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Music2

音楽

小説の中に使われたクラシックのご紹介をしています。小説の中のジャズはこちらへ。

■バロック音楽   バロック音楽|古典派ロマン派国民楽派近現代その他

ゴールドベルク変奏曲(バッハ)

第二章の冒頭からラウンジで流れている。演奏者はグレン・グールド。チェンバロではなくてピアノの演奏。主人公が「世にも美しい子守歌」と言っているように、不眠のカイザーリンク伯爵のために書いたといわれている(諸説あり)。非常に繊細でロマンティックでさえある曲なのに、レクター博士の話になってしまうのはいかにもミステリらしい。密室殺人を扱った本格ミステリ。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by 「taitai studio」

(有栖川有栖 『46番目の密室』 講談社文庫)

「三つのピアノ曲をもとにした三つの物語」の2つめの作品「彼女のアリア」で、少女が弾いていたのがこの曲。
不眠症に悩む主人公は球技大会をさぼり、いつものように旧校舎に向かうことにした。そして、旧校舎の元音楽室でピアノを弾いている少女と出会う。その少女、藤谷も不眠症で悩んでいるということだった。主人公と少女はすっかり意気投合するのだが……。

(森絵都 『アーモンド入りチョコレートのワルツ』 講談社)

数年前の秋、ある男がマンションの一室で殺された。その犯行現場であるリビングの片隅には鳥籠があって、そこには鸚鵡が飼われていた。捜査員などの関係者が現場に駆けつけたとき、驚いたことに、その鸚鵡が「ハンニンハ、タカウラ」と明瞭に言ったのだ。
半信半疑の捜査陣が事件を調べていくうちに、高浦という人物が確かに殺された男の関係者として存在した。被害者と高浦はある女性と三角関係だったらしい。しかも、その女性につきまとっていた男がもう一人いたらしいのだ。

「コンニチハ」などの言葉から、「ゴールドベルク変奏曲」まで口ずさむ鸚鵡が教えてくれた犯人とは?

(有栖川有栖 『火村英生に捧げる犯罪』 文藝春秋 収録「鸚鵡返し」)

フランス組曲(バッハ)

主人公の楼子は、お嬢様学校に通う高飛車な美少女。自分の肌の美しさを守るため、校則違反を犯しても日傘を手放すことがない。人一倍、自分の美しさ、肌の美しさにこだわる彼女には、しかし、ある秘密があって……。エリザベート・バートリをモチーフとした物語。

(嶽本野ばら 『鱗姫』 小学館)

ブランデンブルク協奏曲 第6番(バッハ)

主人公は寄宿舎暮らしの女子高生。友人の大学を見学に行ったときに演奏されたのがこの曲。主人公は、レット・バトラーのような男性がブランデンブルク協奏曲を背負って劇的に登場してくれたらという理想を持っており、その通りのシチュエーションで演奏される。

(氷室冴子 『アグネス白書』 集英社コバルト文庫)

プレリュードとフーガ ハ短調(バッハ)

テオは、友人にあるオルガン奏者の演奏について尋ねられる。それは、昔ある事件がきっかけで不仲になったラインベルガー教授と和解するきっかけとなった。しかし、そのオルガン奏者、ハンス・ライニヒの演奏を教授に聴かせたことで、事態は思わぬ方向へと転がっていく。

9年前交通事故でオルガニストとしての輝かしい将来が閉ざされた青年――彼が奇跡的な復活を遂げた姿がハンス・ライニヒなのだろうか?

(山之口洋 『オルガニスト』 新潮社)

※漫画の中に出てくるバッハのご紹介はこちら

ヴァイオリン・ソナタ 作品6-2 「悪魔のトリル」(タルティーニ)

いよいよ中学三年生の三学期を迎えることになった、亜衣・真衣・美衣の岩崎三姉妹とレーチ(麗一)。レーチは謝恩会の実行委員長に任命され、亜衣たちを連れて会場探しをしているうちに、旧校舎の開かずの教室にたどりつく。
その教室には、たくさんの人間が消えたといううわさがあった。

レーチが無理やり扉を開けると、そこはお札で封印されていたようで、黒板には「夢喰い」の文字が残されていた。封印されていた「夢喰い」は本当に解き放たれてしまったのか?

「夢水清志郎事件ノート12」、最後の謎解き。

(はやみねかおる 『卒業』 講談社)

※漫画の中に出てくタルティーニのご紹介はこちら

■古典派       バロック音楽|古典派|ロマン派国民楽派近現代その他

交響曲 第94番 <驚愕>(ハイドン)

くまのパディントンの友人グルーバーさんが、パディントンをピクニックに誘ってくれた。グルーバーさんと出かけるのが大好きなパディントンはもちろん大喜びだ。
家族のジョナサンとジュディも一緒にパディントンたちが公園に行ったところ、たまたま近衛連隊の楽隊が演奏をしているのに出会う。しかし、プログラムを見たパディントンは、最後の曲が「未完成交響曲」だということを知り、愕然としてしまうのだ。「まだできあがっていない」曲に、ひとり6ペンスずつも払うなんて!真相を究明する必要があると思ったパディントンの行動とは?

