被団協新聞

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「被団協」新聞2019年7月号(486号)

2019年7月号 主な内容
1面 第64回日本被団協定期総会
 核戦争阻止、核兵器廃絶の実現
 原爆被害への国家補償と援護施策の充実を

”非核・平和”日韓フォーラム
 5月30~31日 ソウルで開催

2面 国の償い、核兵器廃絶求め
 厚労省、外務省、政党に要請
 6月14日、日本被団協 中央行動

ノーモア訴訟
 最高裁に要請

核実験に抗議
総会決議(要旨)
特別決議(要旨)
3面 被爆者の想いを歌いつないで
 CDとブックレット「平和の子ら」 石川

被爆者は改憲を許さない
 NH9が全国交流会

増上寺で鼎談も
 ヒバクシャ国際署名宗教界へ

慢性腎不全で勝訴確定
 ノーモア訴訟・大阪

内部被ばくも考慮
 ノーモア訴訟・長崎

訃報・楠本熊一さん
非核水夫の海上通信 179
4面 相談のまど
 入院中の妻の今後
 施設への入所か― 在宅での介護か―

投稿 キューバで国際署名
募金のお願い

 

第64回日本被団協定期総会
核戦争阻止、核兵器廃絶の実現
原爆被害への国家補償と援護施策の充実を

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 日本被団協は第64回定期総会を6月12~13日、東京のホテルジュラクで開き全国から95人が出席しました。来年の被爆75年を見据え2019年度の基調報告、運動方針、予算、新役員(役員名2面)、総会決議と特別決議(要旨2面)を採択しました。

 12日午後1時に始まり、田中重光代表委員があいさつしました。「核兵器禁止条約が採択され喜ばしい展望が見えたが、米国など核保有国による核軍拡競争が始まることを懸念している」と述べるとともに、NPT再検討会議準備委員会のなかで国連事務次長・軍縮問題担当上級代表の中満泉さんが「このような状況だからこそ我々は頑張らなければならない」と決意を表明したことを紹介。日本政府が唯一の戦争被爆国といいながら核兵器禁止条約に署名も批准もしないのは許し難い行為であると指摘。憲法9条は被爆者の魂の叫びであり改正は絶対に許すことができないと述べ、前進面も困難な面もあるが「頑張って行きましょう」と励ましました。

昨年度の活動を報告

 初日は、基調報告と昨年度の活動報告を木戸季市事務局長ほか役員が提案しました。
 質疑では8人の全国理事と2人のオブザーバーが発言。介護制度の充実、ブロック講習会の開催、百歳を迎える被爆者への表彰の提案、石川県の音楽CD制作と普及の取り組み、北東アジア非核地帯条約について国への要請、などについて発言がありました。
 東友会の山本英典さんは「原爆症認定制度の改正のため、2003年から16年間、集団訴訟とノーモア・ヒバクシャ訴訟をたたかい、東京では大きな勝利で終わった」と、原告の立場から支援に感謝を述べました。
 質疑・討論の後、活動報告、会計報告を拍手で採択しました。

今年度運動方針を確認

 2日目は、はじめに2020年NPT再検討会議ニューヨーク行動について提案がありました。
 2019年度運動方針は「核戦争を阻止し、核兵器の廃絶を実現する運動の促進」「原爆被害への国家補償実現と援護施策の充実」など5項目の内容が提案されました。予算については、厳しい状況の中で、活動維持募金の目標を1千万円とすることなどが提案されました。
 質疑・討論では、富山から①財政破たんが心配なので経費の削減を ②各種募金が呼び掛けられているが会費を値上げしてはどうか ③土日を含む会議開催を、などの提案がありました。
 国際署名について、東京から「目標数億」を声高に言うのをやめて、「価値ある署名を集める」という考えで進めた方がいいのではないか。神奈川から、被団協として中間総括をして進めて行くべきではないか、などの意見が出されました。
 新潟からは「昨年、会を閉じるための準備作業に入ると表明した。5月に解散にむけ協議する会議を開き、2021年3月末で活動を停止することに決めた。県内の手帳所持者は82人、会への参加は20人。無責任に置き去りにすることはできないので、連絡窓口は残すことにした」との報告がありました。
 広島・石川・三重から参考資料「日本被団協の将来展望に関わる提言」についての説明を求める発言が、神奈川から憲法の方針について発言があり、木戸事務局長ほか担当者が、今後議論を重ねていく方針であることなど回答しました。
 今回の総会にあわせ、各県に配布された学習資料「日本被団協1994・12・23緊急全国代表者会議」ダイジェスト版DVDについて、制作者である一ツ橋大学名誉教授の濱谷正晴さんが紹介され、「今後のみなさんの活動に活用してほしい」と話しました。
 質疑・討論の後、運動方針、予算が拍手で採択されました。


