Rock Listner's Guide To Jazz Music


Elvin Jones


And Then Again

曲:★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
1965/2/16
1965/3/18

[1] Azan
[2] All Deliberate Speed
[3] Elvin Plus
[4] Soon After
[5] Forever Summer
[6] Len Sirrah
[7] And Then Again
[2][3][5][7]
Thad Jones (cor)
Hunt Peters (tb except [7])
Charles Davis (bs except [7])
Hank Jones (p)
Art Davis (b)
Elvin Jones (ds)
Melba Liston (arr)

[1][4][6]
Frank Wess (ts,fl)
Charles Davis (bs)
Hunt Peters (tb)
Don Friedman (p)
Paul Chambers (b)
Elvin Jones (ds)
Melba Liston (arr)
コルトレーン・カルテット脱退直前の時期の録音にあたるこのアルバムは、メルバ・リストンなる人物が全曲アレンジ(3曲では作曲も)をしているためか、異なるメンバーで2つセッションを合わせて収録しているにもかかわらず、筋が通った統一感がある。作曲面では、チャールズ・デイヴィスが2曲、サド・ジョーンズが1曲、エルヴィンが1曲と、メンバーの曲を積極的に取り上げ、オリジナル重視の印象。当時のコルトレーンのようなアヴァンギャルドで激烈なところはないけれど、65年なりに新しく、独自のジャズをやろうという気概が出ているところは個人的には評価したい。ただし、それ故になのか耳当たりが良い割には親しみやすいわけではないという中途半端さもある。それでも尚、エルヴィンの重量級リズムが前面が出ていること、そしてソロもアンサンブルもオリジナリティを出そうという熱意が感じられるところが聴きどころ。シリアスそうでいながらどこかにほのぼのした雰囲気があるのはエルヴィンの人柄から出ているようにも思える。エルヴィンのリーダー・アルバムは短いものが多く、これも34分と短め。(2016年12月10日)

Dear John C.

曲:★★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
1965/Nov

[1] Dear John C.
[2] Smoke Rings
[3] Love Bird
[4] Feeling Good
[5] Anthoropology
[6] This Love Of Mine
[7] Fantazm
[8] Ballade
[9] Everything Happens To Me
Charlie Mariano (as)
Roland Hanna (p [1][3][8])
Hank Jones (p [4][5][7])
Richard Davis (b)
Elvin Jones (ds)
漠然とタイトルだけを見るとトリビュート・アルバムなのかと錯覚しそうになるけれど、コルトレーン・グループ在籍末期の録音。つまり、フリー化に邁進するコルトレーン・グループではもうやっていけないという時期の録音でありながら、コルトレーンへの敬愛を隠すこともなく曲とアルバムのタイトルにしている。"Impressions"にとても似ている[1]から最後まで、激しさを伴う演奏はなく、かなり抑揚を制した演奏で一貫していて、エルヴィンはパワーや推進力を前面に出したドラミングをしていない([6]のようにアルトとベースの実質デュオな場面も少なくない)。とはいえ、チャーリー・マリアーノにはアルト特有の軽さは皆無、骨太にウネるリチャード・デイヴィスのベースが支えるとなればイージーリスニング的なものになるはずはなく、抑えが効いたその演奏には静謐なムードすら漂っている。同時期のコルトレーン・グループが激烈、長時間演奏を突き進んでいたのとは対照的で、本当はこういう音楽をコルトレーンと一緒にやりたかったということなのかもしれない。(2016年12月10日)

Midnight Walk

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1966/3/23,24

[1] Midnight Walk
[2] Lycra Too?
[3] Tintiyana
[4] H.M. On F.M.
[5]Cross Purpose
[6] All Of Us
[7] The Juggler
Thad Jones (tp)
Hank Mobley (ts)
Dollar Brand (p)
Donald Moore (b)
Steve James (p, elp)
Elvin Jones (ds)
George Abend
          (per [1][4][6])
ジャズがもっとも混沌としていた時代、66年の録音としてはオーソドックスなサウンドであり、しかしソロのスタイルは66年という時代をしっかりと感じさせる演奏。一方で、そのサウンドは[2]でエレピが入って、ベースの役割も担わせたりしているなど、この時代相応の新しさもある。曲が全体に短く、収録も7曲だけと例によってコンパクトなアルバム構成で、サラリと聴けることがこのアルバムの良さでもあり、物足りなさでもある。でも、コッテリ濃厚をさんざんやってきたエルヴィンだからこそ、こういう腹八分目なボリュームで良いのかもしれない。ドラムはそれほど出しゃばっていないものの、裏方であるドラムの役割でも主張あるリズムと、独特の大きなスウィング感は流石。ソロではサド・ジョーンズのトランペットがとても良くて見直してしまった。硬軟取り混ぜバラエティに富んでいる曲とクオリティの高い演奏で、無視するにはもったいない佳作。(2018年12月20日)

