1999年4月の映画


アトミック映画まとめ (by さぼてん男)

アトミック映画にはちょっとうるさい。「ちょっとうるさい」程度なので誤解のないように。
特に「アトミック映画」というジャンルがあるわけではないが、「アトミック・カフェ」「渚にて」「フェイル・セイフ」「博士の異常な愛情」「5月の7日間」「シルクウッド」「チャイナシンドローム」……と並べれば、だいたい感じは分かっていただけるだろう。核の恐ろしさに重点を置いた映画だ。
かつてアメリカでは「原爆バンザイ」の時代があった。第二次大戦後すぐの朝鮮戦争の時には、中共の支援を断ち切るために、朝鮮半島と中国大陸とが接する鴨緑江(アムノクガン)地帯に原爆を数発落とす作戦が真剣に議論された。
しかし、旧ソ連との冷戦時代に突入して自国が核攻撃の恐怖に曝されたとたんに核への恐怖がアメリカ国民に蔓延した。キューバ危機の際にそれは頂点に達し、多くのアメリカ人がシェルターの穴を掘ったことだろう。
ところが、冷戦時代が終わるとアメリカ人の核への恐怖は急速に薄らぎ、スクリーンでは原爆の爆発が珍しくなくなる。「トゥルーライズ」「ブロークンアロー」……。もはや画面をハデにするために原爆を使うのも平気なのか?
反核反戦、反原発などと野暮なことを言うつもりはない。しかし、最近の映画における核の扱いの不真面目さは一体なにごとだ? もう少し気配りがあってもいいのではないのか?
状況によってコロコロ変わるアメリカ人の態度も心配だし、最近の映画における核の扱いが、観客の核に対する警戒心を麻痺させなければよいがと憂慮する昨今である。
ね、「ちょっとうるさい」でしょ?
「フェイル・セイフ」★★★★★(つまらないかもしれないが、絶対見よ)
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赤ちゃんにバンザイ!? Jack and Sarah
英国 1995年 111分
監督・脚本 ティム・サリバン
音楽 サイモン・ポスウェル
撮影 ジャン・イブ・エスコフィエ
出演 リチャード・E・グラント(ジャック)/サマンサ・マシス(エイミー)/ジュディ・デンチ/イアン・マッケラン/イモージェン・スタッブス
メモ 1999.4.25(日)WOWOW
あらすじ
若手弁護士のジャック、妻のサラは美人だ、もうすぐ子供も生まれる、家も新築した、人生充実している。強引で自分本位ではあるが憎めない人柄。内輪の新築パーティの後サラは産気づく。あわてたジャックは階段を落ち意識不明のまま救急車で病院に運ばれた。病院のベッドで気がつくとママが悲しそうな顔で見つめている。サラが急死してしまったのだ。
感想
なにゆえこの映画を見たかというと、
「恋に落ちたシェイクスピア」の8分間の演技でアカデミー助演女優賞をかっさらったエリザベス女王役のジュディ・デンチって、ノーメーキャップだと、どんなお顔なのか知りたかったから。でもってわかったことは、エリザベス女王のメーキャップってそんなにスゴイ厚塗りじゃなかったんだなって事(^^)。英国的な知性が感じられる人ですね。この映画では、ジャックのママ役。
最愛の妻をなくしてふぬけになったジャックを立ち直させるために、酒をかっくらって寝ているジャックの横にすっぽんぽんの生まれたての娘(サラ)を置いて帰ってしまうという荒療治をパパとママ達が謀る。起きてあわてふためくジャックは、しかたなしに赤ちゃん用品を買うためにサラを連れてタクシーに乗るんだけれどこのシーンがケッサク。「洗ってあるからね」と言い聞かせて、自分のシマシマの靴下を帽子がわりに赤ちゃんの頭にかぶせる。バスタオルで巻いて大きな封筒にすっぽリ入れてお出かけするのだ。必要は発明の母だ。 封筒から顔だけ出した赤ちゃんがまたかわいい。赤ちゃんって可愛いよね、病気や怪我さえしなかったら。
オチもバッチリ決まった面白い映画でしたよ。
おすすめ度★★★1/2
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ブラス! BRASSED OFF
英国 1996年 107分
監督・脚本 マーク・ハーマン
音楽 トレヴァー・ジョーンズ
撮影 アンディ・コリンズ
演奏 グライムソープ・コリアリー・バンド
出演 ピート・ポスルスウェイト(ダニー)/ユアン・マクレガー(アンディ・トランペット奏者)/タラ・フィッツジェラルド(グロリア・フリューゲル奏者)/ジム・カーター(ハリー・ユーフォニウム奏者)
メモ 1999.4.25(日)BS録画
あらすじ
英国ヨークシャーのグリムリー炭坑街は「炭坑閉鎖」で揺れている。もはや「閉鎖」は時間の問題。炭坑夫達とその家族は意気消沈し肩を落として歩いている毎日だった。たったひとり炭坑夫達によって1881年に創設された”グリムリー・コリアリー・バンド”の指揮者ダニーだけは変わらない。頭の中は地区予選に勝って、ロイヤル・アルバートホールの全国大会へ出場する事でいっぱい。そんな父親に対しトロンボーン奏者の息子フィルは、深い愛情を持ちついて行きたいと思いながらも家庭の事、借金の事、炭坑の閉鎖の事で悩みがつきない。
感想
・・・映画館で見ればよかった・・・
だいたい見るきっかけとなったのが、「恋に落ちたシェークスピア」に出ていたジム・カーターさんってどの人?というのを解明するためってのからして情けない。捜せば録画ビデオがでてくるってのも我ながらちょっとコワイですけど。
音楽のパートとドラマのパートが巧みにアンサンブルされ、見終わった後に静かな感動と哀愁を残す映画。ダニーが滅びゆく自分達をさして言う「もし我々がアザラシやクジラなら助けてもらえたろう。だが、我々は普通の人間だ。誇り高い人間だ。」。
ロイヤル・アルバートホールでは病に倒れたダニーに変わり、ユーフォニウム奏者のハリーが指揮をします。曲はロッシーニの「ウィリアム・テル序曲」。ハリー役のジム・カーターは頬を上気させて熱気が伝わってくるような指揮ぶりでした。気持ちよさそうでしたねえ。ブラス・バンドを指揮するってあんなに気持ちいいモンなんですね。必見シーン。
ラストのエルガー曲「威風堂々」名曲です。ちびさぼてんも「6年生を送る会」のためにリコーダーで練習していました。似て非なるものでした。
追記:ジム・カーターさんは、
「恋に落ちたシェイクスピア」では、最初は海賊役だったのにいつの間にかジュリエットの乳母役に変わっていた方です。酒場で隣に座った女の人に「(ロミオとジュリエットの芝居はね)まず、乳母がいてね。」って話を始める人(^^)
おすすめ度★★★★1/2
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ビジター CORRIDORS OF TIME
フランス 1998年 118分
監督 ジャン=マリー・ポワレ(「おかしなおかしな訪問者」「俺たちは天使だ」)
脚本 ジャン=マリー・ポワレ/クリスチャン・クラヴィエ
撮影 クリストフ・ポーキャルヌ
音楽 エリック・レヴィ
出演 クリスチャン・クラヴィエ/ジャン・レノ/ミュリエル・ロバン/マリー=アンヌ・シャゼル/クレール・ナドゥ/クリスチャン・ビュジョー
メモ 1999.4.24(土)国名小劇
あらすじ
時は1123年、ルイ6世に使えるゴッドフロワ伯爵(ジャン・レノ)は、悪い魔女ののろいで許嫁(いいなずけ)の父君を熊とまちがえ矢で射殺してしまう。このままでは許嫁は尼寺に入ってしまう。過去をかえんとお抱え魔術師の秘薬を飲んで事件の数日前に戻るはずが、出現したのは20世紀の現代であった。でもってお互いのカルチャー・ショックからドン・キホーテとサンチョ・パンサのように数々の事件を引き起こすが奮闘の末最後には中世に舞い戻り過去を変える事ができる。めでたし、めでたし。しかしトーゼン話はこれで終わらなかった。下僕のジャクイユ(クリスチャン・クラヴィエ)は20世紀に残り、かわりにジャクイユの子孫が中世に来てしまっていた!
って所で終わった「おかしなおかしな訪問者」の続編
今回はホッとしたのも束の間、下僕ジャクイユが許嫁の家に伝わる家宝の”聖ロランドの首飾り”を盗みだし20世紀に持っていってしまった事が判明。このままでは、”時の回廊”が閉じず”たたり”発生、お家断絶となりかねない。ゴッドフロワ伯爵はまたしてもタイム・トリップに出る決意をする。
感想
まっすぐで貴高い騎士(=侍)というものは、どの国、どの時代であろうともカッコいい。
「テラコッタ・ウォリア」「虎の尾を踏む男達」もカッコよかった。
時空を超えるSFアドベンチャー+ドタバタ・コメディは健在。今回は、下卑た従僕を演じるクリスチャン・クラヴィエ(「俺たちは天使だ」)のハイテンションなベタギャグ連発がメインで、ジャン・レノの出番が控え目なのが少々残念であった。しかし、SFXなかなか凝っていました。前回同様、ご先祖様と子孫がそれぞれ一人二役ってのが面白い。今回クラヴィエは3役でした。前回と今回では姫役の人が変わっていた様な気がする。
私は「グランブルー」よりも「レオン」よりもゴッドフロワ伯爵のジャン・レノが好き。迫力ある馬上のお姿が凛々しい。
おすすめ度★★★1/2
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名探偵コナン映画版まとめ (さぼてん男)

