被団協新聞

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「被団協」新聞2009年 11月号(370号)

2009年11月号 主な内容
1面 非核三原則法制化を―新国会に初行動
「核兵器のない世界へ―今こそ飛躍を」
『被爆者からのメッセージ(抜粋版)普及版が完成』
2面 座標―「核密約」は破棄せよ
「非核三原則」署名に熱気
中央相談所秋の講習会スタート
非核水夫の海上通信
3面 ヒロシマ・ナガサキの旅語る―カナダで報告会
わが街の被爆者の会―熊本県被団協
放影研が核テロ対策研究へ
9条生きる世の先導役に
4面 相談のまど―健康管理手当の更新
声のひろば
被爆者運動強化募金のお願い

非核三原則法制化を―鳩山政権・新国会に初行動

原爆症訴訟最終解決急げ

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院内集会(衆議院第2議員会館)

 日本被団協は10月22日、全国代表者会議に合わせて中央行動を行ないました。全国の被爆者約100人が参加。8月の総選挙後初めての行動として、各政党と初当選国会議員への要請を中心に、厚生労働省と外務省への要請も行ないました。並行して院内集会も開きました。

 政党要請
 民主党は党本部で川越孝洋衆院議員が、公明党は党本部で山口那津男代表と斉藤鉄夫、谷合正明、江田康幸の各議員が、共産党は衆院議員会館で穀田恵二、高橋千鶴子、仁比聡平の各議員が、日本新党は衆院議員会館で田中康夫代表が対応しました。被団協側の代表が要請書(2面参照)を読み上げ、「原爆被害者の基本要求」と「被爆者からのメッセージ」の冊子を手渡しました。また参加被爆者が被爆体験を語り、要請項目について強い思いを述べました。各党とも要請項目について賛意を示し、党や国会で議論していくなど、積極的な回答がありました。

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民主党要請で要請書を
手渡す日本被団協の
坪井代表委員(左)と
受け取る川越議員(右)

 厚生労働省要請
 和田康紀健康対策調整官、健康局総務課の名越究課長補佐ほかが対応。認定申請の滞留については「一生懸命やっている」と述べ、手帳申請時の証人については「2人の証人はなくていい」と述べました。
 外務省要請
 軍備管理軍縮課の鈴木秀雄課長ほかが対応。非核三原則の法制化、北東アジア非核地帯構想の推進などを要請し、平和外交などについての意見交換をしました。

「核兵器のない世界へ―今こそ飛躍を」

 広島で国際シンポジウム開かれる

 核軍縮・核不拡散に関する国際委員会(ICNND)の最終会議になる第4回会合が広島で開催されるのにあわせ、国際シンポジウムが10月18日午後、広島の平和記念聖堂で開催されました。パネリストはティルマン・ラフ(核兵器廃絶国際運動豪代表)、田中煕巳(日本被団協事務局長)、レベッカ・ジョンソン(英アクロニム研究所所長)、川崎哲(ピースボート共同代表)の4人。
 パネル討論で田中事務局長は、自分と同世代の広島の男女中学生が野外で被爆し、5000人余りの命が無惨にも奪われたことなどをあげ、核兵器は人類と共存できないと述べました。また、核兵器の製造知識と技術を手にした人類は、生存する限り核兵器の存在を絶対に許さないという意志を強く持たなければならない、と訴えました。
 各パネリストへの質疑や意見を交わしたあと、決議案を採択して実り多いシンポジウムとなりました。

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国際シンポジウムのパネリスト

 活発に意見交換―ICNND委員と市民との意見交換会
 ICNND広島会合に先立つ10月17日、委員と日本NGO連絡会との意見交換会が開かれ、ICNNDから共同議長ほか、委員と諮問委員が、NGO連絡会側は市民団体などの代表50人余りが参加しました。広島会合でまとめられる提案の内容につき、双方の参加者がマイクを奪い合う、活発な会となりました。
 この会には日本被団協の田中事務局長も参加し「被爆者からのメッセージ(抜粋版)」が配布されました。


『被爆者からのメッセージ(抜粋版)普及版が完成』

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「被爆者からのメッセージ」を紹介する朝日新聞夕刊

 日本被団協が、来年5月の核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議にむけ全国から被爆者の声を集め、まとめた冊子「被爆者からのメッセージ(抜粋版)」の普及版が完成しました。
 日本語版は、政府・政党・国会議員への要請や、非核三原則法制化の国会請願署名の訴え、地方議会への意見書採択の申し入れの際などに活用します。
 英語版は、18日から開かれたICNND広島会合の前に、委員全員に届けることができました。今後は、アメリカはじめ各国政府への要請に活用したうえ、来年のNPT再検討会議に持参し、国連の各国代表部や市民に広く配布することにしています。
 日本語版、英語版とも頒価200円(送料別)で普及します。申し込みは各都道府県被団協または日本被団協へ。
 抜粋版(日・英)の内容は、日本被団協のホームページでも公開予定です。さらに、寄せられたメッセージのすべてをホームページで紹介する予定です。

