誘導位相
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位相空間・位相の定義、部分位相空間・相対位相、
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定義:
誘導位相induced topology,逆像位相
[松坂『集合・位相入門』第4章§5.A.(pp.186-7); 彌永『集合と位相』II.位相第2章位相空間§2.8誘導位相(pp.212-4);
斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』項目4.3.14 (p.118.); 矢野『距離空間と位相構造』2.2.4誘導位相(p.80);
佐久間『集合・位相―基礎から応用まで―』p.73;]
1.誘導位相の存在を保証する定理
(設定)
X' : 集合
O ’ : X'の開集合系
(X', O ’) : 位相空間
X : 集合
f:X→X' XからX'への写像。
(本題)
以下の手順で、Xの部分集合系O0をつくる。
手順1: O ’に属す全ての開集合O'について、fの逆像f−1(O')をとっていく。
手順2: f−1(O')を、すべてあつめて、Xの部分集合系O0とする。
つまり、
O0={ f−1(O') |O'∈O ’}
このXの部分集合系O0は、Xの開集合系となる。(なぜ?→証明)
ゆえに、O0は、Xにおける位相となり、位相空間 (X, O0)が成立する。
また、写像f:X→X' は、(X, O0)から(X', O ’) への連続写像となる。
2.誘導位相の定義
上記のように定義したXの位相O0を、
写像f:X→X'によって、X'の位相から誘導される位相
写像f:X→X'によって、位相空間 (X', O ’)から誘導される位相
という。
※活用例:相対位相の定義、
(1で、O0がXの開集合系となることの証明)
[斉藤『数学の基礎:集合・数・位相』項目4.3.14 (p.118.);松坂『集合・位相入門』第4章§5.A.(p.187); ]
(設定)
X' : 集合
O ’ : X'の開集合系
(X', O ’) : 位相空間
X : 集合
f:X→X' XからX'への写像。
O0:{ f−1(O') |O'∈O ’} で定義されるXの部分集合系
(本題) O0がXの開集合系であるための3条件を満たすことを示す。
Step1 : O0は条件1「X,φ∈O0」を満たすことを示す。
・写像の逆像の性質より、 f−1 (φ)=φ、 f−1 (X')= X …(1)
・O ’はX'の開集合系であるから、開集合系の定義より、X'∈O ’ かつ φ∈O ’
したがって、O0={ f−1 (O') |O'∈O ’}には、O'= X', O'=φとしたときの、f−1 (O')も属していることになる。
すなわち、O'= X'としたとき、f−1 (X')=X ∵(1)
∈O0
O'=φとしたとき、f−1 (φ)=φ ∵(1)
∈O0
以上から、開集合系であるための第1条件「X,φ∈O0」をO0が満たすことが示された。
Step2 : O0は条件2「(∀O1,O2∈O0) (O1∩O2∈ O0)」を満たす。
Step2-1: 任意のO'1,O'2∈O ’に対してO'1∩O'2∈O ’である。
(∵O ’はX'の開集合系であるから、開集合系の条件2を満たす)
したがって、
O0={ f−1(O') |O'∈O ’} には、
O' = O'1∩O'2としたときのf−1(O')も属していることになる。
すなわち、O' = O'1∩O'2としたとき、f−1(O')=f−1(O'1∩O'2)∈O0
よって、任意のO'1,O'2∈O ’に対して、f−1(O'1∩O'2)∈O0 …(2)
Step2-2: O0の定義より、
任意のO1,O2∈O0には、必ず、何らかのO'1,O'2∈ O ’が存在して、
O1=f−1(O'1)、O2=f−1(O'2)と書ける。
したがって、
任意のO1,O2∈O0に対して、
O1∩O2
=f−1(O'1)∩f−1(O'2)
=f−1(O'1∩O'2) ∵写像の逆像の性質
「 f:A→B、Q',Q''⊂Bならば、f−1(Q'∩Q'')=f−1(Q')∩f−1(Q'')」より。
任意のO1,O2∈O ’に対して、f−1(O1∩O2) =f−1(O1)∩f−1(O2)
ここのO'1,O'2は、何らかのO'1,O'2∈O ’であったから、
(2)を適用できて、O1∩O2=f−1(O'1∩O'2)∈O0
よって、O1∩O2∈O0
Step3: O0は条件3「 O0に属す「Xの部分集合」のみからなる
任意の「Xの部分集合族」Oλ(λ∈Λ)の和集合
も、O0に属す。」
を満たす。
Step3-1: O ’に属す「X'の部分集合」のみからなる
任意の「X'の部分集合族」O'λ(λ∈Λ)の和集合
も、O ’に属す。
つまり、任意のO'λ∈O ’(λ∈Λ)に対して、

(∵O ’は X'の開集合系であるから、開集合系の条件3を満たす)
したがって、
O0={ f−1(O') |O'∈O ’} には、
としたときのf−1(O')も属していることになる。
すなわち、
としたとき、
f−1(O')

∈O0
よって、任意のO'λ∈O ’(λ∈Λ)に対して、
…(3)
Step3-2: O0に属す「Xの部分集合」のみからなる任意の「Xの部分集合族」を、Oλ(λ∈Λ)とおく。
O0の定義より、
任意のλ∈Λに対して、Oλ∈O0には、必ず、何らかのO'λ∈O ’が存在して、
Oλ= f−1(O'λ)と書ける。
すると、

∵写像の逆像の性質
「f : A→B、{ Mλ}λ∈Λが集合Bの部分集合族ならば、
」より。
ここのO'λは何らかのO'λ∈O ’であったから、
O'λ∈O ’(λ∈Λ)は、O ’に属す「Xの部分集合」のみからなるの「Xの部分集合族」のひとつ。
すると、(3)を適用できて、

よって、
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Reference
日本数学会編集『
岩波数学事典(第三版)』岩波書店、1985年、項目14位相空間。
矢野公一『距離空間と位相構造』共立出版、1997年。 2章位相空間2.1位相構造2.1.1位相(pp.56-62)
斉藤正彦『数学の基礎:集合・数・位相』東大出版会、2002年。第4章位相空間(その1)§1位相空間の定義・開集合と閉集合4.1.1-(pp.99-)
松坂和夫『集合・位相入門』岩波書店、1968年。第4章§2位相空間(pp.152-165)。P.164での著者による注意を読みおとさないように。
彌永昌吉・彌永健一『岩波講座基礎数学:集合と位相 I・II』 岩波書店、1977年。 II.位相第2章位相空間§2.1閉包写像と位相空間-§2.3近傍(pp.173-190)
志賀浩二『位相への30講』朝倉書店、1988年、第24講位相空間(pp.166-172)。
佐久間一浩『集合・位相―基礎から応用まで―』共立出版、2004年、p.73。
西村和雄『経済数学早わかり』日本評論社、1982年、第6章位相数学§1位相空間とは1.1-1.2。(pp.272-8)。卑近な例もまじえつつ、具体的に説明。
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