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定義:点aRのε近傍(ε-neighborhood) 開球open ball Uε(a)  U(P,ε) 





実数aの両隣は、どういう実数なのか、知りたいことがある。
しかし、実数は、切れ目なく続いているので、「この実数が、実数aの隣だ」と明示することはできない。
実数aの隣の実数を表す、「実数aに限りなく近い実数」という表現をこしらえることもできるが、
そうしたところで、「この実数が、《実数aに限りなく近い実数》だ」と明示できないことに変わりなく、事態は改善しないまま。
それでは、「実数aの両隣の実数」を探すのをあきらめて、
実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」をとって、このゾーンの幅を縮めていくとき、
実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」に、どういう実数がふくまれているのかを、調べるという方針に、
転換すればいいではないか。
このときに使われる「実数aの前後をまたぐ《切れ目のないゾーン》」が、他ならぬ「実数aのε近傍」。





【はじめに読むべき定義】

・「R上のaのε近傍」とは、《点aからの距離がε以内の点》をすべてあつめた《R部分集合》のこと。
     ただし、εは正ならばどんなに小さくてもよいとする。
・「R上のaの近傍」とは、点aのあるε近傍を含む《R部分集合》のこと。[松坂『解析入門1』3.1-E(p.100)]]

【正確な定義】

・実数全体の集合Rに、距離dをいれた、距離空間 (R,d)を考えたときの「点aε近傍ε-neighborhood」「aを中心とする開球」とは、
  点aRからの距離dがε以内の点からなるR部分集合
       すなわち、 Uε(a) ≡{ bR | d(a,b)<ε }  (ただし、εは任意の正の実数)で定義されるR部分集合のこと。

・「点aε近傍Uε(a) の半径とは、εのこと。[ルディン『現代解析学』2.20定義(p.33)]

距離d(a,b)=|a-b|と定義した1次元ユークリッド空間の場合】

  実数全体の集合Rに、d(a,b)≡|a-b|で定義された距離をいれた、1次元ユークリッド空間を考える場合、
     Uε(a) ≡{ bR | d(a,b)<ε } ={ bR | |a-b|<ε}  [FischerDef.3.1(3.1)(p.207);高橋注1(p.5);]
                        =(a−ε,a+ε)   (ただし、半径εは任意の正の実数)
  となるので、R上の点aのε近傍Uε(a)は、要するに、開区間(aε,aε)である。
         [FischerDef.3.1(3.3)(p.207)加藤定義5.2(p.43);吹田新保p.16;松坂『解析入門1』3.1-E(p.100);
                  松坂『解析入門3』12.1-B(p.51);小平『解析入門I』§1.6-数直線上の点集合 (p.73). ]

R上のε近傍の図解





【関連項目】 R上の近傍概念と、そのバリエーション/R2上の近傍概念/Rn上の近傍概念/距離空間一般における近傍概念
【利用例】 数列の収束の定義

【文献】
 ・小平『解析入門I』§1.6-数直線上の点集合 (p.73). 
 ・吹田新保『理工系の微分積分学p.16
 ・松坂『集合・位相入門』第4章§1B(p.140)
 ・松坂『解析入門1』3.1-E(p.100):開区間(a-r,a+r)をar近傍という。aの近傍とは….
 ・松坂『解析入門3』12.1-B開球・閉球・球面(p.51):距離空間一般、Rn,R1,R2において。開球open ball.r閉近傍・閉球closed ball.球面sphere.R2では、開円・開円盤open disc, 閉円・閉円盤closed disc, 円周circumference.
 ・彌永『集合と位相II』§1.3(p.141):Rのケースにも触れている。

 ・志賀『位相への30講』2講(pp.12-73)
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』2.3.29(p.60) 
 ・志賀『位相への30講』第2講(p.12)
 ・一楽『集合と位相―そのまま使える答えの書き方』定義3.2.2開球(p.76) 
 ・Fischer,Intermediate Real Analysis,Def.3.1(p.207):R上。 . 
 ・ルディン『現代解析学』2.20定義(p.33):距離空間一般において。「R1では近傍は開区間であり、R2では円の内部である」
 ・加藤十吉『微分積分学原論』定義5.2(p.43)R1 において。数aと正数δにたいし、開区間(a-δ,a+δ)をaのδ近傍といい、(a;δ)と書く。数aと(数直線上の)図形Xに対し、aのδ近傍に属す るXの数全体X(a,δ)=X∩(a;δ)={x| |x-a|<δかつx∈X}を、aのXにおけるδ近傍という。aの除外δ近傍は、xのXー{a}におけるδ近傍
 ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』1.1集合U開集合と閉集合-注1(p.5):内点の説明のなかで。「{y:|x-y|<δ}で定義されるxを中心とする半径δの球ball with radious δ」