(マイケル・ボンド 『パディントンとテレビ』 福音館書店)

交響曲 第39番(モーツァルト)

ある事件のためにお互いに思いを残しながら離婚した二人が、ある日偶然蔵王で再会した。そして、女が男へと送った長い手紙に、男も返事を書いていく。
モーツァルトの音楽に「生きていることと、信じていることは、もしかしたら同じことかもしれへん」と感じた女の言葉が、往復書簡で構成されたこの物語で、重要な役割を果たしている。

(宮本輝 『錦繍』 新潮文庫)

きらきら星変奏曲(モーツァルト)

小さな楽器店のピアノ教室の教師、杉原亮子は見かけはおっとりとしたお嬢様。しかし、不思議な洞察力で、彼女の周りに起こる事件を次々と解決していく。しかし、彼女自身も、人前で演奏できないという秘密を抱えていた……。連作ミステリ。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by 「MIDI・素材・ポスペ」) 他に「英雄ポロネーズ」(ショパン)「トロイメライ」(シューマン)も登場。「トロイメライ」をお聴きになりたい方はこちら。(music by「MIDIクラシックの部屋」)

(菅浩江 『歌の翼に』 祥伝社)

劇場支配人(モーツァルト)

丘の上に越してきた大浦一家。そこは風当りのよいところで、まずは風除けの木を植えなければいけない……。植物を植えたり、梨を買ったり、鳥を見たり、五人家族の普通の暮らしが描かれている。
「劇場支配人」は、音楽の感想の宿題を忘れていた子どものために、大浦の妻がラジオで放送されるこの曲を探してやったときに登場。

(庄野潤三 『夕べの雲』 講談社)

フィガロの結婚(モーツァルト)

パリ旅行に一緒に行った遊民爺さんから、しばらくぶりに連絡があったのは、二月五日のことだった。遊民爺さんが言うには、バーン・ジョーンズ展で眠り姫に会ったと言うのだが……。その「眠り姫」が歌ったのが、「フィガロの結婚」の中のバルバリーナのカヴァティーナ。

すべての曲が長調である「フィガロの結婚」の中で、唯一の短調の曲と作中にある。

(小沢章友 『遊民爺さんと眠り姫』 小学館)

彼の名はジョシュア。チェロを弾く、私の恋人だ。
左ききの彼には、奇妙なところがあって、左と右をよくまちがえるのだ。私は彼に注意するように言うのだが、彼は覚えてくれない。私はついきつい言葉を言ってしまい、彼は戻ってこなくなってしまう。彼を待つ私は、彼の「左きき」の秘密、彼がなぜ正しく覚えられないのか、その理由がやっと分かってくる……。

(萩尾望都・文 東逸子・絵 『左手のパズル』 新書館)

ドン・ジョヴァンニ(モーツァルト)

「ユーニス・パーチマンがカヴァディル一家を殺したのは、読み書きができなかったためである。」(p.5)
文盲であるユーニス・パーチマンがセント・ヴァレンタイン・デーに行った殺人は、モーツァルトのオペラが流れている中で行われた。

有能な召使であるはずの彼女がなぜ一家の四人を殺害したのか。彼女が召使として雇われることになったきっかけ、彼女の友人となる女性(共犯者でもある)との偶然の出会い。
殺人に到るまでの過程が淡々と描かれている。

(ルース・レンデル 『ロウフィールド館の惨劇』 角川文庫)

レクイエム(モーツァルト)

舞台は1809年のウィーン。ある日寄った楽譜屋で「モーツァルトの子守唄」の楽譜を手に入れたベートーヴェンは、モーツァルトの死についての謎に巻き込まれてしまう。声楽家のシレーネ、弟子のチェルニー、知り合いになったシューベルトたちと共に仕方なく「子守唄」に秘められたメッセージを解こうとする彼だが……。

乱歩賞受賞作。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「Dr.町田のホームページ」)

(森雅裕 『モーツァルトは子守唄を歌わない』 講談社文庫)

※漫画の中に出てくるモーツァルトのご紹介はこちら

交響曲 第1番 (べートーヴェン)

ボティボル氏は52歳。彼の言葉を借りれば、それまでの人生で何ひとつ、どんなに小さい成功も経験したことがない男だ。そんな彼が急に夢中になったのが、シンフォニーの演奏に合わせて指揮棒を振ることだった。まずはベートーヴェンのシンフォニーのレコードからスタートした彼の「指揮」は、どんどんエスカレートしていって……。

「ヒッチハイカー」「アンブレラ・マン」「古本屋」「外科医」などを収録した短編集。

(ロアルド・ダール 『王女マメーリア』 早川書房 収録「ボティボル氏」)

交響曲 第3番 <英雄>(べートーヴェン)

一九九三年のニューヨーク。司教に呼び出されたタマオ・アオエ(青江珠音)は、死産と信じていた自分の子どもが生きており、また、その子がメシアだということを教えられる。悪魔に誘拐されたその子を救うために、時空のかなたから甦ったのが、楽聖ベートーヴェンと、新選組副長の土方歳三。