1 「時計じかけの摩天楼」(1997年)
あらすじ:
連続爆破事件を辛くも切り抜けたコナン(=工藤新一)の活躍によって、犯人と事件の全貌が明らかとなる。しかし、最後に爆弾が仕掛けられた建物には、コナンの居候先の娘、蘭が居合わせていた。絶体絶命の爆弾トラップにコナンと蘭はいかに対処するか?

2 「14番目の標的(ターゲット)」(1998年)
あらすじ:
謎の人物によってコナンの関係者が次々に狙われていく。標的たちには名前に数字が含まれるという共通点があった。残った標的たちは海中レストランに閉じ込められ、爆弾が爆発する。水没したレストランからコナンと蘭はいかに脱出するか? そして、意外な犯人とは?

3 「世紀末の魔術師」(1999年)
あらすじ:
コナンの宿敵、怪盗キッドはロマノフ王朝の秘宝を盗み出すが、何者かに狙撃され、秘宝を残して失踪する。秘宝に秘められた謎を解くためコナンたちは横須賀にある西洋風の城に向かうが、一行の中にはキッドを狙撃した人物も含まれていた。その人物とは誰か? その目的は? キッドの生死は? そして、秘宝の謎とは?

感想:
少年サンデーの連載漫画でテレビアニメでもおなじみの「名探偵コナン」の映画版。単行本では、合理性と荒唐無稽さの配合が独特の世界を生み出している。とりわけ、行方不明となった新一を案じる蘭に正体を明かして安堵させたい一方、そうすると蘭を危険に巻き込むがため傍にいて蘭を見守るしかないコナン(=新一)という設定は絶妙。玉石混淆な推理物語を貫く縦糸として緊張感を保っている。私としては、「金田一少年の事件簿」よりも軽薄ながら明るい「名探偵コナン」に軍配を挙げたい。
さて映画版については、出来の良さの順に「1」→「3」→「2」というところか。
「1」は、早々に犯人は明らかとなり、推理モノというより爆発までのカウントダウン・サスペンスに主眼がある。終盤、万策尽きた蘭と新一(変声機を使ったコナン)が瓦礫を挟んで語り合うシーンは、映画「また逢う日まで」の久我美子と岡田英次の有名な場面を彷彿とさせる秀逸な演出であった。とはいえ、最後に蘭が敢行する解決策の少女趣味的非論理的説明には、おぢさん、赤面してしまったが。
「2」は、ビジュアルはスペクタクルな反面、ストーリーは大味。肩に力が入り過ぎたか。
「3」は、オーソドックスな秘宝の謎解きモノで、怪盗キッドや謎の人物はむしろ小道具。秘宝並びに城のからくりはそれなりに楽しめる。
おすすめ度:
「1」★★★1/2
「2」★1/2
「3」★★★

