論理式「P」「¬P」関係  : トピック一覧  

・定義:複数の論理式の真理値割り当て   
・定義:同時に充足する/矛盾/充足可能整合的 
・定義:推論  
・定義:論理的に同値     

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二つの論理式「P」「¬P」の真理値割り当て 


命題変数Pをつかった論理式P」と「¬P」を扱っている場面において
 「真理値割り当て」とは、

 「命題変数Pに対する真理値割り当て
   すなわち、
   [Pの真理値割り当て1] P真理値「真」を与える
   [Pの真理値割り当て2] P真理値「偽」を与える
   の2通り

 のこと。


  * なぜ?
    複数の論理式を扱う際、「真理値割り当て」とは、

    それらいずれかの論理式に含まれるすべての命題変数に対する真理値割り当て
    を指すから。

    →複数の論理式を扱う際の「真理値割り当て」の定義


 




【活用例】矛盾 / 充足可能整合的 / 推論の妥当性 

【文献】
 ・高崎金久『数理論理学入門III. 命題論理の意味論(その1)3.4真理値割り当て3.5 真理値割り当てによる論理式の意味解釈
       「 論理式φに含まれる変数が x1, ..., xn であるとする.これらの 真理値割り当て M が与えられれば φ の真理値が定まる. これを真理値割り当て M の下での論理式φの「解釈」 という」
       4.1 論理式の同値性「 【定義】論理式φ, ψが論理的に同値であるとは, φ, ψに含まれる命題変数のあらゆる真理値割り当て M に対して M[φ] = M[ψ] となることをいう.」
 ・戸田山『論理学をつくる
   3.5.2真理値割り当て (p.55) 「【定義】Lの原子式からなる或る集合をFとする。Fに対する真理値割り当てVを次のような関数とする。V:F→{1,0}」
     松本のように、論理式にたいして、「論理式の付値」を定義しているのではなく、
     原子式の集合に対して、その集合に属す原子式に真偽を割り当てるものとして、「原子式の集合の真理値割り当て」を定義している。
   3.6.1 論理式の集合の矛盾を定義する(p.58):「論理式の集合の真理値割り当て」を明示的に定義していないが、具体例を示している。



 

二つの論理式「P」「¬P」を同時に充足する simultaneously satisfy 真理値割り当ては存在しない。   

【意味】

命題変数Pをつかった論理式P」と「¬P」を、
 或る真理値割り当て
   ( 正確には、或る《命題変数Pへの真理値割り当て》が )
 同時に充足する 

 とは、

 その真理値割り当て論理式P」「¬P」の両方を充足するということ、

  すなわち、
   或る《命題変数Pへの真理値割り当て》にしたがって
   命題変数P真理値 を与えると、
   論理式P」「¬P」の両方の真理値が同時に真になる
   
 という事態を意味する。

 




【活用例】矛盾 / 充足可能整合的 / 推論の妥当性  

【文献】
 ・戸次 『数理論理学』3.3.2定義3.56(pp.42-43) 充足可能satisfiable. 充足不可能unsatisfiable 



 
【検討】

論理式P」と「¬P」に関して真理値割り当ては、
   真理値割り当て1「P真理値『真』を与える」 
   真理値割り当て2「P真理値『偽』を与える」
 の二通りしかない。

真理値割り当て1「P真理値『真』を与える」 は、 論理式P」「¬P」を同時に充足しない。
 論理式P」を充足する(真理値を真にする)が、論理式¬P」を充足しない(真理値を真にしない)ので。

真理値割り当て2「P真理値『偽』を与える」 も、 論理式P」「¬P」を同時に充足しない。
 論理式¬P」を充足する(真理値を真にする)が、論理式P」を充足しない(真理値を真にしない)ので。


 

