2002年Photo&Poem特集2月号




 二月の光
                   yk



二月の空は

天空の窓が開いたかのように

あちらこちらに

真新しいまぶしさが あふれ

消え残った雪が

白地図のような希望を見せつける



雑木林は待っている

ひそかに囁きを交わしながら

希望に満ちて 待っている



巷間から

始動の音信が聞こえてくる



春はまだ光の中にかくれているが

もう そろそろ

逡巡する谷間の道を抜け出す時が来ているのだ



2002年 二月

見はるかす空のかなたに

まばゆき天馬が駈けて行くさまを見る


















 冬越し
             
くた



この頃 冬とはいっても

僕の国や

何も知らない人達の国では

ギリシャ世界のアネクメーネのように

どんなに寒くても

明日への蓄えがなくても

火の点し方さえ知らなくても

飢えることはなく

凍えることもない

そして夜の静寂の力に

体を強張らせることさえもない

昨夜  

玄関の引き戸を滑らすと

どこからか冬越しバッタが飛んで来て

奥の方からうすく漏れる光に

恍惚の目を滲ませていた

60年ぶりの大雪の後の雨に

温もりを感じて出てきたのだろう

今 僕らが

命を削って求め続けている物も

あのわずかな温もりと光ほどに

真実に近いものであれと願う













作者のHP http://www.hamq.jp/i.cfm?i=kuta










 
ゆきどけ
             
夜行星



重い沈黙が

少しずつ融けて

新しい日差しに

君は顔を向けた

まぶしさと

多くの楽しげな風の賑わいに

縮めていた葉をすっかり伸ばして



やわらかそうだった

ぼくの白い想いの結晶が

積もり行く季節の色褪せを待って

いつしかきみを

凍える檻に閉ざしてしまっていたね

 
きらめく光は

ひとつひとつの命の目覚め

きみが自然に感じた

喜びの匂いがする方へ

くすぶっていたつぼみをもたげればいい

 
土に消えていくぼくは

気がつかないあいだに

君の中にとけていく

やがて

きみの思い出の葉脈をとおり

どこかの空に

昇華されるまで









作者のHP http://homepage1.nifty.com/yakousei/index.html








 
焦がれ色
              
加藤




あれは始まりの色

あれは最果ての色

あれは新しく生まれ出る息

あれは目を閉じる瞬間の

朧な恐怖の慰み

人は震えている

天を突くネオンの色

パーティータイム

しこたま酒を食らったり

肌に鼻面を埋めたりして

この世ならざるものを

あてがう場所を探している

軽い目眩の度

あちらの夢からこちらの幻

すれ違い続け幾年月

再びこの場所で

自分はどこのだれか

歴史のどの辺りかと思う

そうして救われもするが

そうして足をすくわれもする

ブラインドの隙間から

彼方の空に思う

あれは始まりの色

最果ての色











作者のHP
  http://www.f4.dion.ne.jp/~hermit/













 
return
                  nonya




心という

宇宙のひとしずくを握り締めて

僕達は

この星に生まれ落ちたのに



心から溢れ出す

透明なイマジネーションは

色とりどりに濁って

もはやこの星を壊そうとしている



山を崩し川を堰き止め

木や草や人すらなぎ倒し

僕達はいったい

何を作ろうとしているのだろう

この青緑色の星の上に



心と心を擦りつけ合って

冷たい石で壁を築いて

僕達はいつのまにか

当たり前のように君臨してしまった

この青緑色の星の上に



そろそろ立ち止まろう

そして振り返ろう

この先にはおそらく

何もないから



勇気を持って引き返そう

足早に駆け抜けてきた道を

丁寧に巻き取りながら

宇宙のひとしずくが滴り落ちた

あたたかな闇の入口へ



自分を信じて引き返そう

真っ直ぐに生きることを忘れ

肥え太ってしまった心を揺らしながら

イマジネーションの湧き出す

遥かな泉のほとりへ



いびつな進化の果てに

豊かな果実は実らないから

ゆっくりとゆっくりと

もと来た道を引き返そう



この星とあらゆる生命と自分の

瑞々しい明日のために











作者のHP http://www.interq.or.jp/rock/nonya






 後悔(いくつもの夕暮れに)
                      
くた





出ておいで



      キジムナー



            出ておいで



      キジムナー



出ておいで



      もうすぐ



          こどもにもどれんだ







だから






作者のHP http://www.hamq.jp/i.cfm?i=kuta






 


 
如月ゆらぎ
        
榎本 初



 り さらり ゆらり

 時は 

 同じ姿に

 とどまること

 なく



 陽光が



 地べた 三毛猫

 まなこ 細めて



 川縁 つぼみ

 愈愈 おもく



 如月ゆらぎ

 人は

 鳥の声を

 探して

 歩いて



 ・川縁〈かわべり〉
 ・愈愈〈いよいよ〉









作者のHP 






 