”非核・平和”日韓フォーラム
5月30~31日 ソウルで開催

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(左から)イ・ギュユル会長、イ・ジュン
キュ実行委員、藤森俊希事務局次長

 「非核・平和のための日韓国際フォーラム」が5月30~31日、韓国のソウルで開かれました。
 フォーラムは、韓国の民主労働組合総連盟、女性団体連合、人道主義実践医師協議会など11団体と日本の原水協、民医連、新婦人、被団協など6団体が参加。
 朝鮮半島の非核化、北東アジアの平和体制をめざす動きも複雑になっており、非核と平和の方向へ大きく動かすため、日韓の非核・平和市民運動が連帯・共同して果たす役割は何かを、会議の時間を超えて熱心に討議・交流しました。
 フォーラムの初日は、ソウル市内で開会総会と分科会を開きました。
 連帯発言で韓国原爆被害者協会の李圭烈(イ・ギョユル)会長が「広島・長崎にいた韓国人は、5万人が犠牲となり、残りの5万人が放射性物質による障害を受けたが、長い間差別を受け続け、絶望と飢えの中で苦しい生活をしてきた」と述べ被爆75年の2020年8月に「世界被爆者被害者決議大会と国際模擬法廷」を韓国で開くと表明し「核兵器廃絶へ大きな一歩を飾る年になることを祈る」と述べました。
 続いて日本被団協の藤森俊希事務局次長が発言に立ちました。被爆した自らの体験を述べたうえで、原子兵器を各国の軍備から除去することを求めた国連第1号決議から71年目にして核兵器禁止条約が採択され、核兵器のない世界をめざす一方、唯一の戦争被爆国日本の政府が同条約に賛同しないことを指摘し、韓国の人々とともに核兵器のない世界へ力を尽くすことを表明しました。
 フォーラムは「核兵器のない世界にむけて、日本と朝鮮半島に非核・平和の確立」など4分科会で熱心に交流しました。
 翌日の閉会総会後、ソウル市庁舎近くの広場で市民にアピールしました。2日間の参加者は全体で300人、日本の参加者は約70人でした。


国の償い、核兵器廃絶求め
厚労省、外務省、政党に要請
6月14日、日本被団協 中央行動

 日本被団協は6月14日、全国の被爆者、被爆二世ほか約100人が参加して中央行動を行ないました。午前10時から参議院議員会館会議室を会場に開会集会を開き、前日まで行なわれていた日本被団協第64回定期総会の報告と、要請書の内容などを確認しました。
 続いて厚生労働省、外務省と各政党に対し、原爆被害への国の償い実現、日本政府の核兵器禁止条約への参加、原爆症認定問題の解決などを要請しました。

厚労省

 午前11時から同会場で参加者全員で要請。小野雄大被爆者援護対策室長ほかが対応しました。
 要請1「現行法を国の償いを明記した法律に改正を」については「法律制定時に十分な議論が行なわれ『国の責任』『尊い犠牲の銘記』を盛り込んだ」と述べました。
 要請2「原爆症認定の在り方の抜本的改定を」について「2010年~13年の在り方検討会で検討済み。他の戦争被害者との均衡上も放射線起因性と要医療性ははずせない」などと述べました。
 要求3「大臣との定期協議が実りあるものとなるよう尽力を」については「事前協議をして内容を大臣に伝えた上で定期協議に臨みたい、積極的に意見交換したい」と述べました。
 そのほか従来の見解を繰り返し「ご理解いただきたい」の言葉に、日本被団協の木戸事務局長は「理解できない。被爆者が抱える被害の実態に即してやってもらいたい」と返しました。

外務省

 加野幸司軍縮不拡散科学部審議官ほかが対応。核兵器禁止条約への署名について、「唯一の戦争被爆国として核兵器の非人道性を知っている、核廃絶にむけ国際社会を主導していく責任がある。一方我々をとりまく安全保障環境は厳しく、日米安全保障体制のもとで核抑止力を維持していかなければならない。核兵器禁止条約は我々の考え方とは違うので署名は適切でない」と述べました。

