしていない。何故かというと、賞を取ったのは戦場で恋人が射殺されるシーンを撮った写真だったから。立ち直れていない。そのポールを指名して仕事の依頼が来る。ポールがティナ・ターナーを写した写真を見て死刑囚のレイ・エイムズが自分の処刑シーンを撮って欲しいというのだ。
感想
主役のロイ・シャーイダーより、事件の被害者の警官の妻のボニー・ベデリアよりなにより死刑囚レイ・エイムズ役のアーリス・ハワードがいい(↑)。 「レッサー・エヴィル」の主役の神父だった人。「ロスト・ワールド」にもメガネかけてビクビクした役で出てはったよね。

サスペンス仕立てにして人が人を裁き合法的に殺す事に対し問題を投げかけているのか、死刑廃止論のひとつに「無実の人を処刑してしまう可能性がゼロではない」事を示唆しているのかわかりませんが、TV映画をこの水準まで持っていくのはたいしたものだと思う。
おすすめ度★★★
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悪い種子 The Bad Seed

アメリカ 1956年 130分
監督 マービン・リロイ(「心の旅路」)
原作 ウィリアム・マーチ/マックスウェル・アンダーソン
脚本 ジョン・リー・メーヒン
撮影 ハロルド・ロッソン
音楽 アレックス・ノース 「月の光」
出演 ナンシー・ケリー(クリスティーン)/パティ・マコーマック(ローダ)/アイリーン・ヘッカート/ヘンリー・ジョーンズ(リロイ)/ゲイジ・クラーク/ジェシー・ホワイト/ジョアン・クロイドン/ウィリアム・ホッパー(ケネス)/ポール・フィックス/エブリン・バーデン
メモ 2000.9.9 BS録画
感想
例えばそう、品が良くすべての人に愛される美しい小公子セドリックが実は善悪の意識が欠落している生まれながらの殺人者だったというような恐ろしい話。大ヒットした舞台劇の映画化だそうです。

2月にBSで放送された「殺人狂想曲」(デュビビエ監督。ジェームズ・ハドリー・チェイス原作)を見逃したさぼてん。しばらくショックでごはんが喉を通らなかった(はずもなく)、録画失敗してこの映画まで見逃したらどうしようとドキドキ。

期待を裏切らない映画でした。長い間待ちかまえていたかいがあった(笑)。
おすすめ度★★★★
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ストーム The House of Yes

アメリカ 1997年 86分
監督・脚本 マーク・ウォーターズ
出演 パーカー・ポージー(「スクリーム3」「ユー・ガット・メール」)/トリ・スペリング(レスリー)/ジョシュ・ハミルトン(マーティ)/フレディ・プリンゼ・Jr(アンソニー「ラストサマー」)
メモ 2000.9.3 レンタルビデオ
あらすじ
ジャッキー・O(オー)は興奮気味。双子の片割れマーティが帰ってくるのだ。待ちかねているジャッキーだったがたったひとつ心配事がある。マーティはニューヨークで恋に落ちた恋人レスリーを連れて来るらしい。
感想
ミステリ映画、しかも主演はサンダンス映画祭「特別演技賞」受賞とか。結構期待して見る。

見終わって・・・・しょーもない・・・。
合わない。オーソドックスなミステリ好きやからかなあ、奇抜過ぎて面白くないっとかで「ふんっ」と思っていたのですが、翌日もう一度流して見ることにする。
そうか。エキセントリックなジャッキー・Oにイライラして見ていたのでよくわかんなかったけれど、これってどんでん返し物なんですね。いや、違うか。2度見るとなかなか個性的だったような気がしてきたような感じがせんでもない。

上(↑)のマーティが手を振っているシーンは何の真似だと思います? ダラスでオープンカーに乗ってアメリカ国民に手を振っているジョン・F・ケネディの真似なんです。そして右横(→)のジャッキー・Oの服装はというとその時のジャクリーン・ケネディに扮しているんです。子供の頃から双子のお気に入りはケネディ大統領夫妻に扮する事だったという趣味の悪い映画なんです(笑)。「ダラスの熱い日」のトラウマなんですけれどね(わっ、言ってしまった)。 愛称のジャッキー・OのOというのは「オナシス」だそうです。つまりケネディ亡き後のジャクリーヌなわけ。
おすすめ度わかりませんっ
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日本 1999年 123分
監督 阪本順治
脚本 阪本順治/宇野イサム
撮影 笠松則通
音楽 coba(「顔」)
出演 藤山直美(吉村正子)/牧瀬里穂(吉村由香里)/渡辺美佐子(吉村常子)/大楠道代(中上律子)/國村隼(狩山健太)/豊川悦司(中上洋行)/佐藤浩市(池田彰)/岸部一徳(花田英一)/中村勘九郎(山本俊郎)/内田春菊(喫茶店の女)/早乙女愛(狩山咲子)
メモ 2000.9.2 テアトル梅田
あらすじ
尼崎の古びたクリーニング屋の2階でカタカタカタカタと音がしている。メガネをかけひっつめ髪にした太った女がミシンを踏んでいるのだ。引っ越しのサカイのCMに合わせて歌ったり、縫っている生地の柄から大自然の中でお弁当を食べている自分を想像してニンマリひとりで笑っている女が二階に巣くっていた。
感想
そうか・・・・・この映画は冒険物語やったんやね。次々と未知の世界に向かってドタドタ突き進んでいくという。

最初は前後にミシンを踏むだけだったが、妹の一言で頭に血がのぼり赤い重ね履きのまま家を飛び出し雪の積もった町へとっとと歩いて行く。次は妹の黒のヒールを履いて家を出ていく。そしてその足は自転車を漕ぐようになる。最後は。。。。。絶句しました。うまいっ。

事件が天災の混乱に紛れるところで「飢餓海峡」を思い出しぃ「友達っておらんと、あかんの?」 「許してもらわんかて、ええ」というドスのきいたセリフに「黒い家」を思い出しぃのの恐い物語でありながらも、笑える。悲劇的ながらおもろい。佐藤浩市との列車の中のシーンではお父さんが乗り移ったのかとおもいやした、藤山直美。

「しがらみ」っていうのかな「絆」っていうのかな、そういうもんで生きていけてる所もあるんやけど、それから解放されたら本当に自由が感じられるんやろうなあというある種まぶしいような作品だった。見終わってどうなってもなんとか生きていけるもんやねんなというパワーを感じ勇気を持てたような気がした(笑)。そやねんけど、正子には洋裁というちょっとした特技があり、見知らぬ人々に受け入れられるには役立つ技術が必要なんだ。芸無しは役立たずやねん(笑>さぼてんの事)。
「過去は振り返らないっ」といういさぎよさがかっこよく、自分も将来はああいう境地になりたいなどと考えてしまう。映画「ミルドレッド」のジーナ・ローランズのかっこよさと同じ。子供を育ておえたら全く違う2度目の人生もよいんではなかろか。

なんで「顔」って題なんやろと考えていたのですが、最初はひきこもりで世間とは隔絶していた能面のようなひとりの人間の顔が、色々な人にもまれるにつれ根っこの所は変わらないけれど、おかしいながらもより確かな人格が形成されていく。その人格の代表が顔なのね。ほんまに自分の顔には責任を持たんとあかん(笑)。
これは特記したい。お国言葉満載なのがとてもよいです。
おすすめ度★★★★1/2
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