更新記録と日記

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2006/12/31

 さて2006年も残すところ1日、今年はどのような年だったでしょうか。私はなんとなく散漫な気もする1年でしたが金澤攝氏との共演や生まれて初めて(!)ロマン派だけの作品でリサイタルを行ったりとなかなか印象深いこともありました。ホロヴィッツのピアノに触れたのも大きいことでしょうか。来年はどんな年になるのでしょうか。

 今年は図らずも長年探していたスロボジャニクによるレーガー「バッハ変奏曲」が入手できたのが大きな収穫でした。あまり熱心にCD屋、中古レコード屋に廻っていなかったのですがそれでもペトロフのパガニーニアルバム2枚組みやヴェデルニコフのシェーンベルグ「ピアノ協奏曲」などを入手できました。来年はもう少し力を入れていきたいものです。

 下半期の読書、数はまぁまぁ読んだのですが何故か奇譚物が多くなりました。柴田宵曲の「妖異博物館」「続妖異博物館」、「唐宋伝奇集 上 下」、これらは澁澤龍彦「東西不思議物語」について書く際に続けて読んだものです。なかなか癖になり今はポツリポツリと「聊斎志異」を読んでますが分量が相当に多いので読み終わるのは大分先になりそうです。古典の怪異譚の特徴のひとつに因果関係のわからぬ物がある事があげられます。恨みを持って化けて出たとか妖怪に誑かされたとかという因果応報ではなく全くその因果もわからず怪異のみ記された類のものです。これはその訳の判らなさ故に妙にリアリティがあります。内田百閧ヘまさにその現代版と言えます。
 マンガでは須賀原洋行「新釈 うああ哲学事典 上」「新釈 うああ哲学事典 下」をなかなか面白く読みました。哲学をネタにしたギャグマンガですが単なるダジャレ以上の内容になっています。ただ絵が私の好みでないので少々読みづらかったのですが…。
 他に中条省平によるバタイユの新訳「目玉の話」や再読ですが石川淳「山桜」等が印象に残っています。石川淳は是非とも全集がほしい作家です。
 番外編としてアーノルド・ノーベル「フロッグ・アンド・トード・シリーズ」ルイス・サッカー「マーヴィン・レッドポスト・シリーズ」を紹介しておきましょう。これはSSS英語学習法、多読勉強による英語習得法の推薦図書のひとつです。絵本及び児童書(小学校低学年ぐらい)の本ですが侮れません。ノーベルの作品はしみじみとした味わいがあり、三木卓氏による翻訳もあり読まれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。サッカーは小学低学年の心理を多彩に描き出し、時にはいじめの問題にも真っ向から取り組んだ作品になっています。中でも「Alone in His Teacher's House」はシリーズ中の白眉ともいえる作品で感動しました。どちらも英語圏の子供向けに書かれた作品ですが限られた語数でこれだけの事を表現し得る作者の力量には正直驚かされました。
 このSSS英語学習法はなかなか興味深い英語習得法ですのでいずれ紹介してみたいと思います。

 映画は劇場で見た作品は0本でしたが主に衛星放送で見た作品は相当量になります。中には本当にど〜〜でもいい作品も多々あるのですが木下亮「男嫌い」、市川崑の若い頃の作品「プーサン」「満員電車」等、川島雄三の「グラマ島の誘惑」「青べか物語」「貸間あり」等が特に印象に残りました。「グラマ島の誘惑」は皇室、菊のタブーに触れた作品で結構アブナイギャグが出てくるのですが、森重久弥、フランキー堺、岸田今日子そして加藤武といった芸達者な俳優の応酬が楽しい一作。川島映画常連山茶花究も出てほしかった。
 後映画のできはお世辞にもいいとはいえないのですがトニー谷主演の「ああ家庭の事情」シリーズ4本を見れたのも望外の喜び。バカバカしいかぎりのトニーイングリッシュや「馬ッ鹿じゃなかろか」「さいざんす」などナンセンス極まりないギャグは一見の価値あり。これに対抗できるナンセンスは植木等主演「日本無責任時代」「大冒険」ぐらいか?余談ながらトニー谷の「歌」では「さいざんすマンボ」が有名ですが「チャンバラ・マンボ」は当時としては異例の編集を駆使したミュージカル仕立ての名曲。必聴。

 来年はどのようなレコード、楽譜、本、映画に出合えるでしょうか。

2006/12/24

 本日はホロヴィッツ愛用だったピアノを試弾に神戸松尾楽器へ行く。友人の調律師M君と連れ立って松尾楽器に行くと偶然グチンスキー氏と遭遇。東京で試弾したとの由であるがこちらでも触りに来たという事でした。ただ待ち時間の関係上グチンスキー氏は私たちと少しお茶を飲んで途中退上。後日来られるという事です。
 さて私たちの順番が廻って来た訳ですが、正直なところ私は「ホロヴィッツ用の最上級のものであるだろうが同じピアノに変わりがあるじゃなし」とさえ思うところがあったのですが触ってみると…。うーん違う。何かが違う。おそらく世界中を廻り調整も決して最上というものではないのだろうが明らかに違う。一緒に並べてあるスタインウェイのフルコンサートグランドと弾き比べてみると同じ会社のものかと思うほど違います。実に気持ちよく弾けます。中音域は確かにあまりいい状態ではないのですが低音域はまさにホロヴィッツトーンを髣髴とさせる強靭な響きが感じられます。弾いているうちに感じたのが勿論根本的なピアノの能力もいいのですがそれ以上にその反応の良さに驚かされました。「音が違う」と言うのは正確には「反応がいい」という事なのでしょう。ホロヴィッツの独特な奏法に最上級の調整がなされた状態のこのピアノが反応する事によってあの奇跡的な「ホロヴィッツトーン」が生まれたのでしょう。
 さて20分間の制限時間内に私が弾いた曲はラフマニノフ「ソナタ2番」最初の2小節と最後の6小節、モシュコフスキ「練習曲ヘ長調」、ホロヴィッツ「カルメン変奏曲」の最後の変奏、スーザ「星条旗」、リスト=ホロヴィッツ「ラコッチィ行進曲」の最後の3ページ、ホロヴィッツ編の「展覧会の絵」のキエフ、プロコフィエフの「ソナタ7番」終楽章など。いずれもホロヴィッツの愛奏曲のおいしいとこ取りでした。天国のホロヴィッツに怒られそうです(^^;
 しかしいわゆる「爆音」系だけでなく、ラフマニノフの「コレルリ変奏曲」の最後の変奏とコーダを弾いた時、その強靭な響きとコーダでの静か響きの差には吃驚しました。実にしみじみとした音になります。惜しむらくは中音域の状態ですが、それでもこのピアノの潜在的な能力を感じる事が出来ました。