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RONIN
米国 1998年 121分
監督 ジョン・フランケンハイマー(「終身犯」)
音楽 エリア・クミラル
撮影 ロベール・フレース
原案 J.D.ザイク
脚本 J.D.ザイク/リチャード・ウェイズ
出演 ロバート・デ・ニーロ/ジャン・レノ/ナターシャ・マイケルホーン(「デビル」「トゥルーマン・ショー」)/ステラン・スカルスゲールド/ジョーン・ビーン/ジョナサン・プライス(「未来世紀ブラジル」)
メモ 1999.4.23(金)リサイタルホール試写会
あらすじ
どこも受からず行くところがないっ! えらいこっちゃのジャン・レノはしかたなく一年浪人の身の上に・・・ではなく
冷戦終結後、各国のエージェント達は組織もなくなり仕事もなく金のため、そして他の生き方もできないために得体のしれない人物に雇われその日暮らしをしていた。今回、”浪人中”のエージェントに与えられたのは一個のスーツケースを強奪する仕事だった。気心も知れず、昨日の敵だった相手とチームを組んでその場限りのわけのわからん仕事をするのだ。そらストレスが溜まる。
6人のメンツは、
  プランナー<戦略>サム(アメリカ):ロバート・デニーロ
  コーディネーター<調達>ヴァンサン(フランス):ジャン・レノ
  ウェポン<銃器>スペンス(イギリス)
  ハイテク<電子工学>グレゴー(ドイツ)
  ドライバー<運転>ラリー(アメリカ)
  雇い人ディエドラ(アイルランド):ナターシャ・マケルホーン
感想
見終わった途端、隣が 「たくさん死にましたねー」と言う。
  「そうやねー、民間人もたくさん死んだよねー。きっと」と答える。
ロバート・デ・ニーロとジャン・レノ、濃いおふたりのアクションが、少々重たい(笑)。ためも、重たい(笑)。
前半は、テンポがいまいちとろいなあと思って見ていたのですが、後半のカー・チェイス!。いやあ、凄かったです。逆走して追いかけまわし火花ちらして走る走る、世の中にはすごい運転テクニックを持った人っていてはるんですねえ。ため息。
「謎のミッションに命をかける」ってとこは、「ミッション・インポシブル」のような凝った作戦ではないです。どちらかというと「日本海海戦」みたい。敵の来る道の正面をドンとふさぎ、横から叩くってだけ(笑)。
「ジャッカルの日」の恐妻家の警部が、ジャン・レノの知り合いで「赤穂浪士」のミニチュアを作ってはりました。
おすすめ度★★★
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虎鮫 TIGER SHARK
米国 1932年 80分
監督 ハワード・ホークス(「暗黒街の顔役」「ヒズ・ガール・フライデー」)
原案 ヒューストン・ブランチ
脚本 ウェルズ・ルート
撮影 トニー・ゴーディオ
音楽 レオ・F・フォーブステイン
出演 エドワード・G・ロビンソン(マイク・マスカレーニャス船長)/リチャード・アーレン(パイプス・ボウリー)/ジタ・ヨハン(キータ)/J・キャロル・ネイシュ/レイラ・ベネット/ヴィンス・ベネット
メモ 1999.4.22(木)WOWOW録画
あらすじ
マグロ漁の一大基地サンディエゴ港からは、船乗り達がマグロを求めてメキシコ沖へ乗りだしている。
船長と若い乙女、ハンサムな船員のオーソドックスな三角関係メロドラマ。

マグロ船のサンタ・マリア号は行方不明となり小型ボートでマスカレーニャス船長とふたりの船員は鮫がうようよする海を漂流していた。飲み水の事で争いとなりひとりの船員が海に落ちる。待ちかまえていた鮫の群がすかさず襲いかかる。そこに船が通りかかり助けを求めるが意識朦朧とした船長は倒れ、左手が海に浸かったまま気を失う。そこをめがけて鮫が身をくねらせて突進してきた・・・。
片手が義手のマスカレーニャス船長率いるサンタ・マリア号は日々大漁だ。運が向いている。海では超一流の漁師だが、陸にあがると船長には深い悩みがひとつある。それは女にもてない事。漂流した時に命を助けたパイプスは色男でモテモテなのに。次の漁では、ひとりが海に落ち鮫に襲われる。陸にあがった船長は、遺品を持って遺族を訪ねると病弱な若い娘がひとり残されていた。心惹かれた船長は足繁く彼女の家に通いなにくれとなく世話をする。惚れ込んだ船長が娘キータに結婚を申し込むが、娘はこたえる。「私はあなたを愛してはいない。それでもいいの?」
キータと結婚した船長は天にも昇る心持ち。浮かれているため、キータとパイプスが互いに惹かれ合っていることに気づかない。パイプスに気持ちをうち明けるキータ。しかし、命を救ってくれた恩人であり男の友情からもパイプスは船をおり別の土地に行くことを決心する。次の港で降ろしてほしいと船長にうちあけた所でマグロの群発見、話はひとまず置いて仕事にかかる。が、大きな釣り針がパイプスの首に突き刺さってしまう。急いで港に帰り、船長の家に運びこまれたパイプスはキータの手厚い看護を受ける。去る時期を逸してしまったのだ。
回復したパイプスは、明日の漁から海に出ると言う。船長からパイプスが他の港で降りると言い出した話を聞いたキータは一緒に船に乗せて欲しいと頼み、なにも知らない船長は喜んで船に乗せてしまう。マストの上で船長が鮫に向かって銃をぶっ放している間にとうとう二人は抱き合ってしまうのだ。それを目撃した船長は頭に血が上りパイプスを殴りつけ穴をあけた小舟に乗せて鮫の餌にしようとする。しかし船長はロープに足を取られ海に転落。鮫のアタックを受ける。
感想
見所は、当時のマグロ漁のシーンです。板子一枚下は地獄といわれる海の上での一本釣り。海では獲物を求めて鮫がうようよしている。迫力満点。
結婚式のシーンでは、船長のカギ型の義手(フック船長と同じの)に結婚指輪がかけられている。可愛い。アクション、西部劇、コメディ、SF、ミュージカルとあらゆるジャンルを撮ったホークス監督らしい(^^)。
マスカレーニャス船長役のエドワード・G・ロビンソンは「犯罪王リコ」「飾り窓の女」
「ストレンジャー」の名優ですね。遺作は確か「ソイレント・グリーン」(1973年)。
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恋に落ちたシェイクスピア SHAKESPEARE IN LOVE
第71回アカデミー最優秀作品賞他6部門受賞
米国 1998年 119分
監督 ジョン・マッデン(「哀愁のメモワール」)
脚本 マーク・ノーマン/トム・ストッパーズ
衣装 サンディ・パウエル
音楽 スティーブン・ウォーベック
撮影 リチャード・グレートレックス、B.S.C.
出演 ジョゼフ・ファインズ(ウィル・シェイクスピア(ラルフ・ファインズの弟))/グウィネス・パルトロウ(ヴァイオラ)/ジェフリー・ラッシュ(劇場主ヘンズロー「シャイン」)/コリン・ファース(ウェセックス卿
「アナザー・カントリー」「アパートメント・ゼロ」)/ベン・アフレック(ネッド・アレン)/ジュディ・デンチ(エリザベス女王)/ジム・カーター(「ブラス」)
メモ 1999.4.19(月曜日)ABCホール試写会
あらすじ
時は1593年、エリザベス朝末期の英国、芝居小屋は疫病で閉鎖され劇場主は金貸しから借りた金が返せない。金を返せと脅された劇場主は、若き売れっ子劇作家シェークスピアに早く次の台本を書けとせっついている。しかしシェイクスピアはただいまスランプの真っ最中。いわゆる「筆がのらない」のだ。
感想
「ロミオとジュリエット」の舞台稽古の中を右へ左へ上へ下へとカメラは華麗に動き、その中にふたりの愛のシーンが次々と織り込まれていくという凝った作りの映像。のみならず、現実の恋と劇中の恋が相互に絡み合い影響しあいながら、劇は喜劇から悲劇へと変調し、その「許されぬ恋」は「次の物語」へと引き継がれるという見事な構成でした。

