2013年7月号 主な内容

核兵器廃絶へ ―― 原爆被害の実相普及、さらに
日本被団協は6月4、5日、東京・御茶ノ水のホテル・ジュラクで第58回定期総会を開き、2013年度の運動方針、役員を決定し、「憲法9条を生かすことこそ被爆国の使命」との特別決議と総会決議を採択しました。6日の中央行動では、総会で決定、採択した運動方針、決議にもとづき、安倍晋三首相をはじめ各党党首、省庁に要請しました。

総会には、役員、全国理事、オブザーバーなど120人が出席。基調報告につづき2012年度活動、決算、監査報告、2013年度運動方針、予算が提案され、活発に議論し、いずれも確認、決定しました。
核兵器廃絶について、今年3月オスロでの「核兵器の非人道性に関する国際会議」、4月ジュネーブで開かれた2015年NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議第2回準備委員会での日本被団協代表の活動が報告され、被爆体験は核兵器廃絶の原点であり、語り伝えることが世界的にも求められていることが明らかにされました。
今春行なわれた各都道府県の被爆者の会への、組織と相談活動のアンケートで、被爆者の高齢化にともない活動や財政が困難になっている切実な実情が明らかになり、被団協全体で方向性をもって対応することが急務となっていることが報告されました。
新役員(代表委員、事務局役員、顧問)は、ブロック代表などで構成する役員選考委員会の選考をへて、前年度から全員留任との選考結果が報告され、了承しました。
特別決議について採決を求める提案があり、挙手による採決の結果、反対1のほかは全員賛成で採択しました。
総会決議(要旨)
情勢はいま極めて危険な状況にあります。日本国憲法を変え、戦争をする国につくりかえようとする動きが安倍首相を先頭に、強められているからです。憲法9条を厳守し、戦争も核兵器もない平和な世界をつくることに全力をつくします。
私たちは、人間に加えられた原爆被害の実相を語ってきました。被爆者運動の原点です。核戦争の阻止と核兵器廃絶への世論形成に大きく寄与してきました。ひきつづき被爆者の死と生を語り伝えます。
被爆70年の2015年までに、原爆被害に対する国の償いを実現するために、現行の「原爆被爆者の援護に関する法律」を改正する運動を国民運動としてすすめ、実現をはかります。
現行法のもとでも援護施策の充実、改善が必要です。原爆症認定集団訴訟運動の成果を土台に日本被団協の「原爆症認定制度に関する提言」の実現に努めます。被爆二世に対する援護施策の抜本的改善にさらに運動をすすめます。
福島第一原発事故は、2年たっても終息のめどが立たず放射線被害におびえる生活を強いられ、安全神話が完全に虚構だったことを示しました。原発の再稼働・新増設・輸出に反対し原子力に頼るエネルギー政策から脱却することを求めます。
被爆者の記憶遺産を継承する場としてのノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会の資料センター(仮称)づくりを共に進めます。
核兵器の廃絶と原爆被害に対する国の償いを実現する課題は、人類をその破滅から救う人類の課題です。国民の皆さんが運動に参加してくださることを心から訴えます。
憲法特別決議(全文)
憲法9条を生かすことこそ被爆国の使命
昨年の衆院総選挙でふたたび政権についた自民党は、衆院選につづき来る参院選挙にあたっても「憲法改正」を公約に掲げています。昨年4月自民党が発表した「日本国憲法改正草案」は、ほぼ全条項にわたる全面改定案です。
内容は、戦争放棄を定めた第9条を改悪し国防軍を創設、自衛権の発動の名のもとに「活動を行うことができる」として戦争をする国へと大転換し、表現の自由など基本的人権に関する条項の制限、削除、憲法改正条項の96条を大幅に緩和するなど憲法の基本をゆるがせにするものです。
1945年8月6日、9日アメリカが投下した2発の原子爆弾の凄惨な被害を受けた被爆者は、生き地獄を世界のだれにも味わわせてはならないと「ふたたび被爆者をつくるな」と訴え続けてきました。
今の憲法は、戦争と原爆による多くの国民の犠牲とアジア諸国民に加えた犠牲への反省がこめられています。とくに憲法9条がうたう戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否定は、核兵器も戦争もない平和な世界の実現をめざす私たちにとって、21世紀の規範として世界に誇れるものです。