悪魔の魂を倒すことのできる「聖なる音楽」と、悪魔の肉体を倒すことのできる 「聖なる剣」がそろい、悪魔たちとの戦いがはじまるはずが……。

ベーとヴェンが自分の(まだ)書いてない楽譜や伝奇を見たがったり、彼の時代にない楽器に興味を持ったり、細かいところまで凝っていて面白い。

(森雅裕 『マンハッタン英雄未満』 新潮社)

交響曲 第5番 <運命>(べートーヴェン)

小学五年生の春、転校先の北檜山小学校で、かっちゃんは森田先生と出会った。
字もあまり書けず、計算も苦手……周りのみんなに「はんかくせぇ」と言われていたかっちゃんは、前の学校ではひまわり学級という特殊学級にいた。
しかし、森田先生との出会いがかっちゃんを変える。

森田先生との春休みの特別訓練で、かっちゃんはいろいろなことをできるようになり、それをきっかけにどんどん成長していったのだ……。

(西川つかさ 『ひまわりのかっちゃん』 講談社)

交響曲 第6番 <田園>(べートーヴェン)

町の活動写真館でセロ(チェロ)を弾く係りのゴーシュは、仲間のなかでも一番下手で、町の音楽界の練習のときも楽長に注意されてばかりいた。
ある晩、家に帰って練習をしていると、音楽を聴きたいといって三毛猫がやって来る。少々意地悪をして三毛猫を追い返したゴーシュのところに、その日から次々と動物が現れて……。

「セロ弾きのゴーシュ」をお読みになりたい方は青空文庫

(宮沢賢治 「セロ弾きのゴーシュ」 角川文庫他)

交響曲 第9番 <合唱付き>(べートーヴェン)

オルオラネ爺さんが、三匹のねこたちで演奏した曲。ただし、これはイントロで、最後にはフリージャズのようなものにまで変化して喝采を浴びた。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「MIDIクラシックの部屋」)

(夢枕獏 『ねこひきのオルオラネ』 集英社文庫)

姉が目の前で死んでからしばらくして、実加は頭の中に姉の声をきくようになる。そして、年末のある日、友人と一緒に「第九」を聴きに言った実加は、男の人に声をかけられる。彼は生前の姉を知っているようだった。

(赤川次郎 『ふたり』 新潮文庫)

クリスマスでの協会のミサにどうしても出たくないという語り手(「ぴいくん」あるいは「八丁堀」などと呼ばれている)を主人公の千波や、友人の慎之介が説得する場面で登場。「千波くん」はフルートが得意で、作品中でもフォーレやドビュッシーを吹いている。

「千葉千波の事件日記シリーズ」の一冊より。

(高田崇史 『試験に出ないパズル』 講談社NOVELS)

奈良で毎年開催される第九のコンサート。年末に行われるそのコンサートの練習に、敦子は友人と共に参加することになった。年齢に制限があり本番への参加は出来ないが、練習を担当するのは敦子のあこがれの糸井先生だ。
しかし、その練習の場には、敦子をシカから助けてくれた少年――冬ニもいた。過ぎていく季節の中で、彼らはさまざまな経験をしていく。

(川村たかし 『ひびけ!第九交響曲(シンフォニー)』 国土社)

ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 <春>(ベートーヴェン)

ピアニストを父に持つ直樹は、自分ではヴァイオリンを弾いている。ヴァイオリンという楽器をとても気に入っている直樹だが、音楽家になるつもりはない。父親の生き方を間近に見てきて、同じ道を歩みたくないと思っているからだ。

父親は音楽大学で講師を務めながら、時折コンサートを開く程度の演奏家だ。20代の頃、大きなヨーロッパでのコンクールに出るぐらいにかつては将来を期待されていたのだが、指に痙攣を起こし、入賞できなかった。そして、今でもリサイタルでは思うような演奏が出来ないのだ……。

直樹はある日、演奏家を目指す年上の女性と出会う。ピアニストを目指す女性とその周囲を取り巻く男たちと交流を持つうちに、しだいに自分の家の複雑な事情を理解していく。
スプリング・ソナタは、直樹が父親と一緒にかつて演奏したもの。他に、ラヴェル「クープランの墓」、シベリウス「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調」、シューマン「くるみの樹」、シューベルト「音楽に寄す」、「チゴイネルワイゼン」、グノー「アヴェ・マリア」、ラヴェル「組曲 夜のガスパール」、ショパン「子犬のワルツ」「革命のエチュード」、クライスラー「愛の喜び」「愛の悲しみ」「美しきロズマリン」「中国の太鼓」、ビゼー「闘牛士の歌」、リゴレットより「女心の唄」、ドビュッシー「水の反映」などが登場する。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「クラシック MIDI ラインムジーク」)

(三田誠広 『春のソナタ』 集英社)

ピアノ・ソナタ 第14番  嬰ハ短調  <月光>(ベートーヴェン)

『モーツァルトは子守唄を歌わない』で、モーツァルトの死の謎を解くために探偵役を務めたベートーヴェンが再び主人公。後に弟子となるチェルニーとの出会いや、かつての恋人ジュリエッタとの再会など、四編を収録。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「Dr.町田のホームページ」)。