政党

【立憲民主党】
 国会議員3人が対応。要請団一人ひとりが自己紹介し、要請しました。参議院厚労委員の議員が被爆二世の援護について興味を示して質問、被爆二世の参加者が答えました。30分の時間しか確保できず、詰めた話ができませんでした。

【国民民主党】
 国会議員2人が対応。それぞれ広島、長崎の出身議員で、要請団参加者も親しみを込めて要請。核兵器廃絶に向け、ヒバクシャ国際署名についても国会で話題に、被爆二世の健康診断が県によって差がある状況の改善を、など訴えました。

【公明党】
 国会議員4人が対応。被爆二世の議員もいて、「核廃絶の目標は持っている、子どもへの平和教育が大切で推進していく、福島を再生エネルギーの拠点にしたらどうかと考えている」などと話しました。

【日本共産党】
 国会議員8人が対応し、議員3人が被爆二世でした。要請内容については全面的に支援すると回答。要請団から、当日の厚労省要請について「厚労省からの回答は通りいっぺんの中身のないものだった。議員の力を借りたい」と要請しました。

【社会民主党】
 国会議員1人が対応。「要請内容は党の方針に合うことが多い、実現すべく頑張る」と話しました。要請団が一人ひとり体験や思いを語ると、「被爆体験の継承をしっかりやらないといけない。生きている間に核兵器禁止の実現を」と締めくくりました。

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厚労省要請 外務省
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立憲民主党 国民民主党
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公明党 日本共産党
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社会民主党  

ノーモア訴訟
最高裁に要請

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最高裁要請

 14日午前10時、ノーモア訴訟の原告と支援者、弁護団が最高裁判所要請を行ないました。広島と名古屋の両高裁での被爆者原告勝訴判決に対する国の上告について、公正な判断を求める署名4151人分を提出(署名は累計1万681人)。
 日本被団協の田中重光代表委員が口火をきり、原告の内藤さんと高井さんが被爆体験を語りました。支援者と弁護士が、松谷訴訟や集団訴訟の判決を振り返りながら被爆国の最高裁としての司法判断を、と訴えました。
(愛知・大村義則)


核実験に抗議

 今年2月に米国がトランプ政権下2度目の未臨界核実験を行なっていたことが5月24日に明らかになったことを受け、日本被団協は同28日、抗議声明を発表しました。
 声明は、「米トランプ政権の暴挙に強く抗議する」とし、「この間、北朝鮮に核兵器の廃絶を求める一方で未臨界核実験を実施したことは、許されるものではない。米国は、核兵器の禁止・廃絶を求める世界の要請に一刻も早く応え、その先頭に立つことを強く要請する」と結んでいます。


総会決議(要旨)

 日本被団協は、今年度の総会で被爆75年を見据えた運動方針、核兵器の廃絶と原爆被害への国家補償の実現を目指す運動の推進を再確認しました。
 日本国民は、文明と戦争は両立しないことを知り、日本国憲法9条を制定しました。幣原喜重郎国務大臣は「文明が速やかに戦争を全滅しなければ、戦争が文明を全滅することになるでしょう。私はかような信念をもってこの憲法改正案の起草に預かったのであります」と述べています。憲法9条は広島・長崎から生まれました。
 あの日から74年、被爆者は、人間らしく生きられなくさせられた苦悩のなか、こんなことは二度とあってはいけないという思いを持ちつづけてきました。日本被団協を結成して、「自らを救うとともに、私たちの体験をとおして人類の危機を救おう」というたたかいを貫いてきました。
 私たちの運動が、新たな核戦争を阻み、核兵器禁止条約を生み出しました。米国をはじめ核兵器保有国は激しく抵抗しています。特に許しがたいのは、唯一の戦争被爆国・日本政府が条約に反対し、戦争犠牲受忍論を固持し、原爆被害への国家補償も拒否しつづけていることです。私たちは国に求めています。戦争によって原爆被害をもたらしたことを謝罪すること。核兵器の廃絶を法律に明記し国の誓いとすること。原爆被害者のからだ、くらし、こころの被害に償いをすること。
 私たちは、「ヒバクシャ国際署名」運動を開始し、すでに国連に941万余の署名を提出しました。国内では中央に連絡会、各地に県民の会などが結成され、国民運動になっています。
 運動が、世界の世論となって、国際政治を動かし、命輝く青い地球を未来に残すことを確信し、決議とします。


特別決議(要旨)

