リハビリテーションの作業療法や養護教育の作業学習などで、レザークラフトはよく行われている作業種目です。私が片手作業用に製作した補助具を中心に、紹介致します。
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はじめに
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実施例
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補助具
刻印ホルダー
模様を入れる・叩く
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作業の小技
参考
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模様を入れる・叩く


 模様を入れる。刻印を叩く。という動作のための補助具を紹介します。中にはリハビリの補助具というよりも、一般のクラフトの定番工具にしても良いのではないかと思う物もあります。

 実際のところ模様入りの木槌は、私の仕事用の金属製の道具を木に置き換えた物ですし、教室の生徒さんたちも便利に使っています。



「模様入り木槌」

 写真ではよくわかりませんが、木槌の打面に模様を彫り込んだ道具です。叩くだけで模様が簡単に入ります。広い面積でもかなり楽に作業ができます。

 私が作った補助具の中では、最も利用されている物かもしれません。

 自分の道具が金属製のため、当初は木を使うことは考えておりませんでした。しかしながら、金属製の物を作るのはけっこうな大仕事になり、リハビリ用に作るのは難しいことでした。それがある時、革よりも硬ければとりあえずは何でも使えるということに気が付き、木製の物を作ってみました。

 耐久力という意味ではやや弱いところがありますが、模様を楽に自由に刻むことができるので、なかなかおもしろい道具です。

 下の写真は、同様の用途のハンマー2種です。

金槌にステンレスの網をかぶせた物。 木槌に凸版を接着した物。



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「ハンマー式ホルダー」

 刻印を装着して、模様を施すハンマーとして使います。正確な位置決めはできないので、乱打向きの道具です。

 刻印を差し替えて模様を変えられるのが良いところです。試用していただいて、重さが足りないという意見があったので、重さを調節する鉛を取り付けることができるようにしました。

 見た目はあまり良くない道具ですが、使い方によってはおもしろいと思います。




「オートポンチ式ホルダー」

 市販のオートポンチをベースにして作った物です。刻印を革に押しつけることによって、刻印を革に打つことができます。本体の中にあるバネの力が利用されているようですが、詳しい構造はわかりません。

 刻印の傾きなどが自由になるので、実際にカービングに使ってみると便利な物でした。部品は、あれこれ取り混ぜて組んでありますが、試作の構成では刻印の加工が面倒です。革の工具を製造・販売している業者が取り組めば、もしかしたら良い物ができるかもしれないですね。


 左の写真が、部品です。ボルトを加工したり、モーター用のカップリングを利用したりしています。

 刻印は、切断したあとで太さ調整のために融着ゴムテープを巻いています。最初は熱可塑性の樹脂を使いましたが、より簡単な方法に変えました。

 オートポンチ本体のバネの強さについては、調整する機構が付いています。



「重い刻印」

 刻印は叩かないといけないのか?という問いかけは、補助具を作るときにはよく考えることです。

 そしてこの道具は、刻印が重かったら叩かなくても良いんじゃないかと考えて作った物です。

 釣りの重りに穴をあけて刻印を装着しただけの試作品なので、完成度は高くありませんが、私はおもしろいと思っている道具です。

 写真の物は刻印を固定してしまっているので、刻印の交換ができません。次に作った物からは、刻印の交換ができるようにしました。いつものゴムの力を借りて。

 作業強度に合わせて、重さを変えられるようにしたり、持つときの補助方法や刻印の固定方法など、考えるべきことがいくつもあります。




「ピストン式打ち具」

 上記の重い刻印から使い方を変えた物です。

 刻印のホルダーを使った感想として、ハンマーをまっすぐに当てられず、刻印が逃げてしまうという話がありました。

 そこで、ガイドになる何らかの軸を用意して、スライド式に刻印に当てる方法を検討しましたが、装置が大きくなりそうで、予算や製作面で補助具作りの方針からはかけ離れた物になりそうでした。大型の装置は、融通が利かないような気がして、どうも好きではありません。作るのもたいへんですし。

 なかなか良い方法が思いつかなかったのですが、刻印そのものをスライド軸にすればいいのではないかと、ある時思いつきました。
 すでに小型のホルダーもできておりましたし、重い刻印も試していました。2つを組み合わせてみたら、これがけっこう使えそうなんです。

 今までは、ホルダーはホルダーで動かして希望の位置にセットして、それからハンマーで叩くという2工程でしたが、「ピストン式打ち具」では打ち具を握ったままホルダーを引きずるようにして移動させることができます。
 移動させてそのまま叩く動作ができますし、刻印が逃げてしまうことがほとんどなくなるのではないかと思われます。刻印を傾けて打つこともできます。道具の形状や材質が整えば、十分に実用性があるのではないかと考えています。