核兵器廃絶を求める世界の世論を反映し、核軍縮は一定前進しているもののなお地球上には1万7千発を超える核兵器が存在し、あらたに核保有をねらう国の動きも絶えません。国連加盟193カ国のうち、190カ国が締約している核兵器不拡散条約(NPT)の2010年再検討会議は、「核兵器のない世界の平和と安全を達成する」ことに合意し、2015年再検討会議にむけて今年開いた準備委員会は80カ国賛同の共同声明で「核兵器が二度とふたたび使用されないことを保証する唯一の方法は、それらを全面廃棄することでしかありえないのです」と繰り返し核兵器廃絶への道を強調しています。
日本政府は、先の共同声明が「(核兵器が)いかなる状況下においても使用されないことに人類の生存がかかっている」との文言の「いかなる状況下」が、自国の安全保障政策と合致しないとして賛同しませんでした。核兵器使用の可能性を求めるということです。「憲法改正草案」とあわせ考えると恐るべき態度です。「唯一の戦争被爆国」である日本政府がやらなければならないのは、憲法9条を厳守し、国際紛争は武力を使わず外交交渉で解決し、万が一にも核兵器が使用されることのないよう核兵器廃絶に力をつくすことです。
被爆者は、憲法改悪を許さず、世界と日本の世論と手を携え、核兵器も戦争もない世界の実現に力をつくすことをあらためて表明します。
2013年6月5日
日本原水爆被害者団体
協議会第58回定期総会
相談事業は被団協が継承
第36回中央相談所定期総会

日本被団協定期総会に先立って6月4日に第36回社団法人日本被団協原爆被爆者中央相談所定期総会が開かれ、法人に関する法律改定にともなって、法人としての中央相談所は今年11月末日をもって解散することが決まりました。35年間の中央相談所の歴史を振り返る報告も行なわれました。
法人解散後、相談110番、相談事業講習会などの事業を日本被団協が継承することなどの対策を定めた「解散にともなう相談活動の組織、運営、会計処理について」の文書が相談所総会と被団協総会でそれぞれ提案され、確認されました。この文書は、日本被団協代表理事会と中央相談所理事会の合議で作成し提案されたものです。
全国から約100人参加で中央行動
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参議院議員会館 |
民主党 |
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共産党 |
社民党 |
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公明党 |
生活の党 |
日本被団協は6月6日全国の被爆者、被爆二世ほか約100人が参加して中央行動を行ないました。関係省庁、政党(事前に全政党に面談要請をし、返事があった政党)に対し、総会で決定した運動方針に基づき、現行法改正などを要請。アメリカ大使館に対し、核兵器即時廃絶を訴えました。地元選出議員への要請にも取り組みました。
[内閣府]大臣官房総務課佐野美博調査役ほかが対応しました。安倍晋三内閣総理大臣宛に、核兵器廃絶の先頭に立つこと、憲法9条の厳守、原爆被害への国の償い実現、現行の原爆症認定制度にかわる援護施策実行、原発の再稼働と新増設および輸出の中止などを要請しました。
[厚労省]榊原毅被爆者援護対策室長ほかが対応しました。設置から2年半となる原爆症認定制度在り方検討会がいつ結論を出すのかとの問いに、はっきりとした回答はありませんでした。
[外務省]北野充軍縮不拡散科学部長ほかが対応しました。ジュネーブでの共同声明不参加については、努力したが時間が不足した、などと説明しました。
[経済産業省]資源エネ庁の田附千恵子総合政策課戦略企画係長、伊藤裕明電力ガス事業部原子力政策課総括係長が対応しました。原発の再稼働は原子力規制委員会の結論で決める、自然エネルギーへの転換は原発とバランスをとりながら、などと説明しました。
[政党]民主党、日本共産党、社会民主党、公明党、生活の党がそれぞれ党本部などで要請に応じました。
[アメリカ大使館]カティア・ベネット政治部一等書記官が対応しました。核兵器廃絶についてや2015年NPT再検討会議にむけてのオバマ大統領宛ての手紙(要請)送付、オバマ大統領が日本被団協代表とニューヨークで面談したいとの要望について、窓口になって努力しましょうとこたえました。アメリカ大使館員に被爆者の証言を聞いてもらいたいとの申し入れに、それはいいことだ、相談してみたいとこたえました。