(森雅裕 『ベートーヴェンな憂鬱症』 講談社文庫)

エリーゼのために(ベートーヴェン)

その「できもの」ができたのは3年前ぐらいのことだ。修道院で育ち、なぜか今はフランチェス子と呼ばれる彼女にできた「できもの」はしだいに大きくなり、何とある日しゃべりだした!
フランチェス子を「ダメ女」とののしる「古賀さん」(と「できもの」にフランチェス子が名づけた)だが、なんとなく二人(?)の共同生活は続いていき……。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「クラシック MIDI ラインムジーク」)

(姫野カオルコ 『受難』 文藝春秋)

※漫画の中に出てくるベートーヴェンのご紹介はこちら

■ロマン派     バロック音楽古典派|ロマン派|国民楽派近現代その他

「魔弾の射手」よりワルツ(ウェーバー)

曲芸師の一座の中で祖父と共に暮らす少女は、ある日バイオリンを奏でる青年に出会う。
しばらくして、 唯一の身内を失い、牧師館に引き取られた少女は、ひどい扱いを受けていくうちに仮死状態になり、ある日青年と運命的な再会をする。しかし、青年は商売に失敗し、婚約者から裏切られたことで、正気を手放していた……。

(セルマ・ラーゲルレーヴ 『ダーラナの地主館奇談』 日本図書刊行会)

アヴェ・マリア(シューベルト)

新東京フィルの特別演奏会で、柚木優子が弾くはずだったストラディバリウスが盗まれ、警視庁科学特捜班(通称ST)のメンバーも捜査の手助けをすることになった。
クラシック好きということで、刑事部との連絡係の菊川とSTの青山が、珍しく意気投合する様子を見せる中で、関係者への質問が行われるのだが、盗難事件の謎はそう簡単には解けそうにない。
さらに、新東京フィルのコンサートマスターが殺害されるという事件も起きて……。

「メン・コン」「 チャイ・コン」も登場。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「Dr.町田のホームページ」)

(今野敏 『ST 緑の調査ファイル』 講談社NOVELS)

子守唄(シューベルト)

給料日のたびに家族全員に贈り物をする「しま子ちゃん」、お嫁に行ってしまった「そよちゃん」、「父」と「母」、弟の「律」、そして、雨の日にすーんとする「私」。変な家族の物語。「子守唄は」、クリスマスを家族で祝い、そこで弟の律が母のリクエストに答えて弾いた曲。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「MIDIクラシックの部屋」)また、モーツァルトの「トルコ行進曲」は律のお気に入りの曲。

(江國香織 『流しのしたの骨』 マガジンハウス)

ピアノ・ソナタ 第20番イ長調(シューベルト)

友人の浦登玄児に誘われて、「私」は暗黒館を訪れた。九州の山深く、湖の小島に立つ、黒一色で塗られた館。そこで出会った、玄児の妹たち(双子)が音楽室で練習していた曲。

他に、エリック・サティの曲も彼女たちの手で演奏される。

(綾辻行人 『暗黒館の殺人』 講談社NOVELS)

※漫画の中に出てくるシューベルトのご紹介はこちら

無言歌集 ハ長調 作品67の4 紡ぎ歌(メンデルスゾーン)

長野県ピアノコンクール。春からこのコンクールで優秀賞を取るために鍵盤に向かったきた美和にとって、二位しか取れなかったということはショックだった。将来の夢であるピアニストにまた遠くなることを意味するからだ。そして、その日の夕方、祖母の家で食事を取りに行った美和たちは、お風呂場の窓ガラスに不思議な影がうつっているのを見つける。

その日からしばらくして美和の左手の小指が動かなくなってしまい、原因は特に見当たらない……。美和はようやく「ピアニストになる夢」についてもう一度考えるようになっていく。

(山崎玲子 『もうひとつのピアノ』 国土社)

無言歌集 ヘ長調 作品85の1 夢(メンデルスゾーン)

デビー・ワインストックのおじいさん、ルーベン・ワインストックは世界一のピアノ調律師。
デビーは大好きなおじいさんと同じ職業に就きたいと思っているのだが、 おじいさんはピアニストになってほしいと考えている。そこで、デビーのとった行動とは?

他にバッハ「幻想曲とフーガ」、ベートーヴェン「三楽章からなるソナタ」、ブラームス「ふたつのラプソディ」、シューマン「謝肉祭」、ショパン「ワルツ」などが登場する。

(M・B・ゴフスタイン 『ピアノ調律師』 すえもりブックス)

ノクターン 変ロ短調 作品9の1(ショパン)

ノクターンと言えば、ショパンの得意ジャンルにあたるが、彼が最初にノクターンという形式を書いたわけではない。この作品9の1は、あまりショパンの特徴が出たものではないらしい。喫茶店で主人公が出会った少女が弾いていた曲。このシリーズのテーマ曲と言ってもよいと思う。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「クラシック MIDI ラインムジーク」)

(新井素子 『グリーン・レクイエム』 講談社文庫)

エチュード 作品10の3 <別れの曲>(ショパン)

