山河のラオス〜シェンクアン(戦争の傷跡)
 
Xieng Khouang(Muang Khoun/Nam Hon)
 
 
シェンクアン(戦争の傷跡)
 

  ベトナム戦争とそれに続く内戦時、シェンクアン一帯はアメリカ軍による激しい爆撃にさらされました。今も、その傷跡は街や山や野原の至るところに生々しく残っています。と同時に、爆弾を利用するしたたかな庶民の暮らしを見ることもできます。  

 
ムアンクーン
 


  シェンクアン県のかつての県都。距離だけで言えばポーンサワンからさほど離れてはいません。しかし、穴ぼこだらけの悪路のため、雨期にはたどりつくまで予想外に時間がかかります。  

       
 
瑞穂の国
山間のわずかな平地を利用して稲作が行われていました。雨上がりの光を受けてキラキラと輝く稲の、何と美しいことでしょう。昔は日本もこうだったんですね。
 
里山集落
子供の頃、東北の田舎はこんな感じだったな。さすがに電気や道路なんかのインフラはもっと整っていたけど。でも、タイムスリップしたみたいな景色。
 
ラオスのラーメン
この日の昼食はムアンクーンの食堂で。カラシ味噌がピリリと利いたスープに、豚肉ときしめんを細くしたような平麺。それに山盛りの香草を好みの量だけ千切って入れます。
 

       
 
ワット・ピアワット
ベトナム戦争におけるアメリカの空爆は文字通り無差別で、寺院といえどもその対象から逃れることはできませんでした。わずかに仏像と柱だけが残されています。
 
隻眼仏
その仏像も被弾し、右目のあたりが無残に破壊されています。こうした行為はすべて「正義」の名の下に行われました。残念なことにそれが戦争の真実なのです。
 
背後から
仏像の背後に回ってみました。普通の寺院では祭壇があるので仏像の背中を見ることなんてできないはず。それほど破壊されてしまったんですね。
 

     

ワットフーンと病院跡
ヴィエンチャンのタート・ダムに似た仏塔(左)は全体が苔で覆われていて、長年放置されていたことが伺えます。右の建物はフランス植民地時代の病院だったそうです。復興のための資金もなく、こうして何十年も雨ざらしにされています。歴史の証人というにはあまりに痛々しい姿です。
 

 

   
メインストリート
ムアンクーンのメインストリートはご覧の通り未舗装です。雨季だったので路面は一面の泥また泥。ぬかるみにタイヤがとられることしきりで、道路というより粘度の高い液体の中を進んでいるようでした。歩いたほうが早いんじゃないかって? いえいえ、歩くのはもっと大変なんです。
   

 
ベトナム戦争の傷跡
 


   
300万トンの空爆
ベトナムに落とされた爆弾は100万トン、しかしラオスに落とされたそれは300万トンだったとも言われています。丘のあちこちに爆撃でできたクレーターが残っていて、その様はまるで宇宙人の遺跡のよう。上空から見るとミステリーサークルのようで、不思議な気分にさせられます。
   

 
噴火口
斜面に立て続けに開いているクレーターがわかるかな? こんな標的のない場所になぜ集中爆撃をしたのでしょう。実はアメリカ軍はベトナムを爆撃した帰り、余った爆弾をこのあたりに「捨てて」いたのです。彼らがラオスの人々を人間とは看做していなかったことがよくわかります。
   

   
建築資材
しかしラオスの庶民は転んでもただでは起き上がりませんでした。爆弾の殻を拾い集めては屑鉄として売ったり、植木鉢にしたり、多様な利用法を編み出していったのです。中でも一番多かったのは建物の土台や柱として利用することでした。うーむ、これは見事に一本取られました。生活の知恵ですね。
   

       
 
シェンクアン様式
たぶん、高床式の家屋を支えるのに爆弾の大きさや形がちょうど手頃だったのでしょう。もはやひとつの建築様式として確立している感があります。
 
ロケット弾
時にはこんな大物もあります。形が丸々残っているということは不発弾なのでは?玄関先に堂々と置いてありましたが大丈夫なんでしょうか。自慢したい気持ちもわかるけど。
 
比較的小型の爆弾は並べて柵にします。その間に鉄条網を張れば、もう立派に隣地との境界が明確になりますね。ブロック塀よりよほどお洒落だと思いませんか。
 

 
ナムホン・リゾートで温泉に入る
 


  驚くなかれ! 何とラオスには温泉が出るのです。インチキではありません。本当に本物の温泉です。そう聞いたなら、日本人としては行ってみないわけにはいきません。  

       
 
秘湯の中の秘湯
舗装工事の続くでこぼこ道を車に揺られること2時間。国道を外れ笹薮に覆われた山道を分け入ってようやく辿り着きました。これを秘湯と呼ばずして何を秘湯と呼ぶ!
 
個室浴場
温泉といっても大浴場や露天風呂はありません。コテージの浴槽に自分でお湯を貯めるのです。これがけっこうじれったい。それにしてもラブホテルっぽい部屋だな。
 
源泉
コテージの裏を登ること約5分、もうもうと湯気が湧く池が見えてきました。ここからパイプで直接引いているので、雨が降るとお湯がぬるくなります。
 


   

  (C)2001 K.Chiba & N.Yanata All Rights Reserved