数列の上極限・下極限 : トピック一覧

・定義:有界数列の上極限/有界数列の下極限 
・性質:有界数列の上極限の性質/有界数列の下極限の性質  
   有界数列の上極限と下極限の大小関係と数列の収束 
・定義:上に有界でない数列の上極限/下に有界でない数列の下極限  


【数列関連ページ】
 ・数列の定義/数列の極限の定義/数列の極限の性質
 ・数列の上限sup下限infの性質
【上極限/下極限関連ページ】
 ・関数の上極限/下極限 
 ・集合列の上極限集合/下極限集合/   



総目次



 

定義:有界数列の上極限 limes superior, limit superior,superior limit


 →関数の上極限・下極限上極限集合・下極限集合  


有界数列{an}の上極限 







lim sup
 an ないし  lim  an   
n→∞
n→∞

 とは、 






lim
 sup { an | nk }    
k→∞



 のこと。

【噛み砕いた説明】

[小平『解析入門I』§1.5.c(pp.38-40) ; 杉浦『解析演習』p.5;]   

1.有界な数列{ ak }={ a1, a2 , a3, a4 ,…}から第n項以降を取り出して、
   数列{ ak | kn}={ an , an+1, an+2,… }をつくる。
2. 数列{ ak }は有界だから、数列{ ak | kn}も有界で、上限(最小上界)が常に存在する。 
  そこで、数列{ ak | kn}={ an , an+1, an+2,… }の上限(最小上界)
   un=sup{ ak | kn}=sup{ an , an+1, an+2,… } をとる。 
  (上限(最小上界)supという用語を使わないで同じことを述べると、
   「数列{ ak | kn}={ an , an+1, an+2,… }の各項がUn以下となる」と言えるような
    いろいろなUnのなかで最小の値を選んで、unと名づける、
    となる。) 

3. unの数列={ u1, u2, u3,, un,,}
  
={sup{ ak | k1}, sup{ ak | k2}, sup{ ak | k3},, sup{ ak | kn},…}
  
={sup{ a1, a2 , a3,…}, sup{ a2 , a3, a4 ,…}, sup{ a3, a4 , a5 ,…}, sup{ a4 , a5 , a6 ,…},, sup{ an , an+1, an+2, },…}
  
をつくる。
  この
unの数列は、単調非減少となる。
  (なぜなら、
un は、n=1のときは、{ ak }全体からsupをとるが、
       
nが大きくなるにつれて、{ ak }の狭い範囲からsupをとることになるから。) 
  また、この
unの数列は、有界となる。
4. n→∞としたときのunの極限、
  すなわち、
  
n→∞としたときの数列{sup{ ak | k1}, sup{ ak | k2}, sup{ ak | k3},, sup{ ak | kn},…}の極限
   すなわち、
  
n→∞としたときの、数列
  
{sup{ a1, a2 , a3,…}, sup{ a2 , a3, a4 ,…}, sup{ a3, a4 , a5 ,…}, sup{ a4 , a5 , a6 ,…},, sup{ an , an+1, an+2, },…}
  の極限 
  を、
  数列{an}上極限
  と呼び、








lim sup
 an ないし  lim  an   
n→∞
n→∞

  で表す。

 ※吹田・新保『理工系の微分積分学』は、数列{ ak }の集積値の最大の値を上極限と定義。
  高木『解析概論』も上記の定義のあとで、「最大の集積点に他ならない」(p.14:注意)としている。

【文献】
 ・高木『解析概論』12-3:4例つき
 ・吹田・新保『理工系の微分積分学』p.161:1例つき;
 ・杉浦『解析演習』p.5;
 ・高橋『経済学とファイナンスのための数学』p.46
 ・小平『解析入門I』§1.5.c(pp.38-40)。] 
 ・矢野『距離空間と位相構造』定理A.16とA.17のあいだ(p.243)


→[トピック一覧:数列の上極限/下極限]  
総目次 

定義:有界数列の下極限 limes inferior,limit inferior,inferior limit

  [高木『解析概論』13:4例つき; 吹田・新保『理工系の微分積分学』16:1例つき; 杉浦『解析演習』p.5;
   高橋『経済学とファイナンスのための数学』p.46; 小平『解析入門I』§1.5.c(pp.38-40)。] 
 →関数の上極限・下極限上極限集合・下極限集合  

有界数列{an}の下極限 







lim inf
 an ないし  lim  an   
n→∞
n→∞

 とは、 






lim
 inf { an | nk }    
k→∞



 のこと。

(噛み砕いた説明)

