臨界前核兵器実験に抗議する

2000年3月24日

アメリカ合衆国大統領
ウイリアム・J・クリントン閣下

日本原水爆被害者団体協議会
代表委員 山口 仙二
事務局長 藤平 典

 貴国は、3月23日未明(日本時間)、1997年7月以来10回目の臨界前核兵器実験を行なった。
  われわれは貴国が2005年までの7年間、毎年4回の割で臨界前核実験を行なう予定でいることに、繰り返し抗議し、核兵器にかかわるすべての開発、実験を取りやめるよう要求してきた。それは、われわれが体験した地獄の苦しみが、地球上のどこにでもくり返されてはならないと願うからである。貴国が投下した原爆によって家族を殺され、自らも後障害に苦しんでいるわれわれ被爆者は、「この地球上に核兵器の犠牲者を2度とつくり出してはならない」と心から願っている。
  この悲願を踏みにじる貴国の核兵器固執政策に、満身の怒りを込めて抗議する。
  今回の実験は、NPT(核不拡散条約)再検討会議が開かれる直前の実験である。同条約第6条が、核保有国の核軍縮への努力を求めているにもかかわらず、それをまったく順守しようとしない核大国への強い批判が世界各国から寄せられているさなかであることを考えれば、非核保有国への挑戦ともいえる暴挙である。 
  とくに今回の実験は、実験に使用した核物質の名前や量も非公開にするなど、従来よりも秘密主義の傾向を強めていると報道されている。
  核戦略体制を維持し、秘密裡に核兵器の性能に磨きをかけ、CTBT(包括的核実験禁止条約)の批准さえ拒否する貴国の核政策を、われわれ被爆者は絶対に許すことができない。

 私たちは全人類の名において貴閣下に要求する。
1 臨界前核兵器実験の計画を中止せよ。
2  NPT条約第6条にしたがって、核軍縮の努力を開始せよ。
3  CTBTを批准し、核兵器実験のすべての計画を放棄せよ。
4  国連総会の決議にしたがって、核兵器廃絶を誓約せよ。
5  期限を切って核兵器を廃絶するための核兵器廃絶国際条約を締結せよ。

「被団協」新聞4月号   核兵器廃絶