Heavy Sounds

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
1967/6/20

[1] Raunchy Rita
[2] Shiny Stockings
[3] M.E.
[4] Summertime
[5] Elvin's Guitar Blues
[6] Here's That Rainy Day
Frank Foster (ts except [4])
Bily Greene (p [2] [4])
Richard Davis (b)
Elvin Jones (ds, g [5])
個人的ベスト・ドラマーであるエルヴィンの代表作として紹介されることの多い本作は、やはり個人的にお気に入りのリチャード・デイヴィスとの共同名義でありながら、ずっと聴かずに保留していた。タイトル通りへヴィなサウンドであるだろうと思いつつ、他のメンバーの顔ぶれから、音楽的にあまり特別なものは期待できないだろうと思っていたから。実際、名義のとおりエルヴィンらしい重いリズムと、リチャード・デイヴィスの柔軟で多彩なベースが中心で、しかし勝手な予想に反して音楽的に貧弱とは感じない。それは突き詰めればエルヴィンとリチャード・デイヴィスが真の一流の音楽家だからではないかと思う。そして、この2人の名義だからこそ[5]のような遊びも楽しめる。このエルヴィンのギター、正直なところヘタなんだけどブルースの心がよく出ていて、コルトレーン・カルテットのような前衛的なバンドで活動をしてきたキャリアとは違う彼の懐の深さを垣間見る思いがする。歴史的名盤ではないけれど、エルヴィン好きには愛すべき好盤。(2011年2月12日)

Revival: Live At Pookie’s Pub

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1967/7/28-30

Disc 1
[1] Keiko's Birthday March
[2] Gingerbread Boy (featuring Larry
Young)
[3] 13 Avenue B
[4] My Funny Valentine
[5] M.E.

Disc 2
[6] On the Trail
[7] Softly as In A Morning Sunrise
[8] Raunchy Rita
[9] Oleo
Joe Farrell (ts, fl)
Billy Greene (p except[2])
Larry Young (p [2])
Wilbur Little (b)
Elvin Jones (ds)
2022年11月にブルーノート・レーベルからリリースされた、コルトレーンの死から2週間後の未発表ライヴ音源。1か月前に録音した「Heavy Sounds」などの持ち曲と、当時はもうあまり取り上げられなくなったのでは?と思われる古めのスタンダードを組み合わせた曲構成。今更の発掘とあって、録音状態は良いとは言えない(高音域の抜けがやや悪くベースの音像がボヤけ気味)けれど演奏を楽しむには十分なレベル。なにしろライヴらしい熱気あふれる演奏で、ジョー・ファレルの伸び伸びとブローする姿、エルヴィンのパワフルでウネるドラミング(長めのドラムソロ含む)をたっぷり味わうことができるところが魅力で多少音質に難があるくらいはどうでも良いと思わせる。この後「Live At The Lighthouse」に至るエルヴィンの方向性の下地はこの時点で既にできつつある。古めのスタンダード曲はこの時代相応の演奏スタイルになってはいるものの、音楽的な新しさを獲得するまでには至っておらず、まだピアノが入っていることを含めて60年代前半ジャズからの移行過渡期のムード。フルートで奏でられる[4]などに魅力を感じつつもスタンダード系は落ち着いた演奏で、新しいオリジナル曲(のDisc 1)の方がやはり活力がある。とはいえ、スタンダード曲も長尺("Oleo"は16分超)のモーダルな演奏が中心になっていてエルヴィンのリズムの強靭さも前面に出ているので物足りないという感じはしない。トピックとなっている[2]でのラリー・ヤングのピアノ(!)は基本的にブロックコードのバッキングのみで聴きどころというほどのものではなく、むしろピアノはあまり上手くないことがわかってしまうというという、現場でもお遊び的な飛び入りだったんじゃない?という感じのもの。(2021年12月5日)

Live at the Village Vanguard

曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1968/3/20

[1] By George
[2] Laura David
[3] Mister Jones
[4] You Don't Know What Love Is
George Coleman (ts)
Wilbur Little (b)
Elvin Jones (ds)
Hannibal Marvin Peterson
(tp [3])
1テナーサックスのピアノレストリオ編成、そしてヴィレッジ・ヴァンガードのライヴ、そしてエルヴィンのドラムといえばソニー・ロリンズを思い出す。とはいえ、そこから10年以上の時間が過ぎていてエルヴィンがドラムを叩くこと以外に共通性はない。ジョージ・コールマンは良いサックス奏者ではあるけれども、それほど主張が強いわけでも癖があるわけでもないので、このトリオの聴きどころはまさにエルヴィンのドラムそのものであるように僕の耳には聴こえる。録音状態は特に良くはないし、演奏が神がかっているというわけではないけれど、何か特別なことをやってやろうという邪念や小細工がない故に、狭いクラブで演奏している姿が思い浮かぶLivelyな演奏になっていて、ジャズが持つ演奏の生々しさという魅力が詰まっているアルバムになっている。名盤と扱われることはなく、世間がイメージする「おしゃれなジャズ」ムードを備えているわけでもなく、音数が少ない地味なピアノレストリオというのは初めてジャズを聴く人にまったく向いていない。それでもジャズの演奏のスリル、面白さってこういうものだよということを知るのにこれほど良い盤はなかなかお目にかかれないとも思う。(2022年12月9日)

