日本被団協は第63回定期総会を6月13~14日、東京のホテルジュラクで開き全国から百人余が出席しました。
昨年7月7日、国連のもとで核兵器禁止条約が採択され、同条約の制定に向け革新的努力を尽くしたとして核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)にノーベル平和賞が授与されたことなどを振り返り、日本被団協結成60年の2016年に開始した「ヒバクシャ国際署名」の推進への、各県の努力などが話し合われました。
核兵器禁止条約は6月末現在59カ国が署名、10カ国が批准しています。50カ国が批准書を国連に提出した90日後に条約が発効することになっており、核兵器廃絶を願う国々は、事情を抱えながら批准に努力しています。
日本被団協は核保有国とその同盟国、とりわけ日本政府に対し、賛同・批准を強く求めることを総会で確認しました。
1日目は2017年度の報告を中心に協議しました。原爆は人間に何をもたらすか、これまでの運動を改めて学び直し、新たな行動について木戸季市事務局長が基調報告し、活動、会計、中央相談所の報告のほか、ノーモア・ヒバクシャ訴訟弁護団が裁判の現状を報告しました。各地の活動を含め質疑応答の後、報告を採択しました。
2日目の最初に「ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会」から特別報告があり、被爆者運動が果たしてきた社会的役割、人類史的な役割を世界の人々に伝え、東京から「ヒロシマ・ナガサキ」を発信し続ける「継承センター」設立に向け協力を呼びかけました。
今年度運動方針、役員旅費規程、予算が提案され、国際署名、国の償い、憲法9条、財政、組織のあり方などについて熱心な質疑、討論の後、各案が採択されました。
昼食をはさんで役員選考委員会が開かれ、午後、役員選考結果が報告され、総会で承認されました(役員名別項)。代表委員に新しく田中重光さん(長崎被災協会長、77歳)が選ばれました。
続いて総会決議と特別決議(要旨2面)が提案され承認されました。
特別決議は、6月12日に行なわれた米朝首脳会談の共同声明に対して、「朝鮮半島の非核化と核兵器禁止条約は合致するもの」で、米朝が禁止条約に賛同・批准すること、日本政府が朝鮮半島の非核化に呼応して、条約に賛同・批准し、核兵器のない世界へ大きな役割を果たすことを願い、被爆者は努力をおしまないと表明しています。
〈代表委員〉
坪井直 田中重光(新) 田中熙巳
〈事務局長〉
木戸季市
〈事務局次長〉
児玉三智子 藤森俊希 大下克典 濱住治郎 和田征子 濵中紀子
〈代表理事〉
眞田保 木村緋紗子 木村邦子 金本弘 鹿島孝治 土屋圭示(新)
箕牧智之 松浦秀人 長曾我部久 横山照子 大岩孝平
〈会計監査〉
湊武 林俊江
〈顧問〉
岩佐幹三
日本被団協は定期総会翌日の6月15日午前、全国の被爆者、被爆二世、弁護士など約90人が参院議員会館に集まり、厚生労働省の担当室長らと交渉し、8項目の要請事項について、口頭での回答を受けました(写真)。
回答では、「援護法」の趣旨に沿って施策を行なっており「原爆症認定あり方検討会」の答申に沿って認定している。原爆症認定基準に関する「当面の要求」の被爆距離と疾患の拡大については、「裁判の結果を分析し、裁判で認定された疾患が放射線の影響があるとの科学的根拠が必ずしも明らかではないと承知しているので、対象を広げる考えはない」と述べました。しかし、総合認定の枠組みの中で認められることもあるので、あきらめずに申請してほしいと説明しました。
被爆二世健診については、親が手帳を持っていなくても受けられる、放影研の調査でがんの発症知見がないのでがん健診は増やせないと回答。
最後に木戸事務局長が「国家補償について、一度真正面から応えてほしい。被爆者の委員(坪井、田中両代表委員)が拒否した『あり方検討会答申』を持ち出すのはやめてほしい。3年研修の伝承者派遣にお金を出すのに、73年間苦しんだ体験を語る被爆者の証言になぜ援助しないのか」と迫ると、「3つめの課題については検討する」と回答しました。
午後は、内閣府、外務省への要請と、国会議員にヒバクシャ国際署名への賛同を求め要請。6月28日現在、新たに15人の議員から署名が寄せられています。(3面参照)
6月10日、雨が降りしきる中「国会前大行動」が行なわれ、国会正門前の歩道は「政治の腐敗と人権侵害を許さない!」「9条改憲NO!」を求める2万7千人余の市民で埋め尽くされました。市民団体の代表や野党議員のスピーチが行なわれ、日本被団協の児玉三智子事務局次長(写真)は次のように訴えました。