 松尾楽器を出てからつい興奮して調律師M君相手に一弁舌ふるってしまいました。クリスマスイヴに最高のプレゼントになりました。

2006/12/22

 久しぶりにMy favourite pianistsを更新。アレクサンドル・スロボジャニクを追加。知名度は低いかもしれませんが素晴らしいピアニストです。

2006/12/20

 12月17日女優の岸田今日子さんが20日に青島幸男氏がお亡くなりになりました。
 岸田今日子さんは私が子供の頃から好きな女優で「ムーミン」はもとより映画、ドラマ、バラエティと幅広く活躍されていました。高校生の頃深夜に見た「卍」「砂の女」で決定的にファンになり、以後出演の映画やドラマはチェックしていました。市川崑監督作品にも多数出演していますが「黒い十人の女」はあまり好きではなく「破壊」などが印象に残っています。小津安二郎の「秋刀魚の味」でも飲み屋のママの役で、軍艦マーチをかけるとお客の加藤大介が行進をはじめるシーンが印象に残っています。
 青島幸男氏はやはり私が高校の頃学校をサボって「クレージーキャッツ」の映画特集をみにいったのを思い出します。晩年は都知事やなんかでやや評判を落としたような感じもありましたが、飄々とした人柄はなかなかかっこいいものでした。
 つい最近CSで放送された「男嫌い」で岸田今日子さん青島幸男氏と共に出演し軽妙洒脱な演技を堪能したところだったので大変ショックです。

 謹んでご冥福をお祈りします。

2006/12/19

 本日は金澤攝さんによるラヴィーナ連続演奏会の最終回。問題作「100の前奏曲」、ラヴィーナ最後の作品「12の練習曲」を含む演奏会でした。生涯にわたり明朗で健康的な作品を作り続けてきたラヴィーナが最後に到達したシンプルな音楽は第1回から聴いてきただけに感慨深いものがありました。中でも「100の前奏曲」はカデンツによる作品集と言っていいもので1曲は数秒、長くて30秒ほどという驚異的な作品でした。60番イ短調が特に美しく印象に残りました。最後の「12の練習曲」は作品1の「練習曲集」と同じ発想に基づきながら洗練された曲となっています。金沢市の方でも演奏録音の予定があるという事ですので楽しみです。

 書きそびれていたのですが11月23日にフランスの俳優フィリップ・ノワレが亡くなり、今日の朝日新聞に記事が出ていました。ノワレといえば「ニュー・シネマ・パラダイス」の印象が強いようですが私は「地下鉄のザジ」や「最後の晩餐」が印象に残っています。ヒッチコックの「トパーズ」にも出演しており実に幅広い俳優でした。謹んでご冥福をお祈りします。

2006/12/15

 本日(深夜の更新なので14日)のNHK−FM「ベストオブクラシック」でザルツブルグ音楽祭に於けるポリーニの演奏会が放送されました。内容は前半がモーツァルトの作品、後半がウェーベルン「変奏曲」とブーレーズ「第2ソナタ」。録音しようとDATテープを探すと60分テープしかないので、後半のみ録音しました。前半のモーツァルトも「幻想曲ハ短調K.475」「ピアノ・ソナタハ短調K457」「アダージョロ短調K.540」「ピアノ・ソナタニ長調K.576」というもので幻想曲やアダージョの緊張感に満ちた演奏を録音できなかったのは残念です。ポリーニの音は非常に現代的な怜悧さがありモーツァルトでもガラスの構造物のような感じがします。果たしてこれが方向性としていいのか悪いのかは別として現代のモーツァルト演奏のひとつの規範と言えるでしょう。
 ウェーベルンとブーレーズはポリーニの独壇場といえる演奏でその怜悧な音質が十全に生かされており聴き応えのある演奏でした。おそらく暗譜で演奏されたものと思いますがブーレーズをライヴであのレヴェルで演奏することは凄い事です。ブーレーズの「第2ソナタ」の録音は何種類か持っていますがライヴ盤はクライバーンコンクールのクリストファー・テイラーによる演奏しかなかったような。最近はCD−RによるCDも販売(違法?)しているので探せば他にライヴ盤があるのかもしれません。

 3月に予定しているリサイタルの曲目を探索中。本当はピアノデュオの演奏会のつもりで練習もしていたのですが共演者の方との調整がつかず急遽ソロに変更。かなり焦ってます…(^^;

2006/12/6

 読む本が山積みなのですが近所のBOOK OFFに行って何冊か購入。中でも中条省平によるバタイユの新訳「目玉の話」が読み応え十分でした。勿論これはかつての生田耕作訳「眼球譚」の新訳なのですが「マダム・エドワルダ」も一緒に入っておりお買い得です。バタイユの「眼球譚」をはじめて読んだのは中学三年の頃でしたがその頃のうぶな私はすっかりバタイユに参ってしまい何冊か夢中で読んだのを思い出します。実際バタイユは非常にヨーロッパ的な思想家で三島由紀夫のようにバタイユをそのまま日本にもって来る事がそんなに簡単なものではないのですが、その独特な暗い異常な緊張感と興奮、そして不思議な明晰さ、透明な文章は思想的な問題を抜きにして魅力あるものです。
 この更新を書くのにAmazonでバタイユを調べて見ると随分翻訳も多くなり、文庫化も進んでいるのでびっくりしました。私が中学の頃に読んだのは講談社文庫、ハンス・ベルメールの印象的な表紙のものでしたが後は二見書房版作品集にあたるか殆ど私家版の生田耕作の翻訳を探すしかありませんでした。「内的体験―無神学大全」がこんなにお手軽になっているとは!
 新訳を読んで久しぶりに生田訳の「眼球譚」も読み返してみようと本箱を探して見たのですがどうにも見当たらない…。整理整頓はしておかないといけませんなぁ。

