抗議・要請文

日本被団協は米国の臨界前核実験実施に対し、ブッシュ大統領宛に大使館を通じて抗議文書を送りました。

2001年12月13日

アメリカ合衆国大統領
ジョージ・W・ブッシュ閣下

日本原水爆被害者団体協議会
代表委員 坪井 直
代表委員 山口仙二
代表委員 藤平 典
事務局長 田中煕巳

臨界前核兵器実験に抗議する

 貴国は、通算15回目の臨界前核実験を、ネバダの核兵器実験場で近く実施することを明らかにした。
9月11日の貴国に対する同時多発テロ攻撃は、罪なき多くの人々の命を奪った。いかなる理由があろうと国際的テロ行為は許してはならない。テロ勢力の絶滅と新たなテロの防止のために、世界の多くの国が力を結集してきた。しかし、貴下はテロ行為をアメリカに対しての新たな戦争と見做し、核兵器の使用も選択肢にいれながら、武力によりアフガニスタンの主権を侵した。核兵器こそ使用していないが、新たな残忍な殺傷兵器が使用されていると報じられている。多くの女性と子供たちがこの攻撃の犠牲になっている。武力によらず法の下での解決を望む世界の人々の批判にただちにこたえるべきである。
  56年前に貴国が投下した原子爆弾により、人類史上かつてない惨害をこうむった広島、長崎の被爆者の惨状は、9.11テロによる惨状をはるかに越えるものであった。しかし、私たち被爆者は、憎しみをすて、苦しみをのりこえ、人類の未来のために「ふたたび被爆者をつくるな」と叫び続けてきた。核兵器は人類と共存できない狂気の兵器であることを訴え、核保有国をはじめ、すべての国々に、核兵器廃絶のための国際条約締結をめざして直ちに行動することを求めてきた。
  貴国の臨界前核実験に対しては、一貫して、抗議し、その停止を要請してきた。この要請を無視して、広島、長崎の惨状を無視し、謝罪することもなく、9.11以後2回目の臨界前核実験を強行しようとしていることに満身の怒りを込めて抗議する。
  核兵器による威嚇とその使用は国際法と人道法に違反することは、国際司法裁判所の勧告的意見からも明らかである。世界の政治は核兵器廃絶へ向けて大きく動き出している。2000年5月NPT再検討会議で、貴国をはじめ核保有国すべてが「核兵器廃絶の達成にたいしの明確な約束」に合意している。新たな核兵器の開発を疑わせる、核実験を直ちに中止し、明確な約束の実現に努めるべきである。

 私たちは全人類の名において貴下に要求する。

1. 臨界前核兵器実験をこれ以上繰り返すな
2. CTBTを批准し、新たな核兵器の開発計画を放棄せよ
3. 国連総会の意志とNPT再検討会議の最終文書の合意にしたがって、核兵器廃絶のための国際条約をすみやかに締結せよ

「被団協」新聞1月号  核兵器廃絶