更新記録と日記
2002年12月

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2002/12/18

 グレン・グールドはカナダ国営放送を始め結構な量の映像を残しています。一切の公開演奏を拒否した演奏家がレコーディングと並んで重要な仕事場として映像を選んだのは自然なことであるのかもしれません。その成果はソニークラシカルから「グレン・グールド・エディション」として発売、放映され私たちの目に触れるところとなっていますが、フランスの映像作家にしてヴァイオリン奏者ブルーノ・モンサンジョンによって製作されたグールドの映像はまとまった形で見ることはできませんでした。今回EMIからグールドのバッハ「パルティータ6番」を含むDVDが発売されました。74年製作、死の6年前グールドが至ったバッハ演奏の境地を示す資料として同じくモンサンジョン製作の「ゴルドベルグ変奏曲」(「グールド・エディションに収録)とともに貴重な映像です。

 グールドは自身の録音、映像を「編集」によりより完璧なものにしたという伝説があります。実際のところそれらは一発録りであったり、編集なしであったりするのですが少なくとも彼にとっては録音、収録そして「編集」を通して聴衆へ自身の音楽を届けるという事が音楽家としての責任であると感じていたようです。モンサンジョンの映像では少なくともカットは無くパルティータ6番がひとつの有機体のように紡ぎ出されています。これほど独創的で普遍的なバッハ演奏に至った演奏家は録音史上、カール・リヒター等の一部の例外を除いていないのではないでしょうか。

 グールドの言う「コンサートは滅んだ」という言葉、そして彼の方法論は全面的に肯定されるものではないかもしれません。しかし、この孤高の芸術家(あえてタレント(才能)とよんでもいい)の至った境地は余人の手の届かないことにあるのではないでしょうか。モンサンジョンの映像はジーグにおいてワンカットでピアノ、グールドからどんどん離れていきます。あたかも孤高の芸術家の最後の演奏のように。

2002/12/15

 ベートーヴェン「ハンマークラヴィア」、デュカ「ソナタ」、レーガー「バッハ変奏曲」、スクリャービン「後期ソナタ」「幻想曲」、ゴドウスキー「ショパンエテュード」、リャプノフ「レズキンカ」、アルベニス「イベリア」‥これらのレパートリーを身につけているピアニストといえばアムランの名前が浮かんできますがこれは岡田博美氏がこれまでに取り上げた作品です。岡田博美氏はすでに国際的に評価の高いピアニストですがまさに「日本のアムラン」とさえいえるピアニストです。その完成度、メカの確かさは在学中より「桐朋のポリーニ」などと言われていました。氏は武満徹、野田輝行のピアノ作品や佐藤眞のピアノ協奏曲など邦人作品でも抜群のセンスを見せ矢代秋雄のピアノ協奏曲録音ではその魅力を余すことなく堪能する事が出来ます。岡田氏は現在ロンドンに在住ということですが海外のレーベルとの契約などの可能性はないのでしょうか。