 ところで先日猛烈な下痢と嘔吐、最近流行の風邪だそうで皆様もお気をつけ下さい。

2006/11/27

 世良美術館の演奏会終了しました。アンコールはショパン、ゴドウスキ編曲「別れの曲」、ファロッシ「ホワイト・クリスマス」でした。ご来場いただいた皆様に感謝します。

 今回美術館での演奏会という事もあり音響上の問題点の指摘がありましたがこれはしょうがない事ではないでしょうか。コンサートホールであってもその日の天候にも左右される事がある訳ですから、ましてやホールとして設計されていない場所ではどうしようもない事です。普段私はそう言う事を考えるとどこでも演奏する事が出来なくなってしまうので考えないようにしています。逆に演奏上の問題点をピアノの性能のせいにするような事はしていないつもりです。

2006/11/21

 演奏会前ですが次回の演奏会の打ち合わせを兼ねての飲み会。なかなか盛り上がりました。盛り上がってばかりではいけないのですが…。

 家に帰るとスロボジャニクのレーガー「バッハ変奏曲」のレコードが届いておりました。今聴きとおしたところですが噂に聴いていた通りの名演です。アムランに遜色ない演奏です。アムラン盤がなければ正に決定盤といってもいい演奏です。レコードをこれほど期待を持って聴いて、興奮したのは久しぶりです。

2006/11/14

 金澤攝氏のラヴィーナ連続演奏会5回目(11/9)。作品の難度は最初期に比べ平易になるも、そのシンプルな造型、雲ひとつない晴天を想わせる明朗でドライな音楽はいかにも私好みの作品で特に短調作品ではそのセンチメンタルな部分が少ないが故に魅力的な作品になっています。来月の最終会をもって私はラヴィーナの作品の約七割をきいたことになる訳ですが、この即物的ともいえる作曲家の作品に私は非常に強い共感と興味を持ちました。惜しむらくはその作品の殆どが現在入手が困難であるということです。来年から金澤氏によるラヴィーナの録音の予定もあり是非出版の話などあがってもらいたいものです。中期以降の作品は技巧的にも常識的で魅力的な作品があります。

 柴田宵曲の「妖異博物館」「続妖異博物館」が非常に面白く一気に読む。全く偶然その前に買っていた岩波文庫「唐宋伝奇集 上 下」も繋がりで面白く読む。この手の怪異譚は嫌いではないものの特に中国のものは敬遠していたきらいがあるのですが一度勢いに乗ると一気に読んでしまいました。特に岩波文庫版「唐宋伝奇集」は下巻から読むのがお勧めです。殆どショートショートです。短いものでは2ページ。芥川龍之介の元ネタ「杜子春」や中島敦「山月記」の元ネタ「李徴」等が入っています。この勢いで買ったまま放ったらかしにしている「聊斎志異」も読んでみようかと思っています。これらの短編、中編集の対極に「水滸伝」「西遊記」「金瓶梅」といった長編があります。これらはその分量がドストエフスキーの比でないほどなので手にするのを躊躇してしまいますが、いずれ読んでみたいと思います。
 しかし最近は本もうかうかしているとすぐ絶版品切れになってしまいます。そのうち買おうと思っていた本がいざ買うとなると出版社から入手出来ない場合が結構あります。中古レコードと同じく「見かけたら買っとく」というのがいいのでしょうか。

 中古レコードといえば最近カタログでスロボジャニクの弾くレーガー「バッハ変奏曲」を見かけ早速オーダーしました。一応受注のメールが届いたのですが手元に届くまで安心できません(^^;

 リサイタルも近づいていますがついつい酒と映画に溺れていますが、先日チャンネルNECOで放送された「男嫌い」は10年来見てみたいと思っていた作品で実に興味深く鑑賞しました。越路吹雪、淡路恵子、岸田今日子、横山道代、坂本九という恐るべき4姉妹と弟のコメディです。若き日の青島幸男なんかも出演しています。監督木下亮のスタイリッシュな演出は色彩、構図がキマっており、舞台劇を想わせる台詞回しもいかにも私好みの映画です。映画はこれくらい映像を「造る」とか「遊ぶ」とかしないと面白くないのです。映画はストーリーではないのです。

 映画といえば黒澤明の「椿三十郎」が織田裕二主演でリメイクされるそうです。このニュースは「めざましテレビ」で見たのですが何故かバックにかかっていたのは「用心棒」のサントラ…。確かに「椿三十郎」は「用心棒」の続篇みたいなものですし、「用心棒」のサントラは傑作なのですが。
 ところで映画好きみたいな顔をしている私ですが意外にも黒澤明の名前が出て来る事が少ないのお気づきの方もいるのではないでしょうか。実は神をも恐れぬ発言ですが私は黒澤作品がそんなに好きではないのです。黒澤映画は殆ど全て見ているのですが(「明日を創る人々」や戦前の「地熱」等は未見)「隠し砦の三悪人」がベストで以下「蜘蛛巣城」「用心棒」「羅生門」といった作品は面白い作品だと思うものの、代表作「七人の侍」や「生きる」はどうも好きになれないのです。確かにすごい作品だと思うのですがどうも主義主張がはっきり表出すると映画の面白さが半減してしまうような気がするのです。「天国と地獄」「悪い奴ほどよく眠る」も登場人物による主義主張の弁舌がなければと思ってしまいます。映画の内容が既に社会批判を含んだ内容ですのでそれを敢えて登場人物に語らす必要はないかと思います。親切といえば親切な訳ですがどうも白けてしまうのです。その点で「隠砦の三悪人」といった徹底的に娯楽を追及した作品が映画としての完成度の高さ、面白さを兼ね備えていると思います(なんせ「スターウォーズ」の元ネタですから)。作品自体も「どですかでん」以降のものはあまり好きではありません。はっきりいうと退屈です。黒澤明の「完璧主義」が悪く出たのではないかとすら思います。
 リアリティを追求するのが映画の本当の役目であると私は思っていません。映画は基本的に夢物語でいいのです。私が川島雄三やヒッチコックを偏愛するのも彼等の作品は「見る面白さ」がまず前面にあるからで、ストーリーの整合性などは二の次になっている場合も多々あります。昔はやったモンド映画、ヤコペッティの「世界残酷物語」等もドキュメンタリーと銘打っておきながら実際は俳優による演技、やらせであったのですが、それは監督のイメージする残酷美を表現する事が主眼でありドキュメンタリー、事実を提示する事とは違ったのです。
 最終的には個人の趣味なのですが私の好みは如何にスタイリッシュな映像であるか、という処に行きつきます。