P

 論理式P 

 論理式¬P 

[真理値割り当て1] P真理値「真」を与える→
 真   真  偽 
[真理値割り当て2] P真理値「偽」を与える→  偽   偽  真 

【結論】

・したがって、
 論理式P」と「¬P」を同時に充足する真理値割り当ては存在しない。

【一般的に】

 → 「同時に充足する」の定義 

→ 論理式「P」「¬P」関係:トピック一覧
→ 論理式間関係の意味論 
→ 総目次  
  

二つの論理式「P」「¬P」は矛盾している inconsistent ・充足不能 unsatisfiable  


論理式P」と「¬P」は矛盾しているinconsistent充足不能unsatisfiable。 

 

  記号で表すと、 P,¬P 



論理式P」「¬P」を同時に充足する真理値割り当てが存在しない 
 から。

 




【文献】
 ・戸田山『論理学をつくる』3.6.1 (p.58)
   例:{P,P⇒Q,¬Q∨R,R⇒¬P}(真理値表付);
     {P,¬P}(p.59),練習問題12(1)は充足可能な例(答はp.370)
 ・戸次 『数理論理学』3.3.2定義3.56(pp.42-43) 充足可能satisfiable. 充足不可能unsatisfiable  



 

二つの論理式「P」と「¬P」は、整合的でない。  


論理式P」と「¬P」は、整合的でない。

論理式P」「¬P」を同時に充足する真理値割り当てが存在しない 
 から。
 





【関連事項】
  → 定義「充足」 
  → 一つの論理式についての充足可能/充足不能
【文献】
 ・戸田山『論理学をつくる』3.6.2 (pp.58-9)
   例:練習問題12(1)(答はp.370){P⇒Q,¬Q∨R,R⇒¬P},{P⇒(Q⇒R),P⇒Q,¬R}
 ・戸次 『数理論理学』3.3.2定義3.56(pp.42-43) 充足可能satisfiable. 充足不可能unsatisfiable  



 
  

→ 論理式「P」「¬P」関係:トピック一覧
→ 論理式間関係の意味論 
→ 総目次  
  

推論『P 。ゆえに ¬P 』は有効でない・妥当でない・誤っている


推論『P ∴ ¬P有効でない・妥当でない・誤っている

  

記号で表すと「P

¬P」。

 
 * なぜ?
  →《前提P」 が真なのに、結論¬P」は偽》ということが起こりうるから。
 * 詳しく言うと?
  →前提P」を真、結論¬P」を偽とする真理値割り当てが存在してしまうから。
 * 正確に言うと?
  →論理式P」「¬P」に関する真理値割り当て
     真理値割り当て1「P真理値『真』を与える」 
     真理値割り当て2「P真理値『偽』を与える」
   のうち、
   真理値割り当て1「P真理値『真』を与える」を実行すると、 
   《前提P」が真、結論¬P」が偽》という事態が実現してしまうから。




【文献】
 ・戸次 『数理論理学』2.5推論と妥当性(pp.18-19):概略;定義3.48(p.41)意味論的含意semantic entailment(p.41);定義3.49推論の意味論的妥当性semantic validity;脚注11double turnstile(p.41);
           定理3.57(p.43)充足可能との関連;定理3.60トートロジーとの関連(p.44);
 ・中谷『論理』3.1(p.55):推論inference(p.55),前提premise・仮定(p.55)、結論conclusion,演繹(p.55)、論理的帰結・帰結(p.55)、推論式(p.55)、推論が妥当・有効(p.57)、含まれる命題変数の真理値割り当て・付値まで踏み込まない。
 ・野矢『論理学』1-1-6(p.40):推論式、推論が正しい、正しくない  。推論の具体例の真理値分析つき。
 ●戸田山『論理学をつくる』1.2論証の正しさをどこに求めたらよいか(pp.9-15)
              3.7.2論証の妥当性を定義する(p.62):「〜から〜を導く論証が妥当」「妥当な論証とは、反例の存在しないような論証である」;
              3.7.5論理学の三つの顔は一つであるー定理9(p.66):トートロジーを用いて;練習問題15(p.67):矛盾を用いて
              3.8.1論理的帰結を定義する(p.67):〜から〜が論理的に出てくるlogically follows from, 〜は〜の論理的帰結logical consequence of , 2重ターンスタイルdouble turnstile,
 ・高崎金久『数理論理学入門III. 命題論理の意味論(その1)-4.5 意味論的演繹関係 「 |= 」
 ・http://en.wikipedia.org/wiki/Double_turnstile