ため息がでる豪華絢爛な衣装、華麗な音楽、芸達者な脇役達が主役ふたりを囲み支える。ギュッと映画を締めるエリザベス女王ジュディ・デンチの怪演、マキューシオ役のベン・アフレック、演劇バカの劇場主ジェフリー・ラッシュ、現実と舞台上のふたりの乳母、そして”金で買われた婿殿”ウェセックス卿の2枚目半(いや3枚目か、道化役か)のコリン・ファース様(^^)。いやあ見とれてしまいましたワ(^^)。
古典シェークスピア劇を題材としながらもあちこちで笑いをとり親しみやすく、多くの人に受け入れられる映画だと思う。
グウィネス・パルトロウ最高の出来。今まで割と大きくていかつい目の女の人だと思っていたんですが、気品溢れる演技でした。それにも増してクラッときたのはユニセックスな雰囲気を持つ華奢な青年に扮した所。お見事。
もう一人の劇作家マーローがルパート・エヴェレット(「アナザー・カントリー」「ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー」「ベスト・フレンズ・ウェディング」)に見えたんですが・・・。見間違いか。
ルパート・エヴェレットだそうです。いるいるさん、ありがとう(^^)。アナカンのふたりがそろって出演。
おすすめ度★★★★1/2
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隣人は静かに笑う ARLINGTON LOAD
米国 1998年 119分
監督 マーク・ペリントン
脚本 アーレン・クルーガー
撮影 ボビー・ブコウスキー
音楽 アンジェロ・パダラメンティ
タイトル・デザイン カイル・クーパー(「セブン」)
出演 ジェフ・ブリッジス(マイケル・ファラデー)/ティム・ロビンス(オリバー・ラング)/ジョーン・キューザック(シェリル・ラング)/メイソン・ギャンブル(ブラッディ・ラング
「ガタカ」)/スペンサー・トリート・クラーク(グラント・ファラデー)/ホープ・デイビス(ブルック・ウォルフ)/ロバート・ゴセット(FBIカーバー)
メモ 1999.4.17(土曜日)梅田ピカデリー
あらすじ
大学でテロリズムの歴史を教えているマイケル(ジェフ)は、FBIエージェントだった妻を2年前に亡くし今も立ち直れない。立ち直れない原因の一つは、FBIに対する不信感からだった。彼はまた、自分の仕事のテーマである14ヶ月前にセントルイスで起こったビル爆破事件についても単独犯と断定したFBIの捜査に対し疑問を持っていた。世の中の安全に対し危機感を持ち神経過敏になっていたマイケルは、ある事件を通じて隣に越してきた一家と親交を持つ。
感想
しょっぱなのカイル・クーパーのタイトル・バックからなにやら不穏な空気が漂ってくる。
前半は不安がジワジワジワジワ増してくる地味な作り。が、後半話が一挙に走りはじめる。
監督、主演3人の力もさることながら、脚本の巧みさに驚嘆した。