核兵器禁止条約の1日も早い
効力の発生へ

 核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議・第3回準備委員会が4月29日~5月10日、ニューヨークの国連本部で開かれました。来年の再検討会議にむけた勧告を採択できず「核保有五大国側と非保有国側との亀裂解消は難しい」(共同通信)など、両者の合意を生み出すことは容易ではありません。
 核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が、市場調査・データ分析会社に委託したEU諸国(ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ)の世論調査によると4カ国の国民が核兵器に強く反対していることが分かりました。
 核兵器禁止条約に署名するべきだと思いますか?
ベルギー はい64% いいえ17%
ドイツ  はい68% いいえ12%
イタリア はい70% いいえ16%
オランダ はい62% いいえ18%
 核兵器禁止条約に署名していませんが、4カ国の国民の意識は明確です。
 アメリカでは、首都ワシントン特別区議会が、核戦争の危険を防ぎ、核兵器廃絶を連邦政府・議会に求める決議を全会一致で採択するなど、同様の決議の動きが起きています。
 安倍政権は核兵器禁止条約を拒否しました。テレビ朝日の世論調査によると「あなたは、日本がこの条約に参加した方が良いと思いますか、思いませんか」に次のように答えています。
思う57% 思わない22% わからない、答えない21%
 1日も早く「ヒバクシャ国際署名」を広げに広げ、核兵器のない平和な世界へ、力をつくすことを表明します。


被爆者の想いを歌いつないで
  CDとブックレット「平和の子ら」 石川

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被爆証言や原爆に関する資料を
まとめたブックレットとCD

 石川県の原爆犠牲者追悼のブロンズ像「平和の子ら」の建立に合わせて作られた歌が、このたびCDになりました。
 像は1988年8月、石川県原爆被災者友の会が寄付を募り、金沢市卯辰山に建てました。翌年にフォークグループ「でえげっさあ」に依頼して像と同名の歌ができ、歌い継がれてきましたが、昨年10月、歌を後世に残したいとの被爆者の呼びかけに応え、有志15人がCD制作委員会を結成。今年3月には有志合唱団と小学生による歌の収録をしました。平和教育資料として被爆証言などを収めた30ページのブックレットもつくり付録として同封。完成後、県内全小学校に寄贈しました。
 制作を呼びかけた石川友の会会長の西本多美子さんは、「平和を願い核兵器廃絶を求めてたたかってきた被爆者の想いを子どもたちに受け継いでほしい。今回、CD制作に関わった一人ひとりが自分の運動として捉え、力を発揮してくれました。このとりくみ自体が継承の一つの形になったと思う」と話しています。
 頒価1000円。問い合わせは090―2374―8784川崎さん。


被爆者は改憲を許さない
NH9が全国交流会

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 今年も定期総会終了後の6月13日午後、ノーモア・ヒバクシャ9条の会(NH9)の全国交流会が開かれました。
 テーマは「安倍改憲のねらいと被爆者」。「令」は勅令や召集令状を連想させ、「平和」は戦争のときほど乱用される。「改元」から「改憲」を狙う安倍政権の目論見に被爆者としてどう立ち向かうか。吉田一人さんの話を皮切りに、約40人の参加者が熱心に話し合いました。
 体験のない人に伝わらない悩みや、若者が自分で考える力を喪っていることへの危機感も表明される一方、母から聞いた「僕をもう一度産んで。まだ生きたかった」と言って亡くなった兄の最期を語ることや、「あんたさえいなきゃね」と母に言われ被爆者と名のらずに生きてきた体験を、東北の地震で避難してきた子らを見て語り出したなど、幼時に被爆した人たちにも多様な伝え方があることが示されました。
 「9条守れ」は保守的に響くかもしれないが、被爆者運動は現状をつくり変え、新しい世の中を創り出そうとしてきた、その積極面を伝える大切さを確認し合いました。