名家の跡取り息子、文麿は31歳、独身である。毎日のように家訓に適う女性との結婚を祖母からすすめられる彼は、ぼんやりと徒歩で外出した際、一枚のポスターに目を留める。そこには、「大人のピアノ教室 生徒募集中」と書いてあった。すすめられるままに、ピアノを習うはめになった文麿だが、先生はとんでもない美人で……。

酔えば酔うほど名推理を発揮する文麿が主人公の連作ミステリ短編集。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by 「taitai studio」) 他にもショパンやリストの曲など、ピアノ曲が多数登場する。

(高田崇史 『花に舞 麿の酩酊事件簿』 講談社NOVELS)

24の前奏曲 第15番 <雨だれ>(ショパン)

田舎の家へ引っ越したトミーとタペンス。その家を買うときに一緒に手に入れた本を整理していたタペンスは、スティーヴンスンの『黒い矢』の中に、「メアリ・ジョーダンの死は自然死ではない」というメッセージを発見する。
メアリの死と本の持ち主の名を手がかりに情報収集を始めるタペンスだが、調べていくうちに、彼女たちが手に入れた家がいわくつきのものであることも分かって……。

(クリスティー 『運命の裏木戸』 ハヤカワ文庫)

荘田勝平の新邸披露の園遊会に参加したことが、唐沢男爵令嬢・瑠璃子の運命を大きく変えた。
瑠璃子と恋人との語りあいをたまたま聞いていた荘田が、彼女たちの言動に腹を立て、復讐しようと考えたのだ。

荘田は、高い志のために金に苦労をしている瑠璃子の父の借金の債権を買い取り、じわじわといたぶるように、彼らを追い詰めていく。
そして、卑劣な罠にかかった父親を救うために、瑠璃子は成金の荘田の後妻になることを決心するのだが……。

(菊池寛 『真珠夫人』 文春文庫)

レ・シルフィード(ショパン)

主人公の信吾は六十二歳。敗戦直後の時代を、年上の妻、息子、息子の嫁と一緒に暮らしている。息子が外に女を作っていることを知ったことで、嫁に対する気持ちのゆらぎを感じており、それが周りの人間関係にも微妙な波紋を投げかけている。非常に叙情的な風景描写の中で、人間の暮らしと心の微妙な動きが描かれている作品。

「レ・シルフィード」は、 ショパンのピアノ曲を管弦楽に編曲したバレエ音楽。

(川端康成 『山の音』 岩波文庫)

※漫画の中に出てくるショパンのご紹介はこちら

愛の夢(リスト)

作中でピアニストが弾いた曲。それを聴いている女性は「やっぱりショパンはいいわねー」などと言っている。

アイドル歌手のデビュー曲をめぐり、奇妙なうわさが流れはじめる。幽霊を見た、呪い殺される……。その真相とは?

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「MIDIクラシックの部屋」)

(高瀬美恵 『アルーマ』 幻冬舎文庫)

ニュルンベルクのマイスタージンガー(ワーグナー)

周囲に異変を察したときに、浮かび上がってくる、不気味な泡(ブギーポップ)という名前の人物のかかわる事件についての物語。ブギーポップ登場時に、口笛で吹いたのがこの曲。

(上遠野浩平 『ブギーポップは笑わない』 電撃文庫)

ニーベルングの指輪(ワーグナー)

ひそかに思いをよせる朝永さんに、「ニーベルングの指輪」の公演に誘われた「わたし」。ところが、第三夜に、目の前に居眠りをするふとどきな男が座り、気分はすっかり最悪である。その上、例の男は知り合いの刑事だった。

腹話術師である「朝永さん」が操る人形・鞠小路鞠夫が事件を解決する連作ミステリ。

(我孫子武丸 『人形はこたつで推理する』 講談社文庫)

椿姫(ヴェルディ)

南極に住むペンギンたちは実はオペラが大好きで、3〜4年に一度やってくるオペラ船を心待ちにしている。さて、今回の演目は……。歌うは三大テノール。配役は読んでご確認を。オペラで歌われる「乾杯」をお聴きになりたい方は、Classic MIDI Room(Classic,No37)へ。

(エルケ・ハイデンライヒ/クヴィント・ブーフホルツ絵 『ペンギンの音楽会』 文藝春秋)

椿姫の有名なアリアを歌いながら、主役のヴィオレッタは毒殺された。その前夜、彼女から電話を受けていた音彦は、友人の尋深(ひろみ)と共に犯人追求に乗り出す。
23年前に起こった、椿姫のモデルであるマリー・デュプレシの肖像画贋作事件。世界的テノール歌手の来日。それらの事実と今回の事件との関係は?
そして、ヴィオレッタ役を引き受けることになった尋深だが、次々と殺人事件は続き……。

(森雅裕 『椿姫を見ませんか』 講談社)

※漫画の中に出てくるヴェルディのご紹介はこちら

 

夢のあとに(フォーレ)

「推理世界」の編集者・岡部良介が担当することになったのは、豪邸に住むお嬢様だった。非の打ち所のない彼女だが、家を出たとたんに人格が変わってしまう。
覆面作家となったお嬢様が謎を解き明かす連作ミステリ。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「クラシック MIDI ラインムジーク」)