「73年たってもあの日が消えることはありません。あの地獄を誰にも体験させてはならない、ふたたび被爆者をつくるなと、国の内外に訴えてきました。昨年、核兵器禁止条約が採択され、核兵器廃絶への扉がやっと開かれた思いです。しかし、核保有国と同盟国は賛同せず、唯一の戦争被爆国日本が賛同していないことに怒りを覚えます。被爆者は9条改憲を許すことはできません。原爆で命を奪われた人々が9条になったと思っています。9条を輝かせ平和と生命を守りましょう」。
野党議員と日本被団協との「意見交換会」が5月31日、参議院議員会館で開かれました。これは、4月18日に開いた裁判の全面解決と原爆症認定制度の抜本的改善を求める院内集会での日本被団協などからの要請に応えるもので、党派を超えた野党(無所属含む)の衆・参両院議員18人(秘書含む)と、日本被団協から役員が7人、弁護士3人、ノーモア訴訟事務局1人が参加。厚生労働省からも5人が出席しました。
最初に厚労省健康局総務課原子爆弾被爆者援護対策室の簑原哲弘室長が、被爆者援護の現状を報告しました。
日本被団協からの意見聴収では、日本被団協の運動と原爆症認定に関する「提言」について木戸季市事務局長が述べ、原爆症認定基準に関する「当面の要求」について中川重徳弁護士が、原爆症認定を求める裁判の経過について宮原哲朗弁護士が述べました。
議員から、2009年の麻生首相との裁判の終結に関する「確認書」についてどのように考えているか、厚労省に見解が求められましたが、「原爆症認定の放射性起因の範囲についての新しい基準に沿って積極的にすすめており、該当しない場合も総合的に判断をしている」とのこれまで通りの回答でした。
野党の議連は、今後も継続して取り組んでいく方向を確認し、約1時間の会を終えました。
ヒバクシャ国際署名をすすめる島根県民の会準備会は5月26日、島根県民会館大会議室で、ヒバクシャ国際署名学習講演会「被爆者の願い、人類の望み―核兵器のない世界を」を開催し、82人が参加しました。
うたごえサークルのオープニング合唱の後、島根県生協連の鎌田憙男会長の開会あいさつにつづいて、日本被団協の木戸季市事務局長の講演がありました。被爆直後の長崎の写真が紹介され、5歳の時長崎で被爆した実体験に基づく話は迫力がありました。参加者からも「初めて聞くような話だった。原爆報道の禁止や調査・救援活動も止められていたことを知り、国民が見捨てられていたんだと感じた」「日本政府も連合国もポツダム宣言の条項を履行していないとの話に、なるほどと思った」などの感想が寄せられました。木戸さんはまた、「被爆者の願いはふたたび被爆者をつくらないこと、国による償いです」と強調。ヒバクシャ国際署名については、「国連代表から『署名を届けてほしい』と言われている。署名が国際政治の中で確実に『力』になっていることを感じる」と述べ、署名推進を呼びかけました。
ヒバクシャ国際署名をすすめる島根県民の会結成集会を7月7日午後3時から開催する予定です。会場=松江テルサ。(島根県民の会準備会)
宝塚市議会は6月22日の本会議で「『核兵器禁止条約』に日本政府が参加・署名を求める請願」を賛成多数で採択しました。この請願は、宝塚市原爆被害者の会が提出していたものです。
賛成したのは、日本共産党、公明党、ともに生きる市民の会、安全で誇れる宝塚をつくる会、市民ネット宝塚の各会派と無所属の議員全員(議長を除く)です。反対したのは自民党系の「たからづか真政会」の5人でした。
請願書は請願項目として「唯一の被爆国である日本をはじめ世界各地において、自らの被爆体験を語り、核兵器による被害を二度と生まないよう願って活動する被爆者の願いを受けとめ、核のない世界実現に向けた行動を日本政府が歩み出すことを求める意見書を提出してください」としていました。(副島圀義)
日本弁護士連合会が6月16日、シンポジウム「核兵器禁止条約の早期発効を求めて~核抑止論をどう克服する」を、東京・霞が関の弁護士会館で開きました。
明治大学の山田寿則氏の基調講演、日弁連の和田光弘氏と日本被団協の和田征子事務局次長の特別報告、川崎哲氏ら5氏によるパネルディスカッションがありました。
和田次長(写真)は、日本被団協63年間の運動の歩みを紹介し、「私たち被爆者は、国内外の支援者の方々と共に歩んできた核兵器廃絶の運動こそが、抑止力になっているとの自負を持っています」と発言。条約に記されている「公共の善」について日本被団協結成宣言の「人類の危機を救う」との誓いにからめ、「人の魂に届くように、平和を求める思いを語り、その思いを次に伝えなければ」と述べました。