  


 

P

 論理式P 

 論理式¬P 

[真理値割り当て1] P真理値「真」を与える→
 真   真  偽 
[真理値割り当て2] P真理値「偽」を与える→  偽   偽  真 

 * トートロジーの概念を用いて説明すると?
    論理式P¬P」が恒真式(トートロジー) ではないから。

 

P

 論理式P 

 論理式¬P 

論理式P¬P

[真理値割り当て1] P真理値「真」を与える→
 真   真  偽 
[真理値割り当て2] P真理値「偽」を与える→  偽   偽  真 


 * 充足可能・矛盾の概念を用いて説明すると?

推論『¬P  ∴ P有効でない・妥当でない・誤っている

  

記号で表すと「¬P

P」。

 * なぜ?
  →《前提¬P」 が真なのに、結論P」は偽》ということが起こりうるから。
 * 詳しく言うと?
  →前提¬P」を真、結論P」を偽とする真理値割り当てが存在してしまうから。
 * 正確に言うと?
  →論理式¬P」「P」に関する真理値割り当て
     真理値割り当て1「P真理値『真』を与える」 
     真理値割り当て2「P真理値『偽』を与える」
   のうち、
   真理値割り当て2「P真理値『偽』を与える」を実行すると、 
   《前提¬P」が真なのに、結論P」が偽》という事態が実現してしまうから。 

 

P

 論理式¬P

 論理式P 

[真理値割り当て1] P真理値「真」を与える→
 真   偽  真 
[真理値割り当て2] P真理値「偽」を与える→  偽   真  偽 

 * トートロジーの概念を用いて説明すると?

 * 充足可能・矛盾の概念を用いて説明すると?



 → 論理式「P」「¬P」関係:トピック一覧
 → 論理式間関係の意味論 
 → 総目次  



二つの論理式「P」と「¬P」は、論理的に同値でない。  

論理式P」と「¬P」は、論理的に同値でない。


 * なぜ?

  →どの真理値割り当てについても、 
    《論理式P」の真理値》と《論理式¬P」の真理値》が一致しないから。


   実際、
    ・論理式P」と「¬P」に関して真理値割り当ては、
       真理値割り当て1「P真理値『真』を与える」 
       真理値割り当て2「P真理値『偽』を与える」
     の二通り。
    ・真理値割り当て1「P真理値『真』を与える」 は、 
     論理式P」の真理値を真に、
     論理式¬P」の真理値を偽にするので、
     ここでは、
     《論理式P」の真理値》と《論理式¬P」の真理値》が一致しない。
    ・真理値割り当て2「P真理値『偽』を与える」 は、
     論理式P」の真理値を偽に、
     論理式¬P」の真理値を真にするので、
     ここでも、
     《論理式P」の真理値》と《論理式¬P」の真理値》は一致しない。





【文献】
 ●中谷『論理』1.2(p.8)「論理的に同値」「同値」「同格」≡:; 2.2(pp.35-36)
 ●戸田山『論理学をつくる』3.4.1論理的同値性の定義(pp.49-50)
              3.4.2同値変形(pp.51-52)

 ・戸次 『数理論理学』定義3.61意味論的同値性(p.45);定理3.62意味論的同値性(p.45);定理3.65(p.46)

  

 ・http://en.wikipedia.org/wiki/Logical_equivalence  
 ・http://en.wikipedia.org/wiki/Material_equivalence



 

P

 論理式P 

 論理式¬P 

[真理値割り当て1] P真理値「真」を与える→
 真   真  偽 
[真理値割り当て2] P真理値「偽」を与える→  偽   偽  真