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ある真冬の情景
yk
山並みの稜線は 遠く幽かに
見渡す限り 幾重にも連なって
空に向かって繊細なシンフォニ−を響かせる
どういうわけか きょうは
浮いた雲さえ まったく動かず
山の一本杉も眠ったまま
時は午後
季節も真冬の行き止まりのこととて
風の時計もいつしか消えた
空は明鏡の湖面のように澄み切って
その青みの奥の奥
永遠への遊歩道が見えてくる
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冬の遊歩道
織部夕紀
いつもと違う帰り道
いつもと違う
水色の冬空
この道のむこうは
空と大地がつながっているようで
いつまでも
歩いていたくて
でも今は ひとり
冬空は低く
低く私の上にのしかかってくるようで
次の曲がり角で
いつもの道に戻ろう
冷たい夜に
さらわれないうちに
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作者のHP http://www.asahi-net.or.jp/~nk3y-tnb/
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誰かに逢えそうな道
星粒
ここは ひとつの
嫁いだ街の 道に過ぎない。
頑なな私の
歩いてきた
無数の道の
一本の道に 過ぎない
しかし
ひなびた街ではあっても
其処かしこに
陽だまりが生まれて
ずっと歩きつづければ
わたしのような
よそものが
誰かに逢えそうな予感を
抱いて
こちらとすれ違うかもしれない。
とうのむかしに
雲のように胸に浮かんでいた
明るい兆しなど忘れてしまったかのようだが
こうして
ほんの少し背中があたたまると
誰かに
逢えそうな道だと
想う
其れがこどもでも
其れがおとなでも
其れが野良犬でも
むこうからちいさな
点だったものが
こちらへ近づいてくる
ひなびた街の
ひなびた
陽だまりの道がある。
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作者のHP http://www.avis.ne.jp/~peanuts/watasinosi.htm
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お天気
ひろゆき
あんまり天気が良いので
太陽が僕と君と犬を引っ張って
公園に連れてきた
ああ こうしていると
本当に気持ち良いね
うちでテレビを見てるよりずっと
幸せだね
尻尾だって ほら
こんなに振れている
今度は植物園に行こうよ
お日様の分まで
お弁当を作ってさ
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散歩道
加藤
しっとりとした土を踏む音
耳もとに融けた雪の滴
見つけに来たもの
あちらから冷たい風
こちらへ千切れた雲
体の中から日の光
期待しなかったもの
感謝しているみたいな
さりげない挨拶
微笑み返しただけ
体の中から日の光
鈴の音のような冬の匂い
姿の見えない雀の声
探しにきたもの
歩いて来た道
ここから見える景色
少し先の屋根だけ見える東屋
振り返れば光の道
体の中から日の光
この先は光の萌える道
歩き慣れてしまった道
だけどいつもと違う道
再び出会う道
新しく出会う道
愛しい何かが
一秒先から包む道
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作者のHP http://www.f4.dion.ne.jp/~hermit/
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枝・ヒヨドリと空
七呼
枝がキイと鳴きます
鳴いているのはヒヨドリですが
あまりにも、枝と一つになるようにいるので
それはもう枝がさえずっているかのように聞こえてきます
冬の日
その鳴き声を羨ましがる一人の空は
その声を、遠く広く響かせて
自分の泣き声をかき消していました
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雪 色
七呼
解かされる
それは雪の意思ではなく
解けたいのではなく
解かされてしまう
それは報い
色彩 それは様々であるからこそ
景色は調和されていて
雪色
その白はその調和を壊した
そして報いとして
解かされてゆく
でもそれは無実の罪
全ての目を奪うほどの白
それに嫉妬した景色達の仕業
春に出逢うことのない雪
その留まりたかった思いだけが
僅か その景色の中
小さな光る雫
その中にだけ残る
解かされた雪
その色 雫色
太陽は償う
その事実 見抜けず
解かしてしまったことを
春先 照らされた雫
その中に僅か 雪色
その雪色
僅かに春を映し
出逢うことはなかった
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雪の夜
夜行星
しんしんと
ふける夜の中
ただようつぶやきを拾いながら
舞い降りる白い雪のピース
ほんの些細な風に
大きく揺られながらも
ポッカリ空いた
