2000年3月の映画


青春の殺人者

1976年 日本 132分 今村プロ/ATG
監督 長谷川和彦
制作 今村昌平・大塚和/原作 中上健次(「蛇淫」)/脚本 田村猛/撮影 鈴木達夫/音楽 ゴダイゴ/美術 木村威夫
出演 水谷豊(斉木順)/原田美枝子(ケイ子)/内田良平(父)/市原悦子(母)/白川和子(ケイ子の母)/江藤潤/桃井かおり/地井武男
メモ 2000.3.30 ビデオ
あらすじ
斉木順は、留守中に親に持っていかれた車を取り戻すため実家へ乗り込む。父と母は順のスナックを手伝っているケイ子が気に入らない。ふしだらな母親のふしだらな娘にひとり息子をとられてたまるかと順を説得する。父親は興信所を使ってケイ子の事を調べ上げていた。
感想
とうとう見た。強烈だった。 熱く痛い。

大学紛争後の虚無感、三里塚闘争、公害といった当時の世相が色濃く背景を形作っている。しかし、主テーマは親子。前半の壮絶な展開を見ながら、親子関係の難しさ特に一人っ子を育てる難しさをヒシヒシ感じる。親は息子を溺愛するあまり欲しがるものはなんでも与えてしまう。しかし一方甘やかしてはいけないという思いも常に頭にあるので変に厳しくしたりと左に右に大きくぶれる。幼い頃から揺さぶり続けられた子供は大人になっても親との距離をうまく取る事ができない。しかもこの親子には太平洋戦争という大きな溝がある。大学紛争というのは、戦前の教育を受けた人達と戦後派世代の戦いだったという見方もできるんだな。 その頃は家庭でも熾烈な親子戦争があったのだろう。

水谷豊の涙、内田良平のまだ若い父親の息子への深い愛情、市原悦子が白いシーツをかぶせるシーンの恐さ、原田美枝子の幼さを残す笑顔に揺さぶられる。

「若い頃に肝心な映画を見ていない自分」を今突きつけられちょっと参っています。
おすすめ度★★★★★
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モルグ−屍体消失−

ブリュッセル国際映画祭観客賞受賞  ローマ国際ファンタスティック映画祭グランプリ
1994年 デンマーク 107分
監督 オーレ・ボールネダル
出演 ニコライ・コスター・ワルドー/ソフィー・グラーボエル
メモ 2000.3.27 ビデオ
あらすじ
法学部の学生マーティンは、学費を稼ぐため病院の夜警のバイトを始める。が、夜中たったひとりの病院は実に不気味。しかも巡回までしなくてはならないのだ。巷では、連続殺人犯がまだ捕まらず、その話でもちきり。
感想
予想していたより恐くなく、エグくもなく、犯人捜しなんて最初から「犯人」って名札つけて歩いているみたいだったし、ぶっちゃけた話「もしかしたら怖がっている主役のアンタが犯人だったりして・・・」なあんて事は思いついた途端「それはナイナイ」と却下してしまったし、でも思ってたよりずっと面白い映画だった。
ちょっとレンタルするのに躊躇するような題名の映画のどこが面白かったかとゆうと、「マーティンと悪友イエンツが名前を入れ替えて遊んでいる」って所と「命令された事を出来なかったらお前の負け」のゲームが最後にうまく活かされていた所。一発物かもしれん(笑)。
マーティンの彼女カリンカがかわいいというより優しそうで、今時こういう優しそうな女優さん珍しいと思う。マーティン+カリンカ、ロッテ+イエンツのカップルの青春物でもありどちらのカップルが好みかというと当然「ロッテVSイエンツ」バトル組。バトル組ってのに親近感を覚えるね(ヤケクソ)。

ユアン・マグレガーが主演の「ナイトウォッチ」は同じ監督さんのアメリカ版リメイクだそうですが、この間見た
「消失」といい、スターが必要でない映画をわざわざアメリカでリメイクするってのがわかりません。とは言ってもオリジナルよりリメイク作の方が面白かった作品も私にはあって、それは「三人の逃亡者」と「9ヶ月」。単に贔屓のマーティン・ショートが出てたのとロシア語訛りの英語をくっちゃべるロビン・ウィリアムズが面白かっただけです・・(汗)。
おすすめ度★★★★
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ブェイドtoブラック FADE TO BLACK

1980年 米国 101分
監督・脚本 ヴァーノン・ジマーマン
出演 デニス・クリストファー/リンダ・カーリッジ/モーガン・ポール/ティム・トマソン
メモ 2000.3.20 ビデオ
あらすじ
真夜中の独り言。「この映画を見ようか? それともこれにしようか? 時間が重なる。どっちにしようか?」TVガイドを片手に映画選びに余念がないエリック・ビンフォードは今夜も映画を見ながら眠って、叔母のステラに叩き起こされる。仕事も遅刻だ。眠い。
感想
気にはなっていたんですけれど、「カルトファン絶賛」みたいな紹介文を読んで「ついていけないかも」とちょっと退いていた作品。映画マニアの青年が、現実世界の自分はあまりにも社会不適応者で、だんだん映画と現実がごちゃごちゃになってきてクリストファー・リーのドラキュラやらミイラ男やらの扮装をして連続殺人を起こすってお話です。
「ビッグ・ハウス」やら、「カサブランカ」やら「大アマゾンの半魚人」やら昔のモノクロ映画の映像がわんさかでてきますが、思ったよりマニアックではなく映画名も紹介されていて、そこん所は親切で親しみやすかった。特に足の悪い”叔母”を「死の接吻」のリチャード・ウィドマークになりきって階段から突き落とす所は、つい最近みたのでなんだか嬉しい(苦笑)。 「血を吸うカメラ」に似たシーンもあったように思う。
ただ、パロディ部分は三分の一も理解していないのではないかと思います(汗)。特に上の映像の「ボイド」と呼ばれる西部劇の主人公は誰だかわかりません。私では手に負えません。どうもジョン・ウェインの映画と関係あるようなんですけれど。それとも「真夜中のカウボーイ」のジョン・ボイドなんでしょうか? 最後のギャグニーの「白熱」も見ておりません。

