コンパクト性の定義
[
トピック一覧:コンパクト性]
定義:コンパクト空間、コンパクト集合、相対コンパクト、点列コンパクト、有限交差性、
※位相関連ページ:開集合系・開集合、閉集合系・閉集合、近傍系・近傍、
開核作用素・開核、閉包作用素・閉包
位相空間・位相の定義、誘導位相、部分位相空間・相対位相
※コンパクト性関連ページ:R1上のコンパクト集合、R2上のコンパクト集合、Rn上のコンパクト集合
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定義:
コンパクト位相空間
[松坂『集合・位相入門』5章§2-Aコンパクト位相空間(p.209):丁寧;斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』5.2.2 (p.142);矢野『距離空間と位相構造』4.1.1節コンパクト空間(p.123);『岩波数学事典』項目14位相空間Sコンパクト性;]
(設定)
X : (普遍)集合
O : Xの開集合系
(X, O) : Xを台にして位相としてOを入れた位相空間
(定義)
Xがコンパクトないしコンパクト空間であるとは、
Xの任意の開被覆が有限部分被覆をもつこと。
(定義の詳細な説明)
手順1: Xの任意の開被覆をЦ={ Uλ}λ∈Λとおく。
すなわち、
以下の2条件を満たすXの部分集合族{ Uλ}λ∈ΛをЦとおく。
・条件1: Xを被覆すること 
・条件2:開集合のみからなること 任意のλ∈Λに対して、Uλ∈O
手順2: Ц={ Uλ}λ∈Λの有限部分被覆{U1,U2,U3, …,Un}が存在するかどうかチェック。
すなわち、
{Uλ}λ∈Λから、X=U1∪U2∪U3∪…∪Unを満たす、「集合の有限列」{U1,U2,U3, …,Un}を
取り出せるかどうかをチェック。
手順3: Ц={Uλ}λ∈Λの有限部分被覆が存在しないならば、
すなわち、{Uλ}λ∈Λから、どういう組合せで{U1,U2,U3, …,Un}をひねり出してきても、
X=U1∪U2∪U3∪…∪Un
と出来ないならば、
Xは、コンパクト空間ではない。
Ц={Uλ}λ∈Λの有限部分被覆が存在するならば、
すなわち、{Uλ}λ∈Λから、{U1,U2,U3, …,Un}をうまく選べば、
X=U1∪U2∪U3∪…∪Un を満たす{U1,U2,U3, …,Un}をつくれるならば、
手順4へ進む。
手順4:Xの開被覆を、他のものに変えて、手順1-3をテストしてみる。
Xのあらゆる開被覆に対して、有限部分被覆が存在するならば、
Xは、コンパクト空間である。
Cf.コンパクト距離空間
→
[トピック一覧:コンパクト性]
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定義:
位相空間におけるコンパクト集合
[松坂『集合・位相入門』5章§2-Aコンパクト位相空間(pp.210-11):丁寧;
斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』5.2.3 (p.142);矢野『距離空間と位相構造』4.1.1節コンパクト空間(p.123);
『岩波数学事典』項目14位相空間Sコンパクト性;]
cf. R1上のコンパクト集合、R2上のコンパクト集合
(設定)
X: (普遍)集合
(X, O) : 位相空間
A: Xの部分集合
(定義1)
位相空間(X, O)の部分集合Aがコンパクトないしコンパクト集合であるとは、
AにおけるOの相対位相OA={O∩A|O∈O } に関して、Aがコンパクト空間であること。
つまり、位相空間(X, O)の部分位相空間(A,OA)がコンパクト空間であること。
(定義1の詳細な説明)
Aを普遍集合とみたてたときのAの任意の開被覆、
すなわち、以下の2条件を満たすAの部分集合族を{ Uλ}λ∈Λとおく。
・条件1: 
…(1-1)
・条件2: 任意のλ∈Λに対して、Uλ∈OA= {O∩A|O∈O } …(1-2)
Aのどの開被覆Ц={ Uλ}λ∈Λからも、有限部分被覆を、