(北村薫 『覆面作家は二人いる』 中央公論新社収録「覆面作家は二人いる」)

乙女の祈り(バダルジェフスカ)

人間の死とはどういうものなのか。それを知るために、 町外れに暮らす老人を僕たちは観察しはじめた。もちろん、老人の「死」を見たいがためだ。あるきっかけから、しだいに老人と僕らは打ち解け、夏の長い休みの大部分を一緒に過ごすようになる。
しかし、別れの日はやはりやって来て……。
子どもたちの抱える悩みや、子どもから見た大人の世界の矛盾もていねいに書かれた物語。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「クラシック MIDI ラインムジーク」)

(湯本香樹実 『夏の庭』 新潮文庫)

カルメン(ビゼー)

ロシアのグランドオペラの5日目。カルメンに扮するはずのイイナ・ブルスカアヤは現れず、別の人間がカルメンを演じていた。がっかりした「僕」だが、イイナの休みの理由を聞かされる。 イイナを追いかけてきた旧帝国の貴族が、彼女の愛を失ったために亡くなったというのだ。
僕らが舞台を観ながら話をしている間に、当のイイナ本人がアメリカ人の夫とボックス席に現れて……。

「カルメン」をお読みになりたい方は青空文庫へ。また、「ハバネラ」をお聴きになりたい方はこちら。(music by「クラシック MIDI ラインムジーク」)

(芥川竜之介 「カルメン」)

トスカ(プッチーニ)

オペラ歌手草凪環が、日本公演のために海外から戻るシーンから話はスタートする。彼女が飛行機の中で見た雑誌に載っていたのは、 友人の鍋島倫子が餓死したという事件。
友人の死について情報を集めるうちに、環は様々な事実に気づいていく。
友人の死の真相とは?

そして、オペラ「トスカ」の第一日目に「悲劇」は始まる。

音楽ものとアクションものが無理なく融合したエンターテイメント小説。有志による自費出版により2005年末に刊行された。

(森雅裕 『トスカのキス』)

※漫画の中に出てくるプッチーニのご紹介はこちら

美しき青きドナウ(ヨハン・シュトラウス2世)

密室でピアニストが殺されたときに流れていた曲。作品のタイトル通り、もちろんオルゴールによる演奏。事件の真相については、作品を読んでご確認を。

ニューイヤーコンサートでもよく演奏される名曲。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「taitai studio」

(太田忠司 『維納オルゴールの謎』 祥伝社ノンノベル)

アラベスク 第1番(ドビュッシー)

主人公が初めてのボーナスで彼女のために買ったレコードの中の一曲。演奏者はピーター・フランクルのもの。「この人のはわりとゆっくりしているの。前聴いたことがある…」というセリフがあるように、ゆっくりした演奏らしい。主人公はガラスや鏡の破片を連想するが、彼女は冬の海だと言うところが心に残る。作中にジャズを含めたさまざまな曲が登場する。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「クラシック MIDI ラインムジーク」) 。

(島田荘士 『異邦の騎士』 講談社文庫)

版画(ドビュッシー)

ふと気がつくと、小田桐は森の中の狭いケモノ道をフラフラしながら歩いていた。前にも後ろにも歩いている人間がおり、たどりついたところは地下の広場だった。そこで、人々は何かの調査を受けているようで……。オールドトウキョウやオサカなどの彼の知る言葉とは少し違う単語、混血だらけの周囲の人々。

小田桐は自分が別の世界へと紛れ込んでしまったことを知る。彼が今いる、五分後の世界とは?

(村上龍 『五分後の世界』 幻冬舎)

※漫画の中に出てくるドビュッシーのご紹介はこちら

ピアノソナタ 第2番 変ロ短調(ラフマニノフ)

ある人に教えてもらった不思議な店「おもひでや」。そこでは望むとおりの思い出が買えるのだという。姉のために店を訪れた孝志を迎えたのは品のいい身なりをした男性、自ら「看板息子」と名乗る美少年のクレオ、人形のように完璧な容姿を持ったサナギの3人だった。

両親を早くに亡くし、自分を育ててくれた姉のために孝志は思い出を贈りたいと説明するのだが……。

(宝珠なつめ 『天国の対価』 中央公論新社)

※漫画の中に出てくるラフマニノフのご紹介はこちら

サロメ(リヒャルト・シュトラウス)

アメディオ・カプランは、隣人のゼンダー夫人の邸宅の家財処分の仕事をするウィリアムを手伝ううちに、モディリアーニの絵を見つける。
本棚の奥に置かれていたその絵には、ある秘密が隠されていて……。

アメディオたちのいる現在のアメリカ、そして「ムーンレディ」と呼ばれた絵があったオランダ、過去と現代が少しずつつながっていく過程が丹念に描かれている。

(カニグズバーグ 『ムーンレディの記憶』 岩波書店)

亡き王女のためのパヴァーヌ(ラヴェル)

主人公の亮司は、ある日見知らぬ男たちに襲われ、後に家族が惨殺されたことを知る。ひとりピアノを奏でる亮司の前に奇妙な兄妹が現れ……。

ピアノソロのほかにも、さまざまなヴァージョンの演奏がある。曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by 「MIDI・素材・ポスペ」