追う側の警察も描かれているんですけれど、まったくの付け足し。「ヤク中の不良少年に父親を殺された警察官」と「少年非行は社会のせいだ。」という少年保護司の確執なんぞ、「はあぁ」って感じ。特に少年保護司と女の警官が知り合ってすぐ寝るってのが、「仕事仲間とすぐ寝るわけ? 相手をよく理解するために?」とわけわかりません。
おすすめ度でもおすすめ度はやっぱり高い★★★★
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バレット・バレエ BULLET BALLET

1999年 日本
製作・監督・脚本・撮影・美術・照明・編集 塚本晋也(
「鉄男」「双生児 GEMINI」
音楽:石川忠
出演 塚本晋也(合田)/真野きりな(千里)/中村達也(不良少年グループのリーダー)/村瀬貴洋/田口トモロヲ/鈴木京香(桐子)/井川比佐志
メモ 2000.3.20 心斎橋ビッグ・ステップ パラダイス・シネマ
感想
映画を見終わって映画館を出ようとしたら高校生ぐらいの女の子2人が「面白かったねー」「うん。面白かった」とテンション高く言っているのが聞こえる。どこが面白かったのかちょっと聞いてみたかった。「かっこいい」ということなのかも知れません。

居場所を見失った男が白黒というより鉛のような銀色の濃淡の世界を彷徨うというストーリー。唐突な恋人の拳銃自殺という現実を突きつけられた男は、「何故自殺したのか?」「しかも俺のマンションの部屋で、拳銃を使って。」「拳銃はどこで手に入れたのか?」「何故彼女が発しているSOSをキャッチできなかったのか」という答えのない問いを自問する内に次第に自分の世界が崩れていく。酔っぱらって路地に座り込んでいる男(合田)の目に入ったのは皮ジャンを着たひとりの少女。以前電車に飛び込むかのように見えた少女を助けようとした合田の手にかみついた少女だった。少女に声を掛けると少女の仲間の不良グループに袋叩きにされる。その少年達に復讐するためにも合田は拳銃を手に入れようと東京の夜の街を奔走する。拳銃の持つパワーはどんなものなのか? 拳銃を手に持つと使ってみたい魅力に取り憑かれるのだろうか?という疑問に答えを見いだすためにも。
拳銃を手に入れられない合田は、拳銃造りを始める。ここでマニアックに拳銃造りの話に突入するのかと期待していたら、あっさりと話は転じ少女との奇妙な縁に移っていく。ここから”哀川翔の暴力映画”の様相を取り始め「この展開は斬新なんかなあ」と思っていたら、「弾丸のように飛び出していく」シーンとなり納得。閉塞感に捕らわれた人間が別世界へ飛び出したい、よーいドンで飛び出すといった話だったんだ。合田の恋人もこことは違うどこかの世界へ飛び出していったし。
男連中が内省的でウジウジしているのに対し、女連中の思いっきりのよさが面白い。
またしても揺れる映像にちょっと酔ってしまい少し乗れませんでしたが、今思い返すともう一度見たいと思う麻薬のような物を秘めている映画だった、私には。
おすすめ度★★★1/2
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ビッグ・ハウス THE BIG HOUSE

1930年 米国
監督 ジョージ・ウィリアム・ヒル(
「惨劇の波止場」)
出演 チェスター・モリス(モーガン)/ウォレス・ビアリー(ブッチ(ビル「惨劇の波止場」)/ロバート・モントゴメリィ(ケント)/ルイス・ストーン(刑務所所長ウォーデン)
メモ 2000.3.20 WOWOW録画
あらすじ
24才のケント・マローは殺人罪で懲役10年の刑を受け、刑務所に収監される。よっぱらい運転で人を轢いたのだが、「事故だ」と主張しても誰も耳を貸してくれない。その刑務所は収容人員1800名のところを3000人もむさい男ばかり詰め込まれており、食事も貧しい。食べる楽しみさえない男達は暇を持て余し爆発寸前だった。
感想
何故、録画ビデオをひっぱりだしてきてこの映画を見たかと言えば先週レンタルした「フェイドtoブラック」という映画にちょこっと出てきたから「見なければ」となったってわけ(笑)。
刑務所での暴動シーンは音といい煙りといい迫力満点。どういう映画かなと思っていたらどうやら男の友情の映画のようでした。「かわいそうやな」と思っていた男が臆病者だったり、「要領いいやっちゃ」と思っていた男が男気があったり多層的な人間が描けていると思う。ブッチは最初から最後まで単細胞でしたが(笑)。
1930年度のアカデミー賞作品賞候補作だったみたい。この年の作品賞は「西部戦線異常なし」でした。監督のジョージ・ヒルって方は1934年に39才で自殺されたようです。
おすすめ度★★★1/2
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トイ・ストーリー2 TOY STORY 2
<さぼてん家で一番人気−UFOキャッチャーの三つ目のエイリアンたち>