すなわち、A=U1∪U2∪U3∪…∪Unを満たす「集合の有限列」{U1,U2,U3, …,Un}を、
取り出せるならば、
位相空間(X, O)の部分位相空間(A,OA)はコンパクト空間であるが、
このとき、Aがコンパクトないしコンパクト集合であるという。
(定義2)
位相空間(X, O)の部分集合Aがコンパクトないしコンパクト集合であるとは、
部分集合Aの任意の「Xにおける開被覆」が、「Xにおける有限部分被覆」をもつこと。
(定義2の詳細な説明)
手順1: Aの任意の「Xにおける開被覆」をЦ={ Uλ}λ∈Λとおく。
すなわち、
以下の2条件を満たすXの部分集合族{ Uλ}λ∈ΛをЦとおく。
・条件1: Aを被覆すること 
・条件2: 開集合のみからなること 任意のλ∈Λに対して、Uλ∈O
手順2: Ц={ Uλ}λ∈Λの有限部分被覆{U1,U2,U3, …,Un}が存在するかどうかチェック。
すなわち、
{Uλ}λ∈Λから、A⊂U1∪U2∪U3∪…∪Unを満たす、「集合の有限列」{U1,U2,U3, …,Un}を
取り出せるかどうかをチェック。
手順3: Ц={Uλ}λ∈Λの有限部分被覆が存在しないならば、
すなわち、{Uλ}λ∈Λから、どういう組合せで{U1,U2,U3, …,Un}をひねり出してきても、
A⊂U1∪U2∪U3∪…∪Un
と出来ないならば、
Aは、コンパクト集合ではない。
Ц={Uλ}λ∈Λの有限部分被覆が存在するならば、
すなわち、{Uλ}λ∈Λから、{U1,U2,U3, …,Un}をうまく選べば、
A⊂U1∪U2∪U3∪…∪Unを満たす{U1,U2,U3, …,Un}をつくれるならば、
手順4へ進む。
手順4:Aの「Xにおける開被覆」を、他のものに変えて、手順1-3をテストしてみる。
Aのあらゆる「Xにおける開被覆」に対して、有限部分被覆が存在するならば、
Aは、コンパクト集合である。
→コンパクト集合
→[トピック一覧:コンパクト性]
(定義1と定義2が同値であることの証明) [斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』5.2.4(p.142);]
コンパクト集合の定義1と定義2は、同値である。
これを示すために、
まず、定義1が成立すれば定義2が成立することを証明し、
次に、定義2が成立すれば定義1が成立することを証明する。
→コンパクト集合
→[トピック一覧:コンパクト性]
[証明:定義1⇒定義2]
(設定)
X: (普遍)集合
O : Xの開集合系
(X, O) : 位相空間
A: Xの部分集合
OA: AにおけるOの相対位相 {O∩A|O∈O }。開集合系となる(なぜ?→証明)
(A,OA): 位相空間(X, O)の部分位相空間
(仮定:定義1)
位相空間(X, O)の部分位相空間(A,OA)がコンパクト空間であること。
(本題)
step1: 仮定を、コンパクト空間の定義にもどって詳しく言い換え。
Aを普遍集合とみたてたときのAの任意の開被覆、
すなわち、以下の2条件を満たすAの部分集合族を{ Uλ}λ∈Λとおく。
・条件1: 
…(1-1)
・条件2: 任意のλ∈Λに対して、Uλ∈OA= {O∩A|O∈O } …(1-2)
仮定より、Aのどの開被覆Ц={ Uλ}λ∈Λからも、有限部分被覆を、
すなわち、A=U1∪U2∪U3∪…∪Unを満たす「集合の有限列」{U1,U2,U3, …,Un}を、
取り出せる。…(1-3)
step2:
部分集合Aの任意の「Xにおける開被覆」、
すなわち、以下の2条件を満たすXの部分集合族を、{ Vλ}λ∈Λとおく。
・条件1: 
・条件2: 任意のλ∈Λに対して、Vλ∈O
step3:
Xの部分集合族{ Vλ∩A }λ∈Λは、(1-1)(1-2)を満たすので、
「Aを普遍集合とみたてたときのAの開被覆」の一つとなる。
すると、(1-3)より、
{ Vλ∩A }λ∈Λから、有限部分被覆を、
すなわち、A=(V1∩A) ∪(V2∩A)∪(V3∩A)∪…∪(Vn∩A)を満たす「集合の有限列」を、…(3)