座標―「核密約」は破棄せよ

非核三原則法制化署名広げよう

 日米「核密約」が大問題になっています。非核三原則(核兵器は(1)つくらず(2)持たず(3)持ち込ませず)を「国是」とうたいながら、政府は核持ち込みを認める密約をしていたのです。
 米側で密約の文書が公開され、日本の元外務省高官らが「密約はあった」と相次いで証言しても、日本政府は「密約はない」とシラを切り続けました。鳩山内閣になって岡田外相が、密約に関する調査を外務次官に命令しました。
 「核密約」とは、1960年の安保条約改定の際、核を積んだ米艦船の寄港や領海の通過、航空機の領空通過に際しては事前協議は必要ないと確認したもの、72年の沖縄返還に際して、有事には沖縄に核持ち込みを容認したものなどです。
 領海法で定めている領海の幅12カイリ(約22キロ)を宗谷、大隅など5海峡は3カイリ(約5・6キロ)にしていますが、これは核搭載米原潜の「自由通航」を可能にするために、米側の圧力によるものだったことも判明しました。
 「核密約」はアメリカの「核抑止力=核の傘」に頼るという危険な幻想がつくった“闇の国家犯罪”です。
 「核密約」で非核三原則は骨抜きされます。「ふたたび被爆者をつくるな」という被爆者の願いを無残に踏みにじるものです。
 「核密約」は公表し、破棄すべきです。破棄しなければ「密約」は公然と生き続けることになります。
 日本被団協は「非核三原則の法制化を求める請願署名」を広げています。署名運動の役割がますます大きくなってきました。

「非核三原則」署名に熱気

 日本被団協 全国代表者会議拓く

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日本被団協全国都道府県代表者会議

 日本被団協は、10月21日と22日、東京で2009年度全国都道府県代表者会議を開きました。全国から100人を超える被爆者が参加しました。
 冒頭、日本原水協の高草木博事務局長から募金100万円が被団協の藤平典代表委員に手渡されました。
 被団協運動について報告
 田中事務局長の基調報告「原爆症認定集団訴訟の中間総括と今後の運動について」のほか、山本事務局次長が「集団訴訟で果たした被爆者と原告の役割と今後」、岩佐事務局次長が「基本要求に基づく運動、現行法改正の方向」、木戸事務局次長が「2010年NPT再検討会議成功への取り組みと、非核三原則の法制化運動」についてそれぞれ報告しました。
 集団訴訟では、8月6日に政府・自民党と交わした集団訴訟についての「確認書」に沿った解決のため、地裁で係争中の裁判に勝利すること、敗訴原告救済の基金問題の解決など、終結への課題を明らかにしました。
 今後の運動では、現行法改正検討委員会を設置し、被爆者が要求する法律制定のための議論を始めていること、早急に討議資料を作成して全国的討議を進めることが報告・提案されました。
 NPT再検討会議成功への運動では、新たに作成したパンフレット(3面で紹介)を使って学習をすすめること、来年5月までに国内で進める運動として、非核三原則の法制化運動に取り組むこと、「被爆者からのメッセージ」を活用することが提案されました。
 熱心に討論
 原爆症認定申請の滞留問題、集団訴訟敗訴原告の救済問題、国の「戦争被害受忍論」と被爆者の「基本要求」についてなど、活発に討論されました。また非核三原則法制化運動について、国会請願署名を友好団体にも呼び掛け集めていること、地方議会意見書採択への働きかけを始めていることが報告されました。
 最後にアピール(別掲)を採択し2日間の会議を終わりました。

 アピール(要旨)
 「ふたたび被爆者をつくるな」を合言葉に、私たちが「核兵器廃絶」と「原爆被害への国家補償」を一体とする『原爆被害者の基本要求』を策定してから25年、日本被団協結成から53年目の今年、核兵器をめぐる情勢に大転換の兆しが現れました。
 今年4月5日、米国のバラク・オバマ新大統領が核なき世界の実現をめざすと宣言し、つづいて国連総会での演説で、米国は自国が保有する核兵器を2012年までに半減するとも明言しました。
 こうした転換を生みだした力には、被爆の原体験にもとづいて「ノーモア ヒバクシャ」を訴え続けた被爆者の運動が大きくあずかっているのです。
 鳩山内閣の誕生は、新たな時代の始まりを予告しているように見えます。鳩山首相は国連の場で非核三原則の堅持を誓い、「日本は核廃絶の先頭に立たねばならない」と述べました。
 今年8月6日、日本被団協は、原爆症認定集団訴訟の終結に関し、内閣総理大臣・自由民主党総裁との間に確認書を交わしました。認定の枠を大きく広げ、集団訴訟は大勝利のうちに終結を見ようとしています。この成果は、全国の被爆者・原告の団結と、弁護団・医師団はじめ支援者の献身的努力により勝ち取られたもの。熱烈な感謝をささげます。 とはいえ、たたかいは続いています。国民のみなさん、いっそうの御支援をお願いします。
 核兵器のない世界への扉を切り開きましょう。
ノーモア ヒバクシャ!原爆被害への国家補償を!
日本被団協全国都道府県代表者会議

