数ベクトルが基底となるための十分条件の証明  
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(舞台設定)
K (例:有理数をすべてあつめた集合Q実数をすべて集めた集合R、複素数をすべてあつめた集合C)  
KnK上のn次元数ベクトル空間 
+K上のn次元数ベクトル空間において定義されているベクトルの加法 
スカラーに続けてベクトルを並べて書いたもの:K上のn次元数ベクトル空間Knにおいて定義されているスカラー乗法 
v1, v2, , vnn個の「Kからつくったn次元数ベクトル」。
       具体的に書くと、
i=1,2,, nにたいして、vi1, vi2, , vinKとして、vi=( vi1, vi2, , vin )   
       したがって、
v1, v2, , vn Kn
       なお、個数
lが有限個であることに注意。  
a1, a2, , an スカラーa1, a2, , an K  

(定理の確認)
K上のn次元数ベクトル空間においては、n個の一次独立な「Kからつくったn次元数ベクトル」がそろえば、基底となる。
つまり、
v1, v2, , vnKn一次独立ならばv1, v2, , vnは、Kn基底である。

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(証明) [永田『理系のための線形代数の基礎』系1.2.3(p.13);]
・「v1, v2, , vnKnKn基底である」とは、v1, v2, , vnが次の2条件を満たすことであった。
  
基底であるための条件1v1, v2, , vn線形独立となること。
  
基底であるための条件2v1, v2, , vn一次結合として、Kn属す任意のn次元数ベクトルを表せること。
               
( v Kn ) ( a1, a2, , al ) ( v =a1v1+a2v2++alvl ) 
v1, v2, , vnKn一次独立ならば
    それだけで、
v1, v2, , vnは「基底であるための条件1」を満たしている。…(1)  
・「
v1, v2, , vnKn一次独立」ということを、一次独立の定義に遡って書き下すと、 
   「
a1a2=…=al=0でないa1v1+a2v2++alvl   …(2)  
v は、任意のKからつくったn次元数ベクトル」であるとする。
 すると、
v,v1, v2, , vn一次従属となる。
      ∵
n個より多くの「Kからつくったn次元数ベクトル」は一次従属だから。
 「
v,v1, v2, , vn一次従属」ということを、一次従属の定義に遡って書き下すと、
  
aa1a2=…=al=0でないスカラーa,a1, a2, , al が存在して、
   (つまり、
a,a1, a2, , al のなかに少なくとも一つ0ではないものを含むスカラーa1, a2, , al が存在して)
     
av+a1v1+a2v2++alvl=を満たす。 
  ここで、
a=0ではないことがわかる。…(3)
  なぜなら、
  |
a=0ならば
  | ・
a1a2=…=al=0でない
  |    ∵
aa1a2=…=al=0でないという条件は、
  |      つまり、
a,a1, a2, , al のなかに少なくとも一つ0ではないスカラーを含むということ。  
  |      
a=0ならば、0ではないスカラーa1, a2, , al のなかに存在しなければならない。 
  | ・
av+a1v1+a2v2++alvl=0v+a1v1+a2v2++alvl 
  |  =
a1v1+a2v2++alvl  ∵スカラーゼロ倍 
  | だから、
(2)より、
  | 
av+a1v1+a2v2++alvla1v1+a2v2++alvl 
  |となってしまう。  
  |つまり、
a=0ならばv,v1, v2, , vn一次従属であることの定義を満たさない。
  |したがって、
av+a1v1+a2v2++alvl=を満たす、aa1a2=…=al=0ではないスカラーa,a1, a2, , al は、
  |
a≠0という制約のもとにある。 
(3)で、a=0ではないことがわかったから、aには、乗法の逆元a−1が存在する。…(4) 
av+a1v1+a2v2++alvl= は、次のように変形してゆける。
 
av+a1v1+a2v2++alvl+{(a1v1+a2v2++alvl)}=(a1v1+a2v2++alvl+ 
              ∵両辺に(a1v1+a2v2++alvl)の逆ベクトルを加えた。 
 
av+=(a1v1+a2v2++alvl+ 
              
数ベクトルの加法の性質v+(v)=   
 av=(a1v1+a2v2++alvl  数ベクトルの加法の性質v+v   
 av=(−1)(a1v1+a2v2++alvl  逆ベクトルの定義   
 
av= (1)a1v1+(1)a2v2++(1)alvl  数ベクトルのスカラー乗法の性質  
 a−1av=a−1 (1)a1v1+a−1(1)a2v2++a−1(1)alvl 
   
(4)よりaには、乗法の逆元a−1が存在するので、これを両辺にかけた。  
 
a−1av= (1)a−1a1v1+(1)a−1a2v2++(1)a−1alvl 
      ∵体における乗法の可換則  
 
1v= (1)a−1a1v1+(1)a−1a2v2++(1)a−1alvl  ∵体における自らの乗法の逆元との積  
 
v= (1)a−1a1v1+(1)a−1a2v2++(1)a−1alvl  ∵数ベクトルのスカラー乗法の性質1v=v  
 
v= (a−1a1)v1+(a−1a2)v2++(a−1al)vl  ∵数ベクトルのスカラー乗法の性質1v=v  
ここで、
  
(a−1a1),(a−1a2),,(a−1al)だから、
  
v1, v2, , vnは「基底であるための条件2」を満たしている。…(5)     
(1)(5)より、「v1, v2, , vnKnKn基底である」といえる。

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