声明

2003年1月31日

世界のヒバクシャの共同声明

 私たちは、日本の広島・長崎で原爆被害を受けた生き残りの被爆者と、世界各地で行なわれた核兵器の製造、実験の過程で放射線被曝をうけてつくり出された各地のヒバクシャです。
 
  58年前の1945年8月6日広島、9日長崎にアメリカが投下した1発ずつの原子爆弾は、広島で14万人、長崎で7万人を殺し、生き残った40万人を超す人びとにも、生涯にわたる苦悩を与え続けています。各種のガン、さまざまな血液病、甲状腺異常などの健康障害、体内に残るガラス、木片などの異物による苦痛や心の障害、これに伴う生活の困窮が、半世紀を越えて続いています。
 
  核兵器の製造、実験によって放射線被害を受けた世界各地のヒバクシャは、放射線被曝で健康を奪われ、生命を奪われました。自分の身体だけでなく、二世、三世にまで被害が及んでいます。また、土壌、動植物などの生活環境をめちゃめちゃにされ、移住する先もないまま、放射線で汚染されたままの生活を余儀なくされています。
 
  私たちは、核兵器が使われたら、取り返しのつかない事態になることを、身体で知っています。それだからこそ私たちは、世界に向かって「核兵器を廃絶せよ」「世界のどこにもヒバクシャをつくるな」と、叫び続けてきました。
 
  こうした叫びが一つの力になって、この58年間、核兵器が実戦で使われることなく、世界のどこにも新しい被爆者をつくり出すこともありませんでした。いまこそ、世界最高の司法機関(国際司法裁判所)の勧告を厳しく受けとめることです。
 
  しかしいま、私たちは大変な危惧を持っています。アメリカ、イギリスなどが、イラクへの武力行使を強行しようとしていること、そのなかで、核兵器の使用があり得ることを公言しているからです。すでに10万人の兵士がイラク周辺に配備され、臨戦態勢に入っています。今の核兵器は、広島・長崎型原爆の数十倍、数百倍の破壊力を持っています。それも、1発ですむのではなく、何十発、何百発も使われるかもしれません。こんな事態になったら、想像を絶する殺戮と地球環境への放射線汚染の広がりが起きるでしょう。
 
  インド・パキスタン間の地域紛争でも核兵器使用が検討されました。
  北朝鮮でも、核関連施設の稼働準備がすすめられ、NPT条約からの脱退が宣言されました。
  このような事態を、私たちは黙ってみていることができません。
  世界初の核戦争被害者として、また放射線被害を受けたヒバクシャとして、世界の核保有国に、平和を愛する全世界の政府首脳に、共同して訴えます。 
  「核兵器を世界のどこにも絶対に使うな」「新しいヒバクシャをつくるな」「核兵器は廃絶せよ」と。
 
  平和を愛する世界中の皆さん。核戦争を阻止するために、今こそ声を上げましょう。行動を起こしましょう。

日本原水爆被害者団体協議会代表委員  坪井 直   山口仙二   藤平 典
米国原爆被爆者協会会長 友沢光男
韓国原爆被害者協会会長 李 広善
在ブラジル原爆被爆者協会会長 森田 隆
「核安全運動」会長 ナタリア・ミロノワ(ロシア)
核被害者支援基金「アイグル」議長 ミーリャ・カビロワ(ロシア)
弁護士団体「権利の意識」副会長 アンドレイ・タレブリン(ロシア)
環境保護団体「テチャ」 ゴスマン・カビロフ(ロシア)
放射線被害者支援教育の会会長 デニス・ネルソン(米国・ネバダ核実験場風下地域元住民)
「ネバダ砂漠の体験」理事 クローディア・ピーターソン(米国・ネバダ核実験場風下地域元住民)

「被団協」新聞2月号  核兵器廃絶