1999年 米国 92分
監督 ジョン・ラセター
共同監督 リー・アンクリッチ/アッシュ・ブラノン
音楽 ランディ・ニューマン
出演 ウッディ(カウボーイ)/バズ・ライトイヤー(スペースレインジャー)/ジェシー(カウガール)/プロスペクター(おじいの炭坑夫)/ミスター・ポテトヘッド(じゃがいも)&ミセス・ポテトヘッド/スリンキー・ドッグ(ばね犬)/レックス(気弱なティラノザウルス)/ハム(ぶたさんの貯金箱)/ボー・ピープ(羊飼いの少女)/アル・マクウィギン(おもちゃ屋)/アンディ(ウッディ、バズetcの持ち主)/ザーグ(ダース・ベイダーのまねし)
メモ 2000.3.19 南街会館
あらすじ
声の出なくなったペンギンのおもちゃ・ウィージーが売りに出されるのを助けようとウディがガレージ・セールに潜入する。そこにやってきた小太り、あごひげ、メガネの中年男が興奮してウディを掴む。ウディはレア物で大変なプレミアムがついていたのだ。ママがウディが混ざっていたのはまちがいで売らないと言うと、男はこっそりウディを奪って逃げる。バズが見た車のナンバーから推理して犯人が「おもちゃ屋のアル」だと判明。志願した捜索隊バズ、ポテトヘッド、スリンキー、レックス、ハムの5人組はウッディ奪還に向かう。
感想
<ザーグとあっちでキャーこっちでキャーのレックス>

1作目は登場するおもちゃのキャラクターを創るのが大変だけれども、2作目はそれぞれのキャラクターを活かすストーリー作りができるの ね。という事からも「トイ・ストーリー」を前もって見ておく方がベター。ウッディの「古くなって捨てられるのでは?」という不安な心象風景を描く「奈落に落ちていく」シーンに感心。今回はバズ・ライトイヤーの宿敵ザーグが楽しい。新人バズの”いきり”の行動にも笑う。大人向きに感じる。とはいうものの朝8時50分からの吹き替え版のほぼ満席状態の中、子供達は思ったより静かで大人の方がうるさい(苦笑)。
プレミアムがついて高値で売買されるというマニアの心理は私にはわかりませんが、博物館の存在も大切だと思う。若手おもちゃデザイナーの刺激にもなると思うし。1作目も隣の悪ガキ・シドはとっても悪いヤツだけれど、気持ち悪い物を造り出す才能はたいしたモノであった。兄貴も「直す」と称しては時計を分解して壊していましたがあれは「時計ゴロシ」か?(笑)。「バグズ・ライフ」と同じく巻末の「NG集」はおもしろい。「このスペース貸します」に笑った。

日本はハリウッド映画のドル箱市場と思うのですが、悪者でしたな。
おすすめ度★★★★
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赤い灯をつけるな LE ROUGE EST MIS

1957年 仏 85分
監督・脚本 ジル・グランジェ
原作・脚本 オーギュスト・ル・ブルトン
脚本 ミシェル・オーディアール
撮影 ルイ・パージュ
音楽 デニス・キーファー
出演 ジャン・ギャバン/リン・バンチュラ/アニー・ジラルド
メモ 2000.3.18 ビデオ
感想
随分前に教えてもらっていた映画をやっと見る。ストーリーにも映像にも演出にも無駄がない。マフィア物はイマイチ食指が動かないのですが、こういうピリッとしたフランスのフィルム・ノワールは好きなんだという事を再認識。
ファースト・シーンの金を奪って逃げる車の中で、はや仲間4人にかすかな”ひび”がはいる。ツキを大事にする業界で臆病で弱気な言動は「不吉なヤツ」と嫌われるのだ。その上、仲間のひとりは凶暴さがエスカレートしてきている。しかも、ジャン・ギャバンは潮時かと仕事から手を引く事を考え始めた。おまけにジャン・ギャバンの年の離れた弟はきれいで悪い女の虜だ。という4つの悪い兆しが4人の運命を悪い方に転がし始める。

リノ・バンチュラがサブマシンガンをぶっぱなすシーンはとてもよろしいです(笑)。
おすすめ度★★★1/2
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ゴッドandモンスター Gods and Monsters

1998年 米国 106分
監督・脚本 ビル・コンドン
原作 クリストファー・ブラム
音楽 カーター・バーウェル
撮影 スティーブン・M・カッツ
出演 イアン・マッケラン(ジェームズ・ホエール)/ブレンダン・フレーザー(庭師クレイトン・ブーン)/リン・レッドグレーブ(メイドのハンナ)
メモ 2000.3.17 WOWOW
あらすじ
1957年、映画界を引退して15年になるジェームズ・ホエール監督は脳腫瘍を患い余命幾ばくもない。思い出すのは過去のことばかり。幸せな思い出も悲しい思い出もあった。若死にした戦友に思いが残る監督は新しい庭師に若かった当時をだぶらす。
「フランケンシュタイン」「フランケンシュタインの花嫁」「ショウ・ボート」のホエール監督の最晩年を描く秀作。
感想
ブレンダン・フレーザーが出てきた途端、横が逆立っている割に頭のてっぺんが真っ平のヘアスタイルに笑う。モンスターに似てるってわけ(笑)。イアン・マッケランが上品で小狡くかつナイーブにジェームズ・ホエール監督を演じる様を見ていると、密かに匂い立つ色気を感じる。心の中のかけたパーツ(片割れ)を今も探し求めている。