取り出せることになる。
(3)に出てくる、V1,V2,V3, …,Vnを並べて、「集合の有限列」{V1,V2,V3, …,Vn}をつくる。
これらは、部分集合Aの任意の「Xにおける開被覆」{ Vλ}λ∈Λ(→step2)の有限部分被覆となっている。
なぜなら、
・{V1,V2,V3, …,Vn}は、{ Vλ}λ∈Λのなかから、
「Xの部分集合」を有限n個とってきて並べた「Xの部分集合列」
・(3)より、A=(V1∩A) ∪(V2∩A)∪(V3∩A)∪…∪(Vn∩A)
=(V1∪V2∪V3∪…∪Vn) ∩A (∵分配則)
この、A= (V1∪V2∪V3∪…∪Vn) ∩Aは、
A⊂V1∪V2∪V3∪…∪Vn と同値。(∵)
以上2点より、(3)に出てくる{V1,V2,V3, …,Vn}は、{ Vλ}λ∈Λ(→step2)の有限部分被覆。
step4:
以上から、仮定=定義1のもとで、「部分集合Aの任意の「Xにおける開被覆」が、「Xにおける有限部分被覆」をもつこと」、すなわち、コンパクト集合の定義2が成立することが示された。
→コンパクト集合の定義1と定義2が同値であることの証明トップ
→コンパクト集合
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[証明:定義2⇒定義1 ]
(設定)
X: (普遍)集合
O : Xの開集合系
(X, O) : 位相空間
A: Xの部分集合
(仮定:定義2)
部分集合Aの任意の「Xにおける開被覆」が、「Xにおける有限部分被覆」をもつ
(本題)
step1:
Aを普遍集合とみたてたときのAの任意の開被覆、
すなわち、以下の2条件を満たすAの任意の部分集合族を{ Uλ}λ∈Λとおく。
・条件1: 
…(1-1)
・条件2: 任意のλ∈Λに対して、Uλ∈OA= {O∩A|O∈O } …(1-2)
step2:
(1-2)より、各λに対して、Aとの重複部分がUλとなる「Xの開集合」Oλが存在する。
すなわち、 ・条件1: 任意のλ∈Λに対して、Oλ∈O …(2-1)
・条件2: 任意のλ∈Λに対して、Oλ∩A= Uλ …(2-2)
をともに満たす「Xの部分集合族」{ Oλ}λ∈Λが存在する。
Step3:
「Xの部分集合族」{Oλ}λ∈Λは、部分集合Aの「Xにおける開被覆」である。
なぜなら…。
(2-2)より、Oλ⊃(Oλ∩A)=Uλ (∵)
ゆえに、
これと(1-1)をあわせて考えると、
…(3)
よって、{ Oλ}λ∈Λは、(2-1)と(3)を満たすので、部分集合Aの「Xにおける開被覆」である。
Step4:
仮定により、部分集合Aの「Xにおける開被覆」{ Oλ}λ∈Λは、「Xにおける有限部分被覆」をもつ。
すなわち、{ Oλ}λ∈Λから、
A⊂O1∪O2∪O3∪…∪On …(4)
を満たす「集合の有限列」{O1,O2,O3, …,On}を取り出せる。
Step5:
{O1∩A,O2∩A,O3∩A, …,On∩A }は、
step1で「Aを普遍集合とみたてたときのAの任意の開被覆」とした{ Oλ}λ∈Λの有限部分被覆となる。
なぜならば、
・(1-2)および(2-2)より、{O1∩A,O2∩A,O3∩A, …,On∩A }は、
{ Uλ}λ∈Λから取り出した「集合の有限列」{U1,U2,U3, …,Un}である。
・(4)より、A= (O1∪O2∪O3∪…∪On) ∩A (∵)
=(O1∩A) ∪(O2∩A)∪(O3∩A)∪…∪(On∩A) (∵分配則)
つまり、A=(O1∩A) ∪(O2∩A)∪(O3∩A)∪…∪(On∩A)
以上2点から、{O1∩A,O2∩A,O3∩A, …,On∩A }は、{ Uλ}λ∈Λの有限部分被覆だといえる。
Step6:
以上から、定義2が成立するならば、「『Aを普遍集合とみたてたときのAの任意の開被覆』が有限部分被覆をもつこと」すなわち定義1「位相空間(X, O)の部分位相空間(A,OA)がコンパクト空間であること」が成立することが示された。
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定義:
相対コンパクト relatively compact
[矢野『距離空間と位相構造』4.1.1節コンパクト空間(p.123);『岩波数学事典』項目14位相空間Sコンパクト性;]
(設定)
X: (普遍)集合
(X, O) : 位相空間
A: Xの部分集合
(定義1)
Xの部分集合Aが相対コンパクトであるとは、
Aの閉包がコンパクトであること。
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定義:
点列コンパクトsequentially compact
斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』5.2.29点列コンパクト(p.153)を見よ。
cf. 距離空間(R1,d)における点列コンパクト、距離空間(R2,d)における点列コンパクト、
距離空間(Rn,d)における点列コンパクト、距離空間一般における点列コンパクト、
定義:
有限交叉性finite intersection property
松坂『集合・位相入門』5章§2-Aコンパクト位相空間(p.210);斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』5.2.5 (p.143);矢野『距離空間と位相構造』4.1.1節コンパクト空間(p.125);『岩波数学事典』項目14位相空間Sコンパクト性;
を見よ。
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定理:
コンパクト性と同値な条件
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定理:
Tychonoffチコノフの定理・チホノフの定理
[矢野『距離空間と位相構造』4.1.3節コンパクト性の遺伝定理4.10(p.136):有限直積の場合の証明;
斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』5.2.12 (p.144): 有限直積;5.2.22(pp.149-51):無限直積:;
松坂『集合・位相入門』5章§2-B定理13(p.212);]
コンパクト空間の直積空間はコンパクトである。また、逆も成り立つ。
→
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Reference
日本数学会編集『
岩波数学事典(第三版)』岩波書店、1985年、項目14位相空間Sコンパクト性。
矢野公一『距離空間と位相構造』共立出版、1997年。 4章コンパクト空間4.1コンパクト性4.1.1コンパクト空間(p.123-125)
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第5章位相空間(その2)§2コンパクト性5.2.1-6 (p.142-3);5.2.29点列コンパクト(p.153)
松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年。第5章§2コンパクト性-Aコンパクト位相空間(pp.208-211)。
彌永昌吉・彌永健一『岩波講座基礎数学:集合と位相 I・II』 岩波書店、1977年。 II.位相第3章コンパクト集合§3.1コンパクト位相空間-§3.2有限交叉性とコンパクト性(pp.243-8)
志賀浩二『位相への30講』朝倉書店、1988年、第27講コンパクト空間と連結空間(pp.187-172)。
西村和雄『経済数学早わかり』日本評論社、1982年、第六章位相数学§3コンパクト集合3.1-3.2 (pp.295-300)。卑近な例もまじえつつ、具体的に説明。
佐久間一浩『集合・位相―基礎から応用まで―』共立出版、2004年、4.3節pp.87-92。
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