日本被団協は、第63回定期総会を開き新たな運動方針を決定しました。
「原爆は、閃光とともに二つの街を壊滅させ、無差別に大量殺傷しました。人類が初めて体験した核戦争の”地獄”でした。原爆は、今にいたるまで、被爆者のからだ、くらし、こころにわたる被害を及ぼし続けています。」(『原爆被害者の基本要求』)
日本被団協は、「ふたたび被爆者をつくるな」と、①核戦争起こすな、核兵器なくせ②原爆被害への国家補償をと求めてきました。私たちは、ひきつづき、二大要求の実現に奮闘します。
昨年は、核兵器禁止条約が採択された画期的な年でした。私たち被爆者は70年余り願い続けてきた核兵器廃絶への重い扉がようやく開かれた思いで感動をもって受けとめました。日本政府は、唯一の戦争被爆国にも関わらず、条約会議に参加せず、署名・批准に反対しています。許せない行為です。
その打開のためにも「ヒバクシャ国際署名」を広め、世界で数億、国内で過半数の署名を目指し、力を尽くします。
国家補償は、歴代政府が頑なに取り続けている「戦争犠牲受忍論」の壁に遮られています。原爆被害への国家補償は、核戦争被害を拒否することを通して、戦争を起こさせない仕組みを作ることです。政府は、北朝鮮の核・ミサイル実験を利用して危機感を煽り、憲法9条に自衛隊を追記して「戦争する国づくり」を進めようとしています。日本被団協は、憲法9条を守り、あらたな決意をもって核兵器も戦争もない世界の実現を目指します。
現行の原爆症認定制度廃止、日本被団協の提言実現、被爆者に準じた二世・三世施策の実現、原発ゼロ、再生エネルギー政策への転換を求めます。
米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長が、6月12日、シンガポールで米朝首脳会談を行いました。共同声明で、トランプ大統領は「北朝鮮に安全の保障を提供することを約束」し、金委員長は「朝鮮半島の完全な非核化への確固として揺るぎのない約束」を表明。トランプ大統領と金委員長は「新たな米朝関係の樹立が朝鮮半島と世界の平和と繁栄に寄与する」と4つをあげています。
①米国と北朝鮮は、両国民が平和と繁栄を切望していることに応じ新たな米朝関係を樹立することを約束する。
②米国と北朝鮮は朝鮮半島において持続的で安定した平和体制を構築するために共に努力する。
③4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けて努力することを約束する。
④米国と北朝鮮は身元特定済み遺骨の即時送還を含め、捕虜や行方不明兵の遺骨収集を約束する。
共同声明は、非核化と平和体制構築へのスタートを表明するもので、具体的努力が必要です。昨年7月、採択された核兵器禁止条約について、両国とも賛成していません。朝鮮半島非核化と核兵器禁止条約は合致します。両国が条約に賛同し、批准するよう呼びかけます。戦争被爆国日本が朝鮮半島の非核化に呼応し核兵器禁止条約に賛同、批准し、核兵器のない世界へ前進する役割を果たすことを願い、被爆者は努力を惜しまないことを表明します。
2018年6月14日
日本被団協第63回定期総会
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ノーモア・ヒバクシャ9条の会は 2007年3月に10人の被爆者を含む 15人の呼びかけ人によって「アピ ール」が出され、4月に結成されま した。以後、活動を続けています。 |
日本被団協定期総会後の6月14日午後、東京のホテルジュラクでノーモア・ヒバクシャ9条の会(NH9)全国交流会が開かれました。
「被爆の願いと憲法9条」をテーマに、吉田一人さんが安倍改憲案の危険や、すでに進む戦争準備の「受忍」政策について問題提起しました。
40人余りの参加者による意見交換では、イージス・アショアが配備されようとしている秋田から「核禁条約について全町村が意見書を採択、9市も全員一致で賛同した」活動の報告。沖縄からは「米朝会談が行なわれている日に、辺野古で砂利がどんどん埋められている。その現状をみなさんの目で見てほしい」と訴えがありました。
「若い世代は憲法が自分のものになっていない。人間として扱われないことに慣れ過ぎていて、人の死に対するつらさが分からない。それが戦争できる状態につながっている」という重要な指摘もありました。
最後に、長崎の横山照子さんが「憲法があったからこそ被爆者運動に足をすえてこられた。9条が危ない今、それぞれの場で活動を」と呼びかけました。