映画を見ている最中、イアン・マッケランが演じるホエール監督が
「フランケンシュタインの花嫁」のプレトリアス博士とキャラがちょっとかぶっている事に気づく。そうか。「フランケンシュタイン」で孤独な自分の分身をモンスターとして登場させた監督は、次作「フランケンシュタインの花嫁」ではその孤独な分身に伴侶を与える役としてもうひとつの自分の分身を登場させたのか。ホエール監督はすべての創造主でありながらモンスターでもありプレトリアス博士でもあるし、ブレンダン・フレーザーは無垢なモンスターでありまた若いヘンリー・フランケンシュタインでもあるわけなんだ。「フランケンシュタインの花嫁」でプレトリアス博士はヘンリー・フランケンシュタインを自分の世界に引き込もうと誘惑していたんだな。少なくともこの映画を作った人達はあのモンスター映画をこう解釈したと思う。
もっとも感銘を受けたのは、この映画を作った人達自身だ。「映画に密かに描かれている内容」を読みとる力を持ち読みとった内容を説得力を持って表現できる力を持った人達。古典的な怪奇映画に対し、隠された「監督の表現したかった事」を読みとる深い洞察力に敬意を表したい。
この映画を見て、たとえどんなに的はずれだとしても「自分はこう読んだ。」という自分なりの感想を持ちそれを書く勇気を持ちたいと思う。

この映画を薦めてくださったいるいるさん、ありがとう。

おすすめ度★★★★1/2
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二重結婚者 The Bigamist
<主人公のひとりフィリス役のアイダ・ルピノ監督。この方が
「ヒッチ・ハイカー」を撮ったんですね!)

1953年 米国 79分
監督・出演 アイダ・ルピノ
制作・脚本 コリアー・ヤング
脚本 ロバート・L・ジョセフ
撮影 ニコラス・ムスラカ
音楽 リース・スティーヴンス
出演 ジョーン・フォンテーン(イヴ)/アイダ・ルピノ(フィリス)/エドモンド・オブライエン(ハリー・グラハム)/エドモンド・グエン
メモ 2000.3.14 CSシネフィル・イマジカ録画
あらすじ
ハリー・グラハムは家庭用品のセールスマン。妻のイヴをビジネスのパートナーとして事務をまかせ、ウィークデーはLAに出かけ週末には飛行機でサンフランシスコの自宅に戻ってくる単身赴任状態。結婚8年目になるが子供に恵まれずイヴはビジネスが面白くなり、自宅でくつろぎたいハリーの気持ちもわからず週末も自宅に客を呼んでの接待。しかしイヴの父親が亡くなりいまさらながら家族の絆、ありがたさに気づいたイヴは養子を育てるため夫婦で養子斡旋を福祉事務所に頼む。しかし、養子斡旋所の担当者(エドモンド・グエン)が養父母に適格かどうかの身辺調査をする旨の承諾書にサインをと促すとハリーの顔色が変わる。

ビジネスに夢中の妻とはしっくりいかず寂しかったハリーは、LAの味気ないホテルを出てビバリー・ヒルズのスターの屋敷巡りのバスに乗りフィリスという女性と知り合っていた。寂しい者同士惹かれあったふたり。妻と離婚してフィリスと結婚しようとサンフランシスコに帰ってくれば妻の父親が危篤という知らせが入っていた。妻イヴはフロリダに向かうというタイミングの悪さ。 LAにもどればフィリスが誕生日の夜の出来事から妊娠していたという、またもや最悪のタイミング。しかし子供はほしい。産んでくれと頼んでシスコに帰れば父を亡くした妻イヴは「家族の大切さがわかったわ。養子をもらって暖かい家庭を作りましょう。」と姿勢が変わっているのだ。どうすればよいのだ? グズグズしている内に気が付けばLAとシスコという二重の生活をしていた。

重婚罪で裁判に掛けられたハリーに判事が言う。「あなたは誠実なため、ひとりを選ぶことができず今ふたりとも失ってしまった。」 「しかし裁判後、あなたはどちらかを選ばなくてはならない。

感想
50年前の映画とはいえ、今も色あせない問題作。現代でも通用するというのは、とりもなおさず人間の本質は社会情勢が変わったとはいえ50年くらいでそう変わらないということなのでしょう。
大人の男の場合、大部分は働いて稼いでおまんまを食べている。とてもシンプル。大人の女は生活していくための選択枝が2つある。働いてお金を得るか、家庭で家族のために働くか。ただしその2本の道は別々に分かれている訳ではなく途中で交差して別の道を歩む事も可能なのだ。結婚していても離婚、夫の失業などで別の道を選ばざるを得ない場合もある。反対に子供を育てるためや介護のため家庭に入る場合もある。
カップルの場合パートナーたる女の人がどういう道を歩むのか当事者ではない男性にはなかなかわからないというか当事者意識がもてない、ついていけない部分があるのだろう。はっきりいって女性も自分の将来の青写真を描く事がおぼつかない人が多いのだから−私もそのひとり−、まわりの人にわかるわけがない。