 [小平『解析入門I』§1.5.c(pp.38-40) ; 杉浦『解析演習』p.5;]   
1.有界な数列{ ak }={ a1, a2 , a3, a4 ,…}から第n項以降を取り出して、
   数列{
ak | kn}={ an , an+1, an+2, }をつくる。
2. 数列{ ak }は有界だから、数列{ ak | kn}も有界で、下限(最大下界)が常に存在する。 
  そこで、数列{
ak | kn}={ an , an+1, an+2, }の下限(最大下界)
   vn=inf{ ak | kn}=inf{ an , an+1, an+2, } をとる。 
  (下限
(最大下界)infという用語を使わないで同じことを述べると、
   「数列{
ak | kn}={ an , an+1, an+2, }の各項がVn以上となる」と言えるような
    いろいろな
Vnのなかで最大の値を選んで、vnと名づける、
    となる。) 
3. vnの数列={ v1, v2, v3,, vn,,}
  
={inf{ ak | k1}, inf { ak | k2}, inf { ak | k3},, inf { ak | kn},…}
  
={ inf { a1, a2 , a3,…}, inf { a2 , a3, a4 ,…}, inf { a3, a4 , a5 ,…}, inf { a4 , a5 , a6 ,…},, inf { an , an+1, an+2, },…}
  
をつくる。
  この
vnの数列は、単調非増加となる。
  (なぜなら、
vn は、n=1のときは、{ ak }全体からinfをとるが、
       
nが大きくなるにつれて、{ ak }の狭い範囲からinfをとることになるから。) 
  また、この
vnの数列は、有界となる。
4. n→∞としたときのvnの極限、
  すなわち、
  
n→∞としたときの数列{inf{ ak | k1}, inf { ak | k2}, inf { ak | k3},, inf { ak | kn},…}の極限
   すなわち、
  
n→∞としたときの、数列
  
{ inf { a1, a2 , a3,…}, inf { a2 , a3, a4 ,…}, inf { a3, a4 , a5 ,…}, inf { a4 , a5 , a6 ,…},, inf { an , an+1, an+2, },…}
  の極限 
  を、
  数列{an}下極限
  と呼び、







lim inf
 an ないし  lim  an   
n→∞
n→∞


  で表す。  

 ※吹田・新保『理工系の微分積分学』は、数列{ ak }の集積値の最小の値を下極限と定義。高木『解析概論』も上記の定義のあとで、「最小の集積点に他ならない」(p.14:注意)としている。

 

→[トピック一覧:数列の上極限/下極限]  
総目次 

定理:有界数列の上極限の性質

 有界数列{an}が与えられているとする。
 1.任意の正の実数εにたいして、 
     an≧({ ak }の上極限)+ε 
 となる項anは、高々有限個しかない。
 2.任意の正の実数εにたいして、 
     an>({ ak }の上極限)−ε 
 となる項anは、無数に存在する。

【文献】
  ・小平『解析入門I』§1.5.c(pp.38-40)
  ・高木『解析概論』13


定理:有界数列の下極限の性質


 有界数列{an}が与えられているとする。

1.任意の正の実数εにたいして、 
     an≦({ ak }の下極限)−ε 
 となる項anは、高々有限個しかない。

2.任意の正の実数εにたいして、 
     an<({ ak }の下極限)+ε 
 となる項anは、無数に存在する。

【文献】
  ・小平『解析入門I』§1.5.c(pp.38-40)
  ・高木『解析概論』13


定理:有界数列の上極限と下極限の大小関係と数列の収束


 有界数列{an}が与えられているとする。

 1. 常に、{an}の下極限≦{an}の上極限

 2. {an}の下極限={an}の上極限  {an}がその上極限=下極限に収束 

 【文献】
  ・小平『解析入門I』§1.5.c(p.39)
  ・高木『解析概論』13


定義:上に有界でない数列の上極限


 上に有界でない数列{an}の上極限







lim sup
 an ないし  lim  an   
n→∞
n→∞


 については、+∞と定義する。

 【文献】
  ・小平『解析入門I』§1.5.c(p.40)
  ・高木『解析概論』13
 

定義:下に有界でない数列の下極限


 下に有界でない数列{an}の下極限 







lim inf
 an ないし  lim  an   
n→∞
n→∞


 については、

  −∞と定義する。

 【文献】
  ・小平『解析入門I』§1.5.c(p.40)
  ・高木『解析概論』13



→[トピック一覧:数列の上極限/下極限]  
総目次 

定義:上に有界でないが下に有界である数列の下極限

  [小平『解析入門I』§1.5.c(p.40) 高木『解析概論』13;。] 


定義:下に有界でない上に有界である数列の上極限

  [小平『解析入門I』§1.5.c(p.40) 高木『解析概論』13;。] 
  
 
 

(reference)

下記も追加参照。
 ・黒田『微分積分学』§2.7(pp.65-9)
 ・志賀『解析入門30講』第3講(pp.22-25):ε近傍なし。
 ・青本『微分と積分1』§1.3(b)(pp.21-22)