2006/11/2

 アムラン待望のDVD「It's All About The Music」を見る。ドキュメンタリーと演奏会プラス特典映像(ブゾーニピアノ協奏曲4楽章を含む)となかなか充実の内容。アムランの演奏はもとより彼の音楽に関する取り組み、熱意が伝わってきます。ロバート・リム(「The Composer-Pianists: Hamelin and the Eight」の著者)のインタビューも興味深い内容です。ただ、このDVDのアムランはマジメですね。勿論普段のアムランがふざけている訳ではないのですが、彼の楽しい面ももっとクロースアップされればもっとよかったです。
 このDVDの見所は色々あるのですが、アムランの楽譜棚はすごいです。さすがという感じです。それとロナルド・スティーヴンソンの自作の演奏も貴重でしょう。私は大学の時図書館でスティーブンソンの「Passacaglia on DSCH」と「Prelude, Fugue and Fantasy on Busoni's Faust」の楽譜を見て以来興味のある作曲家だったのですが、彼の演奏が見れるとは思いませんでした。
 演奏会は言わでもがなの優れた演奏。ライヴ録音というのもよいです。録音では完璧、フォルムのしっかりした演奏ですが(この辺りの事情も録音技師のインタビューで語られている)、反面人工的、色彩感が乏しい、冷静すぎるという声も聴かれます。しかしアムランはライヴに於いて録音(CD)のクオリティを目指すタイプのピアニストではないです。このDVDによってそのことが伝わってきます。
 しかし、彼の完全な脱力状態、自由な手首、無駄のない動き、どれをとっても究極的なピアニストの技巧です。それに加え知性と情感、ユーモア、該博な知識と卓抜な選定眼、正にピアニストの中のピアニストと言えるのではないでしょうか。まぁ私はかなり贔屓目のきつい人間なのですが、アムランは本当に素晴らしいピアニストだと思います。

2006/10/31

 ザ・シンフォニーホールへ大阪コレギウム・ムジクム、当間修一指揮によるバッハ「マタイ受難曲」を聴きに行く。なかなか満足のいく演奏会でした。「マタイ受難曲」を実演で聴くのは3回目ですが最も良かったかもしれません。家に帰ってからカール・リヒターのDVDを見る。全曲はさすがにきついので飛ばし飛ばし見ていましたが、イエスの受難というよりはイエスを巡る人々を音で描いた作品のように感じます。ペテロの否認の後の有名なアリアなどの美しさと悲しみはオペラに比べても劣らない心理描写であると思います。

 読む本が随分たまってきているのですが柴田宵曲の「妖異博物館」「続妖異博物館」を買う。意外に品切れ絶版になると厄介なちくま文庫なのでとりあえずおさえておきました。最初の方を読んだのですが澁澤龍彦は随分この本を参考にして書いている事がわかります。もっとも柴田宵曲は類書「広文庫」によっていたということですので文献の重なりは別にいいのですが、そのスタイルは澁澤龍彦に影響を与えたような気がします。「品のある怪談」とでも言いましょうか、着眼の卓抜さはとてもよく似ています。

 本と言えば「のだめカンタービレ」がドラマ化されたそうですが、私はこの作品つい1週間ほど前に知ったという…。最近マンガを全然読んでいないので全く世事に疎くなっていたですが、原作もドラマも面白いらしいです(ちなみに2007年にはアニメ化の話も出ているらしい)。普段全くドラマは見ないのですが、とりあえず本日の放送は録画しました。録画した映画も山積みになっているのでいつ見れるか…。

 いま一番ほしいものは時間ですかね…。

2006/10/26

 11月17日午後6時からJEUGIA梅田ハービスENT店でライヴを行います。曲目は
 ベートーヴェン 月光第1楽章
 ゴドウスキー Devotion Avowel
 グリュンフェルト ウィーンの夜会
 となっております。入場無料ですのでお気軽にお越し下さい。

2006/10/25

 金澤攝「ラヴィーナ連続演奏会」終了しました。私の担当曲も無事演奏できました。アンコール(金澤さんにの演奏会では異例!)で連弾曲「夕べの楽しみ」を一緒に演奏させていただき大変印象に残る演奏会となりました。色々と問題もあった演奏会でしたが得ることも多い演奏会でした。ご来場いただきました皆様に感謝します。

 ラヴィーナの演奏会も残すところ2回となりました。金澤攝さんによると超絶技巧ピアニストとして技巧の限りを尽くした最初期の「練習曲集」から出発したラヴィーナはその後比較的平易なサロン的小品を書き続けます。そしてその作風は更に洗練されて行き、その晩年(ラヴィーナは20世紀初頭まで生きています)にはバッハ「フーガの技法」を想わせるシンプルで枯淡の境地へと達するということです。後2回の演奏会で壮年から晩年至るラヴィーナの作品を聴く事ができます。是非この機会にラヴィーナ作品にふれて見る事をお勧めします。ここで聴かなくてはもう二度と聴く事はできないかもしれません。

2006/10/22

 本日は名古屋に結婚式の仕事にいってきました。仕事の後、お決まりのレコード屋巡りへ。時間がなくて1軒しか行けなかったのですが珍しくLP以外にCDも買いました。ペロトフのブラームス「パガニーニ変奏曲」、ヴェデルニコフのシェーンベルグ「ピアノ協奏曲」、オイストラフ、オボーリン等によるタネエフ「トリオ」などを購入。名古屋のレコード屋は初めてでしたが大阪で見たことのないものも多く次回は是非ともじっくり時間をかけて漁ってみたいと思います。

 You Tubeで見つけた…とおなじみのあれですが今回はロシアのジャズピアニスト、ダニイル・クラーメルの演奏です。前半は即興(?)後半はモーツァルト(有名なハ長調)を題材にトルコ行進曲、運命となんでもありの演奏。カプスチンのような複雑に絡んだテーマの扱いなどは見られないもののローゼンブラットのパロディを想わせる楽しい演奏です。

2006/10/20

 先日の朝日新聞に驚きの記事が出ていました。「片腕ずつの練習には限界?両腕運動時と脳の働きに差」というもので詳しくはこちらを。「両腕」というのが気になりますが、これがピアノ演奏についてもいえるのであれば、ピアノに於ける「片手練習」の意味がなくなるのでは…。確かに片手練習の時「最終的に両手で弾くのに…」という考えは誰もが持っている事ではないでしょうか。以前暗譜についてあれこれ書いていた時「スキーマ」について触れましたが、両手で演奏するスキーマを獲得するのが最終目的であれば「片手練習」は遠回りなのかもしれません。ゆっくり両手で弾く、これが大事なのでしょう。しかしゴドウスキーのような複雑なものを練習していると「片手練習」がやりたくなるのですが…。