     


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定義:点aRの除外ε近傍・削除近傍(a deleted ε-neighborhood of a )   U*ε(a) 

aR除外ε近傍(a deleted ε-neighborhood of a )U*ε(a)とは、
    点aε近傍から、点aを除外した Uε(a){a} 。
   すなわち、  距離d(a,b)として、U*ε(a)={ xR | 0<d(a,x)<ε} 

               半径εは正ならばどんなに小さくてもよい。 


距離d(a,b)=|a-b|と定義した1次元ユークリッド空間においては、      
     U*ε(a)={ xR | 0<|x-a|<ε}  = Uε(a){a} [FischerDef.3.1(3.4)(p.207)] 

                            = (a−ε,a )(a,a+ε) [FischerDef.3.1(3.5)(p.207)] 

                              半径εは正ならばどんなに小さくてもよい。 
cf. R2におけるε近傍Rnにおける除外ε近傍距離空間一般における除外ε近傍定義 

【利用例】

  1変数関数の収束・極限の定義

【文献】

 ・杉浦『解析入門I』p.113
 ・Fischer,Intermediate Real Analysis,p.207. 
 ・永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』2.3.29(p.60)
  

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近傍概念のバリエーション





1次元ユークリッド空間上の「点aε近傍ε-neighborhood of a Uε(a)の定義】

   Uε(a)(a−ε,a+ε){xR| a−ε<xa+ε}{xR ||x-a|<ε}
         *εは正ならばどんなに小さくてもよい。
  【利用例】 数列の収束の定義








1次元ユークリッド空間上の「点a除外ε近傍 deleted ε-neighborhoodU*(a)の 定義】

  U*ε(a) = (a−ε,a )(a,a+ε){ xR | 0<|x-a|<ε} *εは正なら ばどんなに小さくてもよい。
  【文献】  Fischer Intermediate Real Analysis,207.
  【利用例】 1変数関数の収束・極限の定義   









1次元ユークリッド空間上の

 「点a左からのε近傍ε-neighborhood of a from the leftU(a)の定義】

        U(a)(a−ε,a ]{xR| a−ε< xa } 
             *εは正ならばどんなに小さくてもよい。
  【文献】 Fischer Intermediate Real Analysis,207.








1次元ユークリッド空間上の「点a左からの除外ε近傍 deleted ε-neighborhood of a from the leftU*(a)の 定義】

  U*(a) =(a−ε,a)={xR| a−ε< x < a } *εは正なら ばどんなに小さくてもよい。
  【文献】  Fischer Intermediate Real Analysis,208.
  【利用例】 1変数 関数の左極限の定義   









1次元ユークリッド空間上の

   「点a右からのε近傍ε-neighborhood of a from the rightU(a)の定義】

        U(a)[ a , a+ε){xR| ax < a+ε} 
             *εは正ならばどんなに小さくてもよい。
  【文献】 Fischer Intermediate Real Analysis,207.








1次元ユークリッド空間上の「点a右 からの除外ε近傍deleted ε-neighborhood of a from the right U*(a)  の定義】

  U*(a) =(a,a+ε)={xR| a< x < a+ε}  *εは正ならば どんなに小さくてもよい。
  【文献】  Fischer Intermediate Real Analysis,208.
  【利用例】 1変 数関数の右極限の定義   









1次元ユークリッド空間上の「点a《実数の集合S》におけるε近傍の定義】

       S∩Uε(a){xR ||x-a|<εかつxS} 
             *εは正ならばどんなに小さくてもよい。
  【文献】 加藤十吉『微分積分学原論』定義5.2(p.43)R1 において。








1次元ユークリッド空間上の「点a《実数の集合S》における除外ε近傍の定義】

  
  








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