 陽          
         
 夜行星



その温もりに

手をかざすと

じんわり

生かされているぼくが

透けて見えてくる



この星の全てが

あなたからの始まりであることは

遠い約束事のように

誰も語らないけれど



「一日」という単位が



出会いの安堵に始まり



別れの寂しさに終わる

「ひとひ」であることを



あなたの微笑みに満ちた

ベランダで考える振りをして

その懐の匂いに

もう少し甘えていよう

西にある

あの大きな雲が

午後の冷たい風を運んで来るまで








作者のHP http://homepage1.nifty.com/yakousei/index.html






 

 ふきのとう
                   榎本 初  


訳もなく鬱ぎこみいや本当は訳があるのだが  ・鬱ぎこみ〈ふさぎこみ〉

そんなことは言いたくなくてこんな日はただ

クラリネットのやわらかなひびきが好きだ

木は死んでいないのであってあたたかくて

衝き抜いてくるのではなく沁みわたってくる

モオツアルトの五重奏ラヂオがそそいでいる

不覚にも悪魔の指に押えられた瞼が救われる

ときに芳るのがコオヒイではなく紅茶である   ・芳る〈かおる〉

のは大した理由などなくて実は紅茶に入れる

檸檬が沁みるだけで独つの円い闇の奥に独り

沈んでいく自分の姿すら見えない苦々しくて

枯れ葉を重ねていたのさえ疾うに忘れている

枯れ葉を探しに部屋を出た僕が着古した

ダッフルコオトの中で堪えられないのは

目を覆わずにいられないのは目を覚ますのは

鶯を誘い出す太陽の炎眩いというのではなく

ただ生きている青青としたひかりふきのとう









作者のHP 









 
空模様
                       なお




気象台が午後六時に発表した
週間天気予報をお伝えします

 −受話器を見つめて想いをこめる

向こう一週間は
前半移動性高気圧におおわれておおむね晴れ

 −よかった、よかったよ
  本当だよ、聞こえてるかい

その後気圧の谷の影響で天気は崩れるでしょう

 −もちろんそうだよ
  全然、気にしないよ

続いて毎日の天気予報です

 −君にあえるか10%
  走って走って30%
  二度も三度も呼んで叫んで
  今日こそ越えてしまいたいのに

この期間の気温平均値は・・・

 −つらくはないよ
  平気でもないよ
  それなりに思っているところ

またこの期間の降水量は平年並です 

 −くりかえす空の営み
  僕もまた空を仰ぐんだ
  薄雲の向こうの、嵐の向こうの
  日照りの向こうの、吹雪の向こうの
  夕焼けの向こうの・・・

















 2月
           ひろゆき


凍りついた葉っぱの隣で

微かに青い菫草

2月の景色はきっと

イソップが発明したんだ

と 白い雲を跳び渡りながら

セキレイが叫ぶよ

寒がりな帽子の上で










作者のHP http://www26.tok2.com/home/yashiropoem/









 春の日-早春
               
榎本 初



 刺々しい光の上に

 やわらかなひかりがふくらみ

 ねこやなぎのはなが

 川面に映る



 歩きませんか

 明日へ








作者のHP 









 早春、花色
                
七呼




一面の雪

途切れた場所



そこに生まれた儚い色は

ゆっくりと 白

その色を失ってゆく雪に

はなむけを、と



一面の雪

そこに儚く、花色



白の強さに打ちのめされて

それでも咲く

咲き急ぐのは



ただ

一緒に染まりたかったから



白色 花色

春色として

早春のひとときに・・・








作者のHP











 しあわせ
                    ハル




光が見えたよ

一筋の光が見えた

本当はずっとそこにあったはずの光が
今初めて 心まで届いてきて
優しく私の悲しみを包み込んでくれた

これで笑えるかな

心から笑えるかな

この光に幸せっていう 名前を付けてもいいですか?

光を見せてくれたあなたにも・・・・
一緒に見てくれたあなたにも。

「私の幸せ」という名前を付けたい



見せたかったんだ
この光を

君の心にまで届く この一筋の光を

君に見せたかったんだ

一緒に見たかったんだ

心まで届いて
君の悲しみまでも包み込んでくれるような

強くない 一筋の光で

君が笑えますように

幸せになれますように


















息吹
                      かのっぴ


寒いとき

励ましてくれたから

ここまで来れた

君のおかげ

コートを脱ぎ捨て

マフラーも取って

少し肌寒いけど

歩いて行ける

どこまでも











2002年Photo&Poem特集2月号

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