2001年 Photo特集 No.2







新緑から深緑へ
              
−序にかえて−      
                
yk


雨上がりの空



木々は数日来の雨にとことん洗い尽くされ

今日はまた無尽蔵な風になぶられるように翻弄され続けている



しかし木々は どこかうれしそうだ

そうして益々意気盛んに


空に向かって誇らしげに自己を顕示しているように見える



ふと 「基本」ということばを思い出す

基本的であるというのは実はこういうことなのだと

しみじみ思った





         








 深 緑
           nonya


緑色の絵の具を
画用紙が反り返るほど
重ね塗りしても
写し取ることができなかった
森の深緑

黒色の絵の具を
パレットの余白がなくなるほど
混ぜ合わせても
近づくことができなかった
森の深緑

枝と枝がせめぎ合いながら
葉と葉がひしめき合いながら
ただ光を求めて
内側から膨らもうとする
森の濃密なエナジーを
たかが紙切れ一枚に
閉じ込めることなどできなかった

しかたなしに
画用紙とパレットを放り出して
真一文字にのびをする

青空の切れ端と一緒に
吸い込んだ深緑の粒子は
体じゅうを駆け巡った後
心の尾根にゆったりと
降り積もっていった









作者のHP  http://www.interq.or.jp/rock/nonya/










深 緑
            
加藤



 深い湖の辺。

年老いたミミズクの住む穴の下

リスに忘れられたドングリ。

朽ちた大木に芽吹いた、

小さな小さな緑。

 

柔らかい木漏れ日を、

太陽だと思っている草。

木漏れ日が揺れるのは、

森の精の遊びだと教えられた子供。

 

落ち葉を吹き上げる風。

落ち葉をカサコソと鳴らすウサギ。

落ち葉を食べる幼虫。

誰のために葉を落としたのでもない、

中くらいの木。

 

途切れ途切れのメロディー。

しっとりとした澤の側に置き忘れられて、

ゼンマイの錆び付いたオルゴール。










作者のHP http://www.f4.dion.ne.jp/~hermit/







 風のこえ
            夜行星




 山のほうから
 だれかの声が
 聞こえた気がして
振り返ったとたん
  きみがほおずりして
       すりぬけていった

山に向かって歩きなおしたら
やっとわかったよ
背中をたたいていた
きみの声
 
  どこからきたの・・
   ふゅぅーぅぅ・・・
      ぼくの手冷たいだろ・・・
     ひぃーゅうぅぅ・・・
どこにいくの・・・
 ほほーいぃゅゅう・・・
      もうすぐ雨になるぞ・・・
       はあぁぁぁ・・・

きみに
背を向けてばかりいたから
押されるがままに
歩いていたから
いままで
気付くことができなかった

ずっと話しかけて
くれていたんだね

ときに振り返ること
みえないけれども
何か
大切な忘れもの






作者のHP http://homepage1.nifty.com/yakousei/index.html










樹海
            
かのっぴ


ここにはいのちがいっぱいある
どこまでもつづく木々
時々顔をみせる小動物たち

どこから来たんだろう
どこへ行くんだろう

ここにはいのちがいっぱいある
僕のちっぽけな命なんて
どうでもいいことのように

どこからきたんだろう
どこへ行くんだろう

命 いのち inochi

枝が絡まるように
虫が群れをなすように
苔が土を覆い尽くすように
複雑に絡まりあう

太陽を眩しそうに避け
月の光に微笑む
いのちの群れ

個性を失い
互いに絡まり合いながら
深い呼吸をする

今までいくつの命が
ここにこうして来たんだろう
今僕がここに来たように

消えて行く いくつもの
悲しみ 怒り 恨み 復讐心
心残り 思い出 あらゆる記憶

そして僕は僕でなくなる
命は いのち になる

きっといのちに終わりはない
ここに来て また戻って行く
ここから旅立ち そして戻ってくる























 

         
夜行星   


そのかたちのままにあること
風と語らい
季節を飾り
地を肥やしながら

そのかたちのままにあること
虫を育て
鳥を育て
人と街を育てる

誰も気付かず
気付かせないということが
ほんとうの
やすらぎであるということ

いつか
きみも味わえるのだろうか
その節くれだった指先に


支えるもののない
澄み切った
青空の下にいるとい
うこと












作者のHhttp://homepage1.nifty.com/yakousei/index.html










 深緑へ
           加藤


山が盛り上がる
我先に光へ群がる
木漏れ日が小さくなると
目を凝らした僕等は
強く呼びかけられる
駆け出して群がるけれども
いつも何か足りない
膨れ上がる雲の
流れてきた空から
流れてゆく空
目を凝らした僕等は
タンポポの種みたいに
風に吹かれて行きたくなる
呼び声が聞こえる
深い緑の奥から
雲で作られた城の
古い宝物庫から











 作者のHP http://www.f4.dion.ne.jp/~hermit/

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