アレクサンドル・スロボジャニク
Alexander Slobodyanik
(1942-)
    アレクサンドル・スロボジャニクというピアニストをご存知であろうか?EMIからショパンのアルバムを出していたアレックス・スロボジャニクの父親であるということをご存知の方もいるかもしれない。しかし残念ながらアレクサンドル・スロボジャニクは旧ソビエト、メロディアでの録音が主であり僅かにRCAからハイドンとプロコフィエフのLPが出ていたくらいなので殆ど知られていないのではないだろうか。しかし第3回チャイコフスキーコンクール(1966年)第4位に入賞し70年代にはバースタインとラフマニノフの協奏曲3番を共演し日本にもレニングラード・フィルと共に来日しているピアニストである。
 私がはじめてスロボジャニクの演奏を聴いたのは中古レコード屋でジャケットがかっこよかったので思わず買ってしまった「展覧会の絵」であった。演奏はリヒテルやホロヴィッツと比べると物足りない感じであったが何故か気になる演奏であった。以後少しづつ彼のレコードを集め10年ほどかけて彼の主要なレコードは殆ど入手できた。中でもネイガウス直伝であろうレーガーの「バッハ変奏曲」は長年探してきたレコードで入手した時はなんとも感慨深いものがあった。

 彼の演奏はいかにもロシア的な豪快さ、悪く言えば大味なものである。その大味さは単に「ザツ」というものではなく、仔細な事にとらわれず豪快に大らかに弾く姿勢であり決してマイナス要素ではない。そのレパートリーはショパン(「24の練習曲」「ファンタジー」)シューマン(「幻想曲」「謝肉祭」)リスト(「ソナタ」)といったロマン派の作品やムソルグスキー、プロコフィエフ、ストラヴィンスキー、ミャスコフスキーといった本国ロシアの作品も含まれる。ストラヴィンスキーの「ペトリューシュカからの3楽章」はライヴ録音であるが、これはかなり強引に弾いており、時折崩壊か?と思わせるところもないではないがそれはそれで魅力的な演奏である。特筆すべきは先にもあげたレーガーの「バッハ変奏曲」で実に情感豊かに弾いている。アムラン盤のような技巧の切れ味はないものの、音楽的に無理のない演奏である。手元にLP、CD含め6種類ほどある盤の中でもゼルキン、アムラン、シフと並ぶ名演奏といえよう。
 是非ともCD化が望まれるピアニストの一人である。

 

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