ティム・ロビンスと共に、奥さん役のジョーン・キューザックの笑顔が恐い
満足度★★★★
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エネミー・オブ・アメリカ ENEMY OF THE STATE
米国 1998年 132分
監督 トニー・スコット(「クリムゾン・タイド」)
脚本 デビッド・マルコーニ
製作 ジェリー・ブラッカイマー(「アルマゲドン」)
撮影 ダン・ミンデル
音楽 トレバー・ラビン/ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ
出演 ウィル・スミス(ロバート・クレイトン・ディーン「バット・ボーイズ」
「MIB」)/ジーン・ハックマン(ブリル)/ジョン・ボイド(レイノルズ)/レジーナ・キング(カーラ・ディーン 「ザ・エージェント」)/リサ・ボネット(レイチェル)/ローレン・ディーン(ヒックス「ガタカ」)/バリー・ペッパー(プラット「ライベート・ライアン」)/イアン・ハート(ビンガム)/ジェイク・ビジー( クルーグ「コンタクト」)/トム・サイズモア(ピンテロ 「ライベート・ライアン」
メモ 1999.4.17(土曜日)ヘップ・ナビオ 北野劇場
あらすじ
アメリカ合衆国議会はテロ防止策を名目とした法案<通信システムの保安とプライバシー法案>を巡っておお揉めしている。もしこの法案が通れば、容疑者というだけで個人に対し盗聴や監視しまくりOKとなるのだ。NSA(ナショナル・セキュリティ・エージェンシー)の行政官レイノルズ(ジョン・ボイド)は、猜疑心が強く過剰にアメリカの防衛に危機感をもっているのか己の野心からか奥さんが恐いからか法案に反対するハマースリー下院議員(ジェイソン・ロバーツみたいでした)を暗殺する。心臓発作として処理された事件だったが、偶然湖の対岸から自然写真家がビデオをセットしており一部始終が録画されていたのだ。
感想
殺しの現場を撮影してしまったカメラマンが逃げまわるつかみのシーンがいい。スピィーディ。
やり手弁護士ディーン役のウィル・スミスは今回よう走っていました。必死で逃げるディーンに対してハイテク機器を使って追跡する技術者(本人達が言うところの技術的支援)野郎らがまるでゲームをしているようなノリ。ディーンの家から盗んだ証拠のミキサーを平気で使っている、この現実感のない人間達が恐い。

ブリル(ジーン・ハックマン)の秘密基地の鳥かごが、同じハックマン主演の「カンバゼーション/盗聴」(1974年)のと同じに見えた。四半世紀もあそこにいたはったん?(笑)
ディーンの服とか持ち物の中に6個の発信機が仕掛けられているんやけれど、その場所のひとつに「PANTS」ってのがあって、「パンツ」にどうやって発信機をしかけんのかなあ?発信機を捨てるためにパンツまで脱ぐのかしらと、中国人のおばちゃんと一緒にどきどきしていたら「ズボン」の事だったんですね。そうか「トランクス」になるんよね(なーんや)。きれいで冷え冷えした奥さんがジョン・ボイドのネジを巻くシーン、思わずボイドに同情しましたよ。
「監視カメラや盗聴器によるプライバシーの危機」なんて理屈ぽい事よりも、エンターティメントとして楽しい(ブエナビスタやもんね)。
おすすめ度大取り込みの真っ最中に「ランジェリー・ショップ(女の下着屋)」で大学時代の友人と偶然あうなんて出来過ぎちゃう?で減点1/2(しかし、ほんとは赤の他人なのに大学時代の友人だと言ったのであろうか。わからん)★★★1/2
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少年が知っている THE SECRET PLACE
英国 1956年 98分
監督 クライブ・ドナー(「何かいいことないか子猫ちゃん」ウディ・アレンのデビュー作)
脚本 リネット・ペリー
撮影 アーネスト・スチュアート
出演 ベリンダ・リー/ロナルド・ルイス/マイケル・ブルック/デビット・マッカラム
メモ 1999.4.15(木曜日)CS録画
あらすじ
英国モノクロサスペンス映画(好きゃねんなあ、これが^^)。
フレディは、父親が警官のため同級生達から「ポリの息子」とつまはじきされる孤独な少年。近所のモリーにほのかな片想いをしている。モリーの恋人ジェリーは、宝石強盗をたくらみ、モリーをそそのかして少年から父親の制服を借りさせる。少年の心を悪用したのだ。
まんまと宝石強盗に成功したジェリー達だったが、宝石が大きすぎて、すぐにはさばけない。高飛びするつもりだった計画が狂っていく。宝石の入った袋をモリーのレコードプレーヤーに隠し、一味のひとりモリーの弟(デビット・マッカラム)に「預かっておけ」と押しつける。弟は事情を知らないモリーが少年に制服を貸してくれたお礼といって、レコードプレーヤーをプレゼントするのを、これ幸い「ポリの家にあれば安全さ」と黙認してしまう。しかし、新聞記事の強盗事件を読んだ少年は事実をさとり、プレーヤーを取り返しにきたモリーに「I hate you!」と叫ぶ。モリーが逃げ帰った後、裏切られた怒りでプレーヤーを壊すと、残骸から宝石がみつかる。
ここから、宝石をとりもどそうとする悪一味と少年の駆け引きがはじまるドキュメンタリータッチ・サスペンス映画の秀作。
感想 面白かった所が3点。
一つ目は、宝石店のミニチュア・セットを作って計画を説明する所。秘書役が天使の人形で、サスペンス映画ながらかわいい。ここらあたりが皮肉な英国ユーモア。
二つ目は、落ちた大粒の宝石を拾ったフレディの小さな弟が、好きな女の子にその宝石をプレゼントする。と、ちゃっかりした彼女は3ペンス半で他の女の子に売り飛ばすのだ。そうして、宝石は次々と女の子達に買われていく。最後は露天の宝石商に売ろうとして警察が知る所となる。警察は、小さな買い主を遡って捜査していく。ここら辺も子供がただ純真なだけではないブラックな英国映画。
三つ目は、建設中のマンションで宝石を持って逃げるフレディをジェリーが鬼のように追いかける真夜中の追跡劇。高い足場がジャングルジムのようでモノクロの陰影がいかされている。このシーンいい。
おすすめ度★★★1/2
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ガメラシリーズ総まとめ
(さぼてん男「あくまで私の"感想"で、"批評"などと大層なものではありません」)
「大怪獣ガメラ」(1965年)
あらすじ:北極海上空を飛行中の水爆輸送機が墜落。その衝撃で氷の下で眠っていた伝説の怪獣「ガメラ」が目覚める。エネルギーを求めて南下したガメラは日本を破壊するが、「Z作戦」と名付けられたロケット封じ込め作戦により、火星に追放される。(第2作の「大怪獣決闘ガメラ対バルゴン」で、ロケットは隕石と衝突し墜落したことが判明する。)