養子斡旋の仲介をする役のエドモンド・グエンという方は「34丁目の奇蹟(1947年)」のアカデミー助演男優賞を受賞したサンタクロース役の方のようです。ビバリー・ヒルズの豪邸巡りのバスで「次はサンタクロース。『34丁目の奇蹟』のエドモンド・グエンの屋敷」と運転手が紹介すると、ハリーがフィリスに言う。「見たかい? いい映画だよ。」昔の人はここで笑ったんでしょうね。
豪邸のスターの名前の中でもわかるのはバーバラ・スタンウィックとジェームズ・スチュアートぐらい。尚、右側の写真は「シャイなスター」と紹介されていたジェームズ・スチュアートの屋敷でした。
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ヒッチ・ハイカー The Hitch-Hiker
<逃亡を図ったふたりを車で追いつめるマイヤーズ>

1953年 米国 71分
監督・脚本 アイダ・ルピノ
制作・脚本 コリアー・ヤング
脚本 ロバート・L・ジョセフ
撮影 ニコラス・ムスラカ
音楽 リース・スティーヴンス
出演 エドモンド・オブライエン/フランク・ラブジョイ/ウィリアム・タルマン
メモ 2000.3.13 CSシネフィル・イマジカ録画
あらすじ
ギルバート・ボーンとロイ・コリンズは車で夜釣りにチャクラ山に出かける途中、若い頃を思い出しここはいっちょ女遊びをするかとメキシコに向かう。しかし、いざ繁華街に入ると何もしないでもどってくるふたり。帰る途中で止まった車の横でヒッチハイクをしている男をひらう。ガス欠で立ち往生していたと思ったふたりは「ガソリンスタンドまでだそ。」と男に言うと返事の代わりに男が取り出したのは拳銃だった。
感想
赤ん坊の時に親に捨てられた連続殺人犯は片方の目が義眼で眠っている時でさえ、目を閉じない。大の男がふたりいれば逃げれそうなもんだが、片目をつぶらない男の不気味さと、逃げ出した時に片方が捕まればどうなるかとお互いを思いやってふたりはなかなか逃げることができない。車という密室の中で拳銃をちらつかせ、「子供にまたあえるといいな」などと粘着質にふたりをいたぶりながら男はメキシコの町まで車で、車がいかれた後は徒歩でふたりをひきずりまわす。捕らえられたふたりは、メキシコの乾いた砂漠と焦燥感と恐怖から神経をさいなまれていく。

連続殺人犯マイヤーズは1951年米国で6人を殺害したウィリアム・ビリー・コップをモデルにしているとか。監督は女優でもあり1950年代ハリウッドで唯一の女流監督だったアイダ・ルピノという方だそうです。監督自身が一番気に入っていた作品。うん、わかる。
ごくシンプルな作りのモノクロ・サスペンス映画。もっと手に汗握るシーンがあってもいいかなと思いつつ、この犯人の造型は不気味。
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暗黒の恐怖

<会議の後。貧乏くじをひかされた警部と若造のドクター・リード>
1950年 米国 97分 モノクロ
監督 エリア・カザン(1950年ヴェネチア国際映画祭国際賞「波止場」「エデンの東」)
原作 エドナ・アンハルト/エドワード・アンハルト(アカデミー賞原案賞)
脚本 リチャード・マーフィ
撮影 ジョー・マクドナルド
音楽 アルフレッド・ニューマン
出演 リチャード・ウィドマーク(ドクター・クリント・リード)/ポール・ダグラス(警部)/バーバラ・ベル・ゲデス/ウォルター・ジャック・パランス(ブラツキー)
メモ 2000.3.12 CSシネフィル・イマジカ録画
あらすじ
ニューオリンズの波止場で死体が発見される。解剖を担当した医師はただちに休暇中の衛生局のドクター・リードを呼び出す。あわただしい検査の結果空気感染する”肺ペスト”であることが判明。死体と所持品は焼却、死体と接触した警察官全員は何も知らされないまま有無を言わさず血清の注射を受けさせられる。緊急の会議で市警察は「本当に伝染病なのか」と疑うが若い市長はリードの判断を指示し「感染者の死体は誰か、被害者と接触した人は? 誰に殺されたのか?」の捜査を最優先して行うよう指示する。手がかりがまったくないまま、大量の人員を投入しての犯人捜しがはじまった。肺ペストは致死率100%であり、感染後2日たつと菌をばらまきはじめるのだ。あと48時間しかない。
感想
<船に乗ろうとロープをよじ登りしぶとく逃げるブラツキー(ジャック・パランス)>
病原菌の蔓延という起こりうる身近な恐怖を題材にしたカウントダウン・サスペンス。被害者の身元が聞き込み調査により、少しずつ明らかになっていくストーリーがよく出来ている。犯人が高飛びしない理由というのも納得できる。破綻がない。
が、この映画ちょっと暗い話に感じた。どこがかと言うと、警察長官や衛生局長など街のトップが部下に「すべて君に一任する。」と言い渡し保身を図る所。街にパニックを起こすという理由で市民に事件は伏せられているが、市長の側近といえば自分の家族を田舎に避難させる事を”菌を防御する”仕事より優先する始末。人殺しのチンピラよりワルではないかと思えてくる。
もうひとつは、仕事優先で家庭をかえりみる事ができないドクター・リードは近所の人の名前も知らない。大事件を防ぎへとへとになって家に帰ってくれば、息子が仲良くしている画家に「息子さんともう少し一緒にいてあげたら。」と言われる始末。その後の米国や日本の「父親不在家庭の混乱」を暗示するようだった。

