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非核水夫の海上通信【2007年〜2004年】

2004年6月から2007年12月の掲載です☆☆

2007年12月 被団協新聞12月号

 今年の国連総会第一委員会では、核兵器の「警戒態勢の解除」を求める新しい決議が提案され注目を集めた。
  米ロを中心に配備されている一万発以上の核兵器のうち、いまだに数千発は三〜四分のうちに発射できる態勢にある。冷戦さながらの態勢であり、偶発的核使用の危険をはらむ。キッシンジャー元米国務長官らが今年一月に米紙に発表した核兵器廃絶への提言のなかでも、「警戒態勢の解除」は核保有国が第一に行うべき努力として挙げられていた。
  新決議を準備したのは、ニュージーランド、チリ、ナイジェリア、スウェーデン、スイス。
  投票結果は、米、英、仏が反対。中国は棄権。ロシアは投票に参加せず。印、パは賛成した。
  北大西洋条約機構(NATO)諸国の投票は割れた。ドイツ、イタリア、スペイン、ノルウェー、ポルトガル、アイスランドの六カ国は賛成を投じた。カナダなど、残りのNATO諸国は棄権した。日本は賛成した。

2007年3月 被団協新聞3月号

 1月、ケニアのナイロビで「世界社会フォーラム」が開かれた。グローバル化に伴う貧困拡大や環境破壊に反対し6年前から南米などで開かれてきた世界的祭典で、アフリカでの開催は初めて。6万人が集まった。
  ピースボートはここで「グローバル9条キャンペーン」を展開した。武力によらずに平和を築くとした日本国憲法9条の世界的価値をアピールするためだ。
  分科会では韓国や豪州の参加者が「9条はアジア太平洋の平和の礎だ」と述べ、ドイツの欧州議員は「日本の9条はEU憲法にも参考になる」と語った。
  強烈だったのは、集まったケニア、ウガンダ、タンザニアの青年らの声だ。「武器が蔓延し紛争に苦しむ我らアフリカにこそ、軍隊や武器を禁ずる9条が必要だ」と彼らは語った。紛争後のコンゴ新憲法に平和条項を盛り込みたいとの声も出た。
  「世界中に9条的な平和憲法を作ろう」との署名には数日で1千筆近くが集まった。

2007年2月 被団協新聞2月号

 北朝鮮の核実験以後、いわゆる核武装論議が論壇を賑わしている。被爆国・日本は核廃絶の先頭に立つべきであり、核保有は許されない。また、核不拡散条約(NPT)への加盟が今の日本の国際的地位を保証しているのであり、そこからの脱退は非現実的だ。
  しかし、「今まで通り米国の核に守ってもらえば安全だ」という論調には、違和感を覚える。
  米国の強大な核戦力にもかかわらず北朝鮮は核武装を選んだ。このこと自体、核抑止論の誤りを示している。
  日本自身の核保有論であれ、米国の核戦力待望論であれ、核の脅威を核でもって封じ込めよという主張であることに変わりない。実際、核武装論者の多くは、まずは非核三原則のうち「持ち込ませない」を取り除き、米国の核配備を検討せよと主張している。
  核は核では防げなかった。日本はこの教訓に立ち、核戦力ではなく外交力において、米国からの自立を探るべきときである。

2007年1月 被団協新聞1月号

 12月、米国はインドに原発分野での輸出を認める法案を可決した。インドは核不拡散条約(NPT)に加盟しないまま核保有国になった国だ。インドへの協力は、NPTの枠外で核保有国になっても結局は国際協力を受けられるという前例となる。北朝鮮やイランに誤ったメッセージを送り、NPT体制の根幹を揺るがすものだ。
  インドは国内のウランを使って核兵器の原料を生産し続けている。少なくともインドが核兵器の原料の生産停止を宣言しない限り、インドに核燃料を輸出することは核兵器増産の手助けになってしまう。
  日本は、核軍縮の立場と、米印との政治的関係との狭間で対応に悩んでいる。先の日印首脳会談では「日本の立場はまだ検討中」と問題を先送りにした。
  米印協力が発動するには、原子力供給国グループ(NSG)による承認が必要だ。NSG会合は今春開かれる。日本はそのメンバー国であり、日本政府への要請が今必要だ。