行政と司法の乖離で議論
第21回原爆症認定制度在り方検討会
第21回原爆症認定制度の在り方に関する検討会が6月11日午後、厚労省会議室で開かれました。
会議には、田中煕巳委員(日本被団協事務局長)が司法判断と行政認定の乖離がどこにあるかを明らかにするため、再三提出を求めていた司法判断の根拠を示す「判決における裁判所の判断について」の資料が初めて厚労省から提出されました。心筋梗塞など3疾病に限って厚労省勝訴、敗訴を1例ずつ列挙したもので、田中委員は、この表示だと司法判断は五分五分との印象になる、裁判では被爆者が圧倒的に勝訴しており、判決内容とともに件数も明らかにすべきだと求め、次回会議で提出することになりました。
原爆症認定訴訟309件の判決を参考にした急性症状等をまとめた第5回検討会資料の改定版も提出されました。
議論で、ほかの委員から、厚労省資料の「原爆症対象疾病の考え方」について同意できないのかとの問いに田中委員は、厚労省はこの考え方を主張して裁判で負けている、この乖離をどうするかが問題、裁判所がなぜ厚労省の主張がまずいと言っているかを例示すべきだとのべました。
原爆症認定と手当の問題を混同した議論が出るため、田中委員は、認定と手当を一緒にするから手当による財政負担を削るため認定を狭める議論になると指摘しました。
前回会議で議論になった原爆症の疾病拡大、適否を専門家に検討してもらうことについて、神野座長が、長瀧重信委員(放影研元理事長)に検討を依頼したいと提案、各委員も了承しました。
日本被団協役員
日本被団協役員
定期総会で選出、確認された日本被団協2013年度役員です。
〈代表委員〉坪井直 谷口稜曄 岩佐幹三 〈事務局長〉田中熙巳 〈事務局次長〉山本英典 木戸季市 児玉三智子 中村雄子 藤森俊希 〈代表理事〉越智晴子 伊藤宣夫(新) 久保山榮典(新) 大和忠雄 鹿島孝治 石川行弘 松浦秀人 奥城和海 箕牧智之 山田拓民 山田玲子(新) 武久熈 〈会計監査〉丹羽洋子(新) 原美男(新) 〈顧問〉山口仙二 肥田舜太郎
中央相談所役員
2年ごとの役員改選の年にあたり、定期総会で、今年11月までの役員が選出されました。
[理事] 高橋健(理事長) 田中熙巳 山田玲子 西本多美子 坪井直 横山照子 松浦秀人 池田真規 中澤正夫 伊藤直子 [監事]岩佐幹三 安原幸彦
後世に役立ってほしい 体験記とDVD制作

神戸市原爆被害者の会
神戸市原爆被害者の会(会員624世帯)は創立50周年を記念し、被爆体験記『命』(A4判141ページ)と被爆体験談DVD『命』(110分)を発行しました。
体験記は、会員56人から寄せられた手記を掲載し、巻末には第二次世界大戦の概要と戦況の推移、また会の歴史が年表でまとめられています。
DVDは、手記を寄せた会員の中から年齢、性別、被爆地などが重ならないよう考慮して8人を選び、神戸大学の映画研究部と放送委員会の協力を得て収録しました。
2年を要した編集にあたった役員は「私たちの体験が後世のためにお役にたてれば」との思いで完成させたといいます。
体験記800円、DVD400円で希望者に。連絡先=神戸市原爆被害者の会事務局・高野光江さん(神戸市灘区鶴甲4-9-28 Tel・FAX078-821-4548)
憲法アンケート返信続々 「9条は不動明王だ」

本紙前号付録の憲法アンケートはがきが続々と届き、6月25日現在600通を超えました。
「9条は不動明王だ」「(改正の手続きは)一般の人にはよくわからないので、国民全員によくわかるように説明して」など、率直な思いが書かれています。詳細は次号でお伝えします。
父の思いを自らに重ね…長崎被爆二世の会が学習会

長崎被災協被爆二世の会・長崎は、6月22日長崎被災協講堂で継承についての学習会を20人の参加でおこない、熊本県被爆二世・三世の会の青木栄会長が「被爆二世として生きる〜継承について考える」というテーマで講演しました。
定時制高校の教師である青木さんは、生徒たちに毎年、父親の被爆体験とその後の生き方を語っています。「被爆体験だけでなく、その後続いた深い苦しみ、悲しみを、自分のものとして思いを重ねる」と話し、父との対話から学び、自分自身の弱さに気づかされたことなどを語りました。
その真摯な向き合い方に、参加者は胸を打たれました。どのようにして被爆体験を語り伝えていくのか、ひとりひとりはその為に何ができるのかを、改めて考える機会となりました。