 「重い刻印」と「ピストン式打ち具」をミックスした道具が、自分では欲しいと思いました。
 




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「柄のない打ち具」

 外にいて何かを叩かなくてはいけないときに、ハンマーがなければ何で叩くでしょうか。最初に思いつくのは適当な石ではないでしょうか。
 空手の名人などの格闘家なら、拳か頭突きとでもいうかもしれませんが…。

 ある時外で作業をしていて、ハンマーを無理に持とうとする必要はないのではないかと、ふと思いました。もちろん訓練性ということについては、私は素人なのでわかりませんが、作業の合理性からいえば形状はもっといろいろあっても良いのではないかと思われます。

 そこで作ったのが、この道具です。白い部分は樹脂製のまな板です。鉛を革で巻いて重りとして取り付けています。固定のための革ベルトは、ベルクロで取り外しできるようになっています。写真では手首に装着していますが、手の平などでもOKです。
 重さの調節のできる構造にできれば、作業強度の調整もできるのでしょうが、試作品はそこまでの機能はありません。

 試用してくださっている所から、気に入って使用している人がいるという話を伺っておりまして、とてもうれしい気持ちになりました。

 自分でハンマーでなくてもいいと気が付いたときには、けっこう新鮮な気持ちでした。ハンマーでなくても良いというのは、当たり前のことだったのかもしれないけれど、なかなかハンマーという常識から離れられなかったのですね。

 作業療法士さんが考案した物で、ハンマーを足で操作できるようにした大型の装置を写真で見たことがありますが、大型の装置を考えるときも、ハンマー以外の方法の検討の余地がありそうですね。



 下の表の上段の写真は、ハンマーにこだわっていたときの物です。

 下段の写真は、プレス式の試作です。ドリルチャックを利用しているので、直径13ミリまで固定できます。写真では、固定用の軸を取り付けたスクリュウポンチをセットしています。模様打ちや穴あけなどに自由に使えますし、テーブル側に治具を工夫すれば、等間隔の模様打ちなども可能です。廃品のドリルを使うと、刻印などの向きを変えながらの使用もできます。
 ハンドルを長くして力をかけやすくしたり、足で操作するためのベルトもつけました。ドリルチャック以外にも、いくつかの部品も作りました。でも、基になっている市販のドリルスタンドがアルミの鋳造部品を使っていて、その部分の強度が足りませんでした。試用中に部品が割れて壊れてしまいました。
 強度があれば、金具の取り付けなどにも利用できます。

軍手とベルクロを利用。 ゴム2本で固定。
ドリルスタンド利用のプレス式。





 模様入り木槌は、いくつかのリハビリや養護教育の現場で利用されています。その中で養護学校の先生から、木槌の模様面を革に打ち付けることが難しいことがある、という話をうかがいました。

 その対策のために考えたのが、このページの補助具です。有効かどうかは実際に現場で使用していただいてから報告しますが、まずはどのような物ができたかを紹介します。



ボール型模様入り木槌

 木槌の頭を丸くボール状に削りました。どの向きで革を叩いても、模様を施すことができます。

 使用した木槌は、レザークラフト用に販売されている木槌の、大きいタイプです。使用する時に握ることになる柄の部分には向きがあります。柄も丸い方が良いのかもしれません。

 このボール型模様入り木槌を作るためには、通常の模様入り木槌を作る作業と比べると、何倍かの作業時間が必要でした。素材として、ちょうど良い形状の物があると、ずいぶん楽に製作できるのですが、何か良い物はないでしょうか。ドラムを叩く道具に、似たような形の物があるような気がするのですが・・・。

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マッシュルーム型模様打ち

 写真では形状がわかりにくいのですが、どこかキノコに似た形をしています。鉛の重りに堅い木を取り付けたものです。

 重り側にドリルで穴をあけて木ネジを通し、木の部品を固定しています。

 手の当たる側にはクッション材を入れて、その上からスエードでくるみました。

 左の写真のような持ち方をします。

 湿らせた革の上に打ち付けると模様を施すことができます。このとき手に衝撃がありましたので、クッション材を入れました。このクッション材により、衝撃はかなり吸収されるようです。

 握りやすい形をしていますが、手に固定するための治具の工夫の余地が、あるような気がしています。

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模様打ち棒

 道具の名称を考えるのは難しいものがありますが、この道具の名称はさっぱり思いつきません。棒みたいな形なので、模様打ち棒と言うことにしておきました。

 いままで、いくつかの補助具で利用してきた重りの棒に、木の部品を取り付けて模様を刻んだものです。

 重りと木の部品は、コンクリートボンドで接着しています。見た目はともかく、コンクリートボンドは、高性能ですね。いろいろな接着に使うことができます。

 左の写真のように、握って革に打ち付けるだけです。模様を刻んだ木の部品の面積が小さいので、模様が深くはいるようです。

 快適な使用感があり、見た目の雰囲気以上に、使いやすい道具のようです。




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