2006/10/19

 11月のチラシが出来上がりました。ご覧になりたい方はご一報を。

2006/10/17

 加古川の演奏会終了しました。私の演奏はここ1週間ほどピアノを触ってなかったせいもあり散々な出来。これから1ヶ月ちょっと猛練習しなければなりません。西村さんの演奏されたカプスチンのソナタ6番は素晴らしい出来で聴き惚れてしまいました。オタッキーさんの「オーベルマンの谷」もいかにもらしい演奏で楽しませて頂きました。
 終演後の打ち上げでは音楽の話から文学の話まで盛り上がり実に楽しい時を過ごす事ができました。やはり演奏後の打ち上げはいいものです。11月の演奏会の後も悔いのない打ち上げにしたいものです。

 久しぶりにfilmsに「女経」を追加。以前から紹介したい映画でしたがなんとか書く事ができました。

 神戸の友人がやっているバーの4周年ということでピアノ(うちで遊んでた電子ピアノ)を弾きにいってきました。ポンセの間奏曲などを弾きましたが軽く聴けるクラシックは結構選曲が難しいです。

 遅ればせながらmixiに登録してみました。最近では個人情報が漏れたことでも話題になっていますがそのあたりは自己責任ということなのでしょうか。実はよくシステムを理解していないのでなんとも言えないのですが…。

2006/10/14

 村上春樹ノーベル文学賞か、と結構話題になっていましたが残念ながら受賞はされませんでした。村上春樹さんの本は世界40カ国で翻訳出版されているそうです。
 翻訳は本当に難しい作業であると思います。私は実は海外文学が苦手なのですがそれは翻訳の良し悪しによって読後感が大きく変わってしまうからです。勿論原書を読むほどの語学力がある訳ではないので翻訳されたものを読むのですが複数翻訳のある作品などは訳者を選ぶのはその作品を選ぶ以上に慎重になってしまいます。澁澤龍彦は翻訳とはどれほど外国語に精通しているかではなくどれだけ日本語に精通しているか、と言ったそうですが、その通りだと思います。例えば
 「私は猫です。まだ名前はありません。私は私が生まれたところを覚えていません(以下略)」
 上はソーゼック・ナツゥームの「I AM A CAT」という小説の冒頭部分を私が訳してみたものです。これをバカバカしいと思うのはあくまで我々が漱石の「我輩は猫である」を知っているからであり、英語に精通していることとは無関係なのです。英文全体から「猫がえらそうに喋っているな」というニュアンスを読み取ることは英語の問題です。しかし「猫がえらそうに喋っているな」という観念から「私は猫です」を「我輩は猫である」に変換するのは日本語の問題なのです。ですから「わては猫だす」とか「ミーは猫ザンス」とかといったバカバカしいことはいくらでも思いつく訳ですが逆に言えば翻訳に付きまとう大きな障壁であると言えます。これは英語から日本語だけでなく日本語から英語、他国語から他国語へ翻訳される時には必ず現れる問題でしょう。
 単に誤訳とかかん違いといった問題だけでなく、翻訳は非常に高度な文学的な作業であるのです。

2006/10/11

 今週14日土曜日に西宮で加古川ピアノの会の演奏会があります。一応エントリーしているのですが風邪をひいてここ4日ほどピアノにまったくさわっていないという…。

 Booksに澁澤龍彦「東西不思議物語」をアップ。満を持して(?)澁澤龍彦の登場です(^^

2006/10/9

 先日NHK-BSで放送されたマルティン・シュタットフェルトの「ゴールドベルグ変奏曲」を聴く。FMでは全曲放送されましたがテレビでは放送時間の都合から一部省略された変奏もありましたがいい演奏でした。端正な演奏で情と知のバランスが素晴らしいです。私なんかは中国の暴走パンダより遥かにシュタットフェルトの方がいいと思うのですが。
 レパートリー、録音の路線があまりにグールドとかさなっているのが気になるところですが、中にはこんな曲あんな曲も。いま私が最も注目しているピアニストの一人です。

 横溝正史の「犬神家の一族」が市川崑がリメイク、12月に公開されるということです。それに合わせてCSで市川崑の金田一シリーズを一挙放送していてなかなか楽しく見ています。私も金田一ものは市川崑監督作品が一番気にいっているのですがひとつ大きな謎があります。このシリーズ何故か必要以上にグロテスクなシーンが多いのです。私が子供のころはテレビでもヘイちゃんこと石坂浩二、市川コンビの金田一はよく放送していましたから私と同年代でこのシリーズを見てトラウマになった人も多いのではないでしょうか。豪華キャスト、全体的にくすんだような暗い映像や細かなカット割りと見所は多いのですがそれを上回るインパクトの強いグロテスクシーンが登場します。第1作「犬神家の一族」では佐清の白いマスクに戦争で受けた傷跡、生首菊人形、集団リンチ、高峰三枝子に血を浴びさせる、続く「悪魔の手毬唄」は前作程ではありませんが凄惨な殺人現場の描写があります。「獄門島」では釣鐘ギロチン、「女王蜂」では時計台の人体解体、シリーズ最後の「病院坂の首縊りの家」では生首風鈴に絞殺され口から血が溢れる被害者…といった強烈なシーンが時には本筋、原作とまったく関係なく入っています。これらのシーンを見ると私は「しかし、何故…」と思ってしまうのです。市川崑による金田一シリーズは第1作が1976年に製作され1979年の「病院坂の首縊りの家」が最後となっています。1963年にイタリアのマリオ・ヴァーバの「モデル連続殺人」やダリオ・アルジェントの「私は目撃者」(1971年)等凄惨な殺人シーンをスタイリッシュに撮った作品もありますが、市川崑が影響を受けたとも思えません(ましてやハーシェル・ゴードン・ルイスのエログロスプラッター映画は考えられない)。仮に影響を受けたとしても「しかし、何故…」という疑問は解消されません。市川崑の50年代から60年代にかけても傑作群をご覧になった方であれば私の「しかし、何故…」という感じが伝わるのではないでしょうか。
 ところでリメイクされる「犬神家の一族」の予告編を見ると音楽が76年版と一緒です。映画の公式サイトで調べて見ると76年製作時と同じく大野雄二の名前があがっています。ただリメイクはテーマ曲となっていて別に音楽は谷川賢作(詩人谷川俊太郎の息子)となっているので全編は違うと思うのですが、リメイクとは言え音楽まで一緒とは…。リメイク版もあらゆる意味で「しかし、何故…」というような予感もあります。

