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ロシアの臨界前核実験に抗議 アメリカの臨界前核実験中止要請

 日本被団協はロシアが12月8日に行なった臨界前核実験に抗議し、アメリカが12日に予定している臨界前核実験を中止するよう要求して、抗議文を送るとともに、11日に抗議行動を行ないました。

1998年12月11日

アメリカ合衆国大統領
ウイリアム・J・クリントン閣下

日本原水爆被害者団体協議会
代表委員 伊東  壯
代表委員 山口 仙二
代表委員 伊藤 サカエ
事務局長 藤平  典

臨界前核実験の中止を要求する

 貴国は、12月12日(日本時間)、臨界前核兵器実験を行なうと発表した。貴国の臨界前核兵器実験はこれで5回目となる。しかも、この実験を2005年まで、毎年4回のペースで継続実施する計画であるという。

 貴国はすでに、ありあまる核兵器を所持している。その殺りく規模は、地球上のすべての人間を、何度も皆殺しさせることのできる量である。その核兵器の破壊力を研ぎすまし、核抑止力を強調し、さらに新たな核兵器開発にもつなげていこうとする、このような大量殺人計画の進行に、われわれ被爆者は激しい怒りをもって抗議する。

 貴国は、インド、パキスタンが行なった地下核兵器実験を、口をきわめて非難し、制裁を加え、脅迫さえした。いま、イラクが大量破壊兵器の査察を拒否していることを口実に、武力行使をしようともしている。しかし、ロシアの臨界前核兵器実験には、まったく口をつぐんでいる。弱小国には核兵器の実験も所有も許さないが、自国とロシアには実験も、開発も、保有も、使用も許されるとは、何という身勝手さであろうか。核大国の横暴としかいいようがない。

 21世紀を前に、国連総会での決議に見られるように、核兵器廃絶へ世界世論が大きく高まっているとき、これを無視し、包括的核実験禁止条約(CTBT)の網をくぐり、条約を骨抜きにする欺瞞的な手段によって核兵器の保有と開発、「改良」をつづけようとしていることは、世界世論に敵対する暴挙である。

 私たちは全人類の名において貴閣下に要求する。

1 臨界前核兵器実験の計画を中止せよ。

2 他国に率先して核兵器の放棄を宣言せよ。

3 核兵器廃絶への実効ある行動を開始せよ。

4 期限を切って核兵器を廃絶するための核兵器廃絶国際条約を締結せよ。

1998年12月11日

ロシア連邦共和国大統領
ボリス・エリツィン閣下

日本原水爆被害者団体協議会
代表委員 伊東  壯
代表委員 伊藤 サカエ
代表委員 山口 仙二
事務局長 藤平  典

臨界前核兵器実験に抗議する

 貴国が12月8日、ノバヤゼムリヤ核実験場で臨界前核兵器実験を行なったことに、われわれは、激しい怒りをもって抗議する。

 貴国は、臨界前核兵器実験はCTBT(包括的核実験禁止条約)に違反しないといっているが、この実験が核兵器の性能維持と有効使用を前提にしていること、新たな核兵器開発につながることは周知のことである。

 広島、長崎で、アメリカが投下した原爆によって叩きつぶされたわれわれ原爆被害者は、世界のどこであっても、新たなヒバクシャがつくり出されることを、自分たちが受けた苦しい体験から、許すことができない。「ノーモア ヒバクシャ」はわれわれ被爆者の悲願である。

 貴国内には、ソ連時代に行なわれた核兵器実験による放射線被害者が、数百万人もいると聞いている。実験によって汚染された土壌は、正常に回復するには数百年かかるといわれている。この土壌の上で植物や動物も、残留放射線被害を日毎、夜毎受けつづけている。核実験が、自然環境を破壊することは、この一事を見ても明かである。

 われわれは、これ以上、核兵器実験によるヒバクシャがつくり出されないことを強く期待し、次のことを要求する。

1 臨界前核兵器実験をただちに中止せよ。

2 他国に率先して核兵器の放棄を宣言せよ。

3 核兵器廃絶への実効ある行動を開始せよ。

4 期限を切って核兵器を廃絶するための核兵器廃絶国際条約を締結せよ。