中央相談所秋の講習会スタート

 中国ブロック 150人が参加

 今年度最初の中央相談所講習会となった中国ブロックの講習会が、10月8〜9日、島根県松江市の玉造温泉で開かれました。台風18号の影響で講師の到着が遅れ、プログラムを変更するなどしましたが、中国地方各地から約150人が参加し、熱気あふれる講習会となりました。  初日は、ブロック各県の活動報告をし、経験交流を行ないました。  2日目は、日本被団協の田中煕巳事務局長が「集団訴訟の到達点と日本被団協のこれからの運動」について報告。つづいて被団協の伊藤直子さんが「現行被爆者対策の活用と相談活動」について話しました。

ヒロシマ・ナガサキの旅語る―カナダで報告会

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会場を埋めたバンクーバー市民

 カナダのバンクーバーで10月3日「ヒロシマ、ナガサキ、そして‐」と題したイベントを行ないました。
 バンクーバーの平和教育団体「ピース・フィロソフィー・センター」は07年以来、アメリカと日本の学生が一緒に広島と長崎を訪れる平和学習の旅に協力しており、08年からカナダの学生も加わりました。期間は毎年8月1〜10日で、京都の立命館大学国際平和ミュージアムで3日間の基礎研修、広島で3日間、長崎で3日間の日程です。
 広島と長崎で学び体験したことをカナダの一般社会に広く伝えようと、バンクーバーの中心地にある公民館で開催したのがこのイベントです。旅の報告と同時に原爆展パネルも展示しました。80人の参加者を得て盛況のうちに終わりました。
 アメリカやカナダの学生にとって、広島長崎を訪れ、資料館を見学し、被爆者の体験談を聞くことは、戦争や原爆に対する視点を180度転換するきっかけになります。今回報告した6人は、スライドやビデオなども交えながら生き生きと体験を話し、被爆者との触れ合いやその体験を語るときには涙を押さえきれないこともありました。
 参加者した市民からは「若い人たちが戦争や平和のことを真剣に考えているのに感心した」「日本の国外で広島長崎のことが語られているのを聞くことが新鮮だった」などの声が聞かれました。
(ピース・フィロソフィー・センター代表 乗松聡子)

核兵器のなくせる なくすのはわたしたち

 日本被団協は2010年NPT再検討会議の成功をめざして、パンフレット『核兵器はなくせる なくすのはわたしたち』を発行しました。「NPTってなに?」「NPTの40年」「NPTと日本被団協」など、基本的事項がわかりやすく説明されています。NPTの条文なども載せ、学習資料として最適です。
 A5判22頁150円(送料別)。申し込みは各都道府県被団協または日本被団協へ。

わが街の被爆者の会―熊本県被団協

 熊本県被団協は1958年に結成、最高時は30支部ありました。今は26組織で会員約千人です。昨年「結成50周年を祝う顕彰と音楽の集い」を開きました。被団協方針の実践を信条に、核兵器廃絶、原爆被害への国家補償を訴えながら、国内外での証言活動や署名などに取り組んでいます。
 他団体との協力共同を重視し、平和美術展、高齢者大会、原水禁世界大会など様々な実行委員会に参加しています。
 今年5月江津湖公園で開かれた「健康まつり」では、原爆症認定集団訴訟の訴えを行ない、署名を集めました。

放影研が核テロ対策研究へ

 被爆者団体が反発〈長崎〉

 放射線影響研究所(放影研・かつてのABCC)がアメリカのアレルギー感染症研究所(NIAID)からの助成金(毎年2億円、5年間)で、放影研が被爆者からえた資料・標本とこれから採取する標本を使って、テロによる核攻撃の際の放射線の免疫機能に与える影響などについての研究を開始する計画が明らかになりました。
 長崎被災協など長崎の被爆者5団体は、9月11日、放影研に対し、核攻撃を前提とした研究に被爆者の資料、標本などを使用することは許せないと、NIAIDからの助成を受けての研究を白紙撤回するよう、共同で放影研理事長へ要請書を提出しました。
 また同日午後開かれた放影研の地元連絡協議会でも、被爆者団体の代表者や報道関係者から疑問の声が続出し、同研究の受託についての同意は得られませんでした。
 しかしその後、放影研は、NIAIDと正式契約を結んだと報じられています。(長崎被災協 山田拓民)

