定理: 非負有界1変数関数に一様収束する単関数列

要旨

任意の非負有界1変数関数 f にたいして、「f 一様収束する単関数の単調増加列」が存在する。

設定

この定理は、以下のように設定された舞台上で成立する。
Step1実数を全てあつめた集合(実数体)Rを用意する。 
Step2R部分集合をひとつきめて、Dと名づける。
Step3D定義域とする「非負有界1変数関数y= f (x) 
   つまり、 
   
1変数関数fDR」であって、
   ・
任意の xDRにたいして、f (x)≧0

[文献]
ルディン『
現代解析学10.20(p.267)
志賀『
ルベーグ積分3018(p.138)):図解付,可測関数のケース。
新井『
ルベーグ積分講義』定理7.12(p.103):図解付,可測関数のケース。

 

   ・ある正の実数Mが存在して、任意の xDRにたいして、f (x)M
    を満たすもの
   を用意する。
Step4実数体R距離dを定めて、実数体R上に、距離空間( R , d )を設定。

定理

任意のxDRにたいしてf (x)≧0を満たし有界である限りで任意の1変数関数
  
y= f (x)
に対して、
次のように定義された
関数列fn}={ f1 , f2 , f3 , }は、[性質1] [性質2] [性質3]を満たす。
[関数列{ fn(x)}={ f1 , f2 , f3 , }の定義]
 
Step1:関数fn(x)の定義
 ある自然数
nを一つ決める。
 
x軸上の「y = f (x) 定義域Dを、
 
(n2n1)個のR上の点集合 
  
E(n,) f -1 ( [/2n, 1/2n ) ) { x DR | /2nf (x)1/2n }  
  
E(n,1) f -1 ( [1/2n, 2/2n ) ) { x DR | 1/2nf (x)2/2n }  
  
E(n,2) f -1 ( [2/2n, 3/2n ) ) { x DR | 2/2nf (x)3/2n }
  E(n,3) f -1 ( [3/2n, 4/2n ) ) { x DR | 3/2nf (x)4/2n }
   :
  
E(n,n2n1) = f -1 ( [n1/2n, n ) ) { x DR | n1/2nf (x)n}  
  E(n) f -1 ( [ n, + ) ) { x DR | nf (x) }  
 に切り分け、  
 これらの
定義関数を用いて、
 
1変数関数fn(x)=0χE(n,0)(x)+(1/2n)χE(n,1) (x)+(2/2n )χE(n,2) (x)+(3/2n )χE(n,3) (x)+
                  
                      
+nχE(n) (x)   
 を定義する。
 
Step2:関数列{fn(x)}の定義
 ・上記の
1変数関数fnで、n1とした
             
f1 (x)=0χE(1,)(x)+(1/2)χE(1,1) (x)+1χE(1) (x)  
 ・上記の
1変数関数fnで、n2とした
             
f2(x)=0χE(2,)(x)+(1/4)χE(2,1) (x)+(1/2)χE(2,2) (x)+(3/4)χE(2,3) (x)+1χE(2,4) (x)
                     +(5/4)χE(2,5) (x)+(3/2)χE(2,6) (x)+(7/4)χE(2,7) (x)+2χE(2) (x)  
 ・上記の
1変数関数fnで、n3とした
             
f3(x)=0χE(3,)(x)+(1/8)χE(3,1) (x)+(1/4)χE(3,2) (x)+(3/8)χE(3,3) (x)+(1/2)χE(3,4) (x)
                    +(5/8)χE(3,5) (x)+(3/4)χE(3,6) (x)+(7/8)χE(3,7) (x)+χE(3,8) (x) 
                    
+(9/8)χE(3,9) (x)+(5/4)χE(3,10) (x)+(11/8)χE(3,11) (x)+(3/2)χE(3,12) (x)
                    +(13/8)χE(3,13) (x)+(7/4)χE(3,14) (x)+(15/8)χE(3,15) (x)+2χE(3,16) (x)
                    +(17/8)χE(3,17) (x)+(9/4)χE(3,18) (x)+(19/8)χE(3,19) (x)+(5/2)χE(3,20) (x)
                    +(21/8)χE(3,21) (x)+(11/4)χE(3,22) (x)+(23/8)χE(3,23) (x) 
                    
+3χE(3) (x)   
 :        

 :        
 という具合に、自然数nを一つずつ増やしながら、上記の1変数関数fnを並べていったものを、 
    
関数列 fn}= { f1 , f2 , f3 , }  
 として定義する。
 
この関数列fn}={ f1 , f2 , f3 , }について、もっと詳しい説明→詳細 
[性質1] この関数列の各項 f1 , f2 , f3 , …は、すべて単関数
  
なぜ?→必ずしも有界ではない非負実数値1変数関数をfとしたケースで証明済み。  
[性質2] この関数列は、単調増加列。
     つまり、
      
任意のxDRにたいして、
      
xを固定して得られる数列 { fn(x ) }={ f1 (x ) , f2 (x ) , f3 (x ) , } が、
        
f1 (x )f2 (x )f3 (x )≦…
      を満たす。 
  
なぜ?→必ずしも有界ではない非負実数値1変数関数をfとしたケースで証明済み。 
[性質3] この関数列{ f1 , f2 , f3 , }は、D上で、1変数関数f一様収束する。
  
なぜ?→証明 

 