(神無月ふみ 『サウンドマスター』 エンターブレイン)

良一は中学三年生。ピアノが好きで音楽学校への進学を考えているが、母親(ピアノを教えている)にはまだ話していない。ある日、同じ学年の野球部のエース・徹也を通じて入院中の少女・直美と知り合う。三人の関係が少しずつ揺れ動く中、直美の病状は悪化していった……。

ベートーヴェンの「テンペスト」「田園」(ピアノ版)、マーラー、プロコフィエフ「三つのオレンジへの恋」、ファリャ「火祭りの踊り」、サティ「ジムノぺディ 第1番」なども演奏される。

(三田誠広 『いちご同盟』 集英社文庫)

※漫画の中に出てくるラヴェルのご紹介はこちら

道化師(レオンカヴァロ)

オペラハウスでたまたま友人と出会ったサタースウェイト氏は、非常に嬉しかった。クィン氏という友人は不思議な男で、彼によってサタースウェイト氏は幾つもの事件の真相にたどりついたことがあるのだ。
今日も彼らは、すばらしく美しい顔の持ち主に出会う。彼女の周りに起こる事件とは?(「ヘレンの顔」

他にグリーグなどのオペラも出てくる。

(クリスティー 『謎のクィン氏』 ハヤカワ文庫)

■国民楽派    バロック音楽古典派ロマン派|国民楽派|近現代その他

交響曲 第5番(チャイコフスキー)

飼犬のアポロ、息子と暮らす小説家が主人公。ほとんど「不遇」ともいえる境遇に生きる彼女の周りで起こる、ささやかな出来事を書いた短編集。

彼女の周辺になぜかよくある「失踪事件」。かえってきた「万年筆」。自分はあなたの「弟」だと告げる見知らぬ男など、日常生活の中に不思議なことがさらりと紛れ込んでいるのが愛しい。

(小川洋子 『偶然の祝福』 角川書店)

くるみ割り人形〜花のワルツ(チャイコフスキー)

「シマウマ楽器」の音楽教室に通う妹がピアノの発表会を迎えることになって、「ぼく」はとてもそわそわしている(と従弟の千波くんに指摘された)。同じ日に演奏会のある千波くんは、妹の発表会に行くことを断ったのだけれど、連弾の練習につきあってくれた。千波くんのことが大好きな妹はもちろん大喜びだ。
しかし、本番が近づくにつれて妹は元気がなくなっていき、それを心配したぼくたちは妹を千波くんの演奏会のリハーサルに連れていくことにした。そこで、千波くんのフルートなくなるという事件が起こり……。

「千葉千波の事件日記」シリーズ第4弾。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「クラシック MIDI ラインムジーク」)

(高田崇史 『パズル自由自在』 講談社NOVLES 収録「似ているポニーテイル」)

序曲「1812年」(チャイコフスキー)

チャイコフスキー隊長率いる大オーケストラ部隊は、モスクワに侵攻するナポレオン軍との戦いを間近に控えていた。「ロシア聖歌」が終わると、いよいよ敵の姿が出現し始める。「マルセイエーズ」が聞こえてくるのだ。チャイコフスキーの指揮するチェロ、ビオラ、バイオリン、ホルン、オーボエなどさまざまな楽器がナポレオン軍を迎え撃つ!

実際の序曲「1812年」は、ナポレオン率いるフランス軍がロシアに侵攻、それを迎えるロシア軍の反撃、ナポレオン軍の敗北を音楽で表現したもの。クライマックスには「大砲」も登場する。

(筒井康隆 『くたばれPTA』 新潮文庫 収録「ナポレオン対チャイコフスキー世紀の決戦」)

序曲「1812年」(チャイコフスキー)

チャイコフスキー隊長率いる大オーケストラ部隊は、モスクワに侵攻するナポレオン軍との戦いを間近に控えていた。「ロシア聖歌」が終わると、いよいよ敵の姿が出現し始める。「マルセイエーズ」が聞こえてくるのだ。チャイコフスキーの指揮するチェロ、ビオラ、バイオリン、ホルン、オーボエなどさまざまな楽器がナポレオン軍を迎え撃つ!

実際の序曲「1812年」は、ナポレオン率いるフランス軍がロシアに侵攻、それを迎えるロシア軍の反撃、ナポレオン軍の敗北を音楽で表現したもの。クライマックスには「大砲」も登場する。

(筒井康隆 『くたばれPTA』 新潮文庫 収録「ナポレオン対チャイコフスキー世紀の決戦」)

※漫画の中に出てくるチャイコフスキーのご紹介はこちら

ユーモレスク(ドヴォルザーク)

隣人の比和さんのお宅で不幸があってしばらくして、その曲は聞こえて来た。「ユーモレスク」。六年前に行方不明になった弟が好きだった曲だ。弟が行方不明になってから、1軒の家を二つに分けたお隣は、「近くて遠い」場所となった……。
しかし、弟がいなくなって七年目、法的な区切りの年に、弟に関するいろいろなことを私は知ることになる。自分の知らなかった弟の姿とは?