「大怪獣空中戦ガメラ対ギャオス」(1967年)
あらすじ:富士山の噴火によって目覚めたギャオスと、火山熱に引き寄せられたガメラが対戦。ガメラはギャオスの超音波メスと消火液に苦戦し、片足を失い一時退却する。傷が癒えたガメラは捲土重来を期し、太陽光線に弱いギャオスを朝まで押さえ込み、最後は噴火口に引きずり込んで辛勝する。ギャオスの断末魔の超音波メスが印象的。

「ガメラ 大怪獣空中決戦」(1995年)
あらすじ:超古代文明が生み出したバイオ生物ギャオスが復活、単為生殖可能なため爆発的に増えるおそれがある。人間が苦戦する中、同時に復活したガメラが福岡から東京まで各地で転戦し、最後はガメラのプラズマ火球でギャオスは倒される。

「ガメラ2 レギオン襲来」(1996年)
あらすじ:北海道に隕石が落下、巨大植物「草体」とこれを餌とするレギオンが札幌に出現。地球の守護神たるガメラが草体を破壊するが、小レギオンに襲われ退却する。仙台では草体の種子発射を阻止するものの爆破に巻き込まれ、仙台は消滅、ガメラも仮死状態に陥る。奇跡の復活を果たしたガメラは、ギャオスの傷跡が残る東京でレギオンとの最終決戦に臨む。

「ガメラ3 邪神(イリス)覚醒」(1999年)
あらすじ:大量発生したギャオスと戦うガメラは東京渋谷を火の海とし、ガメラは危険視されることとなる。一方、ガメラに両親を殺された少女は、奈良県山中で「イリス」と名付けた奇妙な生物を育てる。やがて巨大化したイリスは少女の憎悪心を取り込み、京都でガメラと激突する。


感想:昭和ガメラで評価しうるのは2篇のみ。2作目の対バルゴン戦は特撮が稚拙。あとは「ガメラは子供の友達だぁ」的アホらしさで見るべきものなし。マッハ文朱の赤面モノの宇宙人は特筆すべきであるが、わざわざ探して見る人がいると本人に気の毒なのであえて作品名は秘す。
その点、平成ガメラはゴジラを超えるリアリズム、真面目な制作姿勢に好感が持てる。とりわけ、G3では、正義の味方だったはずのガメラが人々の憎悪の対象となり、ギャオス、イリスのみならず、自衛隊にまで攻撃され、それでも戦い続ける悲壮な姿には胸を打つものがある。本作は、見事な特撮、緻密な構成、緊迫した展開もさることながら、パンフの解説にもあるように「怪獣の足元で踏み潰された人々の嘆き」に焦点を当てたところが画期的だ。
また、ガメラの孤独感も見逃すことはできない。4作のガメラの表情の変化を今一度眺めてみて欲しい。次第に険しくなる表情には、ハリウッド版ゴジラなど及びもつかない深い味わいがある。誰にも理解され得ない孤独感の深まりを感じるのは私だけだろうか。
本作をもってガメラシリーズはただの怪獣モノの限界を超えたと思う。いわばガメラの一生を描ききったと言うべきであろう。日本怪獣映画のひとつの到達点と呼んでいいと思う。
おすすめ度:★★★★1/2
(辛口・皮肉・文句言いの私としては異例の高得点である。藤谷文子と山咲千里の2大ダイコンスターが出ていなければ満点だった。実に残念である。特に藤谷文子は第1作から退化しているように思える。)
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プラーグの大学生 DER STUDENT VON PRAG
ドイツ 1913年 58分
監督 シュテラン・ライ
原作 ハンス・ハインツ・エーヴェルス
撮影 キンド・シベール
出演 パウル・ヴェゲナー(ボールドウィン)/リディア・サルモノワ(ジブシー女リドゥーシュカ)/グレーデ・ベルガー(伯爵令嬢マルギット)/ヨーン・ゴトウト(スカピネリ) メモ 1999.4.12(月曜日)ビデオ
あらすじ
プラーグ最強の学生剣士ボールドウィンは破産し、嫌われ者のスカピネリから「金貨10万枚受領の代償として、この部屋の中の物を引き渡す事に同意する。」という契約書にサインする。価値のあるものは何もないと思っていた部屋からスカピネリは、なんと鏡に映ったボールドウィンの片割れを奪っていく。金持ちになったボールドウィンは、身分違いの伯爵令嬢マルギットに恋をするが、マルギットの従兄弟で婚約者から決闘を申し込まれる。一族の跡継ぎなので殺さないでくれと伯爵に頼まれたボールドウィンであったが、決闘の当日、スカピネリに奪われた分身が決闘で跡継ぎを殺してしまうのだ。困りはてたボールドウィンは事情を説明しようと屋敷に忍び込み伯爵令嬢にあうが、鏡に姿が映らないボールドウィンを見て令嬢は気を失う。そこに現れた分身にボールドウィンは追いかけられ、逃げまどう。やっと馬車に乗り込んでホッとしたのもつかの間、馬車の御者はとみると自分だった(ガガーン)。なんとかかんとか部屋に帰ったボールドウィンはとうとう分身を撃ち殺してしまった。しかしそれは、とりもなおさず自分を撃つことであった。
感想
ドイツ怪奇幻想サイレント映画。いわゆる”ドッペルゲンガー=分身”がテーマで26年、36年にも映画化されているそうです(ドイツ人も好きなんだ。)
「俺は神でも悪魔でもないが、悪魔からお前と同じ名前を付けられた。お前の行く所には最後までついていく。お前の墓に座るまで。(A.ミュッセ)」の言葉どおり、最後は、河の側にはえている柳の下にボールドウィンの墓があり、その墓の上に座る目をむいた分身が映し出される。ぞぞぞ〜
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渚にて ON THE BEACH
米国 1959年 135分
製作・監督 スタンリー・クレイマー(「手錠のままの脱獄」「ニュールンベルグ裁判」「招かれざる客」)
原作 ネビル・シュート
脚本 ジョン・バクストン
撮影 ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽 アーネスト・ゴールド
出演 グレゴリー・ペック(タワーズ艦長)/エバ・ガードナー(モイラ)/アンソニー・パーキンス(ピーター中尉)/フレッド・アステア(科学者オズボーン)
メモ 1999.4.10(土曜日)ビデオ
あらすじ
1964年第三次世界大戦後、北半球は核により滅亡した。ミッドウェー海域で潜行していた米国原子力潜水艦は、南半球オーストラリア・メルボルンに入港する。
感想
最後に潜水艦が潜行していくシーンは、もう涙なくして観られない。
形なく静かに迫り来る放射能により迎える最後の日々までを、悲しくそして、優しくたんたんと描く。衝撃的な映像がない事により、一層「絶望と悲しみ」が胸にささる近未来SF映画。
映画の冒頭から流れる「ワルチング マチルダ WALTZING MATILDA」という曲は、オーストラリアの準国歌だそうです。
おすすめ度★★★★1/2
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セントラル・ステーション
第48回ベルリン国際映画祭金熊賞 ブラジル文化大臣賞
ブラジル 1998年 111分
監督 ヴァルテル・サレス
脚本 ジョアン・エマヌエル・カルネイロ/マルコス・ベルンステイン
撮影 ヴェルテル・カルバーリョ
音楽 アントニオ・ピント/ジャキス・モレレンバウム
出演 フェルナンダ・モンテネグロ(ドーラ)/マリリア・ペーラ(イレーネ)/ヴィニシウス・デ・オリヴェイラ(ジョズエ)
メモ 1999.4.8(木曜日)梅田ガーデンシネマ
あらすじ
ブラジル・リオ・デ・ジャネイロのセントラル・ステーションで、代書屋をしているドーラ。字が書けない人が故郷にだす手紙の代筆をしている。人が行き交い、様々な人がさまよう中央駅。毎日毎日、他人の個人事情を聞かされているドーラは無感動な日々を送っていた。ある日、代筆を頼みにきた母親がバスに轢かれ9才の少年が残される。駅をさまよい帰ってこない母を待つ少年をドーラは柄にもなく家に連れて帰ってくる。おお、人間らしい感情が残っていたのかと思いきや、外国に養子斡旋をするという業者に売り飛ばしてしまう。
感想
いつまでも記憶に残るのは、赤茶けた土の大地最後のドーラの涙と思う。
ロードムービーを見ていると不安で落ち着かなくなり逃げ出したくなる。苦しみました。しかし、踏ん張ったかいがあった。世代を遙かに越えたふたりの人間の出会いと別れ、<一期一会>です。
「代書を頼みにくる人々は、たまたま駅にいた人達。手紙の内容も彼ら自身の言葉。我々は遠くから望遠レンズを構えていた。」と監督が書いている。その伝えたい言葉を語る人々の表情もいい。