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証明: ここで定義された関数列は、fに一様収束する。

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関数列{ fn }の各項fn の値の取り方は、以下の通りだった。

   [case ]    0/2nf (x) 1/2n を満たすxDに対して、fn (x) =0
   
[case ]    1/2nf (x) 2/2n を満たすxDに対して、fn (x) =1/2n 
   
[case ]    2/2nf (x) 3/2n を満たすxDに対して、fn (x) =2/2n 
     : 
     : 
   
[case n2n1 ] n1/2nf (x) n を満たすxDに対して、
              
fn (x) =(n2n1)/2nn1/2n 
   
[case n2n ]    (n2n)/2n=nf (x)  を満たすxDに対して、fn(x) =n 

  ここからわかることは、
  
fnの項番n未満の値をf (x)にとらせる全てのxDに対して(つまり、[case ]~[case n2n1]について )
     
fn(x)f (x) 1/2n  
 が成り立つということである。 …
(1) 

はじめに、1変数関数 f を、任意の非負有界関数と定義したので、
 ある正の
実数Mが存在して、「すべての xDRにたいして、f (x)M」を満たす。
      つまり、
(M>) (xD) ( f (x)M)  
 このような
実数Mをひとつ決めておく。 …(2)

(1)(2)より、
  
関数列{ fn}における、実数Mを超える項番以降の項、
  すなわち、
n>Mを満たすfn は、  
  
任意の xDに対して、  
     
fn (x)f (x) 1/2n1/2M  
  を満たす。  …
(3) 

任意の正の実数εをとる。
 
(2)で決めた実数Mを用いて、(i)ε>1/2Mとなるケース、(ii)<ε≦1/2Mとなるケース、に分けて考える。
 
(i)ε>1/2Mとなるケース  
  
Nを、実数Mより大きな任意の自然数とおく。(ここで、N>M
  このとき、
nNを満たす任意の自然数nは、
      
nN>M>0を満たし、
      したがって、
(3)より、
       
任意の xDに対して、 fn (x)f (x) 1/2n1/2M が満たされる。…(4)   
  ここでは、
1/2M<εとなるケースを考えているから、(4)は、
  
nNを満たす任意の自然数nにたいして、  
       
任意の xDに対して、 fn (x)f (x) 1/2n1/2M<ε が満たされる    
  と拡張できる。 
  以上から、
  
任意の正の実数ε>1/2Mに対して、ある自然数Nとして「実数Mより大きな自然数」をとると、
    
nNを満たす任意の自然数nと、任意の xDに対して、
        
fn (x)f (x) 1/2n1/2M<ε が満たされる
  といえる。
  これを、
論理記号で表すと、 
    
(ε>1/2M) (NN) (xD) (nN)( nN| fn (x)f (x)|1/2n1/2M<ε) …(5)  
 
(ii)<ε≦1/2Mとなるケース  
 ・
Nを自然数とおくと、
  
1/2Nは、自然数Nをいじることで、
   
1/2まで大きくすることができ、(自然数Nを最小値の1にすることによる)、
   限りなく0に近いところまで小さくすることができる(自然数
Nをどこまでも大きくすることによる)。
  したがって、
   
任意の正の実数εに対して、0<1/2N<εを満たすよう、自然数Nをとることができる。
  このような自然数
Nを一つきめておく。…(6)
 ・ここで考えている「0<ε≦1/2Mとなるケース」において(6)に従って自然数Nを決めたから
   このとき、0
<1/2N<ε≦1/2M となる。…(7) 
   よって、このケースで、
(6)に従ってNを決めると、N>Mとなる。…(8)  
 ・さらに、
(6)に従って決めた自然数Nにたいして、nNを満たす任意の自然数nをとると、
  
(8)より、n≧N>Mとなって、 
  
(3)より、 
  
任意の xDに対して、 fn (x)f (x) 1/2n1/2M が満たされる。…(9) 
  
(7)より、(9)は、
   
nNを満たす任意の自然数nにたいして、
       
任意の xDに対して、 fn (x)f (x) 1/2n<ε≦1/2M が満たされる。
  と拡張される。
  以上から、
   ε≦
1/2Mを満たす限りで任意の正の実数εに対して、
   ある自然数
Nとして「0<1/2N<εを満たす自然数」をとると、
       
nNを満たす任意の自然数nと、任意の xDに対して、
        
fn (x)f (x) 1/2n<ε≦1/2M が満たされる
  といえる。
  これを、
論理記号で表すと、 
  
(ε) (<ε≦1/2M (NN) (xD) (nN)( nN| fn (x)f (x)|1/2n<ε≦1/2M ) )  …(10)

(i)ε>1/2Mとなるケースの結論(5)(ii)<ε≦1/2Mとなるケースの結論(10)をあわせると、
ε
>1/2Mとなろうが、0<ε≦1/2Mとなろうが、任意の正の実数εに対して、ある自然数Nをとると、
       
nNを満たす任意の自然数nと、任意の xDに対して、
        
fn (x)f (x) <ε が満たされる
と結論される。
これを、
論理記号で表すと、 
    
(ε) (NN) (xD) (nN)( nN| fn (x)f (x)|1/2n<ε≦1/2M )  
これは、
関数列{ fn }が、D上で、f一様収束するということの定義に他ならない。 
  

関数列{fn}がfに一様収束することの証明の冒頭に戻る。

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