長崎被災協被爆二世の会・長崎では被爆70年に向けて被爆体験の聞き取り、原爆パネル展など継承活動をおこなっていきます。
語り・受け継ぐ交流会

ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会
継承する会の「2013 語り・受け継ぐ交流集会」が、日本被団協総会終了後の6月5日午後3時から、東京・御茶ノ水のホテル・ジュラクで開かれ、各都道府県被団協代表ほか被爆者、二世、同会の会員ら約50人が参加しました。
被爆70年に向けて日本被団協とともにとりくもうとしている「聞き取り」活動について、そのために作成中の「継承ポータル」の画面を実際に見て説明を聞きながら、どのようにすすめていくかを話し合い、経験を交流しました。
「プロのカメラマンの協力をえて、会の役員(被爆者)が話を引き出しながらDVDに撮り始めている」「体験したことを絵にしてみよう、ととり組んでから、出版、紙芝居、英訳、映像…へと発展してきた」など、各地の被爆者から創意的な語り継ぎの経験が紹介されました。
また、「原爆展のため二世が写真を撮り話を聞く企画が進んでいる」「節目ごとにとりくみ証言集を発行。70年に向けては二世の会で活動方針にも入れている」など、二世や若い人たちへの広がりも紹介されました。
最後に同会の吉田理事が「この会は、被爆者が60年、70年、命をかけて運動してきたものがそのままなくなってしまわないよう、被爆者が何を求め、どう生きてきたのかを引き継いでもらう取り組みだ。被爆者にとっては、自分自身の人生と運動を遺すことでもある」と締めくくり、参加者の協力を呼びかけました。
紙上書簡 ジャパン・タイムズ紙の報道にかかわって
岩佐幹三代表委員からトルーマン・ダニエル氏へ
トルーマン元米国大統領の孫ダニエル氏についてのジャパン・タイムズ紙の報道を読んだ岩佐幹三代表委員が、次のような書簡を同紙に投書しました。岩佐氏は昨夏、広島でダニエル氏と面談しました。書簡の内容を紹介します。
* * *
今年5月4日のジャパン・タイムズ紙は、トルーマン元米国大統領の孫ダニエル氏とのインタビュー記事を報道した。同氏は、昨夏に続いて今年も来日して被爆者から聞き取りをして、ヒロシマ・ナガサキについての書物を出版する予定だそうである。その時彼は、日本人が示した「すばらしい振舞い」に感銘を受けたと述べたあと、「原爆投下が必要であったかどうか、道義にあっていたかどうかについての議論ではなく、日本人もアメリカ人も原爆の後、どう生きてきたのか、生きてこられなかったのかという人間的なストーリー」に関心があるのだと説明したそうである。
彼は、かつて記者であった経験を活かした成果を発表したいのであろう。そのことに異存はないし、立派なものであってほしい。
昨夏、彼の来日を企画した「サダコ・レガシー」から日本被団協にも会見の打診があった。企画の方針や目的がはっきりしない急な申し入れなので一応お受けしないことになった。ただ、代表委員の岩佐は、被爆者の思いを正確に伝える必要があると考え、個人の資格で対談することにした。
まず倒壊した家の下敷きになり生きながら焼き殺された母を見殺しにして逃げた被爆体験を短く述べたうえで、原爆被害との向き合い方について、日米両国政府には、第2次世界大戦が日本の不法な真珠湾攻撃に始まり、その結果招くことになった原子爆弾使用によって人類史上あってはならない被害をもたらした両国政府の戦争責任の問題、さらには戦後国際的な救援を拒み続けて被爆者を放置し、あの年末までに広島と長崎で21万人の死没者を出したこと、その後も長く公的な救済は行われなかったことに対する戦後責任があるという歴史的事実を知ってほしいし、そうした過去の被害事実を踏まえて同じような過ちは繰り返さず、「ふたたび被爆者をつくらない」ために協力していきたい、と話した。
先のインタビュー記事によると、彼にはそうした歴史的事実と向き合おうという発想は大切ではないように思われる。過去はどうでも、これから仲良くしていこうという発想である。
しかし、原爆=核兵器の使用とその被害を体験した人間としては、その非人間的な実態に目をつぶることは決してできないし、目をつぶってはならない。
そのうえで最後にダニエル氏に伝えたい。私たち被爆者が、あの地獄のような状況での残酷な死、その後人間としてはこれ以上のことはない言語に絶する苦難とたたかい続けながら訴えているのは、貴方そして貴方の子や孫を含めて人類全てが、私たちと同じような体験を味わうことがないよう願っているからだ、ということを。