2006/10/7

 You Tubeで見つけた驚きの…といつものあれですが、今回はポリーニの弾くリスト「超絶技巧練習曲10番」。ポリーニがこんな曲を?と思いましたが演奏もポリーニのイメージにあるような精緻な感じではなく割合感情的で驚きます。近年のポリーニは昔とは随分変わったように思います。よくなったのか悪くなったのかは各人様々に感じるでしょうが私は少々ザツになったように感じます。年齢とともに芸術家として感情を前面に押し出してきたのかもしれません。なお映像は曲の後半です。

 最近思想書などからは遠ざかっている、というより敬遠しているのですが、河出書房よりドゥルーズ、ガタリの「アンチ・オイディプス」が文庫で出る(しかも新訳)ということで非常に気になっています。同書は昔図書館で借りて最初の方を少し読んだだけで返してしまったのですが文庫になったので買ってもいいかもと思っています。思想書に限らず専門書は高いのが難点です。しかし大量に売れるという訳でもないので値段は落とせないのでしょう。筑摩書房の文庫版全集や河出書房などは重宝します。しかし最近は文庫も千円を越えるものも珍しくありません。どうも千円を越える文庫は買うのに躊躇してしまうのは私だけでしょうか?

2006/10/2

 宝塚彩遊館でのライブ終了。色々な曲を弾きましたが満足頂ける内容だったか反省点も含め考えるところの多い演奏会でした。ご来場いただきました皆様に感謝申し上げます。

 今日は楽器店での講師として指導して来ました(ちゃんとこういう仕事もしているのです^^;)
 やはり人を教えるということは難しいことでしっかりと指導理念を持っていなければなりません。相手がまったくの初歩のお子さんであるならその人の音楽人生の責任を負うところは非常に大きいです。例え専門に進まないとしても音楽が好きかどうかというスタート時点を請け負う訳ですから真剣に接しなくてはいけません。逆説的ですが音楽を習う時は「たかが音楽」という考えが必要であると思います。音楽で飯を食っていてこの発言は不謹慎かとも思いますが、コンクールの低年齢化の弊害が言われる現在この「たかが音楽」という気楽さが必要な気がします。勿論一心に音楽に打込むことは素晴らしいことだと思いますが、それによって追い詰められることは問題のような気がします。

 橋本治をあんまり面白いので一気に3、4冊読む。この人の本は読んでいる時「なるほどなぁー」と思う反面「今私は騙されているのでは…」という気もするのですがそれが橋本治の魅力というのがいかにも彼らしい感じです。元々私は熱心な橋本信者ではなく、高校生の頃に「ロバート本」と「窯変 源氏物語」の第1巻を読んだだけで、後は「桃尻娘」ぐらいしか読んでません。今回読んだのは「「三島由紀夫」とはなにものだったのか」「宗教なんかこわくない!」「大江戸歌舞伎はこんなもの」「風雅の虎の巻」と評論(という言い方は橋本らしくないのですが)で「ロバート本」の延長のような感じの本です。中でも「宗教なんか〜」はオウム真理教についての本のなのですが面白いという点では一気に読み通せる内容でした。「「三島由紀夫」とは〜」はもう少し早く読んでいればbooksの「春の雪」ももう少し変わった内容になったかもしれません。
 しかし、この人の本の魅力は橋本治の直感的な独断部分にあって、例えば「「三島由紀夫」とは〜」の冒頭「(三島邸の)アポロ像がちゃちだったとか」という発言にあると思います。これは独特の匂いを嗅ぎわけるようなもので「わかるやつにはわかる」というものですが、共感できる人にはこれ以上の直感的解釈はないように思われてくるものです。この辺りが橋本治の極端な好き嫌いを作る原因になっているのでしょう。

 本日(1日)FMでアムランの今年の東京公演、ブラームスの第2協奏曲の放送がありました。明日(2日)昼から再放送があります。録音のご用意を!

2006/9/26

 scheduleを更新。11月25日に御影の世良美術館でリサイタルを行うことになりました。曲目は
 ベートーヴェン ソナタ作品27-2「月光」
 ショパン スケルツォ2番 バラード4番
 ゴドウスキ ソナタより第5楽章
 グリュンフェルト ウィーンの夜会
 というロマン派ピアノ作品を集めて見ました。ゴドウスキとグリュンフェルトはロマン派とは少しずれますが…。

2006/9/22

 昨夜20日は遊音堂で金澤攝氏のラヴィーナ連続演奏会の譜めくりに。今回の連続演奏会で世界でも初めて音となる作品が沢山あるのですが、何故ラヴィーナがこれほど急速に忘れられたのか不思議です。明るくてドライで大変魅力的な作品も多く、もっと知られてもよいのではないと思います。生前はそれなりにヒットを飛ばしピアニストとしても名の知れた存在だったようですが「知られざる作曲家」といったレベルでなく「本当に忘れられた作曲家」というのはちょっと異常な気がします(それも世界的に)。金澤氏によるとこういった作曲家はまだまだ存在しこれらの作曲家の業績をどのように紹介していくかが今後の課題であるとのことです。

 今日21日は来月10月23日のラヴィーナ連続演奏会の連弾曲の練習。金澤氏、青井彰氏と6手のための「チロリエンヌ」等を合わせました。金澤氏の話は本当に面白く練習中に大爆笑ということもあるのですが、氏の音楽に対する直向きな態度は尊敬します。練習後金澤氏と二人で昼食をとってゆっくり話しました。金澤氏といえばアルカンというほど日本に於けるアルカン演奏の草分け的存在と思われているのですが氏自身は別にアルカン弾きとも思っていないし又アルカンに特に思いいれもないということです。少し意外な感じもするのですが氏によればアルカンにしてもラヴィーナにしてもレーガーにしてもある一定の距離を持った作曲家であり、彼等の作品を提示しそれを最終的によいかどうかの判断を下すのは聴衆であるといいます。金澤氏のような音楽哲学や思考を持っている演奏家は極めて稀のような気がします。そういった意味でも孤高の音楽家と言えるでしょう。