2004年10月 被団協新聞10月号

非核三原則の法制化を

 今年4月、「大量破壊兵器の不拡散」を掲げた国連安保理決議1540が採択された。米国の提案によるこの決議は、「テロ防止」を念頭に、すべての国が、個人・グループによる核・化学・生物兵器の開発や取得を阻止する国内法を整備するよう求めている。
  一方で決議は、「すべての国による、あらゆる側面における拡散防止」を強調している。核保有国による軍拡にも歯止めが必要だ、とする国際世論が反映された形だ。
各国は、決議に従い、不拡散の取り組みについての報告書を10月中に提出しなくてはならない。では、日本としの課題は何か。「非核3原則の法制化」こそ、その答えだろう。
  ウラン濃縮とプルトニウム再処理を行い、核兵器に利用可能な物質を大量にため込んでいる日本。核兵器開発からの「潔白」を主張するなら、法的担保が必要だ。
  核兵器の運搬手段となりうるミサイル開発の分野で、日米協力は緊密化しつつある。産業界は、兵器開発のため、武器輸出3原則の見直しを公然と掲げ始めた。これは、核保有国による軍拡に加担する行為であり、規制が必要だ。
  また「持ち込ませない」ために、寄港する艦船に非核証明を義務づければ、核の域内通過を防止する重要な一歩となる。

2004年8月 被団協新聞8月号

核の移転・移動を禁じる国際法を

 9・11以降、空港の身体検査が非常に厳しくなった。船舶も然りだ。とりわけアメリカの港湾基準は著しく厳しい。
  「拡散に対する安全保障構想(PSI)」という有志国の枠組みが、昨年5月のブッシュ大統領の提唱により生まれた。大量破壊兵器やミサイルの拡散を阻止するとして、関連物質の運搬が疑われる船舶等に対し、臨検を行う構想だ。各国の軍および当局が、船舶臨検のための共同訓練を重ねている。日本も参加している。
  しかし、現在の国際法には、核兵器や関連物質の海上通過を普遍的に禁止した規定はない。冷戦時代以来、「航海の自由」の原則の下で、アメリカやロシアの核兵器搭載艦船は世界中の海を我が物顔に通航し続けている。また、原子力発電サイクルのなかで行われる放射性物質の海上輸送に対しては、太平洋の島国などが繰り返し懸念や批判を表明してきた。輸送国である日本、イギリス、フランスは、懸念に留意するとしながら、やはり「航海の自由」を主張している。
  途上国の船舶への取り締まりは強化されても、「持てる国」の核は放置されたままだ。核の移転・移動を普遍的に禁じる方向で国際法を強化しない限り、その先にあるのは核廃絶ではなく、単なる核独占だ。

2004年7月 被団協新聞7月号

米は反対、日本は棄権

 1997年、「核兵器廃絶条約」のモデル案が、コスタリカ政府によって国連に提出された。モデル条約は、核兵器の開発、実験、貯蔵、移転、使用、威嚇を全面的に禁止するというもの。核廃絶交渉のたたき台として、反核法律家NGOが起草したのだ。
  それによれば、既存の核兵器(世界に現在約3万発)は、15年以上かけて段階的に廃棄する。まずは、核兵器の即時発射態勢を解除する。そして、核弾頭をミサイルから取り外し、核弾頭を解体し、余剰となった核分裂物質(プルトニウムなど)は国際管理の下に置く。核搭載可能なミサイルも解体する。
  むろん、隠れて核開発する違反者が出ないとも限らない。そこで、条約の執行機関が設置され、検証を行う。定期査察のほか、疑惑申し立てがあった場合は抜き打ち査察も行える。衛星写真などの情報も活用する。条約加盟国間で紛争が発生した場合の協議プロセスについても定め、国際司法裁判所(ICJ)への付託もできる。
  このような核廃絶条約への「交渉を開始すべき」という決議が、毎年秋の国連総会で採択されており、核保有国の一部も賛成票を投じている。しかし米国は強硬に反対。日本は、交渉することすら「非現実的」として、棄権を繰り返している。

2004年6月 被団協新聞6月号

米国は新型核開発予算計上

 2002年の世界の軍事費は7840億ドル(約86兆円)。ダントツ一位は米国で、3336億ドル(約37兆円)。一国で、世界全体の43%を占めている。
  第二位は日本だ。467億ドル(約5兆円)で、世界の6%。続いて英、仏、中国、独が、日本と同水準で並ぶ。ただし、各国の国民総生産を基礎にした換算法を用いると、中国、インド、ロシアが、日本よりも上位に浮上する。これらの国々では、経済全体における軍事の占める比重が高いからだ(以上、ストックホルム国際平和研究所)。
  北朝鮮やイランの核の脅威が叫ばれているが、疑惑に対する査察に割り当てられた国際原子力機関(IAEA)の年間予算は1億ドルだけ(2004年)。米の2005年度予算には、核兵器関連費が68億ドル要求されており、その中には、新型核兵器の開発予算も含まれている。
  途上国を中心に年間600万人以上の命を奪っているエイズ、結核、マラリア。この三大感染症に対処する「世界基金」(2002年に設置)に世界各国政府がこれまでに支払った金額の総計は23億ドル。日本は、一年間にこの20倍もの軍事費を使っている。