9条生きる世の先導役に

 学習と交流のつどい―ノーモア・ヒバクシャ9条の会

 10月21日夜、東京で「ノーモア・ヒバクシャ9条の会」の学習と交流のつどいを開きました。
 『日本被団協50年史』編集に携わった山村茂雄さんは、「被爆は時間の経過の中で考えることが大切」、被害者救援は「救う者が救われる」と、被団協草創期の運動を紹介。吉田一人さんは「基本要求25年」と題して、「核兵器は1発でも残っていれば危ない、削減でなく廃絶を。わが国は、非核国の裏づけとして、原爆被害への国家補償をすべき」と述べました。
 30数人の参加者は、被爆者の命=9条が生きる世界への先導役になろうと熱く語り合いました。

相談のまど―健康管理手当の更新

更新しなくてもよい疾病でも、診断書の書き方によって、更新が必要な場合があります

 【問】私は3年前から甲状腺機能低下症で健康管理手当を受給しています。今度12月に更新手続きをしなくてはいけません。この病気は更新をしなくてもよいと聞いていますが、私の場合はどうして更新手続きをしなくてはいけないのでしょうか。12月の更新のときに気をつけることはありますか。

 【答】健康管理手当を受給していて、更新しなくてよい疾病は、がん、糖尿病、甲状腺機能障害、脳血管障害、高血圧性心疾患など循環器機能障害、腎臓機能障害、肺気腫など呼吸器障害、変形性脊椎症など運動器機能障害で、病状が「固定している」との診断がある場合です。
 あなたの甲状腺機能低下症という疾病は、これに該当しています。しかし、あなたの場合、3年前に申請した時の診断書に「固定していない」、「今後医療を要する期間は3年」と記載されていたのだと思われます。そのため受給期間が3年と認定され、今回更新が必要になったのでしょう。
 今度も甲状腺機能低下症で「更新」するのであれば、診断書の「固定している」という欄に○をしてもらってください。
 中央相談所では、医師宛ての「更新用診断書作成のための紹介状」を用意しています。希望する方は中央相談所に申し込んでください。手紙に、紹介状が欲しいことと申請する疾病名を記入し、80円切手を貼った返信用封筒を同封のうえ、郵送でお願いします。

声のひろば

 今までは、私の長崎原爆被爆体験を、他の人に話したことはほとんどありませんでした。しかし最近になり世界情勢を見ますと、テロ事件の頻発や国際紛争の増加、それに加えて核保有国の増加もあります。市民までも対象とした、核兵器という無差別大量殺りく兵器使用による恐ろしい戦争が起こらないようにするためには、原爆被害の悲惨さを一般の人にもよく知っていただき、核戦争反対並びに核保有反対の、国際的な市民の輪を広げることが最も有効です。被爆体験者は現在老齢化し減少しています。
 体験を直接伝え得る人が皆無になるときがくると思い、敢えて、拙文ながら「原爆体験記」のプリントを作成しました。
(大阪 渡辺太郎94歳)

 札幌市大通り公園付近で、核兵器廃絶、非核三原則の法制化を訴える街頭宣伝をしていたところ、明らかに喋る言葉が日本語ではない一団がやってきました。勇気を奮い起こして「ノー アトミックボムブ エンド ウォー、サイン プリーズ」と言ったところ、一団はしばらく何か言い交わしていましたが、それぞれ署名し、原爆パネルを指して手を振って去っていきました。書かれた漢字は読めませんが、かろうじて住所欄の「台湾」はわかりました。
 核廃絶の願いが世界に流れていることを痛感した一刻でした。
(北海道 J・H)

被爆者運動強化募金のお願い

 皆さまの日頃からのご支援に感謝いたします。
 6年越しで取りくんできた原爆症認定集団訴訟は19連勝し、今年8月6日には、被団協と総理大臣・自民党総裁との間で訴訟終結に関する「確認書」を交わしました。しかしまだ解決すべき課題が残されています。
 一方、核兵器廃絶にむけて、今世界で大きな潮流が生まれている今、戦争と核兵器の被害の真実を知らせる被爆者の役割が重要になっていることを実感しています。
 今月号付録の「お願い」もご覧いただき、被爆者運動を支える募金へのご協力をいただけますよう、心よりお願い申し上げます。