 しかし今月はアムランに金澤氏に、と二人のピアニストとゆっくり話しをする機会を得た驚くべき月だったのですが、私もしっかりしなければなりません…。

2006/9/12

 さてつい先程東京からもどってきました。マルク−アンドレ・アムランの東京公演を聴きに行ってきたのでした。今回の公演はブラームスの第2協奏曲とショパンの第1協奏曲。私は日程の関係でショパンしか聴けなかったのですが素晴らしい演奏でした。技術的な困難な箇所は勿論楽々クリアしているのですが見通しのよい余裕のある演奏で本当にいい演奏でした。1楽章のコーダも「こんなにかっこよかったのか」と思いましたし、2楽章の美しさと集中力も素晴らしかったです。

 さて本日なのですがアムランが御茶ノ水、神保町のレコード屋、楽譜屋に行きたいので誰か案内してほしいというようなことで何故か私が案内することに…(^^;数名でお昼を食べて彼を中古レコード屋に案内しました。少し驚いたのが彼がほとんどクラシックのコーナーを見ないことです。まぁクラシックに関しては十分に知識もあるのでしょうが「現代音楽、それよりもアヴァンギャルド、ノイズ、ロック系を」という要望なのでした。「フランク・ザッパは素晴らしい」とか言ってましたし購入したCDもアヴァンギャルド系の私の知らないものでした。彼は御茶ノ水から神保町にかけての道すがら目に入ったレコード屋は全てチェック!
 神保町の音楽書専門店古賀書店ではやはり現代系の作品をチェックしてKarg-Elertの「Partita」を購入していました。

 アムランは写真をよく撮ります。人物を撮ったりするのでなく街で見かけた変な英語を撮って集めているということです。会うなりいきなり「『egg』という雑誌を買ったが何故『egg』という名前なの?」と聴かれてビックリしました(^^;VOWネタを集めているアムランというのは彼の新しい魅力ででしょうか?

 実に貴重な体験、楽しい時間を過ごさして頂き恐縮の限りですが、音楽性、技術、人格と三拍子揃って優れたアムランに改めてファンになった次第です。
 (写真はレコード屋楽譜屋を巡ってご満悦のアムラン)

2006/9/2

 さて久しぶりの更新です。scheduleを追加しました。

 先日金澤攝さんの「ラヴィーナ連続演奏会」の譜めくりに行きました。前回の演奏会に比べるといくらか穏健な作風になっているものの「主題と変奏Op.23」の終結部などはなかなか凄いものでした。「マズルカOp.12」「ノクターンOp.13」「12の様式と完成の練習曲Op.14」などは技巧的にも「常識的」で弾いてみたいと思わせる魅力的な作品でした。

2006/8/17

 You Tubeで見つけた驚き映像、といつものネタですが今回はホロヴィッツ、1983年来日時の映像です。吉田秀和氏をして「ヒビ割れた骨董品」と言わしめた演奏で聴いていてなんとも複雑な気持ちになる演奏ですが音そのものは紛れもないホロヴィッツのものです。しかしこの映像、問題が多いのではないでしょうか。削除される前に見ておきましょう。

 今年前半はあまり本を読んでなく印象に残ったものが筒井康隆の「問題外科」ぐらいという情けない状況だったので気持ちを入れ替えて読書にも精を出すつもりです。

2006/8/13

 去る8月10日私が今最も注目しているピアニスト、マルティン・シュタットフェルトの東京でのライブがFMで放送されました。演奏曲目はバッハ「ゴールドベルグ変奏曲」、バッハ・ブゾーニ編曲「喜べ愛する信者よ」 「イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ」(あまった時間でスタジオ録音「2声のインヴェンション」)。DATで録音しながら聴いたのですが実に面白い。彼の演奏を聴くと全ての繰り返しがあってもよいかなと思わせます。非常に透明度の高い演奏でバッハやシューマンの「トッカータ」といった技巧的な作品でも明晰な演奏を聴かせてくれます。是非生で聴いてみたい演奏家の一人です。

 You Tubeで見つけた驚きの映像を一つ。現在テレビ朝日で声優も刷新し「ドラえもん」を放送していますがその放送開始前に日本テレビで1973年にアニメ化されていました。わずか半年の放送でそのフィルムは破棄処分されてしまい幻の作品と言われているのですがそのオープニングがYou Tubeにアップされています。よく残っていたもんです。本編は残っていないのでしょうか?

2006/8/6

 ゴドウスキー校訂によるモーツァルト「ピアノ協奏曲23番」の楽譜が到着。校訂といってもかなり色々手を入れています。それがなかなか効果的。「こんなのモーツァルトの冒涜だ!」という声も聞こえてきそうですが2楽章など最後の部分で左手に対旋律があられたりとなんともゴドウスキー好きにはたまらない改編となっております。

2006/7/29

 ヤマハのICを使ったDAY020 Digital Power Amplifierを組み立てる。半完成品なので取り付ける部品は少なく、オーディオ用の部品が始めからついているおかげで2時間ほどで完成。相変わらずケースの加工が難物でほとんどがその作業だといっていいくらいです。今回はパワーアンプとしてボリュームを付けずにプリアンプとあわせて音出しをしました。感想はまだなんともいえないのですが、確かに前評判の通りピアノの音はクリアに聴こえます。CD、LP共に明快さ、抜けのよさはいいです。しかし、なんと言うか「いかにもヤマハの音」という感じはしないではありません。抵抗やコンデンサをさわりまくったトライパスのTA2041の方が全体的にみて好みかもしれません。もっともしばらく鳴らしてみて聴き比べないと判断出来ないのですが。

 NHK-BSで連日放送されたチャップリンの映画を見ましたがキートン派の私もやはりチャップリンの重要さは改めて感じました。ベンヤミンの指摘のように映画史に決定的な影響を与えた人物といえるでしょう。ローワン・アトキンソン(「ビーン」の人)は「チャップリンの身振りは大袈裟で今見ると違和感を感じ、共感出来ない」というような事を言っていましたが、確かに無声映画特有の身振り表情の大袈裟な感じは否めません。しかし興味深いのはチャップリントーキー1作目「独裁者」と無声映画「黄金狂時代(後にナレーションと音楽を入れてある)」や「街の灯」を比べると無声映画の方が面白く感じることです。「独裁者」でも笑えるシーンはありますがそれは有名な演説前の壊れた椅子の交換といった言葉のない場面の方が多いのです。ヒッチコックは「映画は科白が少なければ少ないほどいい」と言いましたがこの辺りに映画の根本的な問題が含まれて入るような気がします。

