命題論理における論理式間関係の意味論 − 推論 : トピック一覧・定義:複数の論理式の真理値割り当て・定義:同時に充足する/矛盾/充足可能・整合的 ・定義:推論 / 前提 / 結論・帰結 / 推論式 / 反例 ・定義:推論が有効・妥当・正しい / 推論が有効でない・妥当でない・誤っている / ⊨(double-turnstile) ・定義:論理的に同値 * 論理関連ページ: ・論理記号一覧 ・命題論理の意味論 ・論理式の意味論:真理値/真理関数/真理値表/論理式の真理値の決定原理/真理値分析/恒真式・恒偽式 ・論理式間関係の意味論: ・命題論理のシンタクス * 論理目次/総目次/更新履歴 ※述語論理の場合は、林晋,鹿島亮を参照。 |
定義:推論・推理inference・論証argument |
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【推論の定義】 ・推論 inference とは、ある《有限個の命題(論理式)》が真であることを根拠として、 他の《1個の命題(論理式)》が真であることを 導き出すこと。[中谷p.55;戸次p.18] →妥当な推論/妥当でない推論 ・ある推論の前提premise・仮定とは、 その推論の根拠となる《有限個の命題(論理式)》のこと [中谷p.55;戸田山p.3;戸次p.18] ある推論の結論conclusion・帰結consequenceとは、 その推論で導き出される《1個の命題(論理式)》のこと [conclusion:中谷p.55;戸田山p.3; consequence:戸次p.18] ・「〜からの論理的帰結 logical consequence」とは、 〜を推論の前提としたときに、そこから推論が導き出す結論のこと。 [中谷p.55;戸田山p.3] ・演繹とは、前提から結論を論理的法則にしたがって導き出す過程のこと。[中谷p.55] 【推論を表す文言】 以下は、《A1,…,Anを前提としてCを結論する推論》を、言い表す言葉のサンプル。 ・サンプル1: 「A1,…,An 。それゆえ、C」[野矢p.40] 「A1,…,An 。ゆえに、C」[中谷p.68] 「A1,…,An よりC である」[戸次p.18] 「A1,…,An 。したがって、C」[戸田山p.63] ・サンプル2: 「A1,…,AnからCを導く」(戸田山p.62) 「A1,…,An のもとでCが導かれる」[野矢p.40] |
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【推論の記法・形式的表現】
以下は、《A1,…,Anを前提としてCを結論する推論》を表す記号・図式のサンプル。
・サンプル1:
「A1,…,An ∴ C 」[中谷p.55]
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A1 |
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: |
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A1,…,An | An | |
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C | C |
・サンプル3「推論式」:
「A1,…,An ⇒ C 」[中谷p.55;戸次p.18;]
「A1,…,An →C」[野矢p.40]
*中谷・戸次は、推論式を⇒で表すのに対し、論理記号を→で表して区別。
*野矢は、推論式を→で表すのに対し、論理記号を⊃で表して区別。
*戸田山は、論理記号を→で表し、妥当な論証をdouble-turnstileで表すが、
妥当でないかもしれない論証については、推論式は使わず、
サンプル2の表現のみ使う。
定義:反例counter-example |
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・ある推論(論証)の反例とは、 その推論(論証)の前提を真にするが、 その推論(論証)の結論は偽にする場合のこと。 ・真理値表で考えると・・・[戸田山3.7.2] |
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定義:推論・論証の意味論的妥当性、推論の含意semantic entailment、意味論的演繹関係 |
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・ある推論が有効である・妥当である・正しいとは、 その推論の前提が真ならば、その推論の結論もつねに真であるということ。[中谷p.57;59] ・ある推論が有効でない・妥当でない・誤っているとは、 その推論の前提が真なのに、その推論の結論が偽となることがあるということ。[中谷p.57] * 明確化すると・・・ → 【はじめに読む定義】 → 【厳密な定義 〜 恒真式(トートロジー)の概念を用いて】 → 【厳密な定義 〜 矛盾・充足不能の概念を用いて】 → 【厳密な定義 〜 真理値割り当てまで遡って 】 【はじめに読む定義】「推論『A1,…,An ∴ C 』が有効である・妥当である・正しい」
とは、 前提 A1,…,An がすべて真のとき、結論C は必ず真になる [野矢p.40] ということ、 言い換えると、 |
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記号で表すと「A1,…,An |
⊭ |
C」 |
【厳密な定義 〜 恒真式(トートロジー)の概念を用いて】「推論『論理式A1,論理 式A2,…,論理式An ∴ 論理式C 』が有 効である・妥当である・正しい」
論理式「A1∧A2∧…∧An⇒C」が恒真式(トートロジー) である [中谷p.56;59;野矢pp.40-41;戸田山定理9p.66;戸次定理3.60(p.44)] ということ、 言い換えると、 《論理式「A1∧A2∧…∧An⇒C」の付値》を、どれに切り替えても、 《論理式「A1∧A2∧…∧An⇒C」の真理値》が真にしかならない ということ。 |
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【厳密な定義 〜 矛盾・充足不能の概念を用いて】「推論『論理式A1,論理 式A2,…,論理式An ∴ 論理式C 』が有 効である・妥当である・正しい」
論理式A1,…,An , ¬C が矛盾している・充足不能であるということ、 [戸田山 練習問題15 定理11(p.67);戸次定理3.57(p.43)] つまり、 |
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【厳密な定義 〜 真理値割り当てまで遡って 】・「推論『論理式A1,論理 式A2,…,論理式An ∴ 論理式C 』が有 効である・妥当である・正しい」
すべての《論理式A1,…,An を同時に充足する真理値割り当て》が、 論理式Cも充足する(高崎) ということ、 |
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詳細には、
《論理式A1の真理値》…《論理式Anの真理値》を同時に真とし、《論理式Cの真理値》を偽とする《論理式A1,…,An,Cに含まれる命題変数に対する真理値割り当て》が存在しない
ということ。 [戸田山p.62;p.67 ; 戸次3.3.1(p.40);定義3.48(p.41)]
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記号 ⊨ (double-turnstile)の定義 |
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* 左辺の《論理式をあつめた集合》は、集めた論理式の個数が0個も含め何個でもよい。 |
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・《論理式をあつめた集合(列)》 |
⊭ |
《論理式をあつめた集合(列)》 は、 |
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{A1,A2,…,An} |
⊨ | {P} |
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A1,A2,…,An | ⊨ | P |
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⊨ | 《論理式をあつめた集合(列)》 |
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《論理式の集合(列)》 | ⊨ |
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《論理式の集合》 | ⊨ | 論理式 |
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{A1,A2,…,An} |
⊨ | 論理式 |
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A1,A2,…,An |
⊨ | 論理式 |
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空集合 |
⊨ | 論理式 |
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⊨ | 論理式 |
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《論理式の集合》 | ⊨ | (空集合) |
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《論理式の集合》 | ⊨ |
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《論理式の列》 |
⊨ | 《論理式の列》 |
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{A1,A2,…,An} |
⊨ | {P} |
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A1,A2,…,An |
⊨ | P |
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⊨ | 《論理式の列》 |
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《論理式の列》 | ⊨ |