日本被団協第43回定期総会において特別決議が行なわれました。
広島・長崎で初の核戦争地獄を体験した私たちは、半世紀にわたり、自らの体験にもとづいて核兵器の恐ろしさを語りながら、「ふたたび被爆者をつくるな」「核戦争起こすな、核兵器なくせ」と世界にむかって訴えつづけてきました。
アメリカ政府に対しては、原爆投下を人類史上最大の犯罪としてきびしく糾弾し、謝罪と贖罪をもとめ、その証として自国の核兵器の率先廃棄と核兵器廃絶へのイニシアチブを要求してきました。また、米・ロ・英・仏・中の核保有五ヵ国には、核兵器の開発、実験、保有、研究そのものが人類に対する重大な犯罪であることをみとめ、1日も早く核兵器廃絶を実現するよう、繰り返し要求してきました。さらに、日本政府に対しては、被爆の実相を広く世界に知らせるとともに、アメリカの原爆投下を国際法違反の重大な犯罪として告発し、米・ロ・英・仏・中の核保有5ヵ国に核兵器の放棄を迫り、核兵器廃絶の世界世論の先頭に立つことを求めるよう絶えず訴えてきました。
ここ数年、私たちの訴えはようやく世界の人々の心をとらえ、核兵器廃絶の世論は大きなうねりを見せ、「核兵器のない21世紀を」の悲願が着々と現実のものになってゆくように見えていました。
そこへ、今年5月11日と13日にインドが、これまでの核廃絶の立場と主張を裏切って核実験を強行し、5月28日と30日、パキスタンも一連の核実験をおこないました。核兵器廃絶の日を遠ざける両国のこの暴挙を私たちは、はげしい憤りをこめて糾弾するものです。
しかし、このような重大事態を招くにいたった根本の原因はどこにあり、誰の責任なのでしょうか。
第一に、原爆を最初に開発し使用したアメリカです。アメリカこそ核兵器開発競争の火付け人としての責めを負わねばなりません。第二に、アメリカとともに核兵器開発を競い合い、自国の核兵器だけを合法的なものとして、他国には開発を許さないという、傲慢な態度をとりつづけたロシア、イギリス、フランス、中国の責任であります。私たちはこれら核保有5ヵ国に対し、ただちに自国の核兵器を廃棄し、核兵器廃絶のために実効ある行動を起こすことを要求します。
つぎに、これら5ヵ国に匹敵する重大な責任をもつのは、日本政府であります。日本政府は国際舞台において「唯一の被爆国」を自称しながら今日まで一体何をしたのでしょうか。核兵器の恐ろしさを世界に知らせるめにどれほどの努力をしてきたのでしょうか。国連においては核兵器廃絶、核軍縮の動きに絶えず水をさし、核兵器廃絶を無限の彼方に先送りし、棚上げする「究極的廃絶」を語るばかりで、アメリカの「核抑止力」論を支持し、「核の傘」を受け入れ、核保有国の核軍備競争を野放しにしてきたのではないでしょうか。
1946年1月の国連決議第1号には、核兵器の廃絶が明確に宣言されていたのです。もしも日本政府がこの半世紀、私たち被爆者とともにアメリカの原爆投下を真剣に告発し、「広島・長崎」の真実を世界に知らせることに力をつくしてきていれば、1949年以後の核軍拡競争を未然に防ぐことができ、今日のような重大事態を招くことはなかったはずです。日本政府は、核兵器廃絶のためにあらゆろ努力を払う責務を戦後一貫して負っていたし、いまも負っています。
私たちは、日本政府が今日にいたるまでこの責務を怠っていることを渾身の怒りをこめて糾弾するものです。
核兵器は他のいかなる兵器にもまして非人道、残虐な、国際法違反の兵器であり、その使用、使用の威嚇はもちろん、開発、実験、保有、研究のすべてが人類に対する極悪の犯罪です。
私たちは核保有国およびインド、パキスタンその他核保有をめざす国々に次のことをつよく要求します。
1、臨界前核実験をふくむすべての核実験をただちにやめること。核兵器開発と保持のための研究をただちにやめること。
2、期限を切って核兵器廃絶国際条約を締結するためにただちに行動を開始すること。
3、率先して自国の核兵器を廃棄し、核兵器廃絶の世論のイニシアチブをとること。
私たちは日本政府に次のことをつよく要求します。
1、ただちにアメリカの「核の傘」から離脱し、日本の非核化を宣言すること。 非核三原則を法制化すること。1998年6月9日 日本原水爆被害者団体協議会第43回定期総会