山河のラオス〜ワット・プー
 
Wat Phu
 
 
ワット・プー
 

  パクセーの南、メコン川を挟んだ対岸に、クメール時代の大遺跡ワット・プーがあります。アンコール・ワットを建設したクメール王国は、現在のカンボジア領以外にも勢力を拡げ、多くの壮麗な寺院を建設しました。そのひとつであるここは世界遺産にも指定され、ラオス南部の観光の目玉となっています。  

 
メコン川を渡る
 


   
船着場
ワット・プーへは陸路で行くこともできますが、道が悪いため途中で車ごとフェリーに乗って川を渡ります。船といってもご覧の通り。ボートを何台かつなげた上に板を渡しただけのシンプルなもの。こんなのに大型トラックが乗るなんて信じられます?でも不思議と沈まないんだ、これが。
   

   
船上の風景
川面を渡る風を頬に受けながら、思い思いに過ごすひととき。これぞメコンという風情のある眺めです。マルグリット・デュラスの「愛人」を読んだことのある人なら、この感覚がわかるんじゃないかな。日傘を差した女性なんて、いかにもデュラスの小説に出てきそうじゃありませんか。
   

       
 
対岸
湖かと思うほどの川幅を渡り終えると対岸の船着場が見えてきます。一応桟橋らしきものもありますが、みんなジャブジャブと川に飛び込むように降りていきます。
 
下船
さすがに車は飛び込むわけにもいかず板を渡します。これがまたタイヤの幅しかないほどの心細い板なんですね。ずれないように、けっこう運転技術が要ります。
 
はまった!
船着場には桟橋もなければ舗装もない。降りるときにちょっと油断するとすぐ泥にはまってしまいます。もがけばもがくほど深みにはまる。日常茶飯事なんだろうな。
 

 
ワット・プー
 


       
 
参道
典型的な山岳寺院らしく入口から麓までまず延々と参道が続きます。たなびいているのは雲か霞か。山伏でも潜んでいそうな雰囲気です。建物も樹に隠れて見えないし。
 
南宮殿
麓には南北ふたつの宮殿が向かい合うように建って(崩れて)います。時間が取り残されたような感じで、自分がいつの時代にいるのか、わからなくなります。
 
北宮殿
崩れ方がより見事なのは北宮殿。「兵どもが夢の跡」的な朽ち方にどことなく趣きがあり、そぞろに心魅かれます。滅びの美学、とでも言えばいいのか。
 

       
 
ナンディン宮殿
徐々に登りとなる参道の傍らに、また崩れた宮殿がありました。土台の石材は雨に濡れて黒く、しっとりとした佇まい。なんとなく気分が落ち着く眺めです。
 
プルメリアの階段
ナンディン宮殿を過ぎると参道は階段になります。両側はプルメリアの木立。テラスにたどり着いて振り返ると、遺跡入口は遥か彼方に。こんなに登ってきたんだ。
 
最後の階段
あともうひと頑張り。これがけっこうな急勾配です。ただ、そんなに長くはないのでゼーハー言っている間に頂上に着いてしまうんですけどね。
 

       
 
ワニの石
本殿の脇の道を少し行ったところに動物の彫刻が彫られた石がありますが、これはワニの石。手前を頭にして腹ばいになっているのですが、うーん、ちょっと苦しいか。
 
ゾウの石
こっちはなかなかイイ線いってる。たぶん一枚岩ですね。これだけの巨岩、噴火で飛んできたのか、地中から盛り上がったのか。地質学的にもちょっと興味深いところです。
 
全景
樹々の隙間から振り返ってみると、眼下には水と緑を満々と湛える一面の平原が拡がっていました。遠くにはうっすらとメコン川も。「ラオスは豊かなんだ」と思いました。
 

       
 
本殿
樹々に覆われたトンネルのような急階段を登り詰めたところに本殿がありました。手前のお地蔵さん(?)がアクセントになっていていいですね。ご丁寧に傘もさしてるし。
 
本殿裏
ぐるりと裏に回り込んでみました。本殿もかなり崩壊していて、屋根はほとんどなく壁も失われているところが多いため、小さな庵のような風情です。
 
カーマ・スートラ?
本殿の壁面には彫刻が刻まれています。これなんかまるでインドのカジュラホにあるやつみたいでしょ?やっぱりカーマ・スートラを表わしているんでしょうかねえ。
 

     
バンテアイ・スレイ?
カンボジアのバンテアイ・スレイのデバター(女神)像が「東洋のモナリザ」として有名なことは広く知られているところですが、ワット・プーのデバター像もなかなかどうして見事なものです。造形の優美さ、保存状態、いずれも本家に勝るとも劣りません。私的にはこちらの方が好きなんですけどね。間近で見れるし、触ることもできるし。写真だってほら、この通りバッチリ撮れる。雨に濡れるのも忘れ、ほれぼれと見入ってしまいました。盗みたくなる気持ちもわかりますね。アンドレ・マルローはこっちも見たのかな。
     

 
街角の風景から
 


       
 
ココナッツジュース
船を待っている間、ジュースを頼んだらココナッツが丸ごと出てきました。皮の一部をナタで削ってストローを刺して飲みます。これは美味い。オススメ。
 
チャンパーサック
このあたりは行政的にはチャンパーサック県に属していて、ラオスの中でもとりわけ「南部っぽい」地域。ウツボカズラが自生していたりと、植生も熱帯的です。
 
雨季
昼食のレストランに入った頃からスコールがやってきました。わら屋根から滴り落ちる水滴。まったりと過ごす午後。マルグリット・デュラス「夏の雨」。
 

       
 
ナマズ
ランチのメインは今日もナマズの唐揚げ。それと竹を編んだお櫃に入って出てくるもち米「カオニャオ」。あまりに美味しくて、やめられない止まらない。
 
子供たち
世界遺産だって彼らにとっては遊び場に過ぎないのです。そういえば自分も子供の頃、国宝の庭園で野球してたな。あの時折った木って、実は重要文化財?
 
仏具
地元の人にとってのワット・プーは今も神聖な宗教施設。参拝者のための花や線香が売られていました。でも、お店の人は見かけなかったぞ。
 


   

  (C)2001 K.Chiba & N.Yanata All Rights Reserved