恥ずかしながら、わらし割と長い間(少なくとも10代の頃は)エリア・カザン監督って女の人だと思っていました(汗)。
おすすめ度★★★★
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フランケンシュタインの花嫁 BRIDE OF FRANKENSTEIN

1935年 米国 75分 モノクロ
監督 ジェームズ・ホエール
撮影 ジョン・メスカル
音楽 フランツ・ワックスマン
出演 ボリス・カーロフ(ザ・モンスター)/バレリー・ホプソン/エルザ・ランチェスター
メモ 2000.3.11 ビデオ
あらすじ
↓の「フランケンシュタイン」の続編。風車小屋とともに燃えつきたはずだった人造人間は、地下水に浸かって生き延びていた。ひとり森をさまよい目の見えない隠者の住む小屋にたどりつく。隠者は孤独で不意の客人を「フレンド」と招き入れる。隠者から言葉、ワインを教えられ人造人間の体に暖かい血が流れ始めるが平和な時も長く続かず、追っ手に捕まえられ牢屋に閉じこめられる。鎖を引きちぎった人造人間は生きた人間よりも死人に親近感を持ち地下墓地に逃げこむ。と、そこには人造人間の花嫁を造ろうと若い女の死体を漁りに来たプレトリアス博士がいた。連れ合いを造ってやると言われた人造人間は博士とともにヘンリー・フランケンシュタインの花嫁を誘拐し、「無事に返して欲しかったら花嫁を作れ」と脅迫し、死体を生き返らす実験に引き込む。プレトリアス博士も自ら創造主になることを狙っていた。
感想
「ヘンリー・フランケンシュタインの花嫁ってエリザベスじゃん」というツッコミは、監督の意図がよくわからないのでひとまず棚上げ。
前作に比べ、映像的により完成されていると思う。内容的にもより深い”孤独”が描かれている。
「生命の神秘の謎」を追求していたフランケンシュタイン博士は恋人エリザベスと結婚する事で呪縛から解き放たれ、「愛」を知り人間的になったというか普通の人になったというか。う〜ん、普通の人はひとりでは生きられないという事なのかな。自分が大切に思う人、自分を受け入れてくれる人がいない”生”に見切りをつける人造人間の涙は重い。
おすすめ度★★★★
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フランケンシュタイン FRANKENSTEIN

1931年 米国 70分 モノクロ
監督 ジェームズ・ホエール
原作 メアリー・シェリー
脚本 ギャレット・レオート/フランシス・E・ファラガー
撮影 アーサー・エディスン
出演 ボリス・カーロフ(ザ・モンスター)/コリン・クライブ/メイ・クラーク
メモ 2000.3.9 ビデオ
あらすじ
フランケンシュタイン男爵家のひとり息子ヘンリーは自分の知力に溺れ、生命を作り出す事に取り憑かれる。墓場から死体を盗み大学からは研究用の脳も盗み人造人間を形作り、嵐の夜の雷を利用して生命を吹き込む。しかし人造人間にはノーマルな脳を移植するはずだったが、せむし男の助手が盗み出す際に手を滑らし落としてしまったためしかたなく持ち帰ったアブノーマルな脳が移植されていた。。命を持った人造人間は暴力的で博士も手こずる。反抗期の子供が言う「生んでくれと頼んだ覚えはない!」の人造人間に対し博士は「頼んで生まれてきた人間はこの世の中にいない!」と反論・・・はしない。人造人間ももちろんそんな事は、いわない。フランシュタイン博士は人造人間をひとりの人間とは見ていないため、自分が造り出したのなら壊す権利も自分は持っていると考えている。子供が出来たらどう思うのかな、自分はちょっと手伝っただけで造り出したとは言えないと思うんだろうか? 「ただ、作ってみたかっただけ〜」で造り出され、生き続ける事を望まれてはいない人造人間は、異端視され人々から追いつめられる。何故こんな目に会うのかわからない頭混乱のまま人造人間は滅び、フランケンシュタイン博士の末路といえば・・・
感想
オハズカシイ事なんですけれど、この映画を見てわかった事とは
「スリーピー・ホロウ」の風車が炎上するシーンってこの作品→へのオマージュだったって事。(パクリではないと思うぞ) 
この映画を時空を越えて(そんなに生きていない)今再見しています。
 