愛知県原水爆被災者の会(愛友会)は6月24日、「被爆二世部会結成の集い」を名古屋市都市センター会議室で行ないました。10人の被爆二世が参加し、結成を拍手で確認。正式にスタートを切りました。愛知県選出の立憲民主党と日本共産党の衆議院議員からメッセージが寄せられました。
集いでは、参加した二世がそれぞれ親の被爆体験を語りあって交流がすすめられました。「二世部会として何をやったらいいのか。何のために二世部会を行なうのかが大切ではないか」「被爆した親や二世としての自分の医療面について勉強したい」など、たくさんの思いが語られました。
また、日本被団協が取り組んだ「二世アンケート」の愛知県分の集約が報告されました。二世の活動に「関わってみたい」と答えた人が80人いること、二世の活動の「情報がほしい」と答えた人が52人いることなどが紹介され、結成後さらに二世部会の活動を広げていく必要があると話し合われました。
二世部会の活動方針として、ニュースの発行、被爆体験の継承活動、ヒバクシャ国際署名の推進、「二世」としての要求を実現する運動などを確認。5人の世話人と、その中から代表と事務局を選出して体制も確立しました。(大村義則)
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内閣府要請 |
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外務省要請 |
6月15日午前の厚労省交渉(1面参照)に続いて午後は、内閣府と外務省に代表が要請、また地元選出の国会議員にヒバクシャ国際署名への賛同を求める要請行動を行ないました。
内閣府では、総理大臣宛の要請書を読み上げて提出。担当者は、「要請書を預かるもので回答する立場ではない。要請書は総理付きの担当者に責任をもって手渡す」と答えました。
外務省では、外務大臣宛の要請書を提出。核兵器禁止条約への署名・批准については、「日本政府は核兵器廃絶へ向かうアプローチが禁止条約とは違う」など、従来どおりの回答でした。被爆の実相普及のために、被爆者への財政援助を要請しました。
議員要請では、この日の要請に対して15人の議員から新たに署名が寄せられています。(以下、敬称略、順不同)
【衆議院議員】〈自民〉田畑つよし 〈立憲〉櫻井周 岡島一正 日吉雄太 生方幸夫 山花郁夫 〈共産〉笠井亮 〈国民〉緑川貴士 奥野総一郎 古川元久 〈無所属〉柿沢未途 野田佳彦
【参議院議員】〈共産〉田村智子 大門実紀史 〈国民〉長浜博行
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スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が6月18日発表した2018年版「世界の核軍備に関する年次報告」によると、世界の核保有国は米国、ロシア、英国、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国で、18年年初現在の保有核弾頭の合計は推定1万4465発に上っています。
総数では、1年前の1万4935発よりも米ロ中心にわずかに減っていますが、各国とも核兵器の近代化を進め、中国は前年より10発多い280発に増やし、北朝鮮も10~20発保有となっています。
【問】「要介護5」の夫がショートステイを毎月、利用するようになりました。はじめて利用する際に被爆者手帳を介護保険証と一緒に提示し、「わかりました」と言われました。
最初は短期間の利用だったものですから請求額も少なく気にしていませんでした。ところが先月分の請求が20万円を超えて、さすがにおかしいと思い請求書を確認したところ、居住費と食事代と共に介護保険の利用料が請求されていました。
事業所に被爆者手帳を提示していますし、福祉系サービスも窓口払いはないと聞いていたのですが、どういうことでしょうか。
* * *
【答】「要介護5」の夫さんの介護、たいへんですね。うまくショートステイを利用して介護負担を少しでも軽減できると本当に助かりますね。
介護保険サービスの事業者の中には、介護保険上のことはわかるけれども被爆者援護との関係については十分知らされていないし、わかっていない、というところも多いようです。
県の被爆者援護課に連絡して、これまで支払われた負担分は償還払いの手続きを行なうと共に、事業者に県から指導してもらうように話してください。
また、県の被爆者の会にも連絡して、被爆者の会から県に対し、介護保険サービス事業者への指導を徹底するよう申し入れるように話をしてみてください。
せっかく、みんなの力で医療系サービスだけでなく福祉系サービスへの助成も勝ち取ったのですから、きちんと活かされるようにしてほしいですね。