文盲率も高く貧しく子供の人身売買が横行する今のブラジルを切り取った映画ですが、
ここには人生に対する希望がみえる。

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殺人会社 MURDER,IN
米国 1960年 103分
製作・監督 バート・バラバン
監督・脚本 スチュアート・ローゼンバーグ
原作 バートン・ターカス/シド・フェダー
脚本 アーブ・チュニック/メル・バー
撮影 ゲイン・レッシャー
音楽 フランク・アイバール
出演 スチュアート・ホイットマン/ピーター・フォーク/マイ・ブリット/ヘンリー・モーガン
CSスターチャンネル
あらすじ
ギャング映画。暗黒街のボスは、言うことを聞かないクラブを乗っ取るため殺し屋に始末させる。

感想
モノクロ映画です。何ヶ月か前に見たので、記憶に残っているのはピーター・フォークが演じる殺し屋のみ。
この頃から、独特のスタイルを確立してはったんですね。義眼という事もあるのかな、邪気がないようにも何か企んでいるようにも見える目元とか、間の取り方とか、一瞬動作を止める所とかが今と同じ。(今というのは、映画「最高のルームメイト」。未公開だったけれど、よかったよ。)
演技派なんだなとしみじみ思う。
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コンタクト CONTACT
米国 1997年 150分
監督 ロバート・ゼメキス
脚本 ジェームズ・V・ハート/マイケル・ゴールデンバーグ
美術 エド・バリュー
音楽 アラン・シルベストリ
撮影 ドン・バージェス
原作 カール・セーガン
出演 ジョディ・フォスター(エレン)/マシュー・マコノヒー(パーマー・ジョイス神父「評決のとき」)/ジョン・ハート/ジェームズ・ウッズ/トム・スケリット/デビッド・モース(エレンのパパ)/ジェイク・ビジー(狂信的宗教家)
メモ 1999.4.4(月曜日)CSスターチャンネル
あらすじ
幼い頃から、ハムを使って”未知の人と交信する”ことに興味を持っていたエリーは、長じて電波天文学者になる。地球外生命体の研究に没頭し、ある日恒星ベガ付近からの電波をキャッチする。それは、知的生命体から送られたメッセージであり、宇宙間移動装置”ポッド”の設計図であった。
感想
ウーウーいまいち。
暗号が解明されるまでは、まあ面白かったんやけどね。SF映画ながら、頬がそげた痩せたジョディ・フォスターのアップばかりが記憶に残ったなあ。「言葉にできないすばらしさ」ってその映像が見たいねん、私は。

「宇宙には人類以外の知的生命体がいるだろう」というのはともかく、それが「神の存在の有無」と結びつくあたりがもう「神さんはいてはるかもしれヘンし、いてはれへんかも知れヘン」というワタシは、気持ちがちょっと離れる。そして、床の間の鏡餅の横に”わらじ”が置いてある”有名な”ショットではもう北極に飛んだぐらいヒエヒエしてしまった。
ジョイス神父が語る言葉「人類の95%は宗教を持っている」・・・そうなん? 私も数に入っているんやろか? 日本の仏教と、この映画で前提とするキリスト教とは、同等と考えてええんやろか? 疑問だわ。

「あの装置は、映画 
「スターゲイト」のワッカが3つあるみたいであんまりカッコようなかった。それはええとしても、笑わしよるな、あのわらじは。インテリアか? 宗教論争していながら、あの無神経さはなんやねん。北海道だしたりしてるけど、日本を市場としか見てへんぞ(怒)。米国人の日本に対する認識は「竹の家」からかわっとらん。宇宙人より前に日本人とコンタクトしたらどうやねん。「竹の家」以来日本に対する認識を変えられなかった日本もああ情けなや。」<さぼてん男、怒りつつ嘆いております。