おすすめ度★★★★
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点検売買 on approval

1943年 米国 76分 モノクロ
監督・脚本 クライブ・ブルック
脚本 テレンス・ヤング
撮影 クロード=フリーズ・グリーン
出演 クライヴ・ブルック(ジョージ・ブリストル侯爵)/ベアトリス・リリー(マライア)/ローランド・カルヴァー(リチャード・ホルトン)/グージー・ウィザース(ヘレン)
メモ 2000.3.6 CSシネフィル・イマジカ録画
あらすじ
太平洋戦争真っ直中の米国、戦気高揚映画ばかりではつまらない、戦前の1939年頃の平和な頃の映画もいいけれどそれより祖母の時代、気品があって女性がエレガントでチャーミングだった時代の映画を、と始まったのは・・・
19世紀のロンドン、貧乏貴族のジョージは邸宅を米国の富豪のヘレンに貸し今夜は自宅で開かれたパーティに呼ばれていた。アメリカ人のヘレンは大金持ちで若くて美人、公爵のジョージの花嫁候補だったがジョージはぐうたらで気ままな独身生活を捨てる気はもうとうない。ジョージの親友のリチャードは貧乏な勤め人。貴族のマライアに恋しているがマライアの天敵ジョージは「あんな年増と」と反対する。マライアに「古きよき友とお酒を飲むかい?」「妹が8月に41才になる。」と妹と同年のマライアに年の事を忘れさせない。「ジョージなんて大嫌い」と言い放つマライアに、ヘレンは「いい人だと思うわ。」「お金目当てよ。」「それでも、いいの。」う〜ん、アメリカ人の彼女は爵位に憧れているのか。
リチャードの気持ちを知っているマライアは「結婚してもいいけれどまず確かめなくちゃ。」とリチャードに1ヶ月間離れ小島の別荘で夫婦同然の暮らしをしましょうと提案する。「点検よ。夜はあなたはボートで対岸に渡ってホテルに泊まるのよ。」と高慢なマライアは容赦しない。女に鼻面もたれて引っ張り回されているリチャードを捨ててはおけないとジョージもおじゃま虫を決め込む。そこにジョージを追ってきたヘレンが「まあ、偶然お会いするなんて」と登場するというドタバタ・ラブコメ。
この4人はどういう組み合わせで収まるのか? 50年前の映画なのでジョージとリチャード、マライアとヘレンという組み合わせはありません(笑)。
感想
「点検売買」っていうから車の話かと・・・(バカ)。
この映画皮肉が利いていてしかも品がよくて面白い。何故か時代を感じさせない。現代的だと思う。独身の男女が一つ屋根の下に寝泊まりするなんてふしだらなっ!と怒った家政婦の号令の元、料理人や小間使いが出ていく。4人は自炊を始めるが、貴族のジョージが昼寝をし貴族のマライアがピアノを弾いて歌っている間、庶民のリチャードはボートを漕いで買い出しに行き、庶民のヘレンは料理におおわらわ。そのしぐさが楽しい。


この高慢チキで辛辣なマライア役の女優さん(ベラ・クルーゾーにちょっと似ている)と監督・脚本も兼ねているジョージ役のクライブ・ブルックの掛け合いが面白い。マライアの別荘に着いた途端、壁に飾ってあるふたつのヘラジカの首を見てへらず口男ジョージがマライアに問う。「どっちが前の夫だい?」(笑)。
おすすめ度★★★1/2
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六人の最後の者 Le Dernier des Six

1941年 仏 90分 モノクロ
監督 ジョルジュ・ラコンブ
脚本 アンリ・ジョルジュ・クルーゾー(「悪魔のような女」「恐怖の報酬」)
撮影 ロベール・ルフェーブル
出演 ピエール・フレネー(ウェンセスラス・ウェンズ警視「犯人は21番に住む」
「密告」)/スージー・ドゥレール(ミラマル)/アンドレ・リュゲ
メモ 2000.3.5 WOWOW録画
あらすじ
6人の仲間は一か八かで賭けた博打で大儲けをする。このお金を6等分してそれぞれ運試しをしようと5年後パリでの再会を約束しアフリカ、中東に散る。成功してようが財産を無くしてようがその時の各自の財産を集めてまた6等分しようという契約を交わして。
5年後パリで店を大繁盛させているサンテールの所に尾羽根打ち枯らしたジャン・ペルロンジュールが訪ねてくる。ジェルニコとはコンゴで会ったが女の事で気まずくなり別れたらしい。ふたりがふと新聞を見ると、集結してくる6人の仲間の内のひとりナモットがダカールから出航した船から落ち行方不明になっていると載っているではないか。
嵐の夜サンテールの家に怯えた様子のジェルニコがやってくる。船でナモットと一緒だったというジェルニコは「ナモットは誰かに突き落とされた」と言うのだ。逃げる人影を見たとサンテールに話す。そうこうしている内に窓の外からジェルニコは撃たれ血だらけになる。サンテールが医者を呼んだり表の車の中で待っているジェルニコの妻ロリータを呼びに行っている間に玄関の扉が閉まってしまう。どんどん叩いているとどこからやってきたのか屋敷の中からジャンが扉を開ける。屋敷の中に引き返すとジェルニコの死体は何者かに運び去られていた。
サンテールの店の二階席でレビューを見ていたティニョールは撃たれ、暗黒街に身を沈めたジョルジュ・グリブもホテルの一室で撃ち殺されて発見される。
恋人のミラマルがショーのオーデションを受けるのに渋々つき合っていたウェンセスラス警視が捜査に乗り出す。
感想
というようなあらすじを読んだだけでも普通犯人が分かると思うのですが、この映画には死んだジェルニコの妻ロリータとジャンの昔の恋が再燃したり、ロリータがショーに出れるよう便宜をはらってやるサンテールがロリータに鼻の下を伸ばしたり、ロリータを挟んだ男二人の反目があったり、華やかなフレンチカンカンやら、アクロバットダンスのショーがあったり、ロリータのアニー・オークリーのような見事なライフル射撃のショーがあったりとごったごったと色々間にはさまり、それが目くらましになって後半まで犯人がわかりませんでした(ハジ)
ウェンセスラス警視に「仲間はどんなだった?」と尋ねられたジャン・ペルロンジュールが「サンテールは臆病。ナモットとは気が合わなかった。真面目で頭が堅い。コツコツ人生を築くタイプだ。反対にジェルニコは神経質で想像力がゆたか。ティニョールは詩人だ。」と言う所でやっとわかるというていたらく。