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「Dr.町田のホームページ」)

(長野まゆみ 『ユーモレスク』 マガジンハウス)

わが母の教え給いし歌(ドヴォルザーク)

雪永鋼(はがね)は腕のよいオルゴール修復師。かつて会社勤めをしたこともあったものの、愛犬のステラと一緒に暮らしながら、細々とオルゴールの修復を続けていた。
しかし、ある日、修理をしてほしいと持ち込まれた相談で出会った女性が、鋼の生活を大きく変えていく。
彼女・飯村睦月が持ちこんだオルゴールは、かつて父親が聴いていたのとは違う曲が流れるのだという。

オルゴールを修復師・雪永鋼の事件簿(カルテ)。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「Dr.町田のホームページ」)

(太田忠司 『レストア』 光文社カッパノベルス)

交響曲 第9番 ホ短調 <新世界より>(ドヴォルザーク)

夏のはじめのある日、僕のところにブラフマンと後で名づけることになった不思議な生き物はやってきた。多くの「芸術家」を迎え、世話をし、見送り続けるだけの僕のもとにとどまることになったブラフマンとの生活はうまく続いていくように思えたが……。

一度終わってしまった夏がもう戻ってこないように、何もかもが過ぎ去っていく世界は穏やかで、わずかに哀しい。

(小川洋子 『ブラフマンの埋葬』 講談社)

父親が遠く仕事に行っている間、働きながら学校へと通うジョバンニ。銀河の祭りの夜にも同じ学校の子供たちに父親のことでからかわれ、つらい思いをしたジョバンニは、いつの間にか銀河を走る列車に乗っていた。前の席に座っていた友人のカムパネルラとジョバンニの旅が始まる。

<新世界>交響曲として知られるこの曲はドヴォルザークのアメリカ滞在中に書かれたもの。第二楽章の旋律は、日本でも「家路」などの名で親しまれている。

(宮沢賢治 『銀河鉄道の夜』 新潮文庫)

※漫画の中に出てくるドヴォルザークのご紹介はこちら

ソルヴェイグの唄 〜ペールギュント組曲より(グリーグ)

母親が死んだ夜、ウタウは白いギターを持ったアイと名乗る女の子の幽霊に出会う。 その子のギターを聞いたウタウは、どんどん力が抜けていき、 飼い犬のダンがいなければ、死んでいたかもしれない。 同じ頃、子どもたちが「ロダン病」というものにかかり、次々と死んでいく事件が起きていた……。
アイは本当に死神なのだろうか?

(大海赫 『白いレクイエム』 ブッキング)

オニグモ(シベリウス)

自然に恵まれた森に、戦争の爆音が響くフィンランド。春の訪れる季節、トロールのペシは、虹からやって来た妖精イルージアに出会う。地上の美しいものたちに、心を引かれるイルージアだが、ある日、虹へ帰るための羽根をなくしてしまう…。
戦場の人間たち、動物や昆虫、四季折々の植物など森や川、湖、空の生き物たちをあたたかく描いたファンタジー。

(ユリヨ・コッコ 『羽根をなくした妖精』 晶文社)

■近現代       バロック音楽古典派ロマン派国民楽派|近現代|その他

ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲(コダーイ)

主人公の克久はひょんなきっかけから、吹奏楽部に入ることになった。色々と個性的な部員に囲まれて、克久は生き生きと成長していく。一人一人の音が合わさって音楽になってゆく過程を、存分に味わえる一冊。

この曲は克久が一年生の時のコンクールの自由曲。 他に、レスピーギのバレエ組曲「シバの女王ベルギス」から、三曲演奏されている。

(中沢けい 『楽隊のうさぎ』 新潮社)

ジムノペティ(サティ)

とある高校で三年に一度行われるゲーム。それは『サヨコ』と呼ばれる者が、四月の始業式の朝、自分の教室に赤い花を活けることからスタートする。『サヨコ』は前の代の『サヨコ』から卒業式のときに、次の『サヨコ』となることを引き継ぐのだ。

今年は『六番目のサヨコの年』。
津村沙世子という転校生の登場から、事態は思わぬ方向へと転がっていく……。

曲をお聴きになりたい方はこちら。(music by「クラシック MIDI ラインムジーク」)

(恩田陸 『六番目の小夜子』 小学館)

※漫画の中に出てくるサティのご紹介はこちら

■その他     バロック音楽古典派ロマン派国民楽派近現代|その他

グリーンスリーブス

イギリス民謡で、クラシックとしてもジャズアレンジでも演奏される有名な曲。
学校の金管クラブでトランペットVのパートを吹く和音。(本来は「かずね」だが、みんな「ワオン」と呼ぶ)トランペットVのパートは、主旋律でもない一番簡単なパートで、ワオンにはそれが不満だった。
しかし、夏祭りでのアンサンブルに出場が決まり、一曲だけトランペットTのパートを吹くのを頼まれたとき、ワオンはためらってしまう。
そして、父親の幼なじみ「ようこさん」と父親との関係も気になって……。

(山本悦子 『WA・O・N』 ひのくま出版)