2006/7/24

 大阪で行われたリュック・フェラーリの映画展に行こうと予定を空けていたにも拘らず不測の仕事で行けず非常に残念。もう二度と見る事のできない作品かもしれないだけに本当に残念です。

 地上波で放送された宮崎駿の「ハウルの動く城」をみる。私は宮崎作品は「未来少年コナン」が最高傑作ではないかと思っているのですが、なかなか面白く見れました。結構評価の別れる作品のようですが私はいいと思いました。もっとも昔の宮崎駿を知る人には微妙な作品なのかもしれませんが。

 川島雄三の「青べか物語」をみる。川島雄三の最高傑作とも言われる作品ですが確かにものすごく面白い。東京と千葉の県境に移り住んだ作家先生(森繁久弥)の周りで起こる喜悲劇をいかにも川島雄三らしい距離のある視点で描いています。それにしてもこの映画の面白さは脇を固める名優陣といっても言い過ぎではないでしょう。東野英治郎、南弘子、丹阿弥谷津子、左幸子、フランキー堺、中村メイコ、池内淳子、加藤武、桂小金治、市原悦子、乙羽信子という錚々たるメンバーがエピソードの一つ一つの脇役として出演しているのですから凄いものです。川島映画常連の山茶花究もちゃんと顔を出しています。中でも強烈に笑いを誘ったのが東野英治郎と加藤武のコンビ。異常なハイテンションで森繁を圧倒する勢いです。森繁につるんでビールを飲みまくるシーン(右図)での二人の「ウマさ」は格別です。映画としてはこのシーン、物語の解説的な科白を結構長く喋るシーンなのですが二人のテンションの高さに一向に気にならないはさすが川島雄三、それに応えた三名優という感じです。この映画では森繁久弥は狂言回し的な受動的、静的な役で終始抑えた演技をしていますがそのことによって脇の俳優陣との見事なコントラストが作られ感動的とさえいえる映画となっています。しかし、この映画での左幸子は凄い。市原悦子も今とほとんど変わっていないのが妙におかしい。

2006/7/17

 甲東ホールの演奏会無事終了しました。アンコールはサイ「パガニーニ変奏曲」、武満徹「恋のかくれんぼ」、リスト「ラ・カンパネラ」、ローゼンブラット「鉄腕アトムの主題によるファンタジー」でした。ご来場いただきました皆様ありがとうございます。

 気がつくと一つ年をとっていました。誕生日もあまり嬉しくない年になってきましたなぁ。

2006/7/13

 去る7月10日金澤攝氏による「ラヴィーナ没後100年記念連続演奏会」の第1回目が行われました。私は譜めくりをたのまれたのですが正に壮絶、超絶の限りを尽くした作品に驚かされました。おそらくラヴィーナの名を知る人はいないと思われるので書いておきますと1818年生まれ1906年没のフランスの作曲家。ヅィメルマンにピアノを学び同門のアルカン(5才年長)とは終生厚い友情に結ばれています。作風は最初期の作品1の練習曲集に見られる超絶技巧作品から穏健な作風に移り、その作品は明るく爽やかな光に満ちたものとなっています。と書いたもののこれは金澤氏の受け売りで私もラヴィーナという作曲家はまったく知りませんでした。
 今回演奏されたのは「12の練習曲 作品1」「25の性格的練習曲 作品3」「優雅なロンド 作品4」「3つのカプリス 作品6」の4作品。といっても作品1は約30分、作品3は約40分かかる大作です。特に作品1は金澤氏をもってして「最も過酷な練習曲集」と言わしめた超絶技巧の限りを尽くした作品。実際に演奏を見るとその非常識な技巧は筆舌に尽くしがたいものがあります。ラヴィーナはその後簡素な穏健な作風に変わっていくのですが「音楽史上まれに見る完成度で登場した(金澤氏)」作曲家であるということです。決して多いとはいえない聴衆でしたが日本(というか世界)で初めてラヴィーナの最初期の作品を聴くことのできた貴重な時間でした。
 終演後は金澤氏を囲んでグチンスキー、オタッキー両氏をはじめ濃い面々での懇親会。皆様お疲れ様でした。

2006/7/8

 摩寿意英子ハープリサイタルへ行く。現代のグランドハープ、モーツァルトの時代のオリジナルのハープ、正倉院に残されている箜篌(くご)の演奏となかなか興味深い内容でした。中でもモーツァルトの時代のハープの音色はピアノとピアノフォルテの差を思わせる違いで大きな発見がありました。箜篌の音が驚くほど太く大きいのも驚きました。

 私の最も好きな映画監督、川島雄三の特集がCS日本映画専門チャンネル衛星劇場で組まれています。川島雄三というと「幕末太陽傳」ですが私は敢えて川島ベスト5(私見)から外しています。「しとやかな獣」や「青べか物語」「女は二度生まれる」「貸間あり」といった名作が川島雄三にはあります。今回の特集で貴重なのはビデオ化されていない松竹時代の作品でしょう。あたりはずれがありますが川島ファンとしては嬉しい限りです。いずれ川島雄三についてはゆっくり書いてみたいと思っています。

2006/7/2

 玉水教会のライヴ終了しました。アンコールはアムラン「いらいらワルツ」、カルバジオ「3つのノクターン」から第2曲でした。聴きに来て頂いた皆様に感謝申し上げます。

 終演後会場のから少し歩いたところの世界のビール400種(!)を置いているビールバーでささやかな打ち上げ。モンポウの作品の魅力や映画、小説、マンガと話は暴走。非常に楽しくて終電ギリギリまで飲んでしまいました。

 アンプキット「DAY020 Digital Power Amplifier」が届く。ピアノ音がいいとかいう話なのでとりあえず購入。部品やケースも揃えなくてはいけないので完成は14日の演奏会の後になりそうです。

 7月10日より大阪野田阪神の遊音堂で金澤攝さんによる「ラヴィーナ没後100年 記念連続演奏会」が始まります。ラヴィーナの作品を作品番号順に6回にわたり演奏、紹介するシリーズです。私も微力ながら連弾作品でお手伝いをさせていただきます。興味のある方は遊音堂まで。


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