   ウェンセスラス警視のやかましい恋人ミラマルの口をとんがらかしたお顔とキャラに見覚えあるなあと思ったら、クルーゾー監督の初監督作品「犯人は21番に住む」はこの映画の続編だったんですね(驚き)。ウェンセスラス警視とミラマルのコンビ物みたい。 

 ショーに出たいとうるさいミラマルに辟易したウェンセスラス警視がサンテールになんとかして欲しいと頼む。サンテールが「ショーに出しましょう。」と返事をするとさっそく、「それには条件があるわ。」としゃべりだすミラマル。「まず専用の衣装係を付けてちょうだい。」「それから私の部屋はいつも消毒して。」 それを聞いたサンテールが「彼女が楽屋で殺されても犯人は捜さないでくれ。」とウェンセスラス警視に頼むと、答える警視「犯人は、もう解決済みだ。」(笑)。
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13F The Thirteenth Floor

1999年 米国 100分
監督 ジョゼフ・ラスナック
脚本 ジョゼフ・ラスナック/ラベル・センテノ・ロドリゲス
原作 「模造世界」ダニエル・F・ガロイ
撮影 ベディゴ・フォン・シュルツェンドルフ
美術 カーク・M・ペトルッチェリ
音楽 ハラルド・クローサー
衣装 ジョゼフ・ポロ
制作 ローランド・エメリッヒ/ウテ・エメリッヒ/マルコ・ウェバー
出演 クレイグ・ビアーコ(ダグラス・ホール 
「ロング・キス・グッドナイト」)/アーミン・ミュラー・スタール(ハノン・フラー「ミュージック・ボックス」「シャイン」)/グレッチェン・モル(ジェーン・フラー「ラウンダーズ」)/ビンセント・ドノフリオ(ホイットニー「フルメタルジャケット」「エド・ウッド」)
メモ 2000.3.3 OS劇場C.A.P.
あらすじ
高層ビルの最上階13Fは、時代の最先端を行くコンピューターソフト会社の秘蔵のフロアだった。仮想世界への入り口だったのだ。
そのコンピューター会社の社長フラーが殺される。その朝目覚めたダグラス・ホールはバスルームに血のついたシャツを見つける。昨夜の記憶がない。何があったのだ?
感想
(ここんとこ内緒)ええんかいなというオチでしたが、話に破綻がない、緻密によく出来ている。仮想世界を描く最近のSF映画「ダーク・シティ」 「マトリックス」  「ニルヴァーナ」に比べハッとするような映像は少なくおとなしめの堅い作り。ドイツ人のスタッフだそうです。が、ミステリ色が幾分強くこの辺りは好みです。1937年のロスのレトロな映像もいい。
仮想世界を作るというのは「箱庭」を作るようなもんなんだ。今の世界ではかなえられない願望を実現する世界というわかりやすい語り口だった。タイムマシン物の映画とも思える。
ダグラスとジェーン役のおふたりは、SF映画にも合うしノスタルジックな世界にも合うルックスですね。秀作のSF映画って見終わると気持ちがいい事がある。広がりと浮遊感を感じる。
おすすめ度★★★★
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恐怖の足跡 carnival of souls

1962年 米国 83分 モノクロ
制作・監督 ハーク・ハーヴェイ
脚本 ジョン・クリフォード
撮影 モーリス・ブラナリー
音楽 ジーン・ムーア
出演 キャンディス・ビリガス/フラカセス・フィースト/シドニー・バーガー
メモ 2000.3.2 CSシネフィル・イマジカ録画
あらすじ
車に乗った男達にあおられて、3人娘が乗った車はレースを始める。が車は橋の上から泥の川に落ち、川からはひとりしか生還しなかった。たったひとり助かったメリーは町を出て他の町の教会でパイプオルガン奏者として暮らしていく事にする。この場所からおさらばしたいのだ。ところが新しい生活を始めたメリーの周りで怪奇現象がおこり始める。
感想
ってなあらすじだけで、某映画と似ているような気がしませんか? 似ていました。「シャイニング」とも似ているんですけれども。某映画の原型のような気もするけれど、もっと以前にも同じ様な幻想的な映画があるのかもしれません。最近よく「この映画はあの映画のパクリだパクリだ」と鬼の首でも取ったかのようにおおまじめに言う人達がいるけれど、そうかなあ。ふざけて言っているんならOKなんだけれど。パクラレタと言っている映画がオリジナルだなんてどうしてわかるの? 不思議な時がある。 最近では「13F」が「マトリックス」をパクっているって、どこがあ? まさか仮想世界にジャック・インする所と違うよね。

音が無くなると主人公メリーの姿が誰にも見えなくなるって所が個性的だった。キーキーした不協和音を鳴らすオルガンの音もいい。有名な映画なんかも知んないけれど、全然知らなくて見てなかなかのホラーだったよ。たださぼてん男は「幻想映画はドイツ人にまかせた方がええんとちゃうかいな。」と言っておりますので物足りなかったよう。「はあぁ」ってな様子でした。
おすすめ度★★★
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