Puttin' It Together

曲:★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1968/4/28

[1] Reza
[2] Sweet Little Maia
[3] Keiko's Birthday March
[4] Village Greene
[5] Jay-Ree
[6] For Haven's Sake
[7] Ginger Bread Boy
Joe Farrel
   (ts, ss, fl, piccolo)
Jimmy Garrison (b)
Elvin Jones (ds)
好き嫌いは別にしてエルヴィン・ジョーンズをジャズ界屈指のドラマーであることを認めない人は恐らくいないと思う。重量感溢れるパワーと複雑なリズムを操る抜群のテクニック。小技も一級品で、バラードや静かな曲でのブラシ使いも実に巧みであり、豪快さと相反する繊細さも持ち合わせている。そして何より素晴らしいのはどんなときにでもエルヴィンにしか出せないノリがありバンドのグルーヴの核になっていること。そんなエルヴィンのベスト・プレイが聴けるのはもちろんコルトレーン・カルテットであり、しかしながらコルトレーンの音楽はあまりにもコルトレーンそのものであり、その重さと感性になじめない人にはいささか辛いものがあるのも事実。そんなコルトレーンの元を離れて結成した自らのグループがこのトリオで、エルヴィンのドラムを満喫したい人の期待に応える爽快なまでの叩きっぷりを堪能できる。ジョー・ファレルのプレイにはコルトレーンの影響が濃厚なアグレッシヴなスタイルではあるけれど、さほどアクはなく、更にフルートやピッコロまで持ち替える器用さで独自カラーを打ち出していることもあってピアノ・レス編成の単調さを感じさせない。ギャリソンのベースはあくまでも低音中心でエルヴィンの重いドラムに更に厚みと推進力を加えるプレイ。エルヴィンのドラムをたっぷりと堪能したいけれどコルトレーンのあの押し付けがましさはちょっと苦手という人には好適なアルバム。(2007年1月12日)

The Ultimate

曲:★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1968/9/6

[1] In the Truth
[2] What Is This ?
[3] Ascendant
[4] Yesterdays
[5] Sometimes Joie
[6] We'll Be Together Again
Joe Farrell (ts, ss, fl)
Jimmy Garrison (b)
Elvin Jones (ds)
「Puttin' It Together」と同じメンバーによるピアノレストリオで録音も5か月後ということもあって、ジョー・ファレルが3菅を持ち替えて自由自在に吹き、ギャリソンが低く唸り、エルヴィンがパワフルに突き進むという音楽的な要素はまったく変わっていない。この3人だからこその盤石の安定感も同様に不変。「Puttin' It Together」をおかわりしたい方にお勧め。(2022年12月9日)

The Prime Element

(Disc 2のみ)
曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★☆
[Recording Date]
1969/3/14 [5]-[9]
1973/7/24 [3][4]
1973/7/26 [1][2]

Disc 1
[1] At This Point in Time
[2] Currents/Pollen
[3] The Prime Element
[4] Whims of Bal
Disc 2
[5] Inner Space
[6] Once I Loved [O Amor Em Paz]
[7] Raynay
[8] Champagne Baby
[9] Dido Afrique
[1]-[4]
Frank Foster (ts, ss)
Steve Grossman (ts, ss)
Pepper Adams (bs)
Jan Hammer (p, elp, synth)
Corneli Dupree (g)
Gene Perla (b, elb)
Elvin Jones (ds)
Warren Smith (tympani)
Omar Clay (per, rhythm box)
Candido Camero (congas)
Richie "Pablo" Landrum (per)

[5]-[9]
Lee Morgan (tp)
Joe Farrell (ts, ss)
George Coleman (ts)
Wilbur Little (b)
Elvin Jones (ds)
Candido Camero (conga)
Miovelito Valles (per)
1976年に蔵出しされた2つのセッションを集約。Disc 2の69年のセッションからで、リー・モーガン、ジョー・ファレルとジョージ・コールマンの3管でピアノレス編成とあってサウンドは硬質。ウディ・ショウの「Backstone Legacy」あたりに近いムード(ただしこちらは電子ピアノは入らない)があって69年相応。管はジョー・ファレルの活躍が目立ち、リー・モーガンはソロパートがそれなりにありながらそれほど印象的なフレーズを放ってはいない。コンガとパーカッションでリズムに厚みを加えてはいるものの、ファレル+リトル+エルヴィンのトリオ編成でのソロパートで十分カッコよく、バンド編成としては特別な面白味は出ているようには思えない。69年的な大らかさに欠けるシリアス系の演奏スタイルということもあり全体的にやや地味な印象。Disc 1の4曲は、98年に「At This Point Time」として蔵出しリリースされている中にすべて収録されている。(2022年12月4日)