「神が存在するっていうのは、思いこみじゃないの。私は証拠がないと(信じられない)。」とエリー(フォスター)が言うのに対し、ジョイス神父(マコノヒー)が「君はパパを愛していた?」 「愛していたわ。心から。」・・・・「証拠は?」ってのは、返事に詰まるね。
が、S男「・・・・今更そんな議論ようしてるな。百年前に済んでる議論ちゃうん? ”神を試すなかれ”って言うやろ。」・・・ほんま?
おすすめ度減点大★1/2
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シシリアン THE SICILIAN CLAN
米国=仏 1969年 119分
監督・脚本 アンリ・ベルヌイユ(「ヘッドライト」「地下室のメロディ」)
原作 オーギュスト・ル・ブルトン
脚本 ジョゼ・ジョバンニ/ピエール・ペルグリ
撮影 アンリ・ドカエ
音楽 エンリオ・モリコーネ
出演 ジャン・ギャバン/アラン・ドロン(サルテ)/リノ・バンチェラ(ル・ゴフ警部)
メモ 1999.4.4(日曜日)ビデオ
あらすじ
シシリーマフィアの親分ビットリオは、殺し屋のサルテを脱走させ、5億ドルの宝石を奪うという大仕事を計画していた。
感想
映画の題名通りの内容でした。(あたりまえか)
金よりも命よりも大切な「シシリアンの掟」をつらぬくジャン・ギャバン親分。コルシカ生まれの冷酷な犯罪者でありながら妹思いのアラン・ドロン。禁煙に悩まされているリノ・バンチェラは気の毒でおもわず笑ってしまう。秘密をベラベラしゃべる子供に「シシリーの男とちゃうんか」、「この男を殺して」とつぶやく長男の嫁には「事の起こりは、あんたがチラチラ誘惑するからやんか」と説教たれながらも、こういう感想からはくみ取れない、スケールの大きな映画でしたよ。

20世紀FOXが企画制作しているため、フランス人の役者が英語をしゃべっています。この映画が興業的に成功したため20世紀FOXは「フレンチ・コネクション(71年)」「ゴッド・ファーザー(72年)」と続けて制作したそうです。
おすすめ度★★★1/2
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戦国奇譚 きまぐれ冠者
日本 1935年 75分
監督・脚本 伊丹万作
撮影 石本秀雄
歌 東海林太郎
出演 片岡知恵蔵(気まぐれ冠者)/市川春代(椿姫)/田村邦男(槍の勘十)/瀬川路三郎(関羽左エ門)/ジョー・オハラ(敵国の殿様)/香川良介(隠密溝口氏)/尾上華丈(木曽猿)/伊藤隆世(殿様)
メモ 1999.4.3(土曜日)BS録画
感想
現在見る事ができる伊丹万作監督3作品のうちの1つ。

戦国時代、ばか殿が家来達に好戦的な隣国に攻め込まれるのを防ぐための知恵を出せという。そこで気まぐれ冠者は「敵国に潜り込み探ってまいる」と名乗りをあげ、千両もらって敵国に出かける。千両で金の卵を山ほど作り、夜な夜な鶏舎に置いてくる。と、「金の卵」が有名になり、我も我もと鶏を育てて金の卵を産むのを今か今かと待ち国中が血道をあげる。かくて、国中に鶏がみちあふれ隣国を攻める事も忘れ果て一攫千金を狙うやからばかりとなり、このすばらしくもばかばかしい計略はものの見事に成功したのであった。めでたし、めでたし

というナンセンス・ギャグがさえる昭和10年の作品。雨降りの画面にノイズがはいった映画でしたが、ニヤニヤして見てました。とても楽しみました。この映画が当時の日本人に受け入れられたというのが驚きです。日本人は真面目といわれるけれど、ギャグのセンスもいいんだ。

敵国の椿姫(市川春代「鴛鴦歌合戦」でかわいい歌声を聴かせていた人)が侍女達に言う。
「もう夜もふけたほどに、あがってくるしゅうないぞえ」
侍女「ごめんなされてくださりませ」と襖をしめる。
と、外の夜景となり土産物屋の大阪城の模型ようなチープなお城の遠景が映り、ネオンが消える様にお城の灯りが一斉にパッと消える(笑)。
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お日柄もよくご愁傷様
日本 1996年 104分
監督・原案 和泉聖治
脚本 布施博一
撮影 鈴木耕一
主題歌 岡本真夜「FOREVER」
音楽 毛利蔵人
出演 橋爪功/吉行和子/根岸季衣/西岡徳馬/布施博/伊藤かずえ/新山千春/古尾谷雅人/松村達雄/河原崎長一郎/野村祐人
メモ 1999.4.1(木曜日)ビデオ
あらすじ
郊外に住む山田さんち、明日は大変なのだ。ご主人が結婚式で初めての仲人をする。人生最大のセレモニーに粗相があっては大変と夕食もそぞろに挨拶の練習に余念がない。
と、そこに臨月の長女が現れる。だんなさんが会社の女の子に8万円もするバッグを買ってやったのがバレて揉め、家出したらしい。
長女の事も気にかかるが、それよりもなによりも今は挨拶の練習、練習。次女を相手に練習していると85才になる父が何か言いたそうにやってくる。
感想
「結婚式」「お葬式」「出産」という人生最大のセレモニーが山田家にだんご三兄弟になって襲いかかるテンテコ舞いの3日間。
面白くて、そしてセンチになる映画でした。でも、センチメンタルも橋爪功を初めとした達者な役者さん達のおかげでコミカルに転換されているのが旨い。
最後に橋爪功が「こんなことって、あるんだな」とつぶやくのに、「あるわきゃない(^^)」とかチャチャいれながらも、「日本の家族っていいなあ」などとつぶやいていたのであった。
娘ふたりは”美人姉妹”、特に妹は雰囲気のあるきれいな子でした。
おすすめ度★★★★
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