*アヴィ 『クリスマスの天使』 講談社
クリスマスまであと4日のある日、暇をもてあましていたエリックのところに、害虫駆除業者がやって来た。アンジェラ・ガブリエルという名前のその男は、大きく、まっすぐ伸びた金髪をしていて、翼の生えたドクロのマークの黒いぼうしをかぶっている。
いつの間にか、アンジェ(そうよんでくれと男が言った)の手助けをして、ネズミを退治することになってしまったエリックだが、1匹のネズミを助けるために自分の命がおびやかされることになってしまう……。
*ウィーダ 『フランダースの犬』 岩波少年文庫
ひどい扱いをうけて弱った犬パトラッシェは、貧しい老人ジェハン・ダーンじいさんとその孫のネルロに助けられた。ジェハン・ダーンじいさんの仕事は牛乳かんを町へ運ぶことで、元気になったパトラッシェは荷車を引くの手伝うようになる。しかし、しだいにジェハン・ダーンじいさんは体が弱り、孫のネルロがその仕事を引き継いだ。
貧しい暮らしのネルロには、いつか画家になりたいという夢があった。その夢を打ち明けることのできる相手は、パトラッシェ以外には仲良しの女の子アロアだけだった。だが、そのアロアの父によって、ネルロの暮らしはますますひどいものとなり……。
*ロバート・ウェストール 『クリスマスの猫』 徳間書店
1934年のクリスマス。両親が外国に行ってしまったため、キャロラインは牧師をしているサイモンおじさんのところでクリスマスを過ごすことになる。おじさんはやさしい人だけれど、家政婦のミセス・ブリンドリーのいいなりだった。牧師館から出ることも禁じられたキャロラインは、みごもった猫の面倒をこっそりとみるようになる。そして、マツボックリがきっかけで出会ったボビーと共に、意地悪なミセス・ブリンドリーからその猫を守ろうとするのだが……。
「ねえ、あたしの孫娘」という、おばあさんから孫への呼びかけで始まるクリスマスの物語。
*ロバート・ウェストール 『クリスマスの幽霊』 徳間書店
クリスマス・イヴの日、僕は父さんの忘れ物を届けるために工場におつかいに行くことになった。父さんの働く工場はオットーというユダヤ人の作ったもので、オットーは町のためにもできるだけのことをしてくれた人だった。
父さんを探してエレベーターに乗った僕は、サンタクロースみたいなひげのあるおじいさんがエレベーターの中の鏡に映っていることに気づく。父さんとその仲間にその話をすると、オットーの幽霊が出た、今夜工場で人が死ぬと、誰かが言い出して……。
*マルセル・エーメ 「クリスマスの話」(『マルタン君物語』収録) ちくま文庫
気のやさしいコンスタンタン特務曹長のクリスマスの体験。クリスマスの子供が兵隊たちに分別を配り歩くところがおもしろい。
他に、作中人物を殺さずにはいられない作家の話など、発想の楽しい九つの物語を収録。
*ジュリー・サラモン 『クリスマスの木』 新潮社
ロックフェラー・センターの造園管理部の部長をしている私は、クリスマスの準備のために毎年大忙しだ。もちろんクリスマスに飾るツリーになる木を探すためである。ニューヨーク周辺の州ばかりか、カナダまでスタッフが探しに行くこともあるのだが、その木が当たりであることはめったにない。
しかし、ある日のこと、私がいつものように木を探していると、ニュージャージー州のある場所で「大当たり」の木を発見する。その木が植えられている場所の所有者は修道院であり、そこに交渉に行った私は不思議な女性シスター・アンソニーと出会い、彼女の話を聞くことになるのだが……。
*コナン・ドイル 「青い紅玉」(『シャーロック・ホームズの冒険』収録)
クリスマスがすんで二日目の朝、ホームズを訪ねた私は、古ぼけた帽子を調査しているところに出くわした。メッセンジャーのピータースンが持ち込んだというそれは、ある男が慌ててがちょうと一緒に放り出していったらしい。しかも、そのがちょうの中から宝石が見つかって……。
クリスマスにふさわしいラストもすばらしい。
*ロバート・バリー 『大きいツリー 小さいツリー』 大日本図書
もうすぐクリスマスのある日、ウィロビーさんのお屋敷にもトラックでツリーが届けられた。大広間のすみに置く予定になっていたそのツリーは、しかしあまりの大きさに天井につかえてしまう。困ったウィロビーさんは執事のバクスターに頼んで、おので先をばっさり切り落とすことにした。切り落とされた先っぽは、バクスターによって小間使いのアデレードに贈られる。
さて、アデレードの部屋を飾ることになったツリーの先っぽは、彼女の部屋にはつかえてしまい、彼女は先っぽをちょきんと切ってしまう。くずかごに入れられ、裏口に出されたそのツリーの先を拾ったのは……?
*オー=ヘンリー 『ほんもののプレゼント』 偕成社
「賢者の贈り物」と訳されることの多い、有名なクリスマス・イヴの物語。
互いにプレゼントをするために大切な宝物を失い、でも、ほんとうに大切なものを手に入れた若い夫婦の姿が感動的。
*トルーマン・カポーティ 『あるクリスマス』 文藝春秋
アラバマに住む僕のところに、顔もよく覚えていない父からクリスマスを一緒に過ごしたいので、ニューオリンズに来てほしいという連絡があった。しぶしぶと父の元を訪問した僕だが、やはりぎくしゃくしてしまう。
そして、クリスマスの前日、プレゼントを準備する父を目撃したことで、サンタクロースを信じていた僕の夢は壊れてしまったのだ。そのため、僕は残酷な復讐を父にしてしまい……。
優しい気持ちになれる終わり方がとてもよい。
*トルーマン・カポーティ 『クリスマスの思い出』 文藝春秋
11月も終わりに近い朝、大好きな友達の「フルーツケーキの季節が来たよ!」という台詞から、それは始まる。僕らは荷車を押し果樹園に行き、ピーカンの実を探す。そして、買出しの前にこの日のためにためて置いたお金を取り出す。もちろん、フルーツケーキ(それも30個!)のためだ。
幸福なクリスマスの物語。