Poly-Currents

曲:★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1970/June

[1] Agenda
[2] Agappe Love
[3] Mr. Jones
[4] Yes
[5] Whew
George Coleman (ts [1]-[4])
Joe Farrell
     (ts, fl, bfl, English horn)
Pepper Adams (bs [1]-[3])
Fred Tompkins (fl [5])
Wilbur Little (b)
Elvin Jones (ds)
Candido Camero (conga [1]-[3])
シンプルなベースのリフに乗せ、ところどころアンサンブルとソロが入るという手法はアフリカ回帰志向の同時代ファラオ・サンダースのアルバムにも見られるもので、こちらはエルヴィンの長いソロをフィーチャーしてそれを表現している。エルヴィンのリーダー・アルバムは、爽快に弾けたアグレッシヴなものもある中、にこやかに微笑むジャケットとは裏腹に、ミドルテンポ以下の重いサウンド(バリトンサックスの低音がそれをより強調)とパフォーマンスで占められ、コルトレーンとはテイストがやや異なりつつも影響が強く出た作風となっており、エルヴィンのドラミングに加え、ラテン味ではなくアフリカ味で刻まれるコンガがこのアルバムの音楽性を特徴付けている。コンガとバリトンサックスが抜ける[4]以降も、フロントがブロウする場面は少なく、エルヴィン独特のドラミングを下支えにした腰の座った落ち着いた演奏で、尚且つコルトレーンとはまた異なる内省的スピリチュアルで個性的な音楽を創造することに成功している。(2022年12月4日)

Coalition

曲:★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1970/7/17

[1] Shinjitu
[2] Yesterdays
[3] 5/4 Thing
[4] Ural Stradania
[5] Simone
George Coleman (ts)
Frank Foster (ts, bcl)
Wilbur Little (b)
Elvin Jones (ds)
Candido Camero
      (conga, tambourine)
「Poly-Currents」での複数サックス、コンガ奏者、ピアノレスという基本編成を踏襲、音楽的にもアフリカ・テイストを引き継いでいる。[1]ではフランク・フォスターのバス・クラリネットが捩れたフレーズを連発して、アフリカン・テイストのリズムと合わせて怪しいムードを発散、スタンダードの[2]も聴きやすはなく、一貫したムード。全体的にはやや重々しく、曲によっては呪術的でスピリチュアルなムードが漂う。コンガの存在を強めにフィーチャーし、ドラムソロも普段のエルヴィンの手癖ではなくコンガとの組み合わせを考えたリズムの一体性を考えたものになっている。コンセプトを決めて制作されたのは明白で聴きやすさはなくとも、音楽家エルヴィンが創作した独自性のあるジャズとして高く評価されるべき逸品。(2022年12月4日)

Merry Go Round

曲:★★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1971/2/12, 12/16 [8]

[1] 'Round Town
[2] Brite Piece
[3] Lungs
[4] A Time For Love
[5] Tergiversation
[6] La Fiesta
[7] The Children's
        Merry-Go-Round March
[8] Who's Afraid
Dave Liebman
    (ts, ss [1][2][6][7][8])
Steve Grossma
    (ts, ss [1][2][6][7])
Frank Foster (ts [8])
Joe Farrell    
  (ts, ss, fl [1][2][4][6][7][8])
Pepper Adams (bs)
Jan Hammer
  (p, el-p,
   glockenspiel[1]-[3][5][7])
Chick Corea
    (p, el-p [4][5][6])
増尾好秋 (g [1][4])
Gene Perla (b)
Elvin Jones (ds)
Don Alaias (conga, per)
名盤「Live At The Lighthouse」を筆頭に、ブルーノートに残されたエルヴィンのリーダー・アルバムは、ことごとく入手しづらい。いや、しづらかった。地道ながら日本のEMIが復刻してくれたことでその状況は改善。本当は同じような企画でなんども名盤を売ろうとする商魂はいかがなものかという思いはあるんだけれど、ときどきこのアルバムのように「ええっ、こんなの出してくれちゃうの」というものがあるから侮れない。さて、エルヴィンのリーダー作で、このメンツともなれば暑苦しいものをイメージする方もいることでしょう。ところが、以外や適度に肩の力が抜けた演奏になっている。エルヴィン自身のドラムも必要以上には前に出ていない。この時期に付き合っていたメンバーを集めました的な気軽さ、そしてこのメンツであっさりとしたものを作ってしまったのはある意味贅沢ではある。それは参加者も同じなのか、各自曲を持ち寄り、良い意味でのリラックスムードを感じる。[6]がチックの手によって試運転(こちらの方がリターン・トゥ・フォーエヴァーより先)されているのもそんな気楽さによるものなのではないだろうか。リラックスムードとはいえ締まりのない演奏というわけではなく、一部他のリーダー作にある重くてシリアスな作風ではなく、開放的でエルヴィンのドラムの推進力も遺憾なく発揮されている。曲によって参加メンバーが異なるためサウンドの幅が広く、[1][2]でヤン・ハマーの端正なジャズ・ピアノが聴けるのも貴重。個人的には1曲だけ別セッションの[8]の路線でもっと聴いてみたい気もする。(2011年10月9日)