増上寺で鼎談も
ヒバクシャ国際署名宗教界へ

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(左から)田中さん、八木法主、川崎さん

 ヒバクシャ国際署名を更に推進すべく、本年2月から宗教団体を訪問して協力依頼を行なっています(本紙3月号、4月号、6月号に掲載)。
 各訪問時には、その教団内の機関紙担当記者が同席され、当方の訪問趣旨と、対応くださった役員様のご意向などを教団内に伝えてくださることが多くあり、宗教界の新聞社が報じたことも数回ありました。ホームページにヒバクシャ国際署名へのリンクを設置してくださっているところもあり、大変有難く思っています。
 浄土宗もその一つで、国際平和活動を担う「浄土宗平和協会」のホームページに署名を紹介し、オンライン署名も可能にしてくださっています。
 またこの宗教団体訪問を道案内しているのが浄土宗僧侶(筆者)ということもあり、次のような鼎談も行なわれました。
 浄土宗の機関紙『浄土宗新聞』の企画で6月10日、ヒバクシャ国際署名の田中煕巳代表とピースボートの川崎哲共同代表が浄土宗大本山増上寺(東京都港区)に招かれ、同寺代表である八木季生法主との鼎談が行なわれました。八木法主は戦争経験者であり、被爆直後の広島に入り長崎の被爆の実態もご存じで、田中代表のご記憶とも呼応される場面がありました。川崎氏は戦後生まれの立場として、核兵器廃絶と平和を希求する活動への思いを語られました。
(浄土宗正明寺住職・森俊英)


慢性腎不全で勝訴確定
ノーモア訴訟・大阪

 5月23日、大阪地方裁判所(松永栄治裁判長)は、広島被爆の原告2人のうち、1人について、原爆症認定申請の却下処分を取り消す判決を下しました。
 勝訴したのは、爆心地から2・5キロで被爆し慢性腎不全(IgA腎症)を申請疾病とした75歳の男性。低線量被爆でも放射線起因性があると認めました。一方1・5~2キロ被爆、76歳、慢性肝炎及び糖尿病を申請疾病とした男性は、軽度の脂肪肝によるものとされ、敗訴しました。
 原告弁護団は、国の新しい審査の方針で積極認定の対象とされていないIgA腎症を含む慢性腎不全について放射線起因性を認め、国の主張を退けた点を高く評価。一方肝機能障害の放射線起因性を否定したことは容認できないとしました。
 ノーモア・ヒバクシャ訴訟近畿原告団、弁護団などは声明をだし、国・厚労省に対して、勝訴原告について控訴しないよう要請。また、「新しい審査の方針」の誤りを認め、これを変更し、全原告を救済すること、被爆者が「裁判をすることがないように」原爆症認定のあり方を抜本的にあらため、被爆者の命あるうちに問題を解決することなどを訴えました。
 国は控訴を断念し勝訴が確定。敗訴原告は高裁に控訴しました。


内部被ばくも考慮
ノーモア訴訟・長崎

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 5月27日13時10分、長崎地裁で原爆症認定を求めるノーモア・ヒバクシャ訴訟の原告5人の判決が言い渡され、急性心筋梗塞と甲状腺機能低下症などの2人を原爆症と認めました。
 国は原爆症認定審査で申請した疾病が原爆放射線の影響を原因とする「放射性起因性」と、医療が必要な状態にある「要医療性」を条件としています。長崎地裁では2人の原告について、初期放射線だけでなく、直後に食べた物での内部被ばくも考慮し、また被爆時とその後の状況から適切に判断。国は控訴せず、勝訴が確定しました。
 しかし3人の原告については、現在症状があり治療が行なわれているにもかかわらず、医師の判断をも無視する不当な判決でした。2人は控訴、1人は重複ガンで今も口頭弁論が続いています。
 この裁判係争中に原告の1人が死亡。被爆者は高齢化し、時間がありません。 (柿田富美枝)


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訃報・楠本熊一さん

 3月22日、肺炎のため死去。94歳、広島被爆。
 長年にわたり和歌山県原爆被災者の会(和友会)会長、1984年から2004年まで日本被団協代表理事(近畿ブロック選出)をつとめました。和歌山県立医科大学名誉教授。
 広島文理科大学(現広島大学)1年生のとき、爆心地から約1キロの友人の下宿で被爆。2015年の和友会解散後も、「体が続く限りは」と県内読者への「被団協」新聞の発送などを17年まで続けていました。


相談のまど
 入院中の妻の今後
 施設への入所か― 在宅での介護か―

 【問】今年に入って妻の具合が悪くなり、介護認定を行なって「要介護2」と決定されましたが今月になり体調が急変、入院し主治医から「腎臓が悪く手の施しようがない。時間の問題」と説明を受けました。以前から二人で延命処置は受けないと話し合っていましたので、主治医にはその旨を伝えました。ところが病院のほうから「どこか施設に移るように」と言われ、いくつかの施設の名前を教えられました。予後は長くないと言われているので施設に移るのか、それとも自宅につれて帰って在宅介護にしようか迷っています。介護するのは私一人ですが、在宅で介護できる体制は作れるでしょうか。