パズルの枠を埋める
道路も
家の屋根も
庭の木々も
昼間つぶやいた記憶の分だけ
刻んだ枠を白く埋められるのだ
こんなふうに
全てが肩書きを失う
白と黒だけの世界で
こころを満たせたら
色を覚えるたび
曖昧になってきたことばもいらず
互いの好みの配色に
合わせようともがくこともなく
ぼくらはもっとすなおになれる
ぼくらはずっとやさしくなれる
降り続けるつぶやきの結晶
きみのほんとうの声は
いったいどこに積もったのだろう
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作者のHP http://homepage1.nifty.com/yakousei/index.html
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雪一夜
榎本 初
ほのかな晶〈ひかり〉を落としていく
やわらかく あたたかく
白は
殷賑の街を抱きしめて
顔上げて 頬笑んで
君は
小さな靴跡を置いて行き
ひた歩き 細雪
僕は
千の星霜を見つめながら
心の宝 探しながら
天は
ほのかな晶を落としていく
たしかな晶を落としていく
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作者のHP http://www1.gateway.ne.jp/~well/
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AM BEAT
かのっぴ
触れると痛い空気に囲まれ
明けきらない闇を照らす
街灯と車のヘッドライトと
向こう側には沈みかけた月
霧に包まれたサイクリングロードで
かつてそこを駆け抜けた軽便鉄道の
内燃機関のイメージを借りて
昨日までの命を燃料にして
軌道に刻む靴音のリズム
吐き出す白い蒸気
熱い液体を送り出すポンプと
徐々に熱気を帯びる司令塔
心のソロと体のビートが
今日を生きるためのマーチを奏でる
毎朝繰り返される即興演奏の熱いライブ
前進するにつれ増える群集の
渾然とした音と熱気のなかで
静かに目を閉じて耳を澄ませば
熱い演奏はまだ響いている
歌詞も曲もない
ポジティブなメッセージがこめられた
自分のなかのビート
ふと気がつくと
朝の空気はもう痛くはない
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飛行機雲
nonya
ぼんやり聞こえてくる爆音に
何気なく顔を上げたら
商店街の細長い空を
斜めに過ぎる飛行機雲
吹きつのる季節風に
端から少しずつ擦れていく
頼りなげな白線は
何処かで見かけたことがある
欠けたチョークで描いた
不恰好な相合傘
自分の名前の隣には
あこがれの君の名前
人影の絶えた放課後の
教室の匂いに息が詰まりそうで
思わず黒板消しを掴んで
思い切り乱暴にかき消した
ときめきと後ろめたさは
消し損ねたチョークの跡となって
心の一番深い所へゆっくりと
沈んでいったと思っていた
遠い目をして眺める
青く凍てついた空に
すっかり忘れていたはずの
君の名前が消え残る
妙に照れくさい想い出に
無理に歪めた唇を
薄荷の匂いのする風が
そそくさと掠めていった
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作者のHP http://www.interq.or.jp/rock/nonya
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WHITE
夜行星
しろいみち
このみちは
いつからここにあるんだろう
誰にも見えない
名前さえわからない
ただ
誰かがとおったような気配だけ
影のようにわだかまって
このみちは
どこに続いているんだろう
目的のない旅人が
いつのまにかまよいこみそうな
そしてそのまま
とどまっていたいような
やわらかな欲望
きみの目が
みていたゆるやかな記憶
ぼくの目が
忘れようとしていた遠い坂道
そのどれもが
ふみだした足元から
じんわりと
雪解けのように
にじみ出てきそうだけど
今は
もうやめておこう
季節の風が
ゆっくりと廻ってきて
とかしだす
春の道しるべが
行く先を決めるまで
作者のH作者のHP http://homepage1.nifty.com/yakousei/index.html
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冬
ひろゆき
冷たい風が
痛みを運ぶ
まるで
怒りのように
我慢するしかないのだ
と僕は自分に言い聞かせる
戦ってはいけない
もがいてはいけない
悲しい顔をして
じっと耐え続けるのだ
冬とは
そんな季節なのだ
肩を丸め
首を引っ込め
じっと足元だけを見つめて
歩いていこう
どこまでだって
歩いていこう
この痛みが
なくなる日まで
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作者のHP http://www26.tok2.com/home/yashiropoem/
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