Genesis

曲:★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1971/Sep

[1] P.P. Phoenix
[2] For All the Other Times
[3] Slumber
[4] Three Card Molly
[5] Cecilia Is Love
Joe Farrell (ts)
Dave Liebman (ss)
Frank Foster (ts, afl, acl)
Gene Perla (b, elb)
Elvin Jones (ds)
ついに3人サックス編成に規模拡張。今回はコンガは入れていないものの、音楽の方向性はそれほど変わっていない。ベースのウネリ方がこれまでと変わってかなり特徴的なのはジーン・パーラになったから。この後もエルヴィンと共演するパーラはあまり話題に上ることはないものの、かなり優れたベース・プレイヤーだと思っていてエルヴィン以外のアルバムで聴く機会が少ないのは惜しい。[1]でリヴァーブがかったフルート・ソロ(フルート以外の管楽器にも深めのリヴァーブがかかっている)から静かに始まる。それはバラード的な甘い表現ではなく静謐なムードで進み、その後も音楽の志向は一貫、比較的テンポ感が軽快な[5]でもどこかシリアスなムードが残る。晩年のコルトレーンのような猛り狂うブローとは正反対の方向性で、静かに、しかししっかりと主張のあるスピリチュアルなジャズを、エルヴィンの強靭なリズムを下地にしながら探求している。(2022年12月9日)

Mr. Jones

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1969/9/26 [3]
1972/7/12 [4][6]
1972/7/13 [1][2][5]

[1] One's Native Place
[2] G. G.
[3] Mr. Jones
[4] What's Up ? - That's It
[5] Soultrane
[6] New Breed
Thad Jones
 (flugelhorn [1]-[3][5])
Dave Liebman
 (ts [2][6], ss [4], fl [1])
Steve Grossman
 (ts [2][4]-[6], ss [1])
Pepper Adams (bs [4])
Jan Hammer (p except[3][5][6])
Gene Perla (b, elb)
Carlos "Patato" Valdes
  (congas [1][4])
Frank Ippolito (per [1][4][5])
Albert Duffy
 (timpani [1]-[3],[5])
Elvin Jones (ds)
[3]のみ69年の録音ながらフリューゲルホンのサド・ジョーンズとティンパニのアルバート・ダフィは72年のセッションと被っているという不思議なメンバー構成。メインは72年のセッションでリーブマンとグロスマンのツイン・サックスが「Live At The Lighthouse」の2ヶ月前のこの時点ですでに実現している。更にサド・ジョーンズとペッパー・アダムス、そしてパーカッションとティンパニまで加わり、ヤン・ハマーのピアノまで加わる手厚い編成。「Live At The Lighthouse」が、2人のサックス奏者のソロ・パートを長く取って自由に吹かせるというライヴらしい演奏であるのに対して、こちらは人数が手厚いこともあってアンサンブルもアレンジされ、しっかり作り込まえていて曲もコンパクト。アレンジはホーン・セクションだけでなく、エルヴィンとダフィのティンパニの打楽器も練られていて、音楽的にかなり計算されている故に、フロント陣のブロー合戦にはなっていない。ジーン・パーラのベースの堅実かつ独自のウネリを見せるベースはここでも秀逸、ヤン・ハマーのオーソドックスなジャズピアノ演奏をここまで聴ける[2][4]は珍しいかもしれない。コルトレーンの影響を大きく残しながら、途中かなり重くシリアスなジャズもやってきたエルヴィンが自分流の音楽的発展をさせて突き抜けた明るさも持ち合わせるようになったことで、完全にオリジナリティを確立することに成功している。ドラムを完全に右チャンネルにだけ割り当て、コンガ、ティンパニやピアノは左右均等に音を配分しているバランスが少々残念。(2022年12月30日)

Live At The Lighthouse

曲:★★★☆
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★☆
評価:★★★★★
[Recording Date]
1972/9/9

Disc 1
[1] Introduction: Bill Chappell
    Announcer: Rick Holmes
[2] Fancy Free
[3] New Breed
[4] Small One
[5] Sambra
[6] My Ship
[7] Taurus People
[8] For All Those Other Times
   /Announcement