*  *  *

 【答】入院して病状・予後の説明を受け、今後の治療について家族の要望を聞かれたと思ったら転院の話とは――もっと丁寧に家庭の状況や本人・家族の思いを聞いてくれるとよかったですね。奥さんが家に帰りたい気持ちを少しでも持っているのなら在宅介護を検討してみてください。
 今年初めの「要介護2」よりも状態が悪くなっているはずですから、介護認定の「区分変更」手続きをします。そして、近くの介護支援事業所のケアマネジャーと契約して訪問診療をしている医師と訪問看護ステーションを紹介してもらい、合わせて訪問介護につなげて貰ってください。
 在宅介護は、訪問診療と訪問看護で24時間、必要な対応が可能です。24時間対応の契約をしておけば、発熱や様子がおかしいとき、不安になったときに訪問看護師に電話での相談や訪問して貰うことができます。被爆者の場合、訪問診療も訪問看護も医療系サービスなので、被爆者健康手帳により自己負担は車代程度です。また介護用ベッド類も福祉用具貸与で利用でき、奥さんの状況に合わせたマットレスが借りられます。入浴させたいと思えば訪問入浴を利用することもできます。
 介護するのがあなた一人ということで不安を感じていらっしゃるようですが、あなたは見守りと話し相手をすれば良いと思います。訪問介護(ヘルパー)におむつ交換などをお願いし、サービスの限度枠を超える場合には被爆者の介護手当を利用すれば、経済的にも大きな負担にはならないと思います。
 これまでお二人で「延命治療」などについて話し合われていたとのことなので、奥さんの気持ちは分かっていると思います。在宅介護を選択するとなると病院は、関係者を集めてカンファレンスを開きます。そこで必要な話し合いがおこなわれ意思統一できますので、不安にたじろぐのではなく一歩進めてください。


投稿 キューバで国際署名

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 今年還暦を迎える私は記念旅行として5月21日から28日、キューバに行ってきました。
 計画中、首都ハバナ3泊の間のオプショナルツアーで何がしたいか、と旅行社から問い合わせがあり、「サルサの教室に参加する? クラッシックカーに乗りたい?」等々聞かれる中「ヒバクシャ国際署名をお願いしに行きたい」と答えていました。キューバは核兵器禁止条約に署名、批准している国なのです。
 署名をお願いするのはどこが窓口なのか…旅行社が日本のキューバ大使館に署名用紙を渡して手配してくれて、窓口はICAPという組織だとわかり、全て整っての出発でした。
 実はキューバは、今年1月にハバナを横断した竜巻で死者も出る甚大な被害を受けていて、困っているので協力してほしいとの旅行社の呼びかけでタオルや食器洗用スポンジ等々を持っていくことになっていて、その窓口がICAPでした。
 キューバには夜到着し翌日の午前中にICAPへ。少しドキドキしながら向かうと、国連で核兵器禁止条約交渉会議の議長を務めたコスタリカのエレン・ホワイトさんのような理知的でチャーミングな女性、ICAPのアジア局長のラファエラ・バレリノ・ロメロさんが笑顔で迎えてくれました(写真上)。
 キューバでは革命家チェ・ゲバラが60年前に広島を訪問した写真(写真下)をハバナの革命博物館に展示しています。ゲバラに勧められたフィデル・カストロは2003年に広島を訪問し、長年の夢をかなえました。また日本のキューバ大使館に赴任した人は必ず広島を訪問するそうです。
 このような国なので、ICAPでは歓迎され、スペイン語のヒバクシャ国際署名用紙を手渡すことができました。ロメロさんは、「チェ・ゲバラが広島を訪問して60年の記念すべき年にあらためて心に刻む年としたい」と述べられました。
 「ヒバクシャ国際署名をお願いしたい」との思いから学ぶことの多い旅となり、思い出深い還暦旅行になりました。


募金のお願い

 日本被団協の運動を支える「被爆者運動強化募金」を訴えます。
 日本被団協は、国際的に「核兵器の反人間性」を明らかにし、「戦争犠牲受忍論」に抗い、原爆被害への国の償いを求めて運動を進めています。運動を支える募金への協力をお願いいたします。
 送金先=郵便振替00100―9―22913日本被団協(一部の地域を除いて同封の振込用紙をご使用ください)。