相談のまど 「特定療養費」とは
【問】私の母は脳梗塞で倒れて6カ月近く入院していました。1カ月前に療養型の病院に転院したところ、「特定療養費」を請求されました。母は被爆者なので、入院費用を支払う必要はないのではないでしょうか。
* * *
【答】この制度は、「特定療養費制度」といわれるものです。本来、保険診療と保険外の診療を同時に行なうことはできないことになっていますが、差額ベッド、特別のサービス、高度先進医療、長期入院などについては、自費扱いの診療が認められています。
お母さんの場合、「入院する必要性は低いが、患者の事情で入院をしている場合」ということで、入院費の一部が自己負担になるというものです。これは、健康保険の対象外となります。
被爆者手帳では、保険診療の自己負担分は公費負担となりますが、この場合は、被爆者も負担しなくてはなりません。
長期入院とは、180日を超えたときです。お母さんは、現在の療養型病院に入院したのは1カ月前ですから対象にならないはずですが、この制度では、その前に入院していた日数も数えられることがありますので、病院に確かめてください。
なお、長期に入院していても、この制度から除外される状態、症状があります。それは次のような場合です。
・難病患者などで入院加算を算定する患者
・悪性腫瘍に対して副作用の強い薬や放射線治療をしている場合
・人工呼吸器を使用している場合
・末期の悪性腫瘍に対する治療をしている場合
・肺炎などの治療をしている場合
などです。
こんなこと聞いてもいいですか…?受け継ぐための質問部屋
アメリカに対する思い
アメリカではいまだに「原爆投下は正しかった」という世論があると聞きます。侵略戦争を美化しようとする日本に対し、アジア諸国が反発を強めるように、被爆者の方々は反米感情を抱かないのでしょうか。(東京・会社員・35歳)
読者からの回答
◆原爆投下は国際法違反 鳥取・広島被爆
私は陸軍船舶兵だった。アメリカによる広島、長崎への原爆投下は、国際法違反なり。敗戦日本国は68年過ぎた。日本政府はアメリカに対して何も賠償を訴えない。被爆者は浮かばれない。
◆前向きの反省材料に 熊本・長崎被爆・71歳
アメリカ人の中にも、原爆を正当化する人もいれば、日本人に謝りたいという人もいます。
私は3歳のときに長崎で被爆し、気絶から覚め地獄から生還し、今があります。私は反米感情というより、人間の愚かな非人道性を許す、人と人との在り方が心配です。現在の日常生活でも、形を変えて世界各地で起こっている事件がそう。
私は人生の高い授業料だったと割り切り、将来の平和へ向かって、子どもたちへ語りかけています。
3歳のときに死んだものと思って、残りの人生を、当時犠牲になった人たち(敵・味方・一般人)へまなざしを向けて、祈る毎日です。歴史を繰り返したくないのです。
◆高校生の発言に希望 長野・広島被爆・69歳
生き地獄をつくりだし、老若男女を問わず多くの命を奪い、生き延びてもなお原爆症という緩慢な殺人から逃れることを許さない原爆投下をわたしは許すことができません。
報復ではなく、あの生き地獄を世界の誰にも体験させてはならない「ふたたび被爆者をつくるな」とたちあがった被爆者の先輩をわたしは誇りに思います。
アメリカの高校生に被爆体験を語った際、「今日の聞き手は明日の語り手」という長野県原爆被害者の会の前座良明前会長のことばを紹介し、高校生から「どうしたら明日の語り手になれますか」と質問を受けたことがあります。
原爆投下を正当化する教育を受けたはずの青年が、被爆体験を聞き「明日の語り手」になりたいと、予想もしない質問に驚き、嬉しかったです。
アメリカで「明日の語り手」が広がるとき、核兵器廃絶は現実のものにできると一筋の希望の光を見た思いがしました。
真実ほど強いものはありません。アメリカの良心とも手を携えて核兵器のない世界へ力をつくしたいと思っています。
お答え待っています
日本政府の態度について
核兵器をなくすため「核兵器の非合法化」や「核兵器の不使用」を盛り込んだ共同声明が発表されていますが、日本政府は賛同していません。残念でなりませんが、被爆者のみなさんは、どう考えられますか。(埼玉・主婦・51歳)
※被爆体験の継承に関する質問と回答を「質問部屋」係までお寄せください。
次回は9月号に掲載する予定です。