Disc 2
[1] Introduction
    /Happy Birthday Greeting
[2] Sweet Mama
[3] I'm A Fool To What You
[4] The Children, Save The Children
[5] Brite Piece
[6] The Children's Merry
    -Go-Round March
Dave Liebman (ts, ss, fl)
Steve Grossman (ts, ss)
Gene Perla (b)
Elvin Jones (ds)
音楽に夢中になりはじめた学生時代、お気に入りのミュージシャンが現れると彼らの新譜を心待ちにして、いざ入手するとジャケットから取り出すのももどかしく、針をレコードに落とす瞬間にワクワクするという経験を何度もしてきた。ジャズに夢中になってからも、CDを入手して最初に音が出てくる瞬間への期待感はありつつも学生時代のようなワクワク感にまでは至らないのは、恐らく過去の作品を後追いで聴いていることが原因。つまり聴きたいCDは既に世の中に出回っているものであり、1枚1,500円も出せばいつでも聴ける状態となれば、待ちわびてようやく聴けるという飢餓感がないのは仕方のないこと。しかし、名盤と呼ばれつつも廃盤、中古店に寄るときには必ずチェックしていたにもかかわらず、一度も遭遇したことがなかったのがこのアルバム。もちろんその気になれば、法外な価格で入手することは可能だったとはいえ、いつか復刻するだろうとの思いから待つことを決めて数年、ついに復刻された。しかも、8曲の追加、曲順も入れ替えて再構築されてのリリースで聴く前から「待った甲斐があった」と思わせてくれる形での商品化。CDプレーヤーの再生ボタンを押す時にこんなにワクワクしたのはいつ以来だろう、と思いながら聴き始める。まず、ライヴ・ハウスらしいタイトな音場とダイレクト感が伝わる録音が嬉しい。アグレッシヴなスタイルが持ち味の2人によるダブル・サックス編成、時期は前後するもののマイルス・グループでジャズを超越した音楽を担ってきた2人だけにどんなサウンドが出てくるのかと思えば、これが実にガッシリとしたジャズ。パワーで押しまくるというよりは、エルヴィンの重いビートに、ジーン・パーラが更に重みを加える盤石のリズム・セクションを下支えにして、リーブマンとグロスンが時に怪しく、時に軽快に絡み合う展開。フリー・ジャズやクロスオーバーに向かったり、極度にシリアスな方向に走ったりしていないのは、卓越したリズム力を持ちつつも生涯ジャズ・ドラマーだったエルヴィンの本質と軸足の確かさ、そして包み込むような器の大きさが良く出ているからであるように思う。正直に言うと、もっと破天荒でパワー全開なパフォーマンスを期待していた分、幾分物足りなさを感じたのも事実。ただそれは常軌を逸したハードさ期待してしまっていただけのことで、縦横無尽に、あくまでも大柄なグルーヴでボトムを支配するエルヴィンの魅力と、あえてジャズの中に踏みとどまってのリーブマンとグロスマンのバトルこそが聴きどころでしょう。それでもブロー合戦は時に常識的なレベルを超越、特に追加収録にあたる28分にも及ぶ Disc 2 [6]の怒涛のパフォーマンスはドルフィー入りコルトレーン・クインテットにも匹敵する勢いがある。今後もエルヴィンの名盤として永遠に輝き続けるに違いない。(2009年5月30日)

At This Point In Time

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1973/7/24-26

[1] At This Point in Time
[2] Currents/Pollen
[3] The Prime Element
[4] Whims of Bal
[5] Pauke Tanz
[6] The Unknighted Nations
[7] Don't Cry
Frank Foster (ts, ss)
Steve Grossman (ts, ss)
Pepper Adams (bs)
Jan Hammer (p, elp, synth)
Corneli Dupree (g)
Gene Perla (b, elb)
Elvin Jones (ds)
Warren Smith (tympani)
Omar Clay (per, rhythm box)
Candido Camero (congas)
Richie "Pablo" Landrum (per)
この時期に活動を共にしていたフランク・フォスター、スティーヴ・グロスマン、ヤン・ハマーなどのお馴染みメンバーを含む大所帯グループ編成によるアルバム。音楽的な中心メンバーは[3]-[5]の3曲を提供しているオマー・クレイと[1][6]の2曲を提供しているフォスターだったと思われる。ヤン・ハマーのエレピとジーン・パーラとは後に「On The Mountain」で録音を残していおり、トリオとしての可能性をここで見出していたのかもしれない。サックス3人とギターとキーボードというフロントの厚みに加え、ティンパニをも含めた5人の打楽器奏者によるリズムの饗宴という趣があり、73年というジャズの方向性が読めなくなってきている時代の混沌ぶりを反映している(=綺麗にまとまっているとは言い難い)。それでもクロスオーヴァー、フュージョンのムードはなく、あくまでもジャズの形態を守った上での音楽性の広がりを持たせているところは、根っからのジャズ・ドラマーであるエルヴィンの本質を表したものだと言えるでしょう。この時代のサウンドはもちろん今となっては古く、現代のミュージシャンがこのサウンドを目指すことはあり得ないんだけれども、音楽的な魅力が減退したとは思わないし、むしろこの時代しか持ち得ない音楽の希少性を積極的に評価したい。(2022年12月4日)

Elvin Jones is "On The Mountain"

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1975

[1] Thorn Of A White Rose
[2] Namuh
[3] On The Mountain
[4] Smoke In The Sun
[5] London Air
[6] Destiny
Jan Hammer
   (p, elp, moog synth)
Gene Perla (b, elb)
Elvin Jones (ds)
エルヴィン、そして馴染みのベーシストであるジーン・パーラに対峙するのはヤン・ハマーというトリオ構成。エルヴィンのドラムは、一部でパワフルなソロがフィーチャーされているものの全体的にパワー感は抑え気味。ヤン・ハマーはピアノとエレピに得意のギター・ライクなキーボードを交えた縦横無尽の活躍で、しかし全体的にはジャジーなムードで演奏していることから、エルヴィンのプレイもそれに合わせて抑めにしているものと考えられる。パーラのエレクトリック・ベースは派手さはなく、穏やかにウネリを作る個性がこのムードにマッチ。聴きようによっては古臭いフュージョンっぽいサウンドではあるけれど、ロックにまったく接近していないところはエルヴィンのジャズ的リズム感に負うところが大きく、たとえパワフルに叩かなくとも全編エルヴィンでしかできない個性的なリズムが貫かれていて心地よい。全体を通して3人のバランス感が良く、トリオとしてのまとまりがあるところも聴きどころ。それにしてもヤン・ハマーは大物ドラマーとの競演が多い。トニー・ウィリアムスとはツアーもしていたし、ビリー・コブハムとはマハビシュヌ・オーケストラやコブハムのソロ・アルバム「Spectrum」でも競演している。ジェフ・ベックとの競演でしか知らなかった僕は、ヤン・ハマーがこれらのタイプのまったく異なるこれら強面ドラマーを相手に、それぞれに柔軟に対応しているところを聴くにつれて改めて大した人だと感じ入ってしまう。(2007年8月4日)

Remembrance

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1978/2/3-5

[1] Giraffe
[2] Section 8
[3] Little Lady
[4] Familiar
[5] Kalima
[6] Beatrice
[7] Remembrance
Pat LaBarbera (ts, ss)
Michael Stuart (ts, ss)
Roland Prince (g)
Andy McCloud III (b)
Elvin Jones (ds)
クロスオーバー、すなわちフュージョンがすっかり一巡して当たり前のものになり、アコースティック・ジャズがもっと下火になっていた78年の録音ながら、エルヴィンはジャズの軸足をずらすことはなく、むしろフュージョンとは一線を隠したジャズのアルバムを制作している。コルトレーン・スタイルの2人サックス体制は70年代初頭から取り組んでいたスタイルで目新しさはなく、強いて言えばギターを入れているところが新味ではあるものの、このギターも伝統的なジャズ・ギターそのものでサウンド的な新しさはない。では、安易にアコースティック・ジャズに安住してたものかというとそうではなく、[1]を除いてメンバーが曲を書き、オリジナリティを求めている。70年代前半のアルバムと比べるとサウンドは落ち着き、腰の座った安定感がある。ドラムはいつもどおりのエルヴィンであり骨太の推進力がアルバム全体を支えていることは間違いなく、当時は時代遅れだったかもしれないサウンド(録音日を知らずに聴いたら67年くらいに聴こえそうなコルトレーン・スタイル)は今となってはもう歴史的なジャズ・サウンドのひとつと認識されているため古臭いとは感じない。(2022年12月18日)

Very R.A.R.E

曲:★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★
評価:★★
[Recording Date]
1979/6/13,14,20

[1] Sweet Mama
[2] Passion Flower
[3] Zange
[4] Tin Tin Deo
[5] Pitter Pat
[6] The Witching Hour
Art Pepper (as [1][3][4][6])
Roland Hanna (p [1][4][6])
Richard Davis (b)
Elvin Jones (ds)
日本独自企画のアルバム。メンバーは70年代に活動を共にしていたアート・ペッパー、かつてよく共演していたリチャード・デイヴィス、そしてローランド・ハナ。電気増幅されたウッドベースの音処理と太めのペッパーのサウンドに79年という時代を感じさせる。エルヴィンのドラムはここで相変わらずパワフルで、気の合ったメンバーで軽くセッションしてみましたという感じのトータル27分。演奏は悪くないけれど、企画性も練られた感じもなく、ペッパーとエルヴィンの組み合わせを聴きたければペッパーのアルバムの方がデキが良いとなると、エルヴィンの中で上位に推薦できるアルバムとは言い難い。強いて言えばベースとドラムのデュオの[5]が聴きどころか。「Meets The Rhythm Section」収録の[4]は話題作りのための日本のレコード会社からの依頼だったのではないかと推測。(2022年12月5日)

Earth Jones

曲:★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1982/2/10

[1] Three Cord Moly
[2] Is Seeing Believing?
[3] The Top Of The Middle
[4] Earth Jones
[5] Never Let Me Go
[6] Day And Night
日野皓正 (cornet)
Dave Liebman (ss, fl)
Kenny Kirkland (p)
George Mraz (b)
Elvin Jones (ds)
個人的な意見を言わせてもらうならば、このアルバムが録音された82年という時代はもうジャズは終わっていたと思う。終わるというのは、すでにあの手この手をやり尽くされて新しいものが生まれてこなくなった状態という意味で、形式や音楽性に新鮮味を持ち得なくなったジャンルは、曲の良さか演奏の素晴らしさを楽しむこと以外に魅力がなくなってしまう。そんな時代にあって、このアルバムは演奏を楽しめるものとしては十分な価値がある。エルヴィンのドラムは、いつもどおりの重量級パワーと、根底にあるジャズのスウィング感が共存、プロデュースも担うデイヴ・リーブマンのちょっとひねくれたソプラノ・サックスの縦横無尽な活躍も聴きどころ。日本人ジャズに興味がない僕にとってこれが初体験となった日野皓正もまずまずで[4]のようなモーダルでフリーキーな曲でも存在感があり、リーブマンと渡り合う。ベースの音が電気増幅された感じだったり、エレクトリック・ピアノで演奏される曲もあったりするので、ハード・バップしか聴けないような保守的な人には辛いサウンドでも、ジャズの枠にはしっかりと収まっている。フリーキーな曲やストレート・アヘッドな曲が混在してムードに統一感がなくやや散漫な印象があるのは、この時代に進むべきジャズの方向性が見えなくなってしまっていることを表しているとはいえ、前述の通り演奏は聴きどころがあり、特にリーブマンとエルヴィンの組み合わせに興味がある人には勧められる。(2007年5月19日)

Youngblood

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1992/4/20, 21

[1] Not Yet
[2] Have You Seen Elveen ?
[3] Angel Eyes
[4] Ding-A-Ling-A-Ding
[5] Lady Luck
[6] The Biscuit Man
[7] Body and Soul
[8] Strange
[9] My Romance
[10] Youngblood
Nicholas Payton (tp)
Javon Jackson (ts)
Joshua Redman (ts)
George Mraz (b)
Elvin Jones (ds)
タイトル通り、当時若手だったメンバーを集めてのアルバム。さすがに92年にこの音は古いのでは?という電化ベース音のサスティーンを生かしたウネリ(ピアノがないため目立つ)に乗せて、イキのいいフロントラインが躍動することからこのタイトル。若手の活力に乗じてエルヴィンのドラムはグイグイとグループを推進、20年以上前の演奏と比べても良い意味で何も変わらないパワフルなスタイルで突き進むところが聴きどころ。尚、テナーの2人は音色がかなり異なる(低く太い方がジャヴォン、高く細い方がジョシュア)ことからそれぞれに存在感はある。後のパフォーマンスを考えるとニコラス・ペイトンもジョシュア・レッドマンもフレーズのキレや鳴らしっぷりはまだまだで、そこに期待しすぎると少しがっかりするかも。エルヴィンの若手育成活動の一端と思えば悪くはないけれど、音楽的に個性的な何かを追及しているわけではないため、これと言った決め手がないのがウィークポイントか。(2022年12月9日)

Tribute to John Coltrane "A Love Supreme"

曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★
評価:★★
[Recording Date]
1992/12/3,4

[1] A Love Supreme:
   Part 1: Acknowledgement
   Part 2: Persuance
   Part 3: Resolution
[2] Dear Lord
[3] Happy Birthday for "Yuka"
[4] Blues to Veen
Wynton Marsalis (tp)
Marcus Roberts (p)
Reginald Veal (b)
Elvin Jones (ds)
今や重要文化人的な扱いになったウィントン・マルサリスは、かつて若手天才トランぺッターとしてもてはやされ、60年代マイルス・グループのメンバーと1ホーンカルテットで演奏していた。後に伝統的なニューオーリンズ・ジャズに傾倒し、ジャズの歴史を正当に受け継ぐ文化人としての地位を築くことになっていったことを思うと、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスと音楽性が一致していたとは思えず、周囲の盛り上がりの乗せられていたんだろうなと今では思える。このアルバムも同様で、(後の2003年に自身のビッグバンドで「至上の愛」を演奏したCDがあるとはいえ)コルトレーンに心の底からシンパシーを感じていたか怪しいと思えてしまうウィントンが「至上の愛」を演奏しているという、今となっては色モノに見えてしまう企画。「至上の愛」をライヴで演奏するなど恐れ多くて誰もやらなかったのに、エルヴィンのグループだからという口実があるにせよやってしまった、やっても許されるというオーラを持っていた当時のウィントンのスターぶりが伺える。もちろん、当時も今もウィントンののテクニックは申し分なく、演奏のクオリティに文句はつけるところはない。むしろ、テナー・サックスで表現されたあの世界を低音域の厚みのないトランペットで何の不足なく表現できてしまうのには舌を巻く他ない。ご本人であるエルヴィンが叩いているだけでリズムの土台は完璧だし、ピアノもベースもオリジナル曲のムードを辿る演奏をしていてケチをつけるところはない。1回限りのライヴであれば企画にひとつとして楽しめるとは思うものの、繰り返し聴くことができる商品として聴くと、僕の勝手な思い込みながら、ウィントンがどこまで「至上の愛」に入れ込んでを演奏していたんどろうかという疑問を完全に拭い